結論
服装・手土産・挨拶の3点さえ押さえておけば、 初めての義実家訪問で行き詰まる場面はほとんど出てきませんので、 そのほかの細かい作法まで前の晩に覚え込もうとしなくてかまいません。
いちばん大切なのは配偶者との事前の打ち合わせで、 家族構成と呼び方、避けたい話題の三つを聞いておくだけでも、 インターホンを押すときの落ち着き方がまるで変わってきます。
事前に聞いておくこと
初めて義実家へ向かう当日は、玄関で出迎えてくれた方をどう呼べばよいのか、 同居している家族は何人なのかといったことが、インターホンを押す直前になって急に気になり始めます。 どれも玄関先で「お名前は」と尋ねるわけにはいかない中身ですので、 分からないまま座敷へ通されて、そのまま会話が進んでいくことになります。
判断を分けているのは、着いてからでも間に合うことと、 着いてしまったら聞けなくなることの区別で、呼び方や避けたい話題は後者にあたります。 配偶者にとっては当たり前すぎて説明の要ると思えない事柄ほど抜け落ちますので、 こちらから項目を挙げて尋ねるほうが確かです。
| 聞くこと | なぜ聞いておくか |
|---|---|
| 家族構成と名前 | きょうだいや同居している方まで含めて、当日に慌てずに済みます |
| 呼び方 | 「お父さん」か「〇〇さん」かは家によって違います |
| 避けたい話題 | 病気や仕事、親族の事情など、触れずにおく話が分かります |
| 好き嫌い・アレルギー | 手土産を選ぶときと、食事の場面の両方で効いてきます |
| 家風・宗教 | 仏壇に手を合わせる場面があるかどうかが分かります |
| 滞在時間の目安 | 帰る時間をあらかじめ決めておけます |
当日の案内役は、隣にいる配偶者に引き受けてもらってください。紹介から話題の橋渡し、そろそろ帰ろうかという合図までを任せてしまえば、こちらは目の前の受け答えだけに集中できます。一人で対応しようとするほど言葉に詰まりますし、横で見ている配偶者のほうも落ち着かなくなります。
実際にいちばん困るのが呼び方で、「お義母さん」と呼ぶつもりで出かけたのに、 その家では下の名前にさん付けで呼ぶのが普通だった、という食い違いが起こります。 玄関で一度言い間違えると、そのあと口を開くたびに引っかかってきますので、 前の晩にひとこと確かめておくだけで済みます。
好き嫌いやアレルギーも同じで、選んでいった菓子が食べられないものだった場合、 箱を開けた場に気まずさが残ります。 仏壇のある家であれば線香をあげる場面が出てきますので、 その家の作法まで含めて配偶者に聞いておけば、座敷へ通されてから手が止まりません。
服装
前の晩に衣装棚の前に立って、どこまで改まった格好で行くべきかを決めかね、 スーツを出したりしまったりすることになります。 きちんとして見せたい気持ちと、堅すぎて浮きたくない気持ちが同じくらいの重さで引き合いますし、 着いてから直せるものでもありませんので、決めるのは家を出る前しかありません。
判断を分けているのは格式の高さではなく、 玄関で靴を脱いだあとに何が見えるかという点で、 上がってからのほうが人の目に触れる時間は長くなります。 コートも鞄も玄関で預けてしまいますので、そのあとに残るものだけを整えておけば足ります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 全体 | きれいめの普段着にし、襟のあるシャツやニットを選びます |
| ボトムス | きれいめのパンツかスカートであれば、十分に整って見えます |
| 避けるもの | 露出の多いもの、派手な柄、傷んだデニムは外します |
| 足元 | 素足は避け、靴下かストッキングを履いていきます |
| 靴 | 脱ぎ履きしやすいものを選び、汚れを落としておきます |
| 髪・爪 | 整えておき、強く香る香水はつけずに出かけます |
スーツや礼服まで着ていくと、こちらが改まりすぎたぶん、迎える側も普段着では失礼だったかと気を遣うことになります。「近所に出かける服装より少し上」を目安にしておけば、その日に居間で写真を撮られても浮きませんし、畳に座っても動きにくくなりません。
