結論
忌み言葉とは、不幸が繰り返される、あるいはあとに続くことを連想させる言葉のことで、 代表になるのが重ね言葉(重ね重ね・たびたび・くれぐれも)と、 続き言葉(追って・引き続き・再び)の二つです。
もう一つ気をつけたいのが直接的な表現で、 「死ぬ」や「死亡」は「ご逝去」という言い方に置き換えますが、 避ける理由さえ分かっていれば、一覧をそのまま暗記しなくてもその場で判断できます。
忌み言葉の4分類
| 種類 | 例 | 理由 |
|---|---|---|
| 重ね言葉 | 重ね重ね、たびたび、くれぐれも、返す返す、ますます、いよいよ | 不幸が繰り返されることを思わせます |
| 続き言葉 | 追って、引き続き、再び、続いて、なお | 不幸があとに続くことを思わせます |
| 直接的な表現 | 死ぬ、死亡、急死、生きていたころ | ご遺族にその場面を思い起こさせます |
| 不吉な数字・言葉 | 四、九、浮かばれない、消える | 「死」や「苦」と同じ音になっています |
四つに分かれてはいますが、弔事では繰り返しを避けるという一点を頭に置いておけば、 一覧に載っていない言葉に出会ったときもその場で見当がつきます。 香典を二度渡さない、中袋を二重にしないといった作法も、同じ考え方から出ています。
重ね言葉
通夜の受付で記帳を終え、ご遺族に短く挨拶をするその一瞬に、どう切り出すかで迷った経験のある方は少なくありません。 丁寧に伝えようとするほど言葉数が増えていきますし、職場でのやり取りや礼状で使い慣れた言い回しがそのまま口をついて出てきます。
避ける言葉かどうかの分かれ目は、意味の側ではなく同じ語を二度続けているかどうかという形の側にあります。 伝えている内容がまったく同じであっても、その形になっているものだけが弔事では嫌われますので、 日ごろ丁寧さの印として使っている語ほど当てはまることになります。
| 避ける言葉 | 言い換え |
|---|---|
| 重ね重ね | 深く、あるいは心よりに置き換えます |
| くれぐれも | どうぞ、または十分にと言い換えます |
| たびたび | よく、何度も、折に触れのいずれかにします |
| 返す返す | 本当に、まことにと言い換えれば足ります |
| ますます | さらに、一層と言い換えても意味は残ります |
| いよいよ | ついにと替えるか、そのまま省いてください |
| かえすがえす | まことにと言い換えれば形が残りません |
| 次々 | 多くのと置き換えると繰り返しになりません |
丁寧に言おうとするほど出やすいのが「重ね重ねお悔やみ申し上げます」という言い回しで、「心よりお悔やみ申し上げます」に替えておけば、伝わる気持ちはそのままに形だけが整います。言い換えたことでよそよそしくなることはありません。
文字として残る場面ほど気づかれやすく、弔電の文面を電話で口述したときや、 会社名で出す弔電のひな形をそのまま選んだときに、重ね言葉が混じったまま届いてしまうことがあります。 読み上げられる弔電は会場にいる全員が耳にしますので、ご遺族だけでなく参列した方の記憶にも残ります。
書いたものであれば、送る前に一度だけ、同じ語が二度続いている箇所が無いかを目で追っておけばそれで足ります。 話し言葉のほうは言い終えてから気づくことが多いのですが、そこで言い直すと繰り返しがかえって際立ちますので、 気づかなかったことにしてそのまま先へ続けてください。
続き言葉
香典を郵送するときや、参列できない事情を手紙で伝えるときには、便箋に短い文を書き添えることになります。 書き終えてから伝え忘れに気づき、末尾に一行だけ足したくなる場面は、弔事の手紙でとくに起こりやすいところです。
ここで分かれるのは、その一行があとに何かが続くことを示す形になっているかどうかという点で、 書かれている内容が弔意そのものであっても、形のほうは残ってしまいます。 話し言葉でも同じことが起き、次の予定に触れる語が前置きのように出てきます。
| 避ける言葉 | 言い換え |
|---|---|
| 追って | のちほど、改めてと言い換えます |
| 引き続き | 今後ともに替えるか、そのまま省きます |
| 再び | 改めてと言い換えれば形が残りません |
| 続いて | 次にと置き換えても意味は変わりません |
| なお | 一行ごと省いて、本文に溶け込ませます |
| 追伸 | 書き足さず、本文の中へ書き入れます |
