結論
喪中に控えるのは祝う行いのほうであって、人を訪ねること自体ではありませんので、 年始に親戚や義実家へ顔を出すこと自体は差し支えありません。 こちらから新年を祝う言葉を口にしないというひと工夫だけで、年始の訪問はそのままの形で成り立ちます。
ただし四十九日を迎えていない忌中のあいだは控えるという考え方が広く残っていますので、 時期が重なるのであれば、松の内を過ぎてから日を改めるほうが行き違いになりません。 訪ねる前に一度だけ連絡を入れて、迎える側の意向を確かめておけば、当日になって双方が困ることもありません。
訪問してよい理由
身内を亡くした年の暮れになると、毎年出向いていた親戚の家へ年始に行ってよいものかどうかで迷いが出てきます。 年賀状を出せないことは知っていても、訪ねることまで控えるべきなのかどうかは、誰に聞けばよいのかも分かりません。
ここで混乱が生まれるのは、 喪中に控えるものが「祝うこと」であって「人と会うこと」ではないという区別が知られていないためです。 年賀状を出さないのは新年を祝う言葉が載っているからであって、訪問そのものに祝う意味があるわけではありません。
| 行い | 喪中の扱い |
|---|---|
| 親戚の家を訪ねる | 控える必要はなく出向いて差し支えありません |
| 年賀状を出す | 祝う言葉が載るので出しません |
| 新年を祝う言葉 | 口にせず別の挨拶に置き換えます |
| 神社への初詣 | 忌中は控えるという考え方があります |
| お寺への参拝 | 喪中でも差し支えないとされています |
| おせちや祝いの席 | 家によって考え方が分かれます |
神社と寺とで扱いが分かれているのは、死を穢れとみなす考え方が神道の側にあるためだと説明されています。寺への参拝は喪中でも差し支えないとされていますので、初詣を控えたくないのであれば寺のほうへ足を向ける手もあります。ただし考え方には家や地域によって幅がありますので、判断に迷うのであれば菩提寺や親族に確かめておくと安心です。
実際に迷うことになるのは、義実家から「今年も例年どおりに」と声がかかったときで、断る理由も見つかりません。 こちらが喪中であることは向こうも知っているはずなのに、あえて誘われるとどう応じてよいのかが分からなくなります。
先方から招かれているのであれば出向いて差し支えありませんし、新年を祝う言葉さえ口にしなければそれで形は整います。 家によっては祝いの席を設けていることもありますので、そこに加わるかどうかだけは事前に確かめておくほうが落ち着きます。
忌中は避けます
年末に葬儀を終えたばかりだと、正月まで日がありませんので、訪問を控えるべきかどうかで判断が難しくなります。 喪中と忌中という二つの言葉を耳にしたことはあっても、その違いがどこにあるのかまでは分からないものです。
ここで区切りになるのは四十九日を過ぎているかどうかという一点で、 その日までを忌中、一年ほどを喪中と呼び分けるのが広く見られる形になっています。 忌中にあたるあいだは人の家を訪ねることまで控えるという考え方が、地域によっては今も色濃く残っています。
| 時期 | 訪問の扱い |
|---|---|
| 四十九日を過ぎていない | 訪問そのものを控えるのが一般的です |
| 四十九日を過ぎている | 出向いても差し支えありません |
| 神道の場合 | 五十日祭までを忌中とする考え方があります |
| どうしても会いたい | 松の内を過ぎてから日を改めます |
| 相手から誘われた | 事情を伝えて時期をずらします |
| 同居している家族 | 訪問にはあたらないので気にしません |
忌中の期間の数え方は宗派や地域によって幅がありますので、菩提寺や親族に確かめておくのが確実です。神道では五十日祭までを忌中とする考え方もありますし、家によっては一周忌まで控えるという場合もあります。周囲の言うことが食い違ってしまったときは、いちばん近い親族の考え方に合わせておけば、その後も角が立ちません。
判断に困るのは、忌中にあたるのに相手から強く誘われるという場面で、断ると角が立ちそうに感じられます。 相手の側にはまったく悪気がなく、むしろこちらの気持ちを引き立てようとして声をかけていることも多いものです。
忌中であることを一言伝えたうえで、松の内が明けてから改めて伺いたいと返せば、たいていは受け入れてもらえます。 断るのではなく時期をずらす形にすれば、相手の誘いを退けたことにもなりませんので、その後の付き合いにも響きません。
自分が喪中の場合
こちらが喪中であることを相手が知らないまま訪ねると、玄関先で「明けましておめでとう」と迎えられます。 そこで初めて事情を伝えることになりますので、迎えた相手のほうが気まずい思いをするという形になってしまいます。
こうした行き違いを防ぐ手がかりになるのは、 訪ねる前に一度連絡を入れておくという一点で、 相手の側も迎え方を整えられますので、当日になって双方が言葉に詰まることがなくなります。
| 場面 | 進め方 |
|---|---|
| 訪問の前 | 喪中であることを電話で伝えておきます |
