結論
渡すのは法要が始まる前、僧侶が控室に落ち着かれたときが基本で、 挨拶とあわせて済ませてしまえば、そのあとは法要に集中できます。
切手盆に載せ、表書きが相手から読める向きにして両手で差し出しますが、 盆がなければ袱紗を開いてその上に載せれば同じように形が整います。
添える言葉は「本日はよろしくお願いいたします」で足りますし、 金額や恐縮の言葉を重ねると、かえって場が重くなってしまいます。
いつ渡すのがよいか
当日いちばん緊張するのが封筒を差し出すその瞬間で、 読経の前なのか後なのか、参列者の前で渡してよいのかを決めないまま 朝を迎えてしまう方が少なくありません。
迷いを解くのは僧侶と二人になれる時間がどこにあるかという見方で、 法要が始まってしまえば僧侶は祭壇の前に、施主は参列者の側にいますから、 落ち着いて渡せるのは開始前か、すべてが終わった見送りの場かのどちらかに絞られます。
| 場面 | どう扱うか |
|---|---|
| 法要が始まる前 | 控室で挨拶をするときに渡すのが基本の形です |
| 会食を終えた見送りの場 | この形も広く行われており、失礼にはなりません |
| 読経の最中 | 渡しません。終わるまで手元に置いておきます |
| 参列者が見ている前 | 控室へ移ってから渡すほうが収まります |
| 僧侶が到着してすぐ | 荷を下ろされるのを待ってから声をかけます |
| 寺院で営む場合 | 本堂へ入る前に、寺務所か控室で渡します |
| 複数の僧侶が来られた場合 | 導師の方にまとめてお渡しします |
前に渡すか後に渡すかはどちらでも構わず、前に渡す形は挨拶と一緒に済むので忘れずに終わりますし、後に渡す形は法要への感謝を述べながら渡せます。ただし施主は当日いちばん動き回る立場ですから、先に済ませておくほうが結果として取りこぼしがありません。
前に渡すことをすすめる案内が多いのは、施主が終盤にいちばん忙しくなるからで、 会食の会計、引き出物の渡し漏れ、親族の見送りが重なる時間に 封筒のことまで覚えていられる方はそう多くありません。
逆に、初めて来ていただく僧侶で、当日どこまでお願いするかが定まっていない場合は、 終わってから渡すほうが金額を決めやすくなります。 卒塔婆の本数がその場で変わることもありますし、 納骨まで営むかどうかを当日決める家もあるためです。
渡すときの手順
時機が決まっても、封筒をどう持って出せばよいのかで手が止まります。 鞄から出してそのまま差し出すのは避けたい形ですが、 では何に載せればよいのかを知らないまま当日を迎える方が多くいます。
正式とされているのは切手盆を使う形で、 封筒を一枚載せる程度の小さな黒い盆のことです。 仏具店や文具店で千円ほど、法事用の道具をひととおり揃えている家なら仏壇の脇にあります。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 袱紗から封筒を取り出し、切手盆に載せます |
| 2 | 表書きが相手から読める向きに回します |
| 3 | 盆を両手で持ち、胸の高さで差し出します |
| 4 | 短く言葉を添え、そのまま軽く頭を下げます |
| 5 | 受け取られたら、盆を引いて脇へ置きます |
| 複数の封筒があるとき | 御布施を上、その下に御車代と御膳料を重ねます |
| 座敷で渡すとき | 正座のまま、畳の上を滑らせて差し出します |
封筒の向きを相手側に回す一手間だけは省かないでください。自分から読める向きのまま出すと、受け取った僧侶が手元で回すことになりますし、その所作が目に入ります。盆に載せてから向きを整えるところまでを一続きの動作として覚えておけば、当日迷いません。
畳の部屋で渡す場合は、立ち上がらずに正座のまま盆を畳に置き、 相手の前へ滑らせる形が丁寧とされます。 立って見下ろす形にならずに済むためで、寺院の座敷ではこの形をよく見かけます。
椅子の応接室であれば、立ち上がって胸の高さで差し出せば足ります。 テーブル越しに置くのではなく、僧侶の正面に回ってから渡すと、 封筒を投げ出したような形にならずに済みますし、この違いは受け取る側にもはっきり伝わります。
渡す前に、封筒の中身をもう一度確かめてください
前日に用意した封筒を当日そのまま持ち出すと、金額の入れ違いが起こります。御布施と御膳料を取り違えて渡してしまう、卒塔婆料を入れ忘れたまま封をしてしまうといった間違いは、実際にめずらしくありません。
封筒には鉛筆で小さく用途を書いておくか、袱紗に入れる順番を決めておくだけで防げますし、渡してしまってからでは中身の確認を頼むわけにいきません。
添える言葉
封筒を差し出す動作と同じくらい迷うのが、そのときに何と言うかで、 黙って出すのも違う気がするし、長く述べると芝居がかってしまいます。
