結論
接待の席では相手側を上座にまとめ、自社側は入口寄りに並びますので、 卓の左右で会社が分かれる形になり、 相手と自社が一席ずつ入り混じることはありません。
この並びには役割の割り振りという意味もあり、 入口にいちばん近い席へ座った自社の担当者が、 店員さんを呼んで注文を通し、締めの頃合いで会計にも立つことになります。
接待の並べ方
接待の席で席次そのものに悩む場面はあまりなく、 入口から遠いほど上座という決まりは通常の会食とまったく同じですので、 部屋に通されたらまず扉の位置を確かめれば見当がつきます。 ただし接待では、どの席が上座かを言い当てられただけでは全員の並びが決まらず、そこから先でつまずくことになります。
接待で新しく加わるのが「側」で分けるという考え方で、 相手側の方と自社側の者を交互に座らせず、卓をはさんで向かい合う形にまとめます。 判断が分かれるのはこの一点で、席次の上下だけを見て並べていくと、 自社の部長の隣に相手の課長が入るような座り方になってしまいます。
| 位置 | 座る人 |
|---|---|
| 上座(入口から最も遠い) | 相手側でいちばん上の方に座っていただきます |
| その隣 | 相手側の次の方が、続けてその隣に座ります |
| 上座の向かい | 自社側でいちばん上の者が向かい合わせに座ります |
| その隣 | 自社側の次の者が、そのまま隣に並びます |
| 入口に最も近い | 注文と会計を担う自社の担当者が座ります |
相手側と自社側を一席ずつ交互に並べる形だけは避けてください。会話が卓の横方向にばらけてしまい、こちら側で目配せをして進行を合わせることもできなくなりますし、相手にとっても、自分の会社の人と話をつなぐたびに身を乗り出すことになります。
入口にいちばん近い席は、格下の者を端へ追いやる場所ではなく動くための席で、 そこに座った担当者が引き戸のそばから店員さんに合図を送り、追加の注文を通し、 締めの頃合いで席を立って会計へ向かいます。 役割としてその位置にいると分かっていれば、当日その席を勧められても気持ちが引っかかりません。
並びで迷わないためには、店へ向かう前に先方の顔ぶれと役職を書き出した紙を一枚用意しておけば十分で、 当日は扉の位置と照らし合わせるだけで座る場所が決まります。 人数や顔ぶれが直前で変わったときも、その紙の上で差し替えれば済みますので、 部屋の入口で全員が立ち止まる時間がなくなります。
人数が違うとき
両社の人数がきれいに揃うことはむしろ少なく、 先方は課長がひとりで来られる一方、こちらは営業と技術で三人という組み合わせも珍しくありません。 予約のときに伝えた人数と、当日に部屋へ入ってくる人数がずれることもありますので、 卓に席が余ったり、逆に椅子が足りなくなったりします。
ここで判断の軸になるのは、上座と下座のどちらに寄せるかではなく 自社側を相手より多くしないという一点です。 同じ卓でこちらの顔ぶれのほうが多くなると、もてなすつもりの席であっても、 相手にはこちらが数で押しにきたように映ります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 自社のほうが多い | 同席する人数をその場で減らして揃えます |
| 相手のほうが多い | そのままで構いませんので、席だけ整えます |
| 席が余る | 下座の側を空けておくほうが収まります |
| 奇数で向かいが作れない | 上位の方から順に対面していただきます |
| 急な増員 | 部屋へ入る前に店へ人数の変更を伝えます |
自社の人数が多い席は、それだけで威圧になります。相手が一名でお越しになるならこちらも一名か二名にとどめておくほうがよく、全員で卓を囲む形は、もてなしというより交渉の場に見えてしまいます。どうしても人数が要るのであれば、誰が何のために同席するのかを先に伝えておいてください。
実際にありがちなのは、直前になって上長の同行が決まり、 四人で予約した個室に五人で入ることになる場面で、 床の間を背にした椅子の並びを崩さずに一席だけ足すのは、その場ではなかなか難しくなります。 相手をお待たせしたまま、店の方と椅子を運び入れる相談を始めることにもなります。
人が増えると分かった時点で店へ電話を一本入れておくだけで、 部屋の広さから受けられるかどうかを店の側が判断してくれますし、 卓の形を組み替えるならその支度も先に進みます。 黙ったまま当日に人数を増やすと、料理の数だけが合わない状態で席が始まってしまいます。
通訳・運転手がいる場合
卓を囲むのが接待の当事者だけとは限らず、 海外の取引先であれば通訳の方が付きますし、役員を送迎する運転手が店まで同行してくることもあります。 こうした同席者の扱いは、上座と下座を並べた図のほうには書かれていないため、 その場で決めることになります。
迷いどころはどこに座っていただくかで、 役職の順に並べようとすると通訳の方の位置がどうしても決まりません。 判断の軸は肩書きではなく役割のほうにあり、 その人が誰の言葉を運ぶのか、そもそも卓に着くのかどうかで置き場所が変わります。
| 立場 | 位置 |
|---|---|
| 通訳 | 相手側の最上位の方の隣か、斜め後ろに控えます |
| 運転手 | 同席せず、外や控室で待つことが多くなります |
| 自社の若手 | 入口に近い側に座り、進行を受け持ちます |
| 紹介者・仲介者 | 卓の中央付近に入っていただきます |
運転手の方が同席するかどうかは、店を決める段階で確かめておいてください。外で待機される場合は、控室を用意するのか食事を別に出すのかを先に決めておく必要がありますし、当日になって尋ねると、招いた側が決めるべきことを相手に判断させることになります。
