結論
もらっていない相手に贈らなくても、失礼にはあたりませんので、 そこを引け目に感じたまま迷い続ける必要はありません。 出産祝いはもともと一対一で贈り合う約束のうえに成り立つ制度ではなく、 贈りたいと思った側が贈るという形で続いてきたものです。
ただし兄弟姉妹や親族、それにこれから先も顔を合わせる相手であれば、 贈っておくほうが後々まで気を回さずに済みます。 逆に何年も連絡を取っていない相手であれば、 贈ることでかえって内祝いの手配という手間を渡してしまいます。
贈らなくてよい理由
年賀状で友人の出産を知り、お祝いを贈ろうと財布を出しかけたところで、 自分が産んだときにその人からは何も届かなかったことを思い出す、ということがあります。 祝いたい気持ちと、そのときの引っかかりとが同時に出てきますので、 贈るか贈らないかを決める前に手が止まってしまいます。
ここで迷いの元になっているのは、出産祝いが贈り合いの約束事なのか、 それとも一方通行でも成り立つものなのかという点です。 前者だと考えれば贈らないことに理由が立ちますし、 後者だと考えれば過去の分はそもそも判断から外れます。
| よくある思い込み | 実際のところ |
|---|---|
| もらったら返すのが決まりだ | 出産祝いにそのような決まりはありません |
| 片方だけ贈るのは不自然だ | 片方だけでも、失礼にはあたりません |
| 相手は贈らなかったことを覚えている | 産後の記憶に残っていないことがよくあります |
| 贈らないと気まずくなる | 気にしているのは自分だけということが多くあります |
| お祝いは義理で贈るものだ | 贈りたいと思った人が贈れば足ります |
贈るか贈らないかで悩んでいるのが自分だけ、という状態はそれほど珍しくありません。産後は昼夜の区別がつかないほど生活が変わりますので、誰から何が届いて誰から届かなかったのかを一つずつ数えている方は、そう多くありません。何年か経ってその一件を覚えているのは、受け取らなかった側よりも、贈らなかったことを気にしている側のほうです。
実際に、出産のときに届いた品を一つずつ書き出して控えている方もいますが、 多くの家庭では内祝いを贈り終えた時点でその一覧が役目を終えます。 名前と品物を突き合わせた紙は出産から数か月で引き出しの奥へ入り、 次に開くのはたいてい二人目のときです。
そのため、贈らなかった側が何年も後ろめたさを抱えているあいだに、 受け取らなかった側はその一件をとうに忘れている、という食い違いが起こります。 ここで考えるべきなのは過去の帳尻を合わせることではなく、 いま生まれた赤ちゃんを祝う気持ちが自分にあるかどうかという一点です。
もらわなかった事情
贈るべきかどうかで迷ったときは、答えを出す前に、 なぜあのとき自分のところへは届かなかったのかを一度たどってみると見当がつきます。 相手が意図して贈らなかったのだと決めてしまうと、 そこから先の判断がどうしても重くなります。
思い出してみると、こちらの側に理由があった場合と、相手の側の事情だった場合とに分かれます。 どちらだったのかによって、いま贈ることの意味も、 贈らないでおいたときの後味も変わってきます。
| 当時の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 出産を知らせていなかった | 相手には贈らなかった理由がありません |
| まだ親しくなかった | 当時の間柄が違えば、対応が違うのは自然です |
| 相手が学生や新社会人だった | 経済的な事情があったと考えられます |
| お祝いを辞退していた | 断った側に従っただけで、非はありません |
| 品物や祝いの言葉はもらった | 形が違うだけで、すでに受け取っています |
この表の最後の一行がいちばん見落とされやすく、現金の入った祝儀袋が届かなかったというだけで、ベビー用品を持って会いに来てくれたことや、お祝いの言葉を丁寧に伝えてくれたことを勘定に入れていない方が多くいます。金額として残らない形のお祝いであっても、贈った側は間違いなくお祝いのつもりで選んで用意しています。
とくに多いのが、当時こちらから知らせていなかったという場合で、 年賀状で子の名前を見て初めて知ったという相手に、贈る機会があったはずもありません。 相手からすれば、知らされていないことを祝いようがなかっただけで、 そこに落ち度を探しても何も出てきません。
当時の事情まで思い出せたのであれば、そこで過去の勘定は締めてしまってかまいません。 相手に非がなかったと分かれば贈るかどうかは今の気持ちだけで決められますし、 こちらから辞退していたのであれば、なおさら相手を責める筋合いがありません。
関係別の判断
同じ「もらっていない」でも、相手が実の妹なのか、 卒業してから一度も会っていない学生時代の友人なのかで、迷いの重さがまるで違います。 妹の子であれば法事や正月に顔を合わせますが、 疎遠な友人であれば次に会う予定すら立っていません。
