結論
片付けについては一度だけ申し出て、断られたらそのまま従うというかたちに収めておけば大きく外れません。 実際に手を動かしたかどうかよりも、相手の手が止まっていないかを気にかけていたことが伝わるかどうかで、その場の収まり方が決まります。
手伝うとしても器を流しへ運ぶあたりまでが自然な範囲で、洗い物は頼まれてから引き受けるほうが確実です。 器の置き場所も洗い方も片付ける順番も家ごとに違いますので、よかれと思って動いた分をあとから相手に直させてしまうことがあります。
基本の考え方
食事がひととおり済んで、テーブルの上に空いた取り皿と麦茶のコップだけが残ったところで、そのまま座っていてよいものかどうかで迷います。 相手が立ち上がって器を重ね始めると、こちらも腰を浮かせかけたまま、声をかける間合いだけを探すことになります。
迷いが生まれるのは、黙って座り続けるのも落ち着かない一方で、勝手に立って動き出すのも違う気がするという、二つの居心地の悪さに挟まれるからです。 分かれ目になるのは、こちらから声をかけるかどうかと、返ってきた答えをそのまま受け取るかどうかの二点だけです。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 一度は申し出る | まずはここから始めれば形になります |
| 断られたら従う | 食い下がらずに、そのまま席へ戻ります |
| 頼まれたらする | 言われた手順のとおりに動きます |
| 何も言わない | 座ったままの姿は、相手の印象に残ります |
| 勝手に始める | 相手の段取りが崩れてしまいます |
申し出るという行為そのものに意味がありますので、器を実際に運んだかどうかより、相手の手が止まっていないかを気にかけていたことが伝われば、それで足ります。同じように座っていても、一言そえたあとで座っているのと、最初から座り続けているのとでは、相手に残る時間の色が違ってきます。
どこまで動けばよいのかは、多くの人がはっきりしないまま毎年の帰省をやり過ごしています。 マイナビニュースが2016年7月15日から25日にかけて、子どもを持つ同社会員の女性300名へ行ったインターネット式の意識調査では、義父母の家での手伝いについての答えが三つに割れていました。
気づいたことを手伝うが28.0%、一部の家事を手伝うが27.0%、頼まれたことを手伝うが23.5%で、全く手伝わないという答えも15.0%ありました。 回答が三百名と少なく調査の年も古いうえ、実際の行動ではなく本人の申告による意識調査ではありますが、正解が一つに定まっていないことだけははっきり読み取れます。
どこまで手伝うか
手伝ってよいと言われたあとに、こんどはどこまでやるのかで手が止まってしまい、空いた器を流しへ運んだところで、そのまま蛇口をひねってよいものか、引き出しを開けて布巾を探してよいものかが分かりません。 相手が背中を向けて洗い始めてしまえば、こちらは濡れた器を横に置いて、次の一手を待つだけの立ち位置になります。
線が引かれるのは、器を運ぶところまでと、洗う・しまう・捨てるところから先との間で、前者はどの家でも同じ動きで済みます。 一方で後者は、その家の道具の置き場所や順番に踏み込むことになりますので、こちらの手際がよいほど相手の手間が増えることさえあります。
| 内容 | 目安 |
|---|---|
| 自分の器を流しへ運ぶ | ほとんどの家で受け入れられます |
| テーブルの器を下げる | ひと声かけてから運べば喜ばれます |
| テーブルを拭く | 布巾の置き場所を聞いてから動きます |
| 洗い物 | 頼まれてからにするほうが確実です |
| 食洗機に入れる | 並べ方に決まりのある家があります |
| 器をしまう | どこへ戻すかが分からずに困ります |
| ごみを捨てる | 分別の決まりが地域ごとに違います |
洗う・しまう・捨てるの三つにはその家の手順が入り込みますので、器を運ぶところまでが、どの家でも安全な範囲になります。頼まれない限り手を出さないほうがかえって親切に働きますし、洗い上げた器を戻す場所が分からずに調理台へ積み上げてしまえば、そこから先の片付けは結局のところ相手の仕事として残ります。
運ぶこと自体は歓迎されますが、器を高く重ねて一度に運ぶのだけは控えてください。 重ねた縁が下の器の絵付けに当たって細かい傷がつきますし、漆器の椀は爪が触れただけでも跡が残ります。 数回に分けて往復するか、同じ種類のものだけをそろえて重ねれば、それで十分に足ります。