手紙やメールで追伸を書かないのは、書き足すという行いそのものがあとに続くことを示してしまうためです。伝え忘れに気づいたときは末尾に付け足さず、便箋を一枚取り替えて本文を書き直すほうが早く収まります。
実際に困るのは、書き終えた便箋の余白に一行だけ足したくなったときで、 封をする直前に思い出した弔問の日取りや、供花の手配についてのひと言がそれにあたります。 書き直すのは手間ですが、あとから足した一行は筆跡の勢いまで違って見えますので、どうしても目に留まります。
言葉のほうは、次にという語や改めてという語に置き換えるだけで、伝わる内容は何も減りません。 弔電の定型文を選ぶときも、末尾に引き続きで始まる一文が組み込まれていないかだけを見ておけば、 送信する前にそこで直せます。
直接的な表現と言い換え
ご遺族と少し長く話す場面になると、故人がどのような最期だったのかという話題に触れずにいるのが難しくなります。 相手が話し始めた流れに合わせているうちに、こちらの言葉づかいだけが日常のままになりがちです。
分かれ目になるのは、その語がご遺族にその日の場面を思い起こさせるかどうかという一点で、 指している事実は同じでも、耳に届いたときの響き方はまるで違います。 慣習として決まっている言い換えの多くは、この一点から生まれたものです。
| 避ける言葉 | 言い換え |
|---|---|
| 死ぬ・死亡 | ご逝去、お亡くなりになると言い換えます |
| 急死・突然死 | 突然のご逝去という言い方に改めます |
| 生きていたころ | ご生前、お元気だったころに置き換えます |
| 死体・遺体 | ご遺体、お体という言い方にしておきます |
| 自殺・事故死 | 触れずにおくのが、いちばん静かに済みます |
| とんだこと | 思いがけないことと言い換えれば足ります |
この表のなかで唯一、言い換えでは済まないのが死因そのものです。こちらから尋ねることはせず、ご遺族が自ら口にされたときにだけ静かに受けてください。やわらげた言い方を用意しても、話題にした時点で相手に説明をさせることになります。
気をつけたいのは、故人と親しかった人ほどこの話題に入りやすいところで、 生前のご様子を懐かしむつもりで口にしたひと言が、そのまま最期の場面の話へつながっていくことがあります。 通夜ぶるまいの席のように腰を落ち着けて話す場では、とくに起こりやすい流れです。
話が最期のことへ向かい始めたら、ご生前という言葉をひとつ挟んで、元気だったころの出来事のほうへ戻しておけば十分です。 旅行先で撮った写真の話や、職場での仕事ぶりの話であれば、ご遺族の側も返しやすくなりますので、 席の空気もそこで落ち着きます。
不吉な数字・言葉
香典袋に包む額を決めるとき、関係と年代の目安を見て見当をつけたあとで、もう一度だけ手が止まる瞬間があります。 財布から取り出したお札が、たまたま4枚や9枚になっているときです。
弔事で避けられる数は、数そのものの意味からではなく読んだときの音から来ています。 口に出す場面だけの話に見えますが、金額やお札の枚数のように目に見える形でも同じ扱いを受けますので、 そこが分かりにくいところです。
| 避けるもの | 理由 |
|---|---|
| 四 | 死と同じ音になるため、金額や枚数でも外します |
| 九 | 苦と同じ音になるため、同じように外します |
| 浮かばれない | 成仏できないことを示すので、口にしません |
| 消える・落ちる | 縁起が悪いとされるため、別の語に替えます |
| 迷う | 故人が迷うことを思わせるので、避けます |
四と九は言葉のうえだけでなく、香典の金額とお札の枚数にも及びます。4千円や9千円を包まず、4枚や9枚を数えないという形で表れますが、包む額の目安を大きく動かさなくても、お札の組み合わせを変えるだけで避けられます。
実際に手が止まるのは、受付の列に並んでから中袋の中身を思い返したときで、 1万円を1枚で包んだつもりが5千円を2枚にしていた、といった数え違いに気づくこともあります。 列を離れて数え直すのは難しいため、家を出る前に袱紗を開いて一度確かめておくのが確実です。
言葉のほうは、浮かばれないという語がとくに出やすく、まだお若かったのにという気持ちがそのまま形になった言い方です。 同じ気持ちは、さぞ心残りでいらしたでしょうという言い方でも伝わりますので、 口をついて出そうになったらそちらへ置き換えてください。
宗教によって避ける言葉
