結論

就職祝いに内祝いという習慣はなく、品物でのお返しは原則として用意しなくて構いませんが、 代わりに必要なのがお礼の連絡で、 受け取ってから2〜3日以内に電話かお礼状で伝えます。

贈り物をするなら初任給か初めての賞与が出てからにするほうがよく、 入社前に返すと支度で物入りな時期に無理をしたと受け取られますし、 お礼を伝えるのも親ではなく、働き始めた本人の役目になります。

お返しがいらないとされる理由

就職祝いを受け取ると、何かお返しをしないと落ち着かないのに、 結婚や出産のような「内祝い」という言葉が就職には見当たらず、 何を用意すればよいのか分からないまま日が過ぎていきます。

見当たらないのは当然で、就職祝いには内祝いの慣習がありません。 これは省略してよいという意味ではなく、 そもそも返礼を前提としない贈り物として扱われているためです。

他のお祝いとの違い就職祝いの扱い
結婚祝い半返しの内祝いを、挙式後1か月ほどで贈ります
出産祝い同じく内祝いを、生後1〜2か月のころに贈ります
新築祝い内祝いのほか、新居へ招く形で返すこともあります
就職祝い内祝いの慣習がなく、返礼は求められません
入学祝い同じく不要とされ、子どもからのお礼で足ります
成人祝い不要ですが、本人が礼を述べるところは変わりません

就職祝いと入学祝いが返礼不要とされるのは、受け取る側にまだ収入が無いためです。お祝いを新生活の支度に使ってほしいという意味合いがあり、そこから半分を返させては趣旨が逆になります。とくに祖父母や叔父叔母からのお祝いは、返礼を期待して渡されるものではありません。

入学祝いと違うのはお礼を述べるのが親ではなく本人になる点で、 これまでは親が代わりに連絡していた家でも、 働き始める以上は本人が自分で伝える場面になります。

親としても、ここは代わりに済ませないほうがよい場面で、 本人が電話をかけることそのものが、贈った側にとっては 成長を確かめる機会になっています。

内祝いとお返しの違いを見る

まず必要なのはお礼の連絡

返礼が要らないと分かると今度は本当に何もしなくてよいのかと不安になりますが、 省いてよいのは品物のほうだけで、 お礼の連絡だけは必ず必要になります。

迷いどころは手段と早さで、 電話をかけるのが気後れするからとメッセージで済ませてよいのか、 いつまでに伝えれば遅れたことにならないのかがはっきりしません。

手段向く相手と場面
電話祖父母や親戚には、声で伝えるのがいちばん届きます
お礼状(手紙)遠方の目上の方には、これが最も丁寧な形です
電話とお礼状の両方高額をいただいた場合は、二つ重ねても構いません
メール目上の方には、それだけで済ませないほうが無難です
LINEなどのメッセージごく親しい相手に限ります
伝える時期受け取ってから2〜3日のうちに済ませます

目上の方へメッセージだけで済ませると、礼を欠いたと受け取る人がいます。祖父母の世代にはとくにその傾向があり、届いたことの報告としては足りても、お礼としては軽く見えます。まず電話をかけ、そのうえで手紙を出せば、手段で迷うことはありません。

現金書留や宅配便で届いた場合は、 受け取ったその日のうちに一報を入れるほうが親切で、 送った側は届いたかどうかを気にしていますから、 内容への礼より先に「届きました」と伝わることに意味があります。

伝える中身は届いたこと、うれしかったこと、これからどうするかの三つで足り、 それ以上に長く書こうとすると、かえって文面が定型的になります。

お礼をいつまでに伝えるかを見る

そのまま使える文例

いざ電話をかけようとすると、最初の一言が出てこないもので、 「ありがとうございます」の次に何を言えばよいのか分からず、 受話器を持ったまま止まってしまいます。

詰まるのは中身を考えているからで、 順番だけ決めておけば、その場で組み立てずに済みます。 お礼を述べ、何に使うかを伝え、近況を一言添えるという流れです。

電話で伝えるとき(祖父母・親戚へ)

