結論
訪問の手土産はもともと改まった贈り物ではなく心づけにあたりますので、 のしは基本的に付けないままで差し支えありません。 付けると品物の位置づけそのものが変わって「贈り物」として受け取られますので、 受け取った側がお返しを考え始めることもあります。
付けるのはお礼やあいさつという目的がはっきりしているときで、 表書きは目的に合わせて「御礼」「御挨拶」「粗品」などを選びます。 手渡しする品ですから包装紙の上から紙をかける外のしにしておくと、 玄関先で差し出したその瞬間に何のための品かが伝わります。
要否の判断表
売り場で菓子折りを決めたあと、「のしはお付けしますか」と聞かれてから考え始めることになり、 レジの前で数秒だけ返事が遅れます。 付ければ丁寧に見える気もしますし、大げさになる気もして、 店員さんを待たせたままでは判断の手がかりも見つかりません。
決め手になるのは相手との親しさではなく、その訪問に名前の付く目的があるかどうかという点で、 同じ相手の家でも用件によって求められる形が変わります。 年に何度も気楽に上がり込んでいる家であっても、改まった用件で伺う日となれば、玄関先の空気そのものが違ってきます。
| 場面 | のし |
|---|---|
| 友人宅へ遊びに行く | 付けずに紙袋のまま持っていきます |
| 実家へ行く | 付けなくても差し支えありません |
| 義実家へ行く(普段) | 付けない形でも失礼にはなりません |
| 初めて義実家を訪問する | 付けておくと丁寧に受け取られます |
| お礼の意味がある | 「御礼」と書いたのしを付けます |
| あいさつ回り | 「御挨拶」と書いたのしを付けます |
| お詫びに伺う | 「御詫び」とするか水引なしにします |
| 取引先を訪ねる | 会社として渡すため付けておきます |
| 親戚が集まる場に持参 | 誰からの品かが分かるよう付けます |
迷ったときは、これから向かう訪問そのものに名前が付けられるかどうかという一点で振り分けてください。「お礼に伺う」「あいさつに伺う」と言葉にできる用件があるなら付け、「久しぶりに顔を見に行く」で言い尽くせるなら付けません。用件のほうを見て決めるようにすれば、同じ家へ何度も通う場合でも迷わずに済みます。
親戚が十人ほど集まる法事の日などは、玄関の脇に紙袋がいくつも並ぶことになりますので、 中身だけを取り出してしまうと、あとでどれが誰からの品なのか分からなくなります。 表書きの下に姓が入っていれば、台所で包みを解いた人がそのまま誰からの品かを覚えていられますので、後で尋ね回らずに済みます。
取引先を訪ねる場合も、渡しているのは個人ではなく会社としての品ですので、 名前の残る形にしておくほうが後々の記録として役に立ちます。 受け取った側が上長へ報告するときにも、包み紙の下段に会社名や姓が書かれているだけで話が早く済みますし、記録としても残しやすくなります。
付けると何が変わるか
同じ焼き菓子の詰め合わせを持っていっても、白い紙が一枚かかっているだけで、 受け取った相手の手の動きがはっきりと変わります。 そのまま台所へ持っていく人もいれば、いったん床の間や仏壇の脇に置いてから改めて礼を述べる人もいて、 扱いが目に見えて重くなります。
分かれ目は品物の中身ではなく、それが心づけとして渡されたのか贈り物として渡されたのかという点で、 のしはその境目を示す印になります。 気軽に受け取ってほしいのか、それともきちんと受け取ってほしいのかによって、渡す側が先に決めておくことになります。
| のしなし | のしあり | |
|---|---|---|
| 受け取られ方 | そのまま気軽な心づけとして扱われます | 改まった贈り物として丁重に扱われます |
| お返し | お返しはとくに考えずに済みます | お返しをどうするか考えさせます |
| 誰からの品か | 渡すときに口頭で名前を伝えます | 包みの上に名前がそのまま残ります |
| 次回以降 | 毎回その場で自由に決められます | 次も同じ形を続けることになります |