訃報を受け取った時点では、どの宗派で葬儀が営まれるのかまで分かることは多くありません。 斎場の名前と日時だけが書かれていて、宗教の別にはひと言も触れていない知らせも珍しくないためです。
忌み言葉とは別に、宗教の考え方そのものが前提に入っている言葉があり、 相手の宗派によっては、その前提のほうが合いません。 弔事の決まり文句として覚えている言い回しほど、この当てはまりがあります。
| 言葉 | 使える | 使わない |
|---|---|---|
| ご冥福 | 仏式で使えます(浄土真宗は除きます) | 浄土真宗・神道・キリスト教では使いません |
| 成仏・供養 | 仏式の葬儀であれば差し支えありません | 神道とキリスト教の式では使いません |
| お悔やみ申し上げます | 宗教を問わず、そのまま使えます | 避けなければならない場面はありません |
| 哀悼の意を表します | 書面向きで、宗教を問わずに使えます | 話し言葉にすると、やや硬く響きます |
宗派が分からないままご遺族の前に立つことになったときは、お悔やみ申し上げますのひと言にしておけば外しません。宗派を尋ねて確かめるより、どこでも通る言い方を選んでおくほうが、その場では静かに収まります。
判断に迷いやすいのが浄土真宗で、同じ仏式でありながら、亡くなった方はただちに仏になるという考え方を取るため、 冥福を祈るという言い方が前提のところで合いません。 門徒の多い地域では、この違いが日ごろの言葉づかいにも表れています。
会場に着いてから宗派を知る手がかりになるのは、祭壇の形と受付に置かれた表書きの見本で、 神式であれば玉串をのせる台が用意され、キリスト教式では白い花が並びます。 それを目にしてから言葉を選び直しても、遅くはありません。
お悔やみの言葉と関係別の例文を見るどこまで気にするか
一覧を目で追っていくと、ふだん何気なく使っている言葉がいくつも並んでいることに気づきます。 ここまで避けなければならないのかという気持ちになり、かえって口を開きにくくなってしまう方もいます。
実際には言葉があとに残る場面かどうかで重みがはっきり違っています。 同じ一語でも、読み返される場所とその場で消えていく場所とでは扱いが変わりますので、 どこで気を張るかという配分の問題になります。
| 場面 | 気をつけ方 |
|---|---|
| 弔辞・弔電 | 文字として残るため、送る前に読み返します |
| 手紙・書面 | 追伸を足さず、本文のなかで書き終えます |
| 受付での挨拶 | 短いひと言で済むので、構えずに臨みます |
| 親しい友人との会話 | そこまで神経質にならなくて差し支えありません |
| うっかり口にしたとき | 言い直さず、そのまま話を続けてください |
この表のなかでいちばん目立つのは、実は言い直しのほうです。言い直せばその語をもう一度その場に出すことになりますし、聞いていた方の記憶にはかえって強く残りますので、気づいたとしてもそのまま先へ進んでしまうほうが静かに収まります。
弔事の言葉づかいで戸惑うのは、参列する側だけではありません。 鎌倉新書が運営する葬儀相談サイト「いい葬儀」が2026年2月27日から3月3日にかけて、 直近2年以内に喪主または喪主に準ずる立場を経験した全国の40歳以上の男女2,000件から回答を得た第7回お葬式に関する全国調査では、 葬儀を行った際に困ったこととして「お布施の相場・マナーがわからない」が346件で最も多く、 「葬儀の知識やマナーがわからない」が259件で続いています。
これは忌み言葉そのものを尋ねたものではなく、喪主を務めた方に困りごとをインターネットで聞いた意識調査ですが、 仏事の言葉づかいに自信を持てないでいるのは迎える側も同じだと分かります。 うろ覚えのまま口にした一語を、ご遺族の側がとがめることはまずありません。
忌み言葉に完全な一覧があるわけではなく、どこまで気にするかは地域やご家庭によっても違いますので、 すべてを覚えてから伺う必要はありません。 繰り返しを避けることと、死を直接には言わないことの二点だけを頭に置いておけば、 一覧に載っていない語に出会ったときも、その場で見当がつきます。
そのうえで力を入れる先を選ぶとすれば、読み返される弔辞や弔電、便箋にしたためる言葉のほうです。 受付での短い挨拶や通夜ぶるまいの席での会話は、言葉を選び損ねたとしてもその場で流れていきますので、 とっさに思い出せなかったことを、あとから気に病まずにおいてください。
よくある質問
忌み言葉とは何ですか?
