結論

基本は目を合わせて軽く手を上げることで、 これなら声を出さずに用件があることだけが伝わりますし、 まわりの卓の話を止めてしまうこともありません。

逆に大声で呼ぶ、指を鳴らす、通りかかった店員さんの体に触れるといったやり方は、 店の格が上がるほど浮いて見えますし、 呼ばれた側にとっても気持ちのいいものではありません。

基本の呼び方

一度の食事のあいだに店員さんを呼ぶ場面は何度も訪れます。 最初の注文だけでなく、途中の追加や取り皿の依頼、 最後の会計まで含めれば、二度三度で済むことのほうが少ないはずです。

そのたびに迷わずに済むよう、はじめに押さえておきたいのが 呼び方は店の造りによって変わるという点で、 卓に呼び出しボタンが置かれている店と、声や目配せで呼ぶことを前提にした店とでは、 同じ振る舞いが自然にも不作法にも見えます。

店の形呼び方
格式のある店 目を合わせて、軽く手を上げるだけで伝わります
呼び出しボタンのある店 遠慮なく押して構いません
居酒屋やカジュアルな店 「すみません」と声をかけて呼びます
近くを通りかかったとき そのタイミングで頼んでしまうのがいちばん早く済みます
個室に通されたとき 呼び出しボタンか内線が用意されています

格式のある店ほど、声を出さずに呼ぶのが前提になっています。そういう店では店員さんが絶えず客席に目を配っていますから、手を軽く上げるだけで気づいてもらえますし、わざわざ声を張ると静かな店内でその一声だけが響いてしまいます。

はじめて入る店で勝手が分からないときは、 まわりのお客様がどう呼んでいるかを一度眺めてみると見当がつきます。 同じ和食の店でも、昼どきの定食屋と夜の料亭とでは、ちょうどよい振る舞いがまるで違うからです。

それでも判断がつかなければ、声を出す前にまず目で探してみるところから始めれば間違いがありません。 店員さんが客席のほうを見ている店なら視線が合った時点で用は足りますし、 逆に誰もこちらを見ていない店であれば、それは声をかけて呼んでよい店だということになります。

避けたい呼び方

呼ぶときの動作には避けたほうがよい形がいくつかあって、 しかもその多くは、急いでいるときやお酒が進んだ席で無意識に出てしまうものです。

いずれにも共通しているのは、相手を下に扱っているように見えてしまうという点で、 本人にそんなつもりがまったくなくても、 同席者やまわりの卓からはそう映りますし、何より呼ばれた店員さん自身がそう受け取ります。

避けること理由
指を鳴らして呼ぶ 人を呼ぶ合図としては強すぎて、見ている側も落ち着きません
大きな声で呼ぶ 離れた席のお客様にも聞こえ、話の邪魔になります
体に触れて呼び止める 驚かせてしまいますし、料理を落とす事故にもつながります
「おい」「ちょっと」と呼ぶ 「すみません」のひと言で十分に伝わります
短い間に何度も呼び止める そのたびに手が止まるので、用件はまとめて伝えます
名札の名前で呼びかける 親しみのつもりでも、相手には距離が近すぎます

料理を運んでいる最中の店員さんに、呼び止めようとして触れるのだけは避けてください。両手がふさがっているところへ不意に触れられると驚いて手元が狂いますし、熱いものや汁気のあるものを持っていれば落として怪我につながります。通り過ぎるのを待つか、手のあいている別の店員さんに声をかけるほうが確実です。

案外見落とされがちなのですが、呼び方そのものよりも 何度も呼んでしまうことのほうが店にとっては負担で、 水を頼んでから思い出したように取り皿を頼み、そのあとで追加の注文をする、 といった呼び方をすると、そのたびに相手の手を止めることになります。

呼ぶ前にひと呼吸おいて、同席者の分も含めて用件をまとめておくだけで、 これはかなり違ってきます。 追加で頼みたいものがないかを卓で先に確かめておけば一度で済みますし、 混んでいる時間帯の店ほど、その差がはっきり出ます。

気づかれないとき

混んでいる時間帯にあたると、手を上げたのに誰にも気づかれないまま、 腕だけが宙に浮いてしまうことがあります。 店員さんはどの卓も見て回っているつもりでも、注文と配膳が重なる時間はどうしても手が回りません。

困るのはそこから先で、もう一度待つのか、声を出すのかを決めかねているうちに、 腕を下ろすのも気まずくなってきます。 呼び方そのものより、この「次の一手」で迷う場面のほうが実際には多いはずです。

状況対応
手を上げても気づかれない 少し間をおいてから、もう一度上げてみます
それでも気づかれない 控えめな声で「すみません」と添えます
遠くにいて目が届かない 近くを通りかかった別の店員さんに頼みます
どの店員さんも忙しそう 手が空くまで少し待つほうが早く済みます
急いでいる用件のとき そう伝えれば、優先して動いてもらえます