和室に通される家は今も多く、座布団をすすめられて畳に膝をつく場面が出てきますので、 素足のまま上がるのはやはり避けられます。 夏場にサンダルで歩いてきた日であっても、靴下かストッキングだけは鞄に入れて持っていきます。
その靴下は、玄関で靴を脱いだ瞬間に相手の目へ入りますので、 穴やほつれがないかを家を出る前に確かめておきます。 髪や爪を整えておくのも同じ理由で、卓を挟んで向かい合えば、手元も顔まわりも自然と目に入ります。
手土産
手土産は駅の商業施設で買っていくことが多く、菓子の売り場の前で、 どのくらいの値段のものにすべきか、日持ちのするものを選ぶべきかで足が止まります。 初回だからこそ丁寧にしたいという気持ちと、重くしすぎたくないという気持ちが同時に働きます。
選ぶときの軸になるのは相手がその場で扱いやすいかどうかで、 包みを開けてすぐ皿へ移せるものであれば、迎える側の手間になりません。 表書きを入れるかどうかも、この訪問に「はじめてのご挨拶」という目的があることから決まってきます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 金額 | 3千〜5千円にし、初回はやや丁寧にします |
| 品物 | 個包装の菓子が無難で、その場で出していただけます |
| のし | 付けると丁寧になり、表書きは「御挨拶」か無地にします |
| 名前 | 夫婦の連名にするか、自分の姓だけを書きます |
| 好き嫌い | 事前に確認しておき、食べられないものを外します |
| 買う場所 | 相手の家の近くでは買わず、出かける前に用意します |
のしは初回に限って付けても構わないもので、普段の訪問なら要りませんが、初めてのあいさつには目的がありますので、「御挨拶」の表書きで外のしにすると形が整います。付けなかったからといって失礼になるわけでもありませんので、その家の家風を配偶者に聞いてから決めてください。
個包装の菓子をすすめるのは、その日の茶菓としてそのまま皿へ出せるからで、 切り分けの要る生菓子だと、相手が台所に立つ時間のほうが長くなります。 来客が何人になるか読めない初回では、数を分けやすいもののほうが収まりもよくなります。
相手の家の近くにある店で買うのは避けるもので、包み紙を見ればどこで求めたかが分かりますし、 来る途中で思いついたように見えてしまいます。 金額のほうも3千〜5千円から上げすぎないほうがよく、 初対面からお返しを考えさせる額にすると、かえって気を遣わせます。
のしの要否と表書きを見る当日の流れ
当日は、何時に着けばよいのか、コートはどこで脱ぐのか、手土産をどの時点で出すのかといった段取りが、 順番に迷いどころとして出てきます。 しかもそのほとんどが、玄関の戸を開けてから座敷に腰を下ろすまでの数分間に集中します。
迷いを減らしてくれるのは一つひとつの作法よりも順番のほうで、 先に流れを頭へ入れておけば、次に何をするかを考えながら受け答えせずに済みます。 手土産をどの時点で差し出すのかという迷いも、この順番の中に置いてしまえば自然に決まってきます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 時間ちょうどに着き、早すぎる到着は避けます |
| 2 | 玄関の前でコートを脱ぎ、腕にかけておきます |
| 3 | 玄関で「はじめまして。〇〇と申します」と名乗ります |
| 4 | 靴を脱ぎ、向きを揃えて端に寄せておきます |
| 5 | すすめられた席に腰を下ろします |
| 6 | 改めてあいさつをして、手土産をお渡しします |
| 7 | 仏壇があれば手を合わせさせていただきます |
| 8 | 出されたお茶をいただき、話をうかがいます |
| 9 | 2〜3時間で切り上げ、長居はしません |