もう一つ見落とされやすいのが、立っている場所そのものが邪魔になるという点で、来客の多い日の台所では、冷蔵庫と流しのあいだの一メートルほどを何度も人が行き来します。 手伝うつもりでそこに立っていると、相手は通るたびにこちらをよけて回り込むことになりますので、居間へ戻って座っているほうがよほど助かります。
申し出方
同じ気持ちで声をかけても、言い方ひとつで返ってくる答えが変わってきます。 台所へ向かう相手の背中に向かって何かお手伝いをと投げかけると、たいていは大丈夫ですという返事が返ってきて、こちらは中腰のまま話が終わってしまいます。
分かれ目になるのは、相手が答えやすい聞き方になっているかどうかという一点です。 範囲の広い聞き方は断るのも簡単ですが、動作をひとつに絞った聞き方であれば、相手はそれを頼むかどうかだけを決めれば済みます。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 基本の言い方 | 何かお手伝いできることはありますかと尋ねます |
| 具体的に頼む | お皿を下げましょうかと動作を絞って尋ねます |
| 親しい相手 | 手伝うよと短く声をかければ足ります |
| 立ち上がりながら | 自然に動くほうが受け入れられやすくなります |
動作をひとつに絞って尋ねるほうが、相手はずっと答えやすくなります。広く聞かれると断るほうが相手にとっても楽ですし、こちらに何をさせるか考える手間まで押しつけることになりますが、お皿という言葉が先に出ていれば、では、と続けるだけで頼めます。
声をかける時機としては、相手が座っているあいだよりも、立ち上がって器へ手を伸ばした瞬間のほうが通りやすくなります。 こちらも同じ動きの流れに乗れますので、断られたときにも腰を下ろすだけで済み、宙に浮いた手をどうしようかと考えずにすみます。
避けたいのは、台所から水音が聞こえてきてから居間で声を上げることで、相手はいったん手を止めて振り返り、濡れた手のまま返事をすることになります。 同じ一言でも、離れた場所から投げると相手の作業を止めますので、席を立って台所の入り口まで行ってから尋ねるほうが収まります。
引き際
申し出たあとに大丈夫ですと返ってくると、こんどはその答えをどう受け取るかで迷います。 本当に不要なのか、遠慮して言っているだけなのかが分からないまま、中腰の姿勢だけが残ってしまいます。
ここで判断が分かれるのは、相手の遠慮を読みにいくか、言葉のとおりに受け取るかという一点です。 読みにいくと二度目の申し出になりますし、そのまま受け取れば会話が途切れませんので、どちらを選ぶかで残りの時間の流れが変わります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 大丈夫ですと言われた | お礼を言って、そのまま席に戻ります |
| 二度目を言いたくなる | 重ねて言わずに、一度で引き下がります |
| 座っていてくださいと言われた | そのままの意味として受け取ります |
| 相手が台所へ立った | ついて行かずに、居間で待ちます |
| 手持ちぶさたになった | 席で会話を続けるほうが喜ばれます |
座っていてくださいという言葉は、お客様として扱いたいという気持ちの表れでもあります。そこで食い下がると、相手が用意していたもてなしのほうを断ることになりますので、素直に座って話を続けるほうが喜ばれます。断られたこと自体は、こちらの申し出が無駄だったという意味ではありません。
引いたあとにいちばん困るのが、居間に一人で残されて手も口も動かない時間で、テレビの音だけが続くと、やはり立つべきだったのではないかと考え始めます。 そういうときは、台所から戻ってきた相手に料理の作り方を尋ねるなど、座ったままできる受け答えを一つ用意しておくと間が持ちます。
子どもを連れて訪ねている場合は、手伝いに立つより子どもを見ているほうが実際には助かります。 台所の足元に子どもが入り込むと、熱い鍋や割れ物のそばで気を張ることになりますので、居間で相手をしておくだけで相手の手は確実に速くなります。
義実家の場合
同じ申し出でも、配偶者の実家となると急に重さが変わり、台所へ立たなければ気が利かないと思われるのではないか、逆に立てば出しゃばりと見られるのではないかと、両方を同時に心配することになります。 玄関で靴を脱ぐ前から、その日の食卓のあとをどう過ごすかを考えている、という方も少なくありません。
