結論
法事の服装は回を重ねるごとに軽くなっていきますので、 四十九日と一周忌は準喪服、 三回忌以降は略喪服(平服)という切り替えを覚えておけば足ります。
判断のもとになるのは案内状の記載で、 「平服で」とあれば略喪服、何も書かれていなければ準喪服にしておけば外しませんし、 家族だけで営む席では家の中で格を揃えることのほうが優先されます。
| 法要 | 参列者 | 施主・遺族 |
|---|---|---|
| 四十九日 | 準喪服で参列します | 準喪服にし、正喪服のこともあります |
| 一周忌 | ここまでは準喪服にしておきます | 同じく準喪服で営みます |
| 三回忌 | 準喪服でも略喪服でもかまいません | ここから略喪服にしても差し支えありません |
| 七回忌以降 | 略喪服(平服)で参列します | 略喪服で営むのがふつうです |
| 「平服で」の案内あり | 案内のとおり略喪服にします | 案内を出した側なので、これに合わせます |
三回忌が切り替えの目安になります。ここから先は参列者だけでなく、施主や遺族も含めて平服とすることができるとされていますので、四十九日と一周忌に着たものをそのまま出すか、一段軽くするかは、この線で分けて考えます。
回を重ねると軽くなる
葬儀の服装であれば喪服を出せばそれで済みますが、法事となると話が変わってきます。 前に着たものをそのまま出してよいのか、それとも少し崩すべきなのかが分からず、 クローゼットの前で喪服とダークスーツを見比べることになりがちです。
迷いの正体は、法事の服装が一定ではないという点にあります。 年数がたつにつれて装いを軽くしていく慣習があるため、 同じ「法事」でも何回目の法要なのかによって答えが変わります。
| 格 | 中身と、着る場面 |
|---|---|
| 正喪服 | 和装かモーニングコートで、喪主と近親者が四十九日まで着ます |
| 準喪服 | ブラックスーツか黒のアンサンブルで、一般に「喪服」と呼ばれるものです |
| 略喪服(平服) | 黒・紺・濃いグレーの地味なスーツやワンピースを指します |
「平服」は普段着という意味ではありません。ここでいう平服は略喪服のことで、ジーンズやTシャツ、柄物のシャツは含まれませんので、案内状に「平服で」とあっても、色を抑えた地味な装いという枠は外れないことになります。
切り替えの目安になるのは三回忌で、ここから先は参列者だけでなく 施主や遺族も略喪服を着用できるとされています。 これは悲しみが薄れていくという意味ではなく、 日常に戻っていく過程を装いのほうでも表すという考え方によります。
回を重ねるにつれて席そのものが小さくなっていく点は、調査の数字にも表れています。 全日本仏教会と大和証券が2022年12月に実施し、6,184人から回答を得たインターネット調査では、 家族の法要について「少なくとも実施しておくべき」と答えた割合が、 一周忌48.5パーセント、三回忌38.4パーセント、七回忌28.5パーセントでした。
男性の服装
男性の場合、手持ちの服で組み合わせが決まってしまうことが多いものです。 ブラックスーツが一着あればそれで通せますが、 ネクタイと靴下をどうするかで最後に迷うことになります。
分かれ目は準喪服と略喪服のどちらで行くかで、 スーツそのものより小物のほうに差が出ますし、 法事では葬儀と違って座敷に上がる場面が多く、 靴を脱ぐことになりますので、靴下まで人の目に入ります。
| 項目 | 準喪服 | 略喪服(平服) |
|---|---|---|
| スーツ | 光沢のないブラックスーツを選びます | 黒・濃紺・濃いグレーの無地で構いません |
| シャツ | 白の無地を合わせます | 同じく白の無地にしておきます |
| ネクタイ | 黒の無地にします | 黒か、地味な色の無地であれば問題ありません |
| 靴下 | 黒をはきます | 黒か濃紺で、柄の入らないものにします |
| 靴 | 光沢のない黒の革靴にします | 黒の革靴であれば十分です |
法事では座敷に上がって靴を脱ぐことが多く、靴下が最後まで見えたままになります。玄関で脱いだあとは焼香の列に並び、そのまま座って会食に移りますので、穴が空いていないか、脱ぎ履きしやすい靴かどうかを、出かける前に一度確かめておきます。