不幸が繰り返される、続くことを連想させる言葉です。「重ね重ね」「たびたび」などの重ね言葉、「追って」「再び」などの続き言葉が代表です。「死ぬ」といった直接的な表現や、四・九といった数字も避けます。
「重ね重ねお悔やみ申し上げます」は使えませんか?
避けます。「重ね重ね」は不幸が重なることを連想させる重ね言葉です。「心よりお悔やみ申し上げます」に替えれば問題ありません。
「死亡」は何と言い換えますか?
「ご逝去」「お亡くなりになる」です。「生きていたころ」は「ご生前」「お元気だったころ」に言い換えます。死因そのものは、遺族が自ら話す場合を除いて話題にしません。
手紙に「追伸」を書いてはいけないのですか?
書きません。書き足すこと自体が「続く」ことを示すためです。同じ理由で「追って」「引き続き」といった続き言葉も避けます。
宗教によって避ける言葉はありますか?
あります。「ご冥福」は仏教の言葉のため、浄土真宗・神道・キリスト教では使いません。「成仏」「供養」も神道・キリスト教では避けます。「お悔やみ申し上げます」「哀悼の意を表します」は宗教を問わず使えます。
うっかり忌み言葉を使ってしまいました。言い直すべきですか?
言い直さず、そのまま続けて構いません。とくに気をつけたいのは弔辞・弔電・書面で、文字として残り読み返されるためです。受付での短い挨拶や親しい友人との会話では、そこまで神経質になる必要はありません。
まとめ
- 忌み言葉は繰り返しや継続を思わせる言葉を指します
- 重ね言葉には重ね重ね・たびたび・くれぐれもが入ります
- 続き言葉には追って・引き続き・再びが入ります
- 「死ぬ」は「ご逝去」に言い換えます
- 四と九は金額でも枚数でも避けます
- 「ご冥福」は宗派によって使いません
- 弔辞・弔電・書面ではとくに気をつけます
参考情報
- 全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)「お悔やみの言葉:状況に応じた正しい言葉遣いの基本とマナー」
https://www.zensoren.or.jp/dictionary/dictionary10/ - 小さなお葬式「「ご冥福をお祈りします」を使ってはダメ?マナーや文例を徹底解説」
https://www.osohshiki.jp/column/article/577/ - 家族葬のファミーユ「LINEでお悔やみの言葉を伝えても良い?注意点や相手別の例文を紹介」
https://www.famille-kazokusou.com/magazine/manner/692 - 鎌倉新書「いい葬儀」第7回お葬式に関する全国調査(2026年)(2026年2月から3月に実施・有効回答2,000件)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000009951.html
本文で引用した鎌倉新書「第7回お葬式に関する全国調査(2026年)」は、2026年2月から3月にインターネットで2,000件の回答を得たもので、忌み言葉そのものではなく、喪主を経験した方が葬儀の際に困ったことを尋ねた意識調査です。重ね言葉・続き言葉の分類と具体例、四・九を避けること、宗教別に避ける言葉は、参照した情報源に基づいています。言い換えの語は、一般的に用いられているものを挙げています。
本記事で紹介している言い回しは一般的な目安です。宗教・宗派・地域やご家庭の考え方によって、ふさわしい表現は異なります。相手との関係を踏まえて、無理のない言葉を選んでください。