包みの上に名前がそのまま残ることは、来客の多い日ほど効いてくる実用的な利点になります。玄関の脇に紙袋がいくつも並んだあとでも、包みを見ればどこの家から届いた品かがすぐに分かりますので、後でお礼を伝える先を取り違えずに済みます。反対に、そのまま台所へ持っていってほしいだけの品であれば、この利点は必要になりません。
いちど付けて渡しますと、次に伺うときも同じようにするのが自然な流れになりますので、 毎回のことを考えたうえで決めるほうが後が楽になります。 年に一度の改まった訪問であれば続けられますが、 月に何度も顔を出す家で毎回かけていると、双方が構えたままになります。
お返しを考えさせてしまうのも、気軽な訪問では避けたいところで、 台所で包みを解きながら「これはお返ししないと」と言わせてしまえば、 渡した側の狙いとは逆の結果になります。 軽く受け取ってほしい品であるほど、白い紙をかけずにそのまま渡すほうが、こちらの気持ちはまっすぐ伝わります。
目的別の表書き
付けると決めたあとに次の壁になるのが、上段へ何と書くかという問題で、 売り場で筆ペンを持った店員さんに「何とお書きしますか」と尋ねられると答えに詰まります。 上段に「粗品」と入れてよいのか「御礼」とすべきなのかは、その訪問の目的を自分の言葉にしないと決まりません。
表書きと水引は対になっていて、慶事の訪問なのか、お見舞いなのか、 弔事に関わる訪問なのかで組み合わせが変わります。 とくに水引は色と結び方の両方に意味を持っていますので、 表書きだけを合わせても、包み全体としては形が整わないことがあります。
| 訪問の目的 | 表書き | 水引 |
|---|---|---|
| あいさつ回り | 「御挨拶」か「粗品」と書きます | 紅白の蝶結びをかけて手渡します |
| お礼 | 「御礼」と上段に書いて渡します | 紅白の蝶結びをかけて手渡します |
| 引越しのあいさつ | 「御挨拶」か「粗品」と書きます | 紅白の蝶結びをかけて手渡します |
| お詫び | 「御詫び」とするか何も書きません | 水引の入っていない紙を選びます |
| お見舞い | 「御見舞」と上段に書いて渡します | 紅白の結び切りをかけて渡します |
| 正月の訪問 | 「御年賀」と上段に書いて渡します | 紅白の蝶結びをかけて手渡します |
| 法事・弔問 | 「御供」と上段に書いて供えます | 黒白の結び切りをかけて供えます |
| 目的が特にない | 「粗品」とするか付けずに渡します | 紅白の蝶結びをかけて手渡します |
上段へ入れる言葉がどうしても決まらないときは「粗品」と書いておけば、訪問の目的を問わずひととおり収まります。あいさつにも手土産にも使える言い方ですので、上段だけを空けたまま売り場で立ち止まっているより、ずっと早く片づきます。ただし、そもそものしを付けないという道が最後まで残っていますので、無理に言葉をひねり出す必要はありません。
蝶結びは何度あってもよい出来事に使う結び方ですので、あいさつ回りや引越しのあいさつに持っていく品はこちらにあたります。 結び切りはほどけない結び方ですので、お見舞いのように繰り返したくない出来事に使い、 色は慶事なら紅白、弔事に関わるものなら黒白を選びます。
気をつけたいのはお詫びに伺うときで、紅白の水引は慶事のしるしですから、 頭を下げに行く品にかけると意味が正面からぶつかります。 水引の入っていない無地の紙にするか、のしそのものを付けずに差し出し、 上段も「御詫び」とするか、何も書かない形にしておくほうが無難です。
付ける場合の書き方
売り場で紙をかけてもらう場合でも、内のしと外のしのどちらにするか、 名前は誰の名で書くのかは、こちらが答えなければ先へ進みません。 夫婦そろって伺うときに自分の姓だけを書いてもらってよいのかどうかも、筆ペンを構えられてから迷いやすいところです。
決め方の軸になるのは、その品を宅配便で送るのか、玄関先で直に手渡すのかという違いで、 手土産は必ず手渡しになりますので、選ぶ形はおのずと決まってきます。 墨の濃さや使う筆記具にもそれぞれ決まりがあり、慶事の訪問なのか弔事に関わる訪問なのかで使い分けが変わってきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 水引 | 慶事や一般の訪問は紅白の蝶結びにします |