当日に慌てやすいのは、久しぶりに出したブラックスーツの状態です。 前の法事から年単位で間が空いていると、肩に折り目が残っていたり、 ズボンの裾がほつれていたりすることがありますので、 前日の夜のうちに一度ハンガーにかけて広げておきます。
靴も同じで、下駄箱の奥から出した黒の革靴は、 たいてい前回の焼香で付いた白い粉が残ったままになっています。 玄関で脱いだ靴は必ず人の目に触れますので、 布で一度拭いておくだけで、当日の落ち着きがまるで違ってきます。
女性の服装
女性の場合は選択肢が多いぶん、迷う場所も増えます。 黒のワンピースにするか、手持ちの濃紺のスーツで済ませるか、 アクセサリーをどこまで付けてよいかまで含めて考えることになります。
判断の軸は男性と同じく準喪服か略喪服かですが、 女性の場合はもう一つ正座する場面という条件が加わります。 立っているときは問題のない丈でも、座ると膝が出てしまうことがあるためです。
| 項目 | 準喪服 | 略喪服(平服) |
|---|---|---|
| 服 | 黒のワンピース・アンサンブル・スーツにします | 黒・紺・グレーのワンピースやスーツで構いません |
| 丈 | 膝が隠れる長さを選びます | 同じく膝が隠れる長さにしておきます |
| ストッキング | 黒をはきます | 黒でも肌色でもかまいません |
| 靴 | 光沢のない黒のパンプスで、ヒールは低めにします | 黒のパンプスであれば十分です |
| バッグ | 黒で布製の、金具の少ないものを持ちます | 黒で地味なものであれば問題ありません |
| アクセサリー | 結婚指輪と一連のパールまでにとどめます | 同じく結婚指輪と一連のパールまでです |
法事には正座する場面があるので、丈は立った状態ではなく座った状態で決めます。座布団に座ると布が上に上がりますので、タイトなスカートは動きにくいうえに膝が出やすく、法要のあいだじゅう裾を押さえ続けることになります。
会場が自宅や寺院の座敷であれば、椅子ではなく座布団が並びます。 焼香のときには一度立ち上がって前に進み、また戻って座り直すことになりますので、 膝をついたまま少し動ける丈かどうかを、 家で座布団に座って確かめておくと当日が楽になります。
パールを一連までにとどめるのは、重ねると華やかに見えるためです。 二連のネックレスは「不幸が重なる」として避けられてきましたし、 光を強く返す金や色石は、焼香の火のそばで目立ちますので、 迷ったときは何も付けずに結婚指輪だけにしておくほうが落ち着きます。
子どもの服装
子どもの分をどうするかは、当日が近づいてから気づくことが多い項目です。 大人の喪服は用意できても、子どもの服はサイズが変わってしまっていますし、 この一日のために買い足すべきかで迷うことになります。
結論から言えば買い足す必要はほとんどありません。 制服があれば制服が正装として扱われますし、 制服のない年齢でも手持ちの服の色を抑えるだけで足ります。
| 子どもの状況 | 着せるもの |
|---|---|
| 制服がある | 制服をそのまま着せれば、色が黒でなくても正装として通ります |
| 制服がない | 白のシャツやブラウスに、黒・紺・濃いグレーの下を合わせます |
| 靴と靴下 | 黒か紺の靴下に、色の濃い靴を選べば十分です |
| 喪服を買うか | 子ども用の喪服を新しく買う必要はありません |
子どもの服装は、大人ほど厳密に見られません。制服の色が紺やチェックであっても、それが学校で決められた正装である以上とがめられることはありませんし、成長の早い時期に一日のためだけの服を買っても、次の法要ではもう着られません。
むしろ気をつけたいのは、法要そのものが長く続くことのほうです。 読経と焼香が済んだあとの会食まで含めれば半日かかることもありますので、 締めつけのある服や慣れない靴だと、 途中でぐずってしまい、結局は席を立つことになります。
小さな子どもを連れて行くのであれば、着替えを一組持っておくと安心です。 会食で汁気のあるものをこぼすことは十分に起こりますし、 替えのシャツが紙袋に一枚入っているだけで、 その場で慌てずに席へ戻ることができます。