「もしもし、〇〇です。このたびは就職のお祝いをいただいて本当にありがとうございました、おかげでスーツと鞄をそろえることができました。四月から〇〇で働くことになりましたので、落ち着いたらまた顔を出しますし、おじいちゃんもどうか体に気をつけてください。」

何に使ったかを一つ言えるだけで、文面はぐっと具体的になります。「大切に使わせていただきます」だけで終えてしまうと、どの相手にも同じことを言っている形になり、相手の顔が浮かばない挨拶として流れてしまいます。

お礼状に書くとき(遠方の目上の方へ)

「拝啓 春暖の候、皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。このたびは就職のお祝いを頂戴し、誠にありがとうございました。いただいたお祝いで、ありがたく通勤用の鞄を求めさせていただきました。」

「四月より〇〇株式会社に勤めることとなり、まだ覚えることばかりですが、一日も早く仕事を身につけられるよう努めてまいります。まずは略儀ながら、書中をもちましてお礼申し上げます。 敬具」

就職先の名前を書いておくと、報告としての役目も果たします。お祝いを贈った側がいちばん知りたいのは金額の使い道ではなく、どこで働くことになったのかという一点だからです。

文面で気をつけたいのが「頑張ります」で締めないことで、 それだけでは何をどう頑張るのかが伝わらず、 定型の挨拶として流れてしまいます。

代わりに覚えることが多い、通勤に慣れてきたといった 具体的な様子を一行入れておくと、受け取った側は本人の暮らしを思い浮かべられますし、 次に会ったときの話も続きます。

お礼状の書き方と文例を見る

初任給で贈る場合

お礼を伝えたあとも言葉だけでは足りない気がするという人は多く、 とくに祖父母から高額をいただいた場合は、 何か形にしたいという気持ちが残ります。

そこで問題になるのがいつ贈るかで、 入社前や入社直後に用意すると、 支度で物入りな時期に無理をしたと受け取られ、かえって心配をかけます。

時期受け取られ方
入社前支度の費用を削ったと思われ、心配をかけます
入社直後(四月)まだ収入が無く、無理をした形に見えます
初任給が出たあと働き始めた報告を兼ねられ、いちばん収まります
初めての賞与のあと余裕をもって選べるため、品も落ち着きます
お盆や年末に帰省したとき手渡しできるうえ、時期としても自然です
一年以上たってから就職祝いへの返礼としては、間が空きすぎます

初任給や初めての賞与のあとにするのは、金額の問題ではなく報告の意味があるためです。「無事に働いて、給料をいただけるようになりました」という知らせを兼ねられるので、贈った側にとってはお返しの品そのものより、そちらのほうが受け取りたい報せになります。

金額の目安はいただいた額の三分の一から半分とされますが、 就職祝いにはもともと返礼の決まりがありませんから、 この数字にきっちり合わせる必要はありません。

むしろ初任給で買える範囲に収めるほうが意味が通り、 食事に招く、菓子を持って顔を出す、花を贈るといった形であれば、 受け取る側も気兼ねなく受け取れます。

「初任給で」と伝えると、金額の話が消えます

同じ品でも、「初任給が出たので」と一言添えるかどうかで受け取られ方が変わり、お返しとしてではなく、働き始めたという報告として届くようになります。

いただいた額との釣り合いを気にする必要も無くなりますし、贈った側にとっては、品そのものより、働いて得たお金で選んだというその一言のほうが長く記憶に残ります。

高額をいただいた場合

祖父母から十万円といったまとまった額を受け取ると、 言葉だけで済ませるわけにはいかないと感じますし、 かといって初任給で半分を返すことはできません。

ここで無理に金額をそろえようとすると、 返された側が困ることになります。 働き始めたばかりの相手から高額の品が届けば、生活を案じるのが自然です。

いただいた額返し方
一万円までお礼の連絡だけで足ります
三万円ほど初任給のあとに、菓子や花を持って顔を出します
五万円ほど食事に招くか、記念になる品を一つ選びます
十万円以上金額はそろえず、手紙と品を一つ添えます
親からの場合返礼は要りません。初任給で食事に招けば十分です
複数の親戚から届いた返し方をそろえておくと、後から比べられません