| かけ方 | 手渡しになるので外のしを選びます |
| 名前 | 姓を書き、夫婦なら連名にもできます |
| 墨 | 濃墨を使い、毛筆か筆ペンで書きます |
| 書く位置 | 水引の上に目的、下に名前を書きます |
| 紙袋 | のしを傷めないよう畳んで持ち帰ります |
外のしを選ぶのは、包装紙の上から紙をかける形になるため、渡すときに表書きが外から見えるからです。玄関先で差し出したその瞬間に何のための品かが伝わりますので、口で説明を足す必要がなくなります。内のしは包装紙の内側に紙をかける形で、宅配便で送る品のほうに向いています。
名前は姓だけで足りることがほとんどで、 同じ姓の親族が複数集まる場に持参するときだけ、下の名前まで入れておくと取り違えがありません。 夫婦そろって伺うのであれば下段を連名にしておくと、個人ではなく一つの家として持参した形になりますので、双方の親族にも通りやすくなります。
上段と下段に入れる文字は濃い墨を使い、毛筆か筆ペンで書きますので、 弔事の場面で使う薄墨を訪問の手土産に用いますと意味が合いません。 ボールペンや細いサインペンで書きますと線が細すぎますので、 包みにかけた紙の上では表書きとして格好がつきません。
内のし・外のしの違いを詳しく見る(図解あり)迷ったとき
表を見て振り分けてもなお決まらない場面はあり、 たとえば結婚して間もない時期に義実家へ伺うとき、その家がどこまで形式を重んじるのかは外から見えません。 前回どうしたのかも覚えていないとなりますと、結局は売り場の同じ場所で毎回立ち止まって、同じことを考え直すことになります。
こうしたときに支えになるのは、付けなかったときにどうなるかという見通しで、 付けないでいたことが不足になる場面はそれほど多くありません。 家風がまるで読めない相手であれば、その家をいちばんよく知っている人に尋ねてしまうのが結局は最短の道になります。
| 迷う場面 | 判断 |
|---|---|
| 義実家の家風が分からない | 配偶者に前例を聞いて決めます |
| 初めての訪問 | 付けておくと丁寧に受け取られます |
| 2回目以降 | 前回と同じ形に合わせておきます |
| どちらでもよさそう | 付けないままで差し支えありません |
| 店で聞かれた | 訪問の手土産だと伝えて相談します |
| のしを外したくなった | 次の訪問から静かに変えていきます |
のしを付けずに渡したというだけで失礼にあたる場面は、世間で言われているほど多くはありません。むしろ気軽な訪問に白い紙をかけていくと改まりすぎて、受け取った側が居住まいを正すことになります。迷ったまま紙をかけて渡すより、付けずに一言添えて差し出すほうが軽く収まります。
売り場で「のしはどうされますか」と聞かれたときは、 「訪問の手土産です」と用途をそのまま伝えるのがいちばん早く、 店員さんはその言葉から表書きまで含めて提案してくれます。 決まった形が思い浮かばないときほど、こちらで抱え込まずに用途を言葉にして渡してしまうほうが早く話が進みます。
正月に伺う場合は、同じ手土産でもお年賀としての扱いになりますので、 表書きも「御年賀」に変わります。 松の内を過ぎたときの書き方など時期特有の注意も出てきますので、 こちらは訪問の手土産とは分けて別の記事にまとめてあります。
正月の帰省の手土産とのしを見るのしを付けるかどうかに一つだけの正解があるわけではなく、 その訪問に名前の付く目的があるかどうかを見て、 軽く受け取ってほしいのか、きちんと受け取ってほしいのかで決めればそれで足ります。 顔を見に行くだけの訪問なら紙袋のまま提げていけばよいですし、 お礼やあいさつという用件があるなら、上段に目的を書いて差し出せば形になります。
どの訪問でも変わらないのは、のしを付けないという選び方がそれだけで失礼にはあたらないという一点だけです。 これさえ覚えていれば売り場で聞かれても迷いませんし、 受け取る側にとっても、気兼ねなく台所へ持っていける品のほうが扱いやすく、 次に会う約束もしやすくなります。
よくある質問
手土産にのしは必要ですか?