決めるのは渡す時機のほうで、法要の前なら来ていただいたことへの挨拶、 終わってからなら読経への感謝が中心になりますから、 同じ言葉を両方の場面に使い回そうとするとどこか噛み合わなくなります。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 法要の前に渡す | 「本日はどうぞよろしくお願いいたします」 |
| 法要のあとに渡す | 「本日はありがとうございました」 |
| 封筒を差し出しながら | 「些少ではございますが、お納めください」 |
| 遠方から来ていただいた | 「お足元の悪いなか恐れ入ります」 |
| 会食を辞退されたとき | 「お膳に代えさせていただきます」 |
| 御車代を添えるとき | 「お車代も同封しております」 |
| 金額に自信がないとき | 金額には触れず、感謝の言葉だけにとどめます |
「気持ちばかりですが」「少なくて申し訳ありませんが」と金額に触れるのは、かえって場を重くします。受け取る僧侶の側は、その場で中身を確かめるわけにいきませんから、多い少ないを言われても返す言葉がありませんから、感謝の一言に絞っておくほうが双方にとって落ち着きます。
言葉より先に伝わるのは差し出す速さと目線のほうで、 早口で言い終えて封筒を押しつけるように出すと、 内容が丁寧でも事務手続きのように見えてしまいます。
盆を胸の高さまで上げたところで一度動きを止め、相手の目を見てから言葉を置くと、 それだけで所作が整います。文言を思い出せずに詰まってしまっても、 頭を下げれば意図は伝わりますから、暗記しようとしなくて差し支えありません。
盆や袱紗がないとき
切手盆を持っている家はそう多くありませんし、法要の朝になって 仏壇の脇を探しても見つからないということが実際に起こりますし、 そこから仏具店へ走る時間まではとても残っていない、という場面です。
このとき考えるのは封筒を裸で手渡さない形をどう作るかだけで、 盆でなければならない理由はありませんから、 家にあるもので代用しても失礼にはなりません。
| 手元にあるもの | どう使うか |
|---|---|
| 切手盆 | 正式な形です。封筒を載せて差し出します |
| 袱紗だけがある | 開いて台にし、その上に封筒を載せます |
| どちらもない | 両手で持ち、封筒の下に手を添えて渡します |
| 小さめの黒い盆 | 切手盆の代わりとして問題なく使えます |
| ふくさ付きの金封 | そのまま台として使えるつくりになっています |
| ハンカチで代用する | 略式ですが、何もないよりは形になります |
| 紫の袱紗 | 慶事と弔事のどちらにも使えて便利です |
袱紗を台として使う形は略式ではなく、切手盆の次に丁寧な形として広く行われています。袱紗を開いて左手に載せ、その上に封筒を置いて向きを整え、両手で差し出せばそれで整います。袱紗の色は慶弔で分かれますが、紫だけはどちらにも使えますので、一枚持っておくと法事のたびに悩まずに済みます。
袱紗そのものがない場合は、封筒を汚さずに持ち運ぶことだけ考えてください。 鞄の中で他の書類と一緒にしておくと角が折れますし、 折り目のついた封筒を差し出すのは、盆がないこと以上に目につきます。
当日までに用意する時間があるなら、袱紗を一枚買っておくのがいちばん確実です。 千円ほどで手に入り、香典を包むときにも同じものが使えますから、 法事のたびに買い足す必要もありませんし、包み方から渡し方までは 袱紗の包み方と使い方にまとめています。
当日渡せなかったとき
前に渡すつもりが挨拶で紛れ、後で渡そうと思っていたら見送りが終わっていた、 という取りこぼしは施主の側でよく起こるもので、 気づいたときには僧侶の車がもう門の外へ出てしまっています。
あわてなくてよいのは、お布施に締め切りがないからで、 法要のその日に渡さなければ無効になるという性質のものではありませんから、 後日きちんと納めれば形は整います。
| 状況 | どうするか |
|---|---|
| 見送りの直後に気づいた | その日のうちに電話で断り、後日持参します |
| 数日たってから気づいた | 連絡のうえ、寺務所へ持参して納めます |
| 遠方で持参できない | 現金書留で送り、届く前に一報を入れます |
| 現金書留で送る場合 | 封筒ごと入れ、手紙を一枚添えます |
| 金額を間違えて渡した | 正直に伝え、差額を持参するのが早く済みます |
| 僧侶が受け取りを辞退された | 寺院の方針であれば、無理に押しません |
現金を普通郵便で送ることはできず、郵送するなら現金書留に限られます。専用の封筒は郵便局の窓口で扱っていますし、お布施の封筒はそのままの形で中に入れられますので、封筒を作り直す必要はありません。届いてから驚かせないよう、送る前に電話を一本入れておいてください。
