結論
座敷の上座は床の間の前にあたり、 ほかの部屋で使う「入口から遠い席」という物差しよりも、床の間の位置のほうが優先します。 掛け軸や花が飾られている壁を探せば、その側がその部屋の正面にあたりますので、席次もそこから順に決められます。
床の間の無い座敷では、ほかの部屋と同じ考え方に戻って入口から遠い席が上座になります。 座布団は勧められてから座り、足は勧められてから崩すという順を守っておけば、 座敷ではじめの数分に迷うことがなくなります。
床の間が最優先
料亭や旅館の座敷に通されて襖が閉まったあとの数秒は、どこに座ればよいのかが分からないまま、 全員が立ったままお互いの顔を見ているという妙な時間になりがちです。 上司や取引先と一緒であればなおさら、自分が先に腰を下ろしてしまうわけにもいかず、襖の内側で立ち往生することになります。
ここで判断が分かれるのは、ふだん会議室や車で使っている「入口から遠い席が上座」という物差しを、そのまま持ち込んでよいのかという一点になります。 座敷にはもう一つ別の目印があり、そちらのほうが強く効きますので、まずその目印を探すところから始めてください。
| 順位 | 位置 |
|---|---|
| 1(上座) | 床の間を背にして座る席がここにあたります |
| 2 | 上座の隣で、床の間に近いほうの席になります |
| 3 | 上座の真向かいにあたる席がここに入ります |
| 最下位 | 入口の襖にもっとも近い席がここになります |
床の間を背にする側が上座であって、床の間を正面から眺める側ではありません。飾りのほうを背負う側がもっとも格の高い席とされてきたためで、掛け軸や花をゆっくり見られるのは、むしろ下座に座った人のほうになります。招く側から見れば、いちばん大切な相手に部屋の正面を譲ったという形になりますので、そこへ座っていただくこと自体が挨拶の代わりになります。
困るのは部屋の造りのほうで、床の間がいつも入口の反対側にあるとは限らず、襖のすぐ横に床の間が設けられている座敷もあります。 そういう部屋では、入口から遠い奥のほうが格上に見えてしまいますので、目で見た印象と席次とが食い違うことになります。
その場合でも動かないのは床の間のほうで、たとえ襖の真横であっても、掛け軸や花が飾られている前が上座になります。 部屋に入って迷ったときは、奥がどちらかを考えるより先に、掛け軸の下がっている壁を探してしまうほうが早く片が付きます。
床の間がない座敷
同じ座敷でも、居酒屋の小上がりや旅館の広間に通されたときは、部屋をひと通り見回しても掛け軸も花も見当たらないということがあります。 畳と座卓と座布団だけが並んでいる部屋では、床の間を探すというはじめの手順が、そのまま空振りに終わってしまいます。
とはいえ目印がまるで無くなるわけではなく、ここでは入口・庭や窓・配膳口といった、部屋の造りそのものが手がかりになります。 判断が分かれるのは、そうした目印が一つの部屋に二つ三つと重なったときに、どれを先に取るかというところです。
| 目印 | 上座 |
|---|---|
| 入口(襖) | 襖から遠いほうの席が上座になります |
| 庭・窓 | 眺めが正面に見える席を上座にします |
| 掛け軸だけがある | 掛け軸を背にする席を、そのまま上座とします |
| 配膳口がある | 配膳口から遠い席のほうを上座に取ります |
目印が複数あるときは、入口からの距離よりも庭や窓のほうを優先して構いません。眺めのよい部屋をわざわざ取っているのであれば、その景色を見せることが招く側の意図だからです。襖からの距離だけで決めてしまうと、せっかくの庭が上座の人の背中側へ回ってしまいます。
旅館の広間で庭に面した障子が開けてあるときなどは、部屋のいちばん奥ではなく、庭が真正面に見える席のほうが上座になります。 料理の写真を撮る人が多い席でも、この一点だけは変わらず、景色が見えるかどうかで並び順が決まります。
配膳口が近い席は、仲居さんが膳を出し入れするたびに背中の後ろで襖が開きますので、落ち着いて食べられる席ではありません。 幹事として席を決める立場であれば、その席には自分か若い人が座り、招いた相手には配膳口から離れた側を勧めておいてください。
座布団の扱い
座敷に上がると座布団はすでに敷かれていますので、上着を置く場所を探しているうちに、つい近くの一枚に腰を下ろしてしまいそうになります。 椅子の席と違って引くという動作がないぶん、座る前のひと呼吸が抜け落ちやすい場所です。
迷いやすいのはいつ腰を下ろすかという間の取り方で、勧められる前に座ると先を越した形になりますし、 かといって全員が立ったままでは、招いた側も話を切り出せずに場が進みません。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 入室したとき | 座布団の下座側に控えて、勧められるのを待ちます |
| 勧められたら | 「失礼します」と言い添えてから腰を下ろします |
| 座布団を踏む | 踏まずに、膝をついて進んでから乗ります |
| 位置をずらす | 席次に沿って敷かれていますので動かしません |
| 挨拶をするとき | 座布団から下りて、畳の上で頭を下げます |
座布団の扱いでいちばん見られているのは、踏まずに乗るというはじめの一動作のほうになります。立ったまま足を乗せると縁の生地に足の跡が残りますので、膝をついて、にじるように乗ってください。改まった席ほど、この一動作だけで座敷に慣れているかどうかが伝わることになります。
よくあるのは、座卓との間隔が広すぎて料理に手が届かないというもので、つい座布団ごと前へ引き寄せたくなります。 ところが座布団は席次に沿って並べてありますので、一枚だけ動かすと隣との間が詰まり、あとから来た人の分が入らなくなります。