判断を分けるのは、その家が手伝ってほしい家なのか、座っていてほしい家なのかという方針の違いです。 これは礼儀の問題ではなく家ごとの好みですので、こちらが正しく振る舞おうとしても、家の側の方針を知らないままでは合わせようがありません。
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| 初めての訪問 | 申し出て、断られたら座って待ちます |
| 何度も訪ねている | 自然に動くほうが家に馴染みます |
| 手伝ってと言われる家 | やり方を聞きながら手を動かします |
| 座っていてと言う家 | それが方針ですので、座って過ごします |
| 方針が分からない | 配偶者に先に聞いておくのが確実です |
その家のやり方は、配偶者に先に聞いておくのがいちばん確かです。手伝わないと気にする家なのか座っていてほしい家なのかは外からは見えませんし、当日その場で見分けようとしても台所の様子だけでは判断がつきませんが、先に聞いておけば玄関を上がった時点で動き方が決まります。
気が利かないと言われることを恐れて、必要以上に張り切ってしまう方がいます。 手伝いの有無は家ごとの方針の違いであって、点数がつく類のものではありませんので、一度申し出た時点でこちらの姿勢はすでに伝わっています。
それでも足りないと言われるようであれば、その先はこちらだけで抱え込まずに配偶者を通して確かめてください。 同じ台所に立ち続けても、求められているものが料理の腕なのか回数なのか話し相手なのかは分かりませんし、間に入る人がいるほうが早く片がつきます。
義実家を訪問するときのマナーを見る片付けを手伝うかどうかに決まった正解があるわけではなく、同じ動きが歓迎される家と、かえって手間になる家とがあります。 月に一度顔を出している友人の家と、年に二度しか行かない配偶者の実家とでは、こちらが動いてよい範囲もおのずと変わってきます。
どの家でも変わらないのは、一度だけ声をかけて、返ってきた答えをそのまま受け取るという二つだけです。 この二つを守っていれば、器を一枚も運ばなかった日でも失礼にはなりませんし、座って話を続けているほうが相手の手は速く動きます。
よくある質問
片付けは手伝うべきですか?
一度は申し出て、断られたら従うのが基本です。何も言わずに座ったままは印象に残りますが、勝手に始めるのも相手の段取りが崩れます。「申し出る」ことに意味があります。
どこまで手伝えばよいですか?
「運ぶ」までが自然な範囲です。自分の器を流しへ運ぶ、テーブルの器を下げるまでは受け入れられます。洗い物や食洗機は勝手が違うため頼まれてから、器をしまう・ごみを捨てるはしないでください。
器は重ねて運んでよいですか?
重ねると器が傷みます。数回に分けて運ぶか、同じ種類のものだけを重ねてください。漆器や陶器はとくに注意が要ります。
何と言って申し出ますか?
「お皿を下げましょうか」など具体的に言うほうが相手は答えやすくなります。「何かお手伝いを」だと「大丈夫です」と返しやすく、具体的なら「では、お願いします」と言いやすくなります。
断られたらどうしますか?
素直に座って、会話を続けてください。二度は申し出ません。「座っていてください」はお客様として扱いたいという気持ちの表れで、食い下がるとその気持ちを断ることになります。
義実家では手伝うべきですか?
家ごとに方針が違うため、配偶者に事前に聞いておくのがいちばん確実です。「手伝わないと気にする家か、座っていてほしい家か」は大きく違います。一度申し出たなら姿勢は伝わっています。
まとめ
- 片付けは一度だけ申し出ます
- 断られたら食い下がらずに席へ戻ります
- 手伝うのは器を運ぶところまでにします
- 洗い物としまう作業は頼まれてから引き受けます
- 器は重ねずに、数回に分けて運びます
- 申し出るときは動作をひとつに絞って尋ねます
- 二度目の申し出はしません
- 義実家の方針は配偶者に先に聞いておきます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - マイナビニュース「夫の実家へ帰省、嫁として手伝いはどの程度すればいい?」
https://news.mynavi.jp/article/20160812-a078/
本文で引用したマイナビニュースの調査は、子どもを持つ同社会員の女性300名に2016年7月に行われたインターネット式のアンケートで、回答数が少なく調査年も古いうえ、実際の行動ではなく本人の申告による意識調査です。手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。