案内状の読み方
何を着るかは、実のところ自分で決める部分がそれほど多くありません。 案内状に書かれていることがほとんどで、 読み取れさえすれば迷う余地は小さくなります。
問題はその言葉が分かりにくいことにあり、 「平服」「略礼服」といった書き方が具体的に何を指すのかは説明されていませんし、 そもそも何も書かれていない案内状も珍しくありません。
| 案内状の記載 | 着ていくもの |
|---|---|
| 「平服でお越しください」 | 略喪服のことなので、色を抑えたスーツやワンピースにします |
| 「略礼服で」 | 同じく略喪服を指しますので、黒や濃紺で揃えます |
| 記載がない | 四十九日と一周忌なら準喪服、三回忌以降なら略喪服にします |
| 読み取れない | 施主や、ほかの参列者に直接たずねて構いません |
迷ったときは格を上げるほうが安全です。「平服で」と案内された席に準喪服で行っても、とがめられることはまずありませんが、その逆は目立ちますので、判断がつかないまま当日を迎えるくらいなら、前日までに施主へ一言たずねておきます。
たずねることをためらう必要はありません。 先ほどの全日本仏教会・大和証券の調査では、 「葬儀や法要に何が必要か分からない」と答えた人が59.3パーセントに上っており、 分からないまま迎えているのは自分だけではない、ということが数字にも出ています。
たずねるときは服装だけを切り出すより、ほかの確認と一緒にしたほうが自然です。 「当日は何時に伺えばよいでしょうか、服装は平服でとありましたが」というように、 時間や場所の確認に続けて聞く形にしておけば、 施主の側も一度の返事でまとめて答えられます。
家族のみの場合
七回忌を過ぎたあたりからは、家族だけで営むことがほとんどになります。 参列者に見られる心配がなくなるぶん、今度は どこまで崩してよいのかという別の迷いが出てきます。
家族だけの席で軸になるのは格の高さではなく、 家の中で揃っているかどうかという一点で、 ひとりだけきちんとしすぎることも、ひとりだけ軽すぎることも、 少人数の席ではそのまま目立ちます。
| 家族だけの席の状況 | 服装の決め方 |
|---|---|
| 僧侶を招く | 略喪服以上にしておくのが無難です |
| 家族だけで読経なし | 色を抑えた服であれば、略喪服まで下げても構いません |
| 格が揃っていない | 前もって「どのくらいの服装にする」と決めておきます |
| 遠方から来る家族がいる | 移動を考えて、着替えの要らない範囲で揃えます |
家族だけの席では、揃っていないことのほうが目につきます。四人しかいない座敷でひとりだけブラックスーツだと、その人が浮くだけでなく、ほかの三人が気にすることになりますので、当日ではなく前もって決めておくほうが、全員にとって楽になります。
決め方としては、施主にあたる人が先に自分の服装を伝えてしまうのが早道です。 「私は濃紺のスーツで行くから、みんなもそのくらいで」と一言送っておけば、 それが基準になって全員が合わせられますので、 当日に玄関先で顔を見合わせることがなくなります。
僧侶を招くかどうかで一段変わる点だけは、先に確かめておきます。 読経をお願いするのであれば、家族だけの席であっても略喪服以上にしておき、 家の中でお茶を出すだけの席にするのであれば、 色を抑えた普段の服でも差し支えありません。
法事の服装に唯一の正解があるわけではなく、何回目の法要なのかと、 案内状に何と書かれているかの二つを見て、その場でいちばん収まりのよい格を選べば足ります。 四十九日と一周忌なら準喪服、三回忌から先なら略喪服という切り替えを覚えておけば、 細かい組み合わせを思い出せなくても、大きく外れることはありません。
どの回忌でも変わらないのは、色を抑えることと、その場にいる人と格を揃えることの 二つだけで、この二つを守っていれば、準喪服でも略喪服でも失礼にはなりません。 判断がつかないまま当日を迎えるより、前日までに施主へ一言たずねておくほうが、 自分も、たずねられた側も落ち着いて当日を過ごせます。
よくある質問
法事の服装は葬儀と同じですか?
