結論
葬儀に参列できなかった場合でも、香典は後日に渡して構いませんので、 弔問して手渡すか、現金書留で送るかのどちらかを選ぶことになります。 普通郵便で現金は送れません(郵便法で禁止されています)ので、 ポストに投函して済ませる形は取れません。
気をつけたいのは表書きのほうで、 四十九日を過ぎると「御霊前」ではなく「御仏前」になります (浄土真宗は最初から御仏前)。 包む額そのものは、参列した場合と同じで差し支えありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時期 | 葬儀後1週間から四十九日までが、もっとも適しています |
| 渡し方 | 弔問して手渡すか、現金書留で送ります |
| 郵送 | 普通郵便では送れませんので、郵便局の窓口で出します |
| 表書き(四十九日まで) | 仏式は「御霊前」とし、浄土真宗だけ「御仏前」にします |
| 表書き(四十九日以降) | 宗派を問わず「御仏前」に切り替えます |
| 服装 | 喪服は着ず、地味な色の平服で伺います |
| 滞在時間 | 長居せず、30分程度を目安に切り上げます |
香典を辞退されている場合は包みません。無理に渡すと香典返しの手配という負担をかけることになりますので、お悔やみの言葉やお供えの花にとどめておくほうが、遺族が自分たちで決めた方針をそのまま通せます。
いつ渡すか
訃報を後から知って香典を用意したあと、次に迷うのが伺う日のほうです。 早く渡さなければ失礼にあたる気がする一方で、いま連絡を入れたら邪魔になるのではないかとも思えて、 打ちかけたまま送れずにいる短い連絡を、消しては書き直すことになります。
判断の軸になるのは、遺族がまだ動いている最中かどうかという一点だけです。 葬儀の直後は各種の手続きと来客の対応が重なっていますので、 そこを外して日を選ぶ形になりますし、時期が決まれば渡し方も自然に絞られます。
| 時期 | 対応 |
|---|---|
| 葬儀の直後〜数日 | もっとも慌ただしい時期なので、ここは避けておきます |
| 葬儀後1週間〜四十九日まで | 手続きが一段落するころで、もっとも適しています |
| 四十九日以降 | 渡して構いませんが、表書きが「御仏前」に変わります |
| 一周忌以降 | 香典としてではなく、お供えとして持っていきます |
少し置いてから伺うほうが、かえって迷惑になりません。葬儀の直後は役所や金融機関の手続きが重なるうえに弔問客の応対も続きますので、早く渡そうとして駆けつけると、遺族はその手を止めてこちらに向き直ることになります。
葬儀に間に合わなかったという立場そのものは、少しも珍しいものではありません。 itowa(旧・Swell)が2022年8月25日から28日にかけて全国の20〜69歳を対象に実施し、 1,023人から回答を得たインターネット調査では、 お世話になった方の葬儀に参加できなかったことがある人が58.4パーセントにのぼり、 そのうち葬儀が終わってから知った人が18.6パーセントを占めていました。
同じ調査では、参列できなかったときに 「故人に対して何もできなかった」と答えた人が44.7パーセント、 「参列できなかったら後悔すると思う」と答えた人が78.1パーセントでした。 オンラインの香典サービスを手がける事業者の自社調査で、対象も20〜69歳に限られますが、 後日に渡すかどうかで迷う人が多いのは、 参列できなかった経験そのものが珍しくないからだ、という背景は読み取れます。
渡し方は2つ
日の見当がついたあとに残るのが、直接伺うのか送るのかという選択です。 近所に住んでいるなら伺えばよいと考えがちですが、遺族が高齢だったり、 家に人が入れ替わり立ち替わり来ている時期だったりすると、 伺うこと自体がもう一つの応対を増やすことになります。
軸になるのは、相手に応対の時間を取らせてよい間柄かどうかという点です。 玄関先で座敷へ通され、お茶の用意まで始まってしまう関係であれば、 送るほうがかえって気持ちだけを届けられます。
| 方法 | 向いている場合 |
|---|---|
| 弔問して手渡し | 近くに住んでいて、遺族と面識がある場合に向きます |
| 現金書留 | 遠方の場合や、遺族に負担をかけたくない場合に向きます |
| 弔問の前にすること | 必ず事前に連絡し、都合のよい日時を伺っておきます |
| 現金書留で送るとき | 香典袋ごと専用の封筒に入れ、郵便局の窓口で出します |
弔問は必ず事前に連絡してから伺います。突然訪ねると、遺族はその場で座敷を片づけてお茶を出す準備をすることになりますので、日時を先に決めておくほうが、迎える側も気持ちの支度をしたうえで待つことができます。
現金書留は郵便局の窓口でしか扱えませんので、 夜のうちにポストへ投函して済ませることはできません。 香典袋には通常どおり表書きと名前を書いたうえで、 袋ごと専用の封筒に入れる形になりますから、現金だけを封筒に入れて送ることもありません。