通訳の方の位置で失敗しやすいのは、席次だけを見て卓のいちばん端に座っていただいた場面で、 話が進むたびに相手の最上位の方まで声が届かず、 あいだの人が体をひねって聞き役に回ることになります。 通訳を挟んだやりとりはただでさえ一往復ごとに間が空きますので、そこに移動の手間まで重なると話が前へ進みません。
席を決めるときは、通訳の方を相手の最上位の方のすぐ隣か斜め後ろに置いてしまえば、 そのまま耳元で伝えられますし、こちらの発言も同じ距離で返ってきます。 椅子を一脚だけ後ろへ下げる形にしておけば、卓の左右の並びを崩さずに済みます。
案内の仕方
席順を決めてあっても、それを口に出さないかぎり相手には伝わらず、 部屋へ通された方は自分がどこに座ってよいのか分からないまま立ち止まります。 並びの図を頭に入れているのは招いた側だけですので、 案内はこちらから出すことになります。
黙って立っていると譲り合いが始まりますので、 その分だけ全員が上着を抱えたまま待つことになりますし、 料理を運ぼうとする店員さんも部屋へ入れません。 招く側が先に示すか、様子をうかがうかで、この最初の一分がまるで変わります。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 入室したとき | 「〇〇様、どうぞ奥のお席へ」と声をかけます |
| 手で示す | 指はささず、手のひらを上に向けて示します |
| 相手が固辞した | 一度だけ勧め、譲らなければそれに従います |
| 自社側が座る | 相手が腰を下ろしてから椅子を引きます |
| コートを預かる | 席へ通す前に、預かる旨を声に出します |
自社側が腰を下ろすのは、相手が座ってからにしてください。先にこちらが座ってしまうと迎える形が崩れますし、立ったままの相手は椅子を引くきっかけを失います。全員が立ったまま譲り合わずに済むよう、はじめの一声は招く側から出すことになります。
案内でつまずきやすいのは、上着を預かる場面と席へ通す場面が重なったときで、 扉のそばのハンガーへコートを掛けながら、奥の椅子を手で示すことは同時にはできません。 相手を立たせたまま、こちらが二つの用を行ったり来たりすることになります。
順番を決めておけば迷いませんので、部屋に入ったらまず 上着を預かってから席へ案内するという流れに固めておくと、 手がふさがったまま奥を指すことがなくなります。 同行者がもうひとりいるなら、一方が上着を受け取り、もう一方が席を示すという分け方も使えます。
並べ方に決まった正解が一つあるわけではなく、部屋の形と両社の顔ぶれ、 当日に何人で入るのかによって、ちょうどよい並びはそのつど変わります。 相手が一名であればこちらも一名か二名にとどめるほうが収まりますし、 通訳の方が付く席であれば、席次より声の届く距離を先に考えることになります。
どの席でも変わらないのは、相手側を上座にまとめることと、 案内の一声を招く側から出すことの二つだけで、 この二つさえ守っていれば、細かい並びを思い出せなくても迎える形は崩れません。 入口寄りの席に座る担当者にとっても、迷いなく動けるぶんだけ当日の進行が楽になります。
部屋の形ごとの席次を見るよくある質問
接待の席順はどう決めますか?
相手側を上座にまとめ、自社側は入口寄りに並びます。相手と自社が交互に座ると会話が横に散り、こちら側の連携も取れなくなります。向かい合わせが基本です。
入口に近い席には誰が座りますか?
自社の担当者です。店員さんを呼び、注文を通し、会計に立つためで、格下だから端という意味ではありません。役割としてその位置にいると考えてください。
自社の人数が相手より多くてもいいですか?
減らしてください。人数で押す形になり、相手が構えます。相手が1名ならこちらも1〜2名にとどめてください。全員で囲む形は、もてなしではなく交渉の場に見えます。
通訳はどこに座らせますか?
相手の最上位の隣か斜め後ろです。役職の順ではなく、通訳しやすい位置に合わせます。
運転手が同席する場合は?
先に確認してください。待機される場合は、食事を用意するか待合を案内するかを決めておきます。当日になって尋ねると、相手に判断させることになります。
席へはどう案内しますか?
「〇〇様、どうぞ奥のお席へ」と声をかけ、指さずに手のひらを上に向けて示します。相手が座ってから自社側が座ってください。先に座ると迎える形が崩れます。
まとめ
- 相手側を上座にまとめ、自社側は入口寄りに並びます
- 入口にいちばん近い席には、注文と会計を担う担当者が座ります
- 自社の人数は、相手より多くしません
- 席へは招く側から声をかけて案内します
- 自社側は相手が腰を下ろしてから座ります
参考情報
- 農林水産省「食文化のポータルサイト」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/index.html - 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
食事の作法に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・店の格式・間柄によって実際には異なります。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。細かな作法を完璧に守ることより、同席する人が気持ちよく食べられることのほうが大切です。格式の高い店や改まった席では、店の案内に従ってください。