仏壇のある家では、こちらからお参りを申し出ておくと丁寧で、「お線香をあげさせていただいてもよろしいですか」と一言尋ねてから座れば、その家の亡くなった方へも気持ちを向けていることが伝わります。作法のほうは宗派や家によって違いますので、座敷へ通される前に、配偶者から一通り聞いておいてください。
玄関での名乗りに続けて「本日はお招きいただきありがとうございます」と添えれば、 初対面のあいさつとしてはそれで十分ですので、 気の利いた言い回しを前の晩から用意していく必要はありません。 用意してきた長い口上を並べるより、顔を上げて相手のほうを見ながら述べるほうが、はるかによく伝わります。
手土産を渡すのは玄関ではなく、席に着いて改めてあいさつを述べたあとになりますので、 上がってすぐ差し出したくなる気持ちは一度抑えておきます。 到着の時刻も早すぎないほうがよく、支度の途中で着かれると、 迎える側は前掛けをしたまま玄関へ出てくることになります。
会話で気をつけること
茶を出されて卓を挟んで向かい合うと、沈黙が続くのが気まずくて、 つい自分の仕事や生い立ちを長く話し込んでしまうことがあります。 逆に、何を聞かれるのだろうと身構えるあまり、返事が一言ずつになってしまう人もいます。
分かれ目は話の上手さではなく、 触れずにおく話題を先に決めてあるかどうかという点で、 そこさえ外していなければ、多少の言い淀みは気にされません。 初回の座敷で口にすると場の空気が変わってしまう話題は、家が違ってもだいたい決まっています。
| 避けたいこと | なぜ避けるか |
|---|---|
| 自分の話ばかりする | 相手はあなたを知りたい一方で、こちらも聞く側に回ります |
| 実家や自分の家族を持ち上げる | 比べられている印象を相手に残すことになります |
| 収入・貯金の具体的な話 | 初回から踏み込む話題ではなく、次の機会に回します |
| 政治・宗教 | 意見が分かれますので、初対面の席では触れません |
| 配偶者の欠点を言う | 親の前では褒めるほうが穏やかに収まります |
| スマートフォンを見る | 話を聞いていない印象になりますので、鞄にしまいます |
聞かれたことに答えて、相手の話に耳を傾けていれば、初回の会話としてはそれで足ります。うまく話そうと構えるほど言葉のほうは硬くなりますので、相づちを打ちながら表情で応えるほうが、よほど伝わります。話が途切れて間が持たなくなったときは、隣にいる配偶者へ話題の橋渡しを頼んで構いません。
実際に多いのは、緊張をほどこうとして自分の実家の話を持ち出す場面で、 うちの母もよく作るという一言が、そのつもりがなくても比べているように聞こえます。 仕事や出身の話も、こちらから並べるより聞かれてから答えるほうが、間合いとして収まります。
尋ねられやすいのは仕事、出身、家族構成、趣味のあたりですので、 差し支えのない範囲でどこまで答えるかを、出かける前に頭の中で整理しておくと落ち着きます。 答えにくいことを向けられたときは「まだ決まっていなくて」とやわらかく流して構いませんので、 その場で答えを作る必要はありません。
帰った後
帰りの車や電車の中で、今日のうちにお礼を伝えるべきなのか、 伝えるとして自分から送るのか配偶者に任せるのかで迷います。 玄関で「またいらしてください」と見送られた場面が頭に残っているうちが、 いちばん言葉の出てくる時間帯でもあります。
ここで分かれるのは丁寧さの度合いではなく、 誰の名前で、いつ届くかという点で、短い一言でも当日のうちに届けば十分に伝わります。 長い文面を用意しようとして翌々日まで延びるほうが、かえって間の空いた形になります。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| お礼の連絡 | その日のうちに一報を入れておきます |
| 誰から送るか | 配偶者から先に連絡してもらう形でも構いません |
| 文面の長さ | 「無事に帰りました」の一言でも十分に足ります |
| 次に会うとき | その場で改めてお礼を口に出して伝えます |