封筒にはお悔やみの手紙を同封しておきます。 葬儀に伺えなかったことへの一言と、お悔やみの言葉が入っていれば長さは要りませんし、 香典袋だけが届くよりも、 便箋が一枚あるほうが、受け取った側にも事情がそのまま伝わります。
表書きが変わる
後日に渡すと決めたあと、いちばん間違えやすいのが表に書く言葉のほうです。 葬儀のときに使うつもりで買った袋が引き出しに残っていることも多く、 「御霊前」と刷られた袋を出したところで、 いまの時期に合うのかどうかが分からなくなります。
分かれ目は四十九日という一日で、 この日を境に故人の呼び方が変わりますので、表書きもそれに合わせて変わります。 さらに、仏式以外であれば言葉そのものが別のものになりますので、 宗教まで含めて確かめておくことになります。
| 時期・宗派 | 表書き |
|---|---|
| 四十九日まで(浄土真宗以外の仏式) | 「御霊前」と書いて用意します |
| 四十九日以降(仏式) | 「御仏前」へ書き換えて持参します |
| 浄土真宗(時期を問わず) | 最初から「御仏前」を使います |
| 宗派が分からないとき | 「御香典」にすれば、どの仏式でも通ります |
| 神式 | 「御玉串料」または「御榊料」と書きます |
| キリスト教式 | 「お花料」とし、仏式の言葉は使いません |
四十九日で表書きが変わるのは、この日に故人が仏になるとされるためです。浄土真宗は亡くなるとすぐ仏になるという考え方を取りますので最初から「御仏前」になりますし、宗派を確かめられないまま用意するときは、「御香典」にしておけばどちらにも当たりません。
墨の濃さのほうも、時期によって扱いが変わります。 通夜や葬儀のころは薄墨で書きますが、四十九日以降は濃墨で構いませんので、 後日に渡す場面では、机の引き出しにある筆ペンをそのまま使えることのほうが多くなります。
迷いやすいのは、四十九日の日付そのものを知らない場合です。 人づてに訃報を聞いただけだと亡くなった日がはっきりしませんので、 売り場で二種類の袋を手に取ったまま決めかねることになりますが、 そのときは「御香典」を選んでおけば、どちらの時期でも書き直さずに済みます。
弔問するときの作法
日時が決まって当日が近づくと、こんどは何を着ていくかで手が止まります。 喪服を出しておけば間違いがないように思えますが、後日の弔問では、 クローゼットの奥から出した礼服のほうがかえって重すぎることになります。
軸になるのは、その場をどれだけ静かに済ませられるかという一点で、 服装も滞在時間も持ち物も、迎える側の手間を増やさないほうへ寄せていけば、 細かい作法をひとつずつ覚えていなくても形になります。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 訪ねる前 | 事前に連絡し、都合のよい日時を伺っておきます |
| 服装 | 喪服は着ず、黒や紺、グレーの平服で伺います |
| 滞在時間 | 長居せず、30分程度を目安に切り上げます |
| 香典の持ち方 | 袱紗に包んで持参し、その場で取り出して渡します |
| お供え | お菓子や花を持参することもあり、必須ではありません |
喪服で訪ねると、遺族に改まった対応をさせることになります。玄関先で相手が自分の服装を気にしたり、座敷を整え直したりする流れが生まれますので、派手な装飾や明るい色を避けた地味な服であれば、それだけで弔意は十分に伝わります。
30分という目安は、話を切り上げにくいときの逃げ道にもなります。 遺族の側から「もう少し」と言われれば別ですが、 湯呑みが空になったあたりで一度腰を上げる形にしておけば、 こちらから区切りをつけられますので、相手も引き止め方に気を遣わずに済みます。
持っていくものを増やす必要もありません。 香典を袱紗に包んで持ち、お供えをどうするかは相手の様子を見て決めれば足りますし、 玄関先で紙袋がいくつも下がっているより、 手が空いているほうが、上がり口での所作も落ち着きます。
気をつけたいこと
香典を用意して伺う段になってから、案内に「香典は辞退申し上げます」と書かれていたことを 思い出す、ということが起こります。 すでに袋に名前まで書いたあとだと、そのまま持っていってよいのかどうかで、 玄関を出る直前に手が止まります。
ここでの軸は、渡すことがそのまま相手の助けになるとはかぎらない、という点にあります。 香典には香典返しがついて回りますので、 渡した先で何が起きるかまで見たうえで決めることになります。
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 「香典は辞退申し上げます」とある | 包まずに伺い、お悔やみの言葉だけを伝えます |
| それでも何か渡したい | お供えの花にとどめておく方法があります |
| 金額をどうするか | 参列した場合と同額で差し支えありません |
| 祖父母 | 20代であれば1万円を目安にして包みます |
| 兄弟姉妹 | 3〜5万円を目安に、親族のあいだで揃えます |