判断を分けるのは過去にどうだったかではなく、 これから先もその人と顔を合わせるかどうかという一点です。 長く続く相手なのか、それとももう年賀状だけの相手なのかで、 贈らなかったときに残るものが違ってきます。
| 相手 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 兄弟姉妹・親族 | 贈っておくほうが後々まで楽です | 長く続く関係で、親族の間に記録が残ります |
| 現在も親しい友人 | 贈っておくほうが気持ちが済みます | 祝いたい気持ちがあれば、過去は関係ありません |
| 職場の同僚 | 部署の慣行にそのまま合わせます | 個人で決めるより、周囲と揃えるほうが重要です |
| 疎遠になっている | 無理に贈らなくてもかまいません | 内祝いの手配という負担をかけるだけです |
迷ったときは、これから先も付き合いが続く相手かどうか、その一点だけで決めてください。続く相手なら贈っておくほうが、法事や同窓会で顔を合わせるたびに当時のことを思い出さずに済みます。逆に連絡が途絶えている相手であれば、贈らないでおくことがそのまま気遣いになります。
職場の同僚は少し勝手が違い、部署でまとめて贈ると決まっていれば、 自分だけ抜けるという選択肢がそもそもありません。 回覧されてきた封筒に一人だけ名前が無いという状態は、 過去の経緯を知らない同僚の目にも留まります。
そういう場では、個人としての気持ちよりも、 周囲と足並みを揃えることを先に置いておくほうが収まります。 有志で募る形であれば金額もあらかじめ決まっていますので、 こちらの過去の事情を持ち出す場面はどこにもありません。
疎遠な相手へ贈ることが負担になりうるかどうかは、 コズレ子育てマーケティング研究所が2024年10月15日から11月14日にかけて インターネットで行った調査からうかがえます。 長子が1歳以上の会員419名から回答を得たもので、 意識ではなく、貰った経験と贈った経験の有無を尋ねた集計です。
この調査で出産祝いを貰った経験があると答えた人は約94パーセントにのぼり、 そのうち内祝いを贈った経験があると答えた人も約88パーセントを占めました。 贈った先としては友人・知人が78パーセントで最も多く、 お祝いを受け取れば友人にも内祝いを用意するという流れが、数のうえでも見て取れます。
贈る場合の金額と伝え方
贈ると決めたあとに迷うのが、いくら包むかという段で、 もらっていない負い目からつい多めにしたくなります。 祝儀袋を前にして、相場の真ん中にするのか、 少しだけ上に乗せておくのかで手が止まります。
ここで判断が分かれるのは、金額を厚くすることが相手にとって喜びになるのか、 それとも負担になるのかという点です。 受け取る側には内祝いという返礼の手配が待っていますので、 包んだ額はそのまま相手の手間に跳ね返ります。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 兄弟姉妹に贈るとき | 1〜3万円が目安で、下限に寄せると相手が楽です |
| 友人に贈るとき | 3千〜1万円が目安で、控えめにするほうが親切です |
| 多めに包みたくなったとき | 相場の上限は超えないでおきます |
| お返しについて | 気にしないでほしいと、一言だけ添えます |
| 渡すときの言葉 | 「ご出産おめでとうございます」だけで足ります |
| 過去の経緯 | こちらからは触れずに、そのまま渡します |
相場の下限か、それより控えめにしておくほうが、受け取る側は楽になります。もらっていないのに贈られたという経緯を相手が覚えていれば、なおさらお返しをどうするかで気を回しますし、包みが厚いほどその悩みは長引きます。お返しは気にしないでほしいと一言だけ添えておけば、そこで相手の考えごとが一つ減ります。
渡す場面でつまずきやすいのが、こちらから過去に触れてしまうことで、 自分のときはもらっていないけれど、と前置きをしてしまう方がいます。 謙遜のつもりでも、聞いた相手はその場で当時のことを思い出させられますので、 受け取る手が止まってしまいます。
お祝いの言葉だけを述べて品を渡してしまえば、そこに付け足さなければならないことは何も残りません。 相手のほうから昔のことを持ち出してきたときも、 覚えていないと軽く返しておけば、その話はそこで終わります。
贈るか贈らないかという問いに、どちらか一方だけが正しいという線が引かれているわけではありません。 過去にもらわなかったことを理由に見送っても失礼にはあたりませんし、 それでも祝いたい気持ちが残るのであれば、贈って差し支えありません。 決め手になるのは当時の帳尻ではなく、 いまの気持ちと、これから先も顔を合わせるかどうかという見通しのほうです。
どの相手にも変わらないのは、贈ると決めたときに過去の経緯を持ち出さないことと、 相手にお返しの心配をさせない額にとどめることの二つだけです。 この二つさえ守っていれば、細かい作法を思い出せなくても失礼にはなりませんし、 受け取った側もお祝いの言葉だけを素直に受け取れます。
よくある質問
出産祝いをもらっていない相手に贈らないのは失礼ですか?