| 玄関先の挨拶 | 「本年もよろしくお願いします」と伝えます |
| 祝う言葉 | こちらからは口にしないでおきます |
| 相手が祝いの言葉を言った | そのまま受けて差し支えありません |
| 服装 | 喪服にはせず落ち着いた装いにします |
| 訪問の時間 | 長居せず短めに切り上げます |
相手がこちらの事情を知らずに祝いの言葉をかけてきたときは、そのまま受けておくほうが場が収まります。そこで「喪中ですので」と言って訂正してしまうと、相手に失言をさせたという形になってしまいます。事情のほうは座ってから改めて伝えれば十分ですし、そのほうが玄関先で相手を立たせたままにせずに済みます。
服装のことで迷いやすいのは、喪中であることを装いでも示したほうがよいのではないかと考えてしまう場面です。 黒い装いで訪ねると相手の家の正月の空気まで変えてしまいますし、迎える側も気を遣うことになります。
喪中であっても正月の訪問に喪服を着ていく必要はありませんので、華やかすぎない落ち着いた装いであれば十分です。 赤や金の入った晴れ着を避けておく程度で足りますし、そこまで細かく人の装いを見ている方はほとんどいません。
相手が喪中の場合
訪ねる先の家のほうが喪中だと分かっているときは、行ってよいものかどうかで前の年よりも慎重になります。 毎年の付き合いを絶やしたくない一方で、正月から押しかけて負担をかけたくないという気持ちも働きます。
ここで判断の軸になるのは礼儀の重さではなく、 相手の家がいま人を迎えられる状態にあるかどうかという点です。 葬儀からの日が浅ければ家の中はまだ片づけの途中ですし、弔問に来られる方が続いて疲れが出ていることもあります。
| 場面 | 配慮 |
|---|---|
| 訪ねる前 | 都合を尋ねて意向を確かめます |
| 玄関先の挨拶 | 祝う言葉を使わずに切り出します |
| 滞在の長さ | いつもより短めに切り上げます |
| 仏壇がある家 | 手を合わせてよいか一言尋ねます |
| 断られたとき | 気にせず時期を改めます |
| 子どもを連れる | 相手の様子を見て決めます |
仏壇に手を合わせるかどうかは、家によって望むところが分かれますので一言尋ねてから決めてください。年始の訪問がそのまま弔いの場になってしまうことを避けたいと考える家も、少なからずあります。「お参りさせていただいてもよろしいですか」と一言尋ねておけば、相手の側から望む形をそのまま伝えてもらえます。
迷いやすいのは、相手から「今年は遠慮してほしい」と伝えられた場合で、退けられたように感じてしまいます。 毎年続けてきた行き来だけに、一年空くことでそのまま疎遠になるのではないかという心配も出てきます。
そのときは無理に押さずにいったん引き下がり、松の内を過ぎたころに改めて連絡を入れれば付き合いは続いていきます。 正月に会えなかったことを後まで気にする方はまずいませんし、時期をずらして訪ねるほうがかえって落ち着いて話せます。
手土産の扱い
年始の訪問には手土産を持っていくのが習わしですが、喪中が絡むと表書きをどうするかで手が止まります。 売り場で「御年賀」と刷られたのし紙を勧められると、そのまま使ってしまってよいものかどうかが気になります。
ここで気をつけたいのは、 「御年賀」という語に新年を祝う意味が含まれているという一点で、 喪中が絡む場面では、この三文字だけが場に合わなくなってしまいます。
| 状況 | 表書き |
|---|---|
| 自分が喪中である | 「御年賀」を避けて「粗品」にします |
| 相手が喪中である | 同じく「御年賀」は使いません |
| 松の内を過ぎている | 「寒中御見舞」に書き換えます |
| のし紙の水引 | 紅白を避けて無地の紙で包みます |
| 品物の中身 | 例年と同じもので差し支えありません |
| 何も書かない | 無地のままでも差し支えありません |
手土産そのものを控える必要はありませんので、表書きと包み方だけを変えれば場に合う一つになります。何も持たずに訪ねるほうが、かえって相手に余計な気を遣わせてしまうこともあります。中身は例年と同じもので構いませんので、店で「喪中の家に持っていきます」と伝えて包んでもらってください。
判断に困るのは、日持ちのする菓子折を選んでよいのかどうかという点で、家の中がまだ落ち着いていないこともあります。 弔問に来られる方が続いている家では菓子折が余っていることも多く、同じようなものが重なってしまうことがあります。
日持ちのするものや小分けになっているものを選んでおけば、相手の側も手の空いたときに好きなだけ口にできます。 冷蔵庫に入れなければならないものや、その日のうちに切り分ける必要があるものは、この時期には避けるほうが親切です。
会話で気をつけること
座って話し始めてみると、亡くなった方の話題に触れてよいのかどうかで言葉を選びかねることがあります。 触れないままでいると素知らぬ顔をしているように見えますし、踏み込みすぎれば相手をつらくさせてしまいます。