急いでいるなら、待っているあいだに用件まで伝えてしまうほうが早く済みます。「すみません、お会計だけ先にお願いできますか」と続けてしまえば、店の側も何をすればいいかがその場で分かりますから、いったん戻って注文を聞き直すという往復が省けます。黙って手を上げたまま待っていると、急いでいることも用件も伝わらないまま時間だけが過ぎていきます。

何度手を上げても目が合わないと、自分の呼び方がまずいのだろうかと気になってきますが、 たいていは呼び方ではなく座っている場所の問題で、 柱の陰やいちばん奥のテーブル、店員さんがふだん通らない側の壁際といった席は、 店の人がどれだけ気を配っていてもそもそも視界に入りません。

そういう席にあたったときは、無理に自分で呼ぼうとするより 通路側に座っている人に頼んでしまうほうが早く済みますし、 身を乗り出して手を伸ばせば隣の卓や通りかかった人にぶつかりかねないうえ、 腕を上げたまま待っている数秒は自分でもきまりが悪いものです。 呼び出しボタンが置いてある店なら、それを押すのに遠慮は要りません。使ってもらうために置いてあります。

頼み方の言葉

無事に呼び止めたら、こんどは用件をどう伝えるかですが、 ここは飾らずに短く済ませるほど店の側も動きやすく、 結果として自分の頼んだものも早く出てきます。

かえって長引いてしまうのが用件を小出しにする頼み方で、 注文を伝えたあとに「あ、それから」と付け足すことを繰り返すと、 店員さんは卓を離れるに離れられず、こちらも何を頼んだか分からなくなってきます。

場面言い方
最初の注文 同席者の分もまとめて伝えると一度で済みます
途中で追加する 「追加でお願いします」と切り出します
取り皿やお箸が要る 最初の注文と一緒に頼んでおきます
会計をお願いする 「お会計をお願いします」で通じます
料理がなかなか来ない 「〇〇はどのくらいかかりますか」と尋ねます

取り皿や取り箸のように後から要りようになるものは、最初の注文と一緒に頼んでおくと二度手間になりません。料理が運ばれてきてから頼むと、そのためだけにもう一度呼び止めることになりますし、届くまでのあいだ、せっかくの料理に手をつけられないまま待つことになります。

言葉づかいでいちばん迷うのは、頼むときよりむしろ断るときのほうで、 勧められた飲み物や追加の料理を要らないと伝える場面では、 どう言えば角が立たないかを探しているうちに返事が遅れてしまいます。

このとき使いがちな「結構です」は、受けるとも断るとも取れる言葉なので、 聞いた側は確かめ直すか、こちらの表情から察するしかなくなります。 「今は大丈夫です」「またお願いします」のように要否がはっきりする言い方にしておけば、 断ったつもりのものが運ばれてくるといった行き違いも起きません。

呼び方に決まった正解があるわけではなく、その店の造りと混み具合を見て、 いちばん静かに済む形を選べばそれで十分です。 目を向けただけで伝わる店ならそれがいちばん軽い呼び方ですし、 声をかけないと届かない店であれば、遠慮せずに「すみません」と言ってかまいません。

どの店でも変わらないのは、用件をまとめてから呼ぶことと、 呼ばれた側を急かさないことの二つだけで、 この二つさえ守っていれば、細かい作法を思い出せなくても失礼にはなりません。 同席している人にとっても、そのほうが落ち着いて食事を続けられます。

注文の頼み方を見る

よくある質問

店員さんはどう呼ぶのがいいですか?

目を合わせて軽く手を上げるのが基本です。格式のある店ほど、店員さんが客席を見ているので声を出さずに伝わります。呼び出しボタンがあればそれを使ってください。

「すみません」と声をかけてもいいですか?

居酒屋やカジュアルな店では自然です。ただし格式のある店では、声を張ると目立ちます。

避けたほうがいい呼び方はありますか?

指を鳴らす、大声で呼ぶ、体に触れる、「おい」「ちょっと」と言うのは避けてください。とくに皿を持っている店員さんに触れると、驚いて手元が狂い落とす原因になります。

手を上げても気づかれないときは?

少し待ってからもう一度上げ、それでも気づかれなければ控えめに「すみません」と声をかけてください。近くを通る別の店員さんに頼むのも方法です。

急いでいるときはどうしますか?

その旨を伝えてください。「お会計だけ先にお願いできますか」のように用件を添えると、店も動きやすくなります。黙って待つより早く済みます。

取り皿や取り箸はいつ頼みますか?

注文と一緒に頼んでください。後から頼むと、そのために呼び止めることになります。最初にまとめておけば一度で済みます。

まとめ

  • まずは目を合わせて、軽く手を上げます
  • 指を鳴らしたり、体に触れたりはしません
  • 気づかれないときは、控えめに声をかけます
  • 用件はまとめて、一度で伝えます

参考情報

  1. 農林水産省「食文化のポータルサイト」
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/index.html
  2. 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/

食事の作法に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・店の格式・間柄によって実際には異なります。(最終確認:2026年8月)

本記事で紹介している作法は一般的な目安です。細かな作法を完璧に守ることより、同席する人が気持ちよく食べられることのほうが大切です。格式の高い店や改まった席では、店の案内に従ってください。