基本的に不要です。訪問の手土産は心づけであって、改まった贈り物ではありません。判断の軸はその訪問に名前の付く目的があるかどうかで、「お礼に伺う」「あいさつに伺う」と言葉にできる用件があるなら付け、久しぶりに顔を見に行くだけなら付けません。
のしを付けると何が変わりますか?
心づけから改まった贈り物になります。相手もそのように受け取り、お返しを考える方も出てきますし、次に伺うときも同じ形を続けることになります。気軽に渡したいなら付けないほうがまっすぐ伝わります。
のしを付ける利点は何ですか?
包みの上に名前が残ることです。親戚が集まる法事の日などは玄関の脇に紙袋がいくつも並びますので、中身だけを取り出すとどれが誰からの品か分からなくなります。取引先を訪ねるときも、会社として渡す品ですから名前の残る形が役に立ちます。
目的別の表書きは?
あいさつ回りと引越しのあいさつは「御挨拶」か「粗品」、お礼は「御礼」、お見舞いは「御見舞」、正月の訪問は「御年賀」、法事や弔問は「御供」です。目的が特にないなら「粗品」とするか、のしを付けません。「粗品」は目的を問わず使えます。
水引はどう選びますか?
蝶結びは何度あってもよい出来事に使いますので、あいさつ回りや引越し、お礼、正月の訪問は紅白の蝶結びです。お見舞いはほどけない結び切りにし、法事や弔問は黒白の結び切りを選びます。
お詫びに伺うときは?
紅白の水引は使いません。紅白は慶事のしるしですので、頭を下げに行く品にかけると意味が正面からぶつかります。水引のない無地の紙にするか、のしを付けずに差し出し、表書きも「御詫び」とするか書かない形にしてください。
内のしと外のし、どちらですか?
外のしです。包装紙の上から紙をかけるため表書きが外から見え、玄関先で差し出したその瞬間に何のための品かが伝わります。内のしは配送で送る品に向いた形です。
名前は誰の名で書きますか?
姓だけで足りることがほとんどです。同じ姓の親族が複数集まる場に持参するときだけ、下の名前まで入れておくと取り違えがありません。夫婦で伺うのであれば連名にしておくと、家として持参した形になります。
迷ったらどうしますか?
付けないで構いません。付けないことが失礼にあたる場面は思われているほど多くなく、むしろ気軽な訪問に白い紙をかけると改まりすぎて、受け取った側が居住まいを正すことになります。店で聞かれたら「訪問の手土産です」と伝えれば提案してもらえます。
まとめ
- のしは基本的に付けなくてかまいません
- 付けると改まった贈り物として受け取られます
- 判断の軸は訪問に名前の付く目的があるかどうかで決まります
- あいさつ回りは「御挨拶」か「粗品」と書きます
- お礼は「御礼」と書いて渡します
- お詫びには紅白の水引を使いません
- 手渡しになるので外のしを選びます
- 名前は姓を書き、夫婦なら連名にもできます
- 付けないことは失礼にあたりません
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。目的別の表書き、手渡しは外のしという点は、参照した情報源で共通しています。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。