高額なほど、金額で返そうとしないほうが収まり、十万円に対して五万円の品を返せば、そのお金がどこから出たのかを考えさせることになります。手紙で伝える中身のほうに重さを置き、品は形として添える程度にとどめてください。

複数の親戚から受け取ったときは、 返し方をそろえておくほうが後々ややこしくなりません。 一人にだけ食事の席を設けると、他の人との差が見えてしまいます。

親からのお祝いに返礼は要りませんが、 初任給で食事に招くという形は広く行われており、 品を選ぶより、その場で直接礼を言えるぶん伝わります。

内祝いをいくら返すかの目安を見る

贈るときの表書き

初任給で品を贈ろうとしたとき、のし紙に何と書くかで手が止まります。 就職祝いには内祝いの慣習が無いため、 「内祝」と書いてよいのかどうかがはっきりしません。

決め手は返礼として渡すのか、贈り物として渡すのかで、 返礼の色を出すなら内祝、 報告や感謝として渡すなら御礼のほうが実際に合います。

表書き使う場面
御礼もっとも使いやすく、どの相手にも通ります
初任給報告の意味がそのまま伝わる書き方です
就職内祝返礼として渡すなら、この形になります
感謝くだけた印象になるため、親しい相手に限ります
水引紅白の蝶結びを使います。お祝いと同じです
名前本人の名前を書きます。親の名前ではありません

お返しの名前は必ず本人のものにして、親の名前では出さないでください。入学祝いのお返しでは親の名前で出す家もありますが、就職祝いのお礼は本人が返すものです。本人の名前で届くこと自体が、社会人になったという報告になります。

掛け方は手渡しなら外のし、送るなら内のしで、 お祝いを贈るときと同じ考え方をそのまま使えますし、 迷ったときは店で「手渡しです」と伝えれば決めてもらえます。

食事に招く形であればのしは要らず、 その場で「初任給が出たので」と伝えるだけで足ります。 形を整えることより、その一言のほうがよほど役目を果たします。

目的別の表書き一覧を見る

お礼が遅れてしまったとき

入社前後は引っ越しや研修が重なり、 お礼の電話をしないまま何週間も過ぎてしまうことがあります。 日が経つほど連絡しにくくなり、そのまま止まってしまいがちです。

遅れたときに考えるべきなのは詫び方の長さではなく今すぐ伝えるかどうかで、 連絡が無いまま時間が過ぎることのほうが、 遅れそのものよりも相手を落ち着かなくさせます。

遅れた幅伝え方
一週間ほど詫びずに、そのままお礼を伝えれば足ります
二〜三週間「遅くなりました」と一言添えて連絡します
一か月以上電話ではなく、手紙のほうが落ち着いて伝わります
半年以上帰省の機会に、直接顔を見せて伝えます
届いたことも伝えていない何より先に、受け取った旨を知らせます
言い出せないまま止まっている理由を並べず、お礼から先に述べます

詫びから入ると、相手が「気にしなくていい」と言う側に回ります。お礼を先に述べて、そのあとに「連絡が遅くなってしまいました」と短く添える順にすると、受け取る側の負担になりません。遅れた理由を細かく説明する必要もありません。

一か月以上たっている場合は手紙のほうが扱いやすく、 電話だと最初の一言で詰まりますが、 書くのであれば順番を整えてから出せます。

半年以上が過ぎているなら、 帰省の機会にあわせて直接伝えるほうが自然に収まり、 そのときに初任給で選んだ品を持って行けば、遅れた分をまとめて済ませられます。

お礼が遅れたときの伝え方を見る

就職祝いのお返しに決まった形があるわけではなく、 内祝いの慣習が無い以上、品物を用意しなくても失礼にはなりませんし、 何かしたいのであれば初任給や初めての賞与のあとに、 自分の収入で無理なく選べる範囲のものを贈れば、それで十分に通ります。 金額をそろえようとするほど、贈った側は落ち着かなくなります。

どの相手でも変わらないのは、 受け取ってから二、三日のうちに本人が自分の言葉でお礼を伝えるという一点だけで、 そこさえできていれば、返礼の品が無くても足ります。 働き始めた本人から連絡が来ること自体が、贈った側のいちばん受け取りたい報せです。

よくある質問

就職祝いにお返しは必要ですか?