| 配偶者との振り返り | 感想や気になったことを共有しておきます |
初回で相手が見ているのは、箸の上げ下ろしのような作法の細部ではありません。丁寧に接しようとしているか、配偶者と良い関係にあるかという二つさえ伝わっていれば、それで足ります。玄関で呼び方をひとつ言い間違えたくらいのことは、あとまで持ち出されるものでもありません。
お礼の連絡は配偶者から先に入れてもらう形でも構いませんが、 そのあとに自分からも一言添えておくと、こちらの名前で届いた言葉として残ります。 文面は「無事に帰りました」だけでも足りますので、 何を書こうかと考え込んで翌日へ持ち越すほうが惜しくなります。
帰りの道すがら、気になったことや嬉しかったことを配偶者に話しておくと、 次に伺うときの支度がずいぶん楽になります。 二度目からは呼び方も間取りも分かっていますので、初回ほど身構えずに玄関をくぐれます。
2回目以降の訪問マナーを見る初めての義実家訪問に一つだけの正解があるわけではなく、 その家の暮らし方に合わせて、服装と手土産と言葉づかいを少しずつ寄せていけば足ります。 和室に通す家もあれば普段着のまま迎えてくれる家もありますので、 配偶者から聞いた家風が、そのまま当日の基準になります。
どの家でも変わらないのは、行く前に配偶者と打ち合わせておくことと、 当日は聞かれたことへ丁寧に答えることの二つだけで、 この二つさえ押さえていれば、細かい作法を玄関で思い出せなくても失礼にはなりませんし、 迎える側が見ているのも、もともとそこから先ではありません。
よくある質問
初めて義実家を訪問する前に何を聞いておきますか?
家族構成と名前、呼び方が「お父さん」か「〇〇さん」か、避けたい話題、好き嫌いやアレルギー、家風や宗教、滞在時間の目安の六つです。どれも玄関先で尋ねられる中身ではありませんので、配偶者に案内役までお願いしておけば、一人で受け答えを抱え込まずに済みます。
服装はどうすればよいですか?
きれいめの普段着で十分で、襟のあるシャツやニットに、きれいめのパンツかスカートを合わせておけば整って見えます。スーツや礼服まで着ていくと相手も気を遣いますので、「近所に出かける服装より少し上」を目安にし、和室に上がることを考えて素足は避けてください。
手土産はいくらが目安ですか?
3千〜5千円を目安にし、初回はやや丁寧にします。その場で皿へ出していただける個包装の菓子であれば、迎える側の手間にもなりません。のしは初回なら「御挨拶」の表書きで付けても構いませんが、付けなくても失礼にはなりませんので、家風を配偶者に聞いて決めてください。
仏壇がある場合はどうしますか?
お参りを申し出ると丁寧ですので、「お線香をあげさせていただいてもよろしいですか」と一言尋ねてから座ってください。作法のほうは家によって違いますので、線香をどう扱うかまで含めて、あらかじめ配偶者に聞いておくと座敷で手が止まりません。
会話で気をつけることは何ですか?
自分の話ばかりにせず、相手の話にも耳を傾けてください。実家や自分の家族を持ち上げると比べられている印象になりますし、収入や貯金の具体的な話は初回から踏み込む話題ではありません。政治や宗教も意見が分かれますので、初対面の席では触れずにおきます。
答えにくいことを聞かれたらどうしますか?
「まだ決まっていなくて」とやわらかく流して構いませんので、その場で答えを作る必要はありません。初回で相手が見ているのは作法の細部ではなく、丁寧に接しようとしているかと、配偶者と良い関係にあるかという二つだけです。
まとめ
- 服装・手土産・挨拶の3点で足ります
- 配偶者と事前に打ち合わせておきます
- 呼び方は必ず聞いておきます
- 服装はきれいめの普段着にします
- 素足は避け、靴下を履いていきます
- 手土産は3千〜5千円を目安にします
- 初回はのしを付けても構いません
- 仏壇があればお参りを申し出ます
- 完璧である必要はありません
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。