ここで手がかりになるのは、 こちらから細かく尋ねずに相手が話したいだけ話せるようにするという構え方です。 話したいと思っている方はこちらが黙っていても話し出しますし、触れたくない方は自分から別の話題へ移してくれます。
| 話題 | 扱い |
|---|---|
| 亡くなった方の思い出 | 相手が話し出したら聞き手に回ります |
| 死因や経過 | こちらからは尋ねないでおきます |
| これからのこと | 相手が触れるまで待ちます |
| 新年の祝いの言葉 | こちらからは口にしないでおきます |
| 励ましの言葉 | 言い過ぎず短くとどめます |
| ふだんの世間話 | そのまま続けて差し支えありません |
過度に気を遣った空気をつくってしまうと、迎えた側のほうがかえって気疲れしてしまうことがあります。亡くなった方の話をあまりに避け続けていると、こちらが話題を選んでいることが相手にも伝わってしまいます。世間話をふだんどおり続けながら、相手が触れたときにだけ受け止める形が、いちばん負担になりません。
言葉に詰まりやすいのは、相手が涙ぐんだ場面で、何か言わなければならないという気持ちが先に立ちます。 励まそうとして「元気を出して」と続けてしまうと、そこで話を切り上げさせたように受け取られることがあります。
無理に言葉を探そうとせずに黙ったまま間を置いていれば、相手のほうから続きを話し出すことがほとんどです。 場をつなごうとして話題を変えるより、そのまま座っているほうが相手にとっては受け止められたように感じられます。
喪中のお正月の過ごし方をまとめて確かめる喪中の年始の過ごし方にただ一つの正解があるわけではなく、家や地域によって考え方には幅がありますので、 いちばん近い親族の考え方に合わせておけば大きく外すことはありません。 訪問そのものを控える家もあれば、例年どおりに集まる家もありますし、どちらが正しいというものでもありません。
どの家を訪ねる場合でも変わらないのは、新年を祝う言葉をこちらから口にしないことと、行く前に一度連絡を入れることの二つです。 この二つさえ守っていれば、忌中の数え方や表書きの選び方を思い出せなくても失礼にはなりませんし、 迎える側にとっても、来ることが分かっているほうが心づもりをして待てるものです。
よくある質問
喪中に新年の挨拶回りをしてもいいですか?
訪問そのものを控える必要はありません。喪中に控えるのは祝う行いであって人と会うことではありませんので、新年を祝う言葉を口にしないというひと工夫だけで、訪問はそのまま成り立ちます。
忌中でも訪ねていいですか?
四十九日を迎えていないあいだは控えるという考え方が広く残っています。どうしても会いたいのであれば、松の内を過ぎてから日を改めるほうが行き違いになりません。
喪中のときは何と挨拶しますか?
「本年もよろしくお願いします」と伝えれば足ります。相手が知らずに祝いの言葉をかけてきたときは、そのまま受けておくほうが場が収まりますので、事情は座ってから改めて伝えてください。
喪中の訪問に喪服を着る必要はありますか?
ありません。黒い装いで訪ねると相手の家の正月の空気まで変えてしまいますので、赤や金の入った晴れ着を避けた落ち着いた装いであれば十分です。
相手が喪中のときはどう訪ねますか?
訪ねる前に都合を尋ねて意向を確かめてください。葬儀からの日が浅ければ家の中は片づけの途中ですし、来客が続いて疲れが出ていることもあります。滞在もいつもより短めに切り上げてください。
手土産の表書きはどうしますか?
「御年賀」には新年を祝う意味が含まれていますので、喪中が絡む場面では「粗品」にしてください。松の内を過ぎているのであれば「寒中御見舞」に書き換えます。中身は例年と同じもので差し支えありません。
亡くなった方の話題に触れてもいいですか?
こちらから死因や経過を尋ねることはせず、相手が話し出したら聞き手に回ってください。避け続けると話題を選んでいることが相手にも伝わりますので、世間話を続けながら受け止める形が負担になりません。
まとめ
- 訪問そのものは控えなくて差し支えありません
- 忌中のあいだは訪問を控えます
- 訪ねる前に連絡を入れて意向を確かめます
- 挨拶は「本年もよろしく」と伝えます
- 服装は落ち着いた装いにします
- 手土産は「御年賀」以外の表書きにします
- 死因や経過はこちらから尋ねません
- 気を遣いすぎず世間話も続けます
参考情報
- 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html
お年賀の時期(元日〜松の内)、紅白の蝶結びを使う点は、参照した情報源で共通しています。松の内の日付や喪中の扱いには地域差・家庭差があるため、本記事では幅をもたせて記載しています。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・ご家庭・宗派によって異なります。とくに喪中の過ごし方は考え方に幅があります。ご親族やお寺・神社にご確認ください。
忌中・喪中の期間や過ごし方は、宗教・宗派・地域によって考え方が異なります。本記事は広く見られる目安をまとめたものです。判断に迷う場合は、菩提寺や神社、ご親族にご確認ください。