同じではありません。法事の服装は回を重ねるごとに軽くなり、四十九日と一周忌は準喪服、三回忌以降は略喪服(平服)でよいとされます。三回忌からは参列者だけでなく、施主や遺族も含めて略喪服を着用できるとされています。
どこで服装が軽くなりますか?
三回忌が切り替えの目安になります。ここから参列者だけでなく施主や遺族も略喪服を着用できるとされており、これは悲しみが薄れるという意味ではなく、日常に戻っていく過程を装いのほうでも表す、という考え方によるものです。
案内状に記載がない場合はどうしますか?
四十九日と一周忌なら準喪服、三回忌以降なら略喪服にしておけば外しません。読み取れないときは施主やほかの参列者に直接たずねて構いませんし、判断がつかないときは格を上げるほうが安全です。
法事ならではの注意点はありますか?
座敷に上がって靴を脱ぐ場面が多いことです。男性は靴下に穴が空いていないか、脱ぎ履きしやすい靴かどうかを確かめておきます。女性は正座する場面がありますので、立った状態ではなく座った状態で膝が出ない丈を選びます。
子どもの服装はどうしますか?
制服があれば制服が正装として通り、色が黒でなくても問題ありません。制服がない場合は白のシャツやブラウスに、黒・紺・濃いグレーのズボンやスカートを合わせます。子ども用の喪服を新しく買う必要はありません。
家族だけの法事でも喪服を着ますか?
家の中で格を揃えることのほうが優先されます。少人数の席ではひとりだけきちんとしすぎることも、ひとりだけ軽すぎることも目立ちますので、前もって決めておきます。僧侶を招く場合は略喪服以上にしておくのが無難です。
まとめ
- 法事の服装は回を重ねるごとに軽くなります
- 四十九日と一周忌は準喪服にします
- 三回忌以降は略喪服(平服)で構いません
- 「平服」は普段着を指しません
- 記載がなければ準喪服にしておけば外しません
- 靴を脱ぐ場面と正座する場面を見込んでおきます
- 家族のみなら家の中で格を揃えます
参考情報
- 葬儀のデスク「四十九日の服装マナー|正喪服・準喪服・略喪服・平服をそれぞれ解説」
https://sogidesk.com/hoji/manner-hoji/49-colthes - 小さなお葬式「四十九日法要はどのような服装が適切?自宅で行う場合の注意点についてもあわせて解説」
https://www.osohshiki.jp/column/article/651/ - 洋服の青山「三回忌の服装はどうする?季節別のマナーや家族のみで行うケースも紹介」
https://www.y-aoyama.jp/aoyama_journal/houyou-sankaiki/ - 公益財団法人全日本仏教会・大和証券株式会社「仏教に関する実態把握調査(2022年度)」(2022年12月16日〜18日実施・インターネット調査・有効回答6,184サンプル)
https://www.jbf.ne.jp/activity/kouhou/tyousa2022
全日本仏教会・大和証券の調査は、どの法要を営むべきと考えているかを尋ねた意識調査であり、服装の是非を尋ねたものではありません。回を重ねるごとに装いが軽くなること、三回忌以降は施主・遺族も平服でよいとされることは、参照した情報源で共通しています。
本記事で紹介している目安は一般的なものです。地域・宗派・ご家庭の考え方によって異なる場合があります。案内状の記載と、ご家族で揃えることが優先されます。