添える手紙は長く書く必要がなく、当日に渡せなかった詫びと感謝を数行で足ります。 「本日は誠にありがとうございました」から始めて、 手違いで当日お渡しできなかったことを一行書き添えれば、それで通じます。
渡し忘れを気に病んで連絡を先延ばしにすると、 時間がたつほど切り出しにくくなります。 気づいたその日のうちに電話を入れてしまえば、 寺院の側も「よくあることです」と受けてくれますし、話はそこで終わります。
受け取りを辞退された場合は、押し返さないでください
まれに、寺院の方針としてお布施を受け取らない場合や、その法要に限って辞退される場合があり、そこで断られたものを重ねて差し出すのは、かえって失礼にあたります。
一度すすめて辞退されたらそこで引いて構いませんし、どうしても何か納めたい場合は、本堂の賽銭箱や志納金の箱がないかを尋ねてください。寺院として受け取れる形があれば、その場で教えてもらえます。
渡す時機や道具に決まった正解があるわけではなく、 法要の前でも後でも、切手盆でも袱紗でも、 その場で落ち着いて差し出せる形であればそれで十分です。 控室が使えない小さな法要なら、玄関先で渡すことになる日もあります。
どの場面でも変わらないのは、封筒を裸のまま片手で出さないことと、 金額の話を持ち出さないことの二つだけで、 この二つさえ守っていれば、手順を細かく思い出せなくても失礼にはなりませんし、 受け取る僧侶にとっても、そのほうが素直に受け取れるはずです。
御車代・御膳料はいくら?よくある質問
お布施はいつ渡しますか?
法要が始まる前、僧侶が控室に落ち着かれたときに挨拶とあわせて渡すのが基本です。会食を終えた見送りの場で渡す形も広く行われており、どちらでも失礼になりません。
お布施は手渡しでもいいですか?
切手盆に載せて両手で差し出すのが正式です。盆がなければ袱紗を開いてその上に載せてください。どちらもない場合は、封筒の下に手を添えて両手で渡します。
封筒の向きはどうしますか?
表書きが相手から読める向きに回して差し出してください。自分から読める向きのまま出すと、受け取った僧侶が手元で回すことになります。
渡すとき何と言えばいいですか?
法要の前なら「本日はどうぞよろしくお願いいたします」、後なら「本日はありがとうございました」で足ります。「些少ではございますが、お納めください」と添えても構いません。
「少なくて申し訳ありません」と言ってもいいですか?
金額には触れないほうが場が落ち着きます。受け取る側はその場で中身を確かめるわけにいかないので、多い少ないを言われても返す言葉がありません。
当日渡しそびれたらどうしますか?
その日のうちに電話で断り、後日寺務所へ持参してください。遠方であれば現金書留で送れます。お布施に締め切りはないので、後日きちんと納めれば形は整います。
お布施を郵送してもいいですか?
現金の郵送は現金書留に限られます。お布施の封筒はそのままの形で中に入れられますので、作り直す必要はありません。届く前に一報を入れておいてください。
まとめ
- 渡すのは法要が始まる前、控室で挨拶をするときです
- 切手盆に載せて、両手で差し出します
- 盆がなければ袱紗を開いて台にします
- 表書きが相手から読める向きに回します
- 言葉は「本日はよろしくお願いいたします」で足ります
- 金額の多い少ないには触れません
- 渡しそびれたらその日のうちに電話を入れます
- 郵送するなら現金書留を使います
参考情報
- 家族葬のファミーユ「【図解】お布施の書き方とは?表書き・中袋・宗教宗派・マナーなど」
https://www.famille-kazokusou.com/magazine/after/628 - はじめてのお葬式ガイド「お布施の金額相場はいくら?葬儀・法事別の目安と封筒の書き方・渡し方のマナー」
https://www.e-sogi.com/guide/3755/ - 小さなお葬式「お布施が少ないと言われたら?「お気持ちで」の目安が知りたい!」
https://www.osohshiki.jp/column/article/1369/
渡す時機については、法要の前に挨拶とあわせて渡すとする案内が多数ですが、法要後の会食を終えてから渡す形も広く行われています。切手盆を使うか袱紗にとどめるかも家庭や地域によって差があり、どちらでなければならないというものではありません。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。お布施は宗派・地域・寺院との関係によって考え方が大きく変わり、決まった正解があるものではありません。菩提寺がある場合は、そちらの慣習を優先してください。本記事は人付き合いと供養の作法を扱うもので、特定の宗派の教義を説明するものではありません。