失礼にはあたりません。出産祝いは贈りたいと思った人が贈るもので、もらったから返すという性質のものではありませんので、片方だけが贈った状態のままでも差し支えありません。ただし親族や今後も付き合いが続く相手であれば、贈っておくほうが後が楽になります。
当時、出産を知らせていませんでした。
知らせていなければ、相手には贈らなかった理由がそもそもありません。年賀状で子の名前を見て初めて知ったという相手に、贈る機会があったはずもありませんので、相手に非はありません。贈るかどうかは、今の気持ちだけで決めてかまいません。
品物やお祝いの言葉はもらいました。それでも「もらっていない」ことになりますか?
いいえ。ベビー用品をもらった、会いに来てくれたということも、お祝いの一形態です。現金でなかっただけで、すでに受け取っています。金額として残らない形のお祝いは勘定から抜けやすく、この点はとくに見落とされがちです。
贈る場合の金額は?
通常の出産祝いと同じでかまいません。兄弟姉妹なら1〜3万円、友人なら3千〜1万円が目安です。ただし高額にすると相手がお返しをどうするかで気を回しますので、相場の下限か、それより控えめにしておくほうが親切です。
渡すときに過去のことに触れるべきですか?
触れないのが基本です。「もらっていないけれど」と言うと、相手はその場で当時のことを思い出させられ、引け目を感じます。「ご出産おめでとうございます」だけで十分ですし、それ以上に付け足すことはありません。
疎遠な相手にも贈るべきですか?
無理に贈る必要はありません。疎遠な相手に贈ると、かえって内祝いの手配という負担をかけることになります。お祝いの言葉を伝えるだけでも十分に気持ちは届きます。
まとめ
- もらっていない相手に贈らなくても、失礼にはあたりません
- 出産祝いは一対一で贈り合う制度ではありません
- 品物やお祝いの言葉も、お祝いとして受け取っています
- 知らせていなかったのであれば、相手に非はありません
- 親族と今も親しい友人には、贈っておきます
- 疎遠な相手には内祝いの手配という負担をかけるだけになります
- 贈るなら相場の下限か、それより控えめにとどめます
- 渡すときは過去の経緯に触れません
参考情報
- リンベル ギフトコンシェルジュ「贈り物のマナー」
https://www.ringbell.co.jp/giftconcierge/1939 - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - コズレ子育てマーケティング研究所『子育て層における「出産内祝い」市場調査2024』(2024年10〜11月実施・有効回答419名)
https://cozre.co.jp/blog/14254
本文で引用したコズレ子育てマーケティング研究所の調査は、2024年10月15日から11月14日に長子が1歳以上のコズレ会員419名へインターネットで行ったもので、回答者が子育て世帯の会員に偏っており、贈る側ではなく受け取る側の経験を尋ねた集計です。出産祝いが必ずしも相互に贈り合うものではない点は、参照した情報源で共通しています。贈らないことを失礼と明示している情報源はありません。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・ご家庭の慣習によって異なります。判断に迷う場合は、ご親族や周囲の方にご確認ください。