どうしても位置が合わないときは、自分で動かさずに店の方へ一言伝えておけば、間を取り直して敷き直してもらえます。 乾杯のあとに施主や上位の方が挨拶を始めたら、そのときは座布団から下りて畳の上で受けるほうが、座ったまま聞くより形が整います。
足を崩すタイミング
座敷の席は正座から始まりますが、乾杯が済んで料理が二品三品と出てくるころには、膝の裏がしびれてきて姿勢が保てなくなります。 前の席の人と目を合わせながら、そろそろ崩してよいものかどうかを探り合うという時間が生まれます。
ここで判断が分かれるのは、崩してよいという合図を誰が出すのかという点で、自分の足の限界とは別のところに基準があります。 我慢を重ねて立てなくなるのも困りますし、いちばん先に崩してしまえば場に合わないことになります。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 「どうぞ楽に」と言われた | その一言が合図になりますので、崩して構いません |
| 上位の方が崩した | 同じ頃合いで、こちらもそっと崩しておきます |
| 乾杯・挨拶の間 | そのあいだだけは正座に戻しておきます |
| 言われないまま長引く | 一言お断りしてから崩して差し支えありません |
| 足がしびれて立てない | 無理に立たず、感覚が戻るまで少し待ちます |
崩し方は男女で異なるとされ、男性はあぐら、女性は横座りが一般的な形として挙げられます。ただし体調や、その日の服装のほうが優先しますので、無理な姿勢を続ける必要はありません。膝を痛めてまで形を守ろうとしても、こらえている様子はどうしても伝わりますので、同席している人に気を遣わせるだけになります。
膝や腰の状態によっては、正座そのものが最初からできないという方もいて、これは年齢を問わずに起こります。 当日になってから「どうぞ足をお崩しください」と声をかけても、そもそも床に座ること自体がつらいのであれば、その一言では解決しません。
幹事として座敷を予約するのであれば、申し込みの段階で掘りごたつ席があるかどうかを確かめておいてください。 足を下ろせる造りの部屋を取っておけば、当日に誰かが遠慮して切り出す必要もなくなりますし、 席次のほうも掛け軸や入口を目印にして、いつもどおり決めていけます。
他の部屋の席次を見る座敷の席次に一つだけの正解があるわけではなく、その部屋にどんな目印があるかで、 上座の位置は変わってきます。床の間のある部屋であればその前が上座になりますし、 掛け軸も花も無い広間であれば、入口から遠い席か、庭が正面に見える席を選んでおけば、 それで形は整います。
どの座敷でも変わらないのは、招いた相手に部屋の正面を譲るという一点だけです。 掛け軸を背負う席なのか、庭が見える席なのかは部屋によって違っても、 そこを相手に勧めておけば、座布団の乗り方や足を崩す間合いを思い出せなくても失礼にはなりません。 同席している人にとっても、そのほうが席順を気にせずに箸を進められることになります。
よくある質問
座敷の上座はどこですか?
床の間を背にする席です。床の間を眺める側ではありません。入口からの距離より床の間の位置が優先するため、床の間が襖の近くにある部屋でも、その前が上座になります。
床の間がない座敷ではどう判断しますか?
他の部屋と同じ考え方に戻り、入口から遠い席が上座になります。庭や窓があれば、眺めが正面に見える席を優先して構いません。眺めのよい部屋を取っているなら、その景色を見せることが招く側の意図だからです。
座布団はいつ座ればいいですか?
入室したら座布団の下座側に控え、勧められてから「失礼します」と言って座ります。座布団を踏まないでください。立ったまま足を乗せると跡が残るため、膝をついてにじるように乗ります。
足はいつ崩していいですか?
「どうぞ楽に」と言われたとき、または上位の方が崩したときです。言われないまま長引く場合は、一言断って崩して構いません。ただし乾杯や挨拶の間は正座に戻してください。
正座ができない場合はどうすればいいですか?
無理をしないでください。予約の段階で掘りごたつ席があるか確認しておくのが確実です。当日に足を崩してもらうより、席の造りで解決するほうが相手の負担になりません。
座布団の位置をずらしてもいいですか?
勝手に動かさないでください。席次に沿って敷かれています。どうしても位置が合わない場合は、店の方に伝えてください。
まとめ
- 床の間を背にする席が上座になります
- 入口からの距離より床の間が優先します
- 床の間が無ければ入口から遠い席を選びます
- 庭や窓があれば眺めが見える席を上座にします
- 座布団は勧められてから腰を下ろします
- 座布団は踏まず、膝をついて乗ります
- 足は勧められてから崩します
- 正座ができない方には掘りごたつ席を用意します
参考情報
- 農林水産省「食文化のポータルサイト」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/index.html - 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
食事の作法に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・店の格式・間柄によって実際には異なります。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。細かな作法を完璧に守ることより、同席する人が気持ちよく食べられることのほうが大切です。格式の高い店や改まった席では、店の案内に従ってください。