| 友人 | 5千〜1万円の範囲で決めておけば足ります |
| 四十九日を過ぎてから渡す | 「お返しはご無用に」と手紙に添える方法があります |
辞退している遺族に無理に渡すと、香典返しの手配という負担をかけることになります。四十九日を過ぎてから届いた香典は、まとめて手配した分とは別に一件だけ改めて用意することになりますので、渡さないでおくことがこの場面では失礼にあたりません。
「お返しはご無用に」と一行添えておくだけでも、受け取った側の判断はずいぶん楽になります。 手紙の終わりに書いておけば、遺族は改めて品物を選ぶかどうかをその場で決められますし、 こちらから電話をかけて言い直す手間も生じません。
それでも先方が香典返しを送ってきたときは、そのまま受け取っておきます。 断ると今度は返送のやり取りが生まれますので、 届いた品を受け取って短くお礼を伝えるところで止めておくほうが、 渡した側にも受け取った側にも、静かに収まります。
後日に香典を渡す方法に唯一の正解があるわけではなく、伺えるだけの距離と間柄があるかどうかと、 遺族が応対できる時期かどうかの二つを見て、手渡しと現金書留のどちらかを選べば足ります。 線香をあげて短く言葉を交わすのでも、手紙を添えて送るのでも、 届く気持ちに差があるわけではありません。
どちらを選んでも変わらないのは、葬儀の直後を外して日を決めることと、 辞退が伝えられていればそれに従うことの二つだけで、 この二つを守っていれば、表書きの選び方をその場で思い出せなくても失礼にはなりません。 先に連絡を入れておくほうが、迎える側も落ち着いて待つことができます。
よくある質問
葬儀に参列できませんでした。香典を後日渡してもよいですか?
問題ありません。弔問して手渡すか、現金書留で送ります。葬儀の直後は各種手続きと来客の対応でご遺族に余裕がありませんので、1週間ほど置いてから四十九日までのあいだが、もっとも適した時期になります。
香典を郵送してもよいですか?
現金書留であれば問題ありません。普通郵便で現金を送ることは法律で認められていませんし、現金書留は郵便局の窓口で扱いますので、ポストに投函することもできません。香典袋に通常どおり表書きと名前を書き、お悔やみの手紙を同封します。
四十九日を過ぎたら表書きは変わりますか?
変わります。四十九日までは「御霊前」、以降は「御仏前」で、この日に故人が仏になるとされるためです。浄土真宗は亡くなるとすぐ仏になるという考え方なので時期を問わず「御仏前」ですし、宗派が分からなければ「御香典」がどの仏式でも使えます。
後日の弔問は喪服で行きますか?
喪服は着ません。喪服で訪ねるとご遺族に改まった対応をさせることになりますので、黒や紺、グレーなど地味な色の平服が適します。派手な装飾や明るい色を避けておけば、それで十分です。
弔問するとき気をつけることは?
事前に連絡して都合のよい日時を伺います。突然訪ねるとご遺族が対応の準備をすることになるためです。長居せず30分程度を目安に切り上げますし、香典は袱紗に包んで持参して、その場で取り出します。
香典を辞退されている場合はどうしますか?
包みません。無理に渡すと香典返しの手配という負担をかけることになりますので、お悔やみの言葉やお供えの花にとどめる方法があります。渡さないでおくことが、この場面では失礼にあたりません。
まとめ
- 参列できなかった場合でも後日に渡して構いません
- 葬儀後1週間から四十九日までがもっとも適しています
- 葬儀の直後は遺族の手が空きませんので、日を置きます
- 郵送は現金書留にかぎられ、普通郵便では送れません
- 四十九日を境に「御霊前」から「御仏前」へ変わります
- 浄土真宗は最初から「御仏前」を使います
- 後日の弔問では喪服を着ず、地味な平服で伺います
- 辞退されているときは包みません
参考情報
- リンベル ギフトコンシェルジュ「贈り物のマナー」
https://www.ringbell.co.jp/giftconcierge/1939 - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - 株式会社itowa(旧・株式会社Swell)「葬儀のデジタル化に関する調査」(2022年8月25日〜28日実施・インターネット調査・有効回答1,023人)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000106238.html
itowaの調査はオンライン香典サービスを提供する事業者の自社調査で、対象も20〜69歳に限られます。現金の郵送が現金書留に限られる点は、郵便局の案内に基づいています。四十九日を境に表書きが変わる点、浄土真宗の扱いは、参照した情報源で共通しています。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・宗派・ご家庭の慣習によって差が大きい分野です。判断に迷う場合は、ご親族や葬儀社にご確認ください。