内祝いの慣習がないため、品物でのお返しは原則として要りません。お祝いを新生活の支度に使ってほしいという意味合いがあり、まだ収入の無い相手から半分を返させては趣旨が逆になります。ただしお礼の連絡だけは必ず必要です。

お礼はいつまでに伝えますか?

受け取ってから2〜3日のうちです。現金書留や宅配便で届いた場合は、その日のうちに「届きました」と一報を入れるほうが親切で、送った側は届いたかどうかを気にしています。

お礼はLINEやメールで済ませてもいいですか?

ごく親しい相手に限ります。目上の方へメッセージだけで済ませると礼を欠いたと受け取る人がおり、祖父母の世代にはとくにその傾向があります。まず電話をかけ、遠方の方にはそのうえで手紙を出せば迷いません。

お礼は親が代わりに伝えてもいいですか?

本人が伝えてください。入学祝いまでは親が代わりに連絡していた家でも、働き始める以上は本人の役目になります。本人が電話をかけること自体が、贈った側にとっては成長を確かめる機会になっています。

お返しを贈るならいつがいいですか?

初任給か初めての賞与が出たあとです。入社前や入社直後に用意すると、支度で物入りな時期に無理をしたと受け取られ、かえって心配をかけます。初任給のあとなら「無事に働いています」という報告を兼ねられます。

高額をいただいた場合はどうしますか?

金額をそろえようとしないでください。十万円に対して五万円の品を返せば、そのお金がどこから出たのかを考えさせることになります。手紙で伝える中身のほうに重さを置き、品は形として一つ添える程度にとどめます。

お返しの表書きは何と書きますか?

「御礼」または「初任給」です。返礼の色を出すなら「就職内祝」も使えます。水引は紅白の蝶結びで、名前は本人の名前を書いてください。親の名前で出すと、社会人になったという報告になりません。

お礼が一か月以上遅れてしまいました。

今すぐ伝えてください。連絡が無いまま時間が過ぎるほうが、遅れそのものより相手を落ち着かなくさせます。一か月以上たっているなら電話より手紙のほうが順番を整えて書けますし、お礼を先に述べてから「遅くなりました」と短く添える順にすると、相手の負担になりません。

まとめ

  • 就職祝いに内祝いの慣習はなく、お返しは原則要りません
  • お礼の連絡は、2〜3日のうちに済ませます
  • 目上の方へは、電話かお礼状で伝えます
  • お礼は親ではなく、本人が自分で伝えます
  • 贈るなら初任給か初めての賞与が出てからにします
  • 高額をいただいても、金額はそろえません
  • 表書きは「御礼」か「初任給」、名前は本人にします
  • 遅れたときは、詫びより先にお礼を述べます

参考情報

  1. リンベル ギフトコンシェルジュ「就職祝いのお返しは必要?不要?贈る時期やマナーを押さえよう」
    https://www.ringbell.co.jp/giftconcierge/3756
  2. 三越伊勢丹「喜ばれる就職祝いガイド。親や知人から贈る際の相場やマナー、おすすめギフト」
    https://www.mistore.jp/gifts/newjob/newjob_manner
  3. 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
    https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx

お返しの考え方と時期は、上記各社の解説をまとめたものです。就職祝いに「内祝い」という決まった慣習はなく、返すかどうかは家ごとの付き合い方によって変わります。(最終確認:2026年8月)

本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・ご家庭の慣習によって考え方が異なる場合があります。同じ家のなかで前に贈った例があるときは、そちらに合わせるほうが角が立ちません。