結論

喪中の年であっても品物を持って挨拶に伺うこと自体に差し支えはありませんが、 「御年賀」という表書きだけは使わずにおきます。 「賀」という字が、祝うという意味をそのまま持っているためで、引っかかるのはそこだけです。

代わりに取れる形が二つあり、松の内のうちに伺うなら水引の無い白い紙を掛け、 日をずらせるなら松の内が明けてから「寒中御見舞」として渡します。

表書きを変える理由

年末のデパートの贈答売り場では、品物を選び終えたあとに、かけ紙の短冊へ何と入れるかを尋ねられます。 例年なら迷わず御年賀と答えているところですが、その年の春に義父を見送っていると、 その三文字を口に出してよいものかどうかで、レジの前で言葉に詰まることになります。

迷いをほどく手がかりは、控えるのが品物のほうなのか、名目のほうなのかという点にあります。 持っていくこと自体をやめるという結論と、持っていくけれど呼び名を変えるという結論とでは、 その日の玄関先での振る舞いまで変わってきます。

見るところ中身
「賀」という字祝うという意味を、そのまま持っている字です
「御年賀」の意味新年を祝うと言い切る表書きにあたります
品物そのもの菓子でも茶でも、控えなければならない理由はありません
挨拶に伺うことそれ自体が妨げられるものではありません
年賀状との共通点祝う形だけを控えるという考え方が共通しています

引っかかっているのは持っていく品物ではなく、その上に掛ける紙へ書く名目のほうです。持参する菓子折りそのものに祝いの意味が宿っているわけではありませんので、短冊の三文字を外してしまえば、あとは普通の贈り物として渡せます。新年を祝う言葉を載せた年賀状だけを出さないでおく、あの考え方とまったく同じ理屈です。

売り場では、こちらから何も言わなければ、かけ紙は紅白の蝶結びに御年賀と刷ったものが自動的に選ばれます。 年末のこの時期は担当の方も手が回らないほど混んでいますので、 黙って待っていると、そのまま包まれて紙袋に入ってしまいます。

止めるのは簡単で、品物を決めた時点で先方が喪中である旨をひと言伝えておけば、 短冊を外した白い紙に替えてもらえますし、包装紙のほうも落ち着いた色から選び直してもらえます。 贈答売り場では珍しい注文ではありませんので、理由を細かく説明する必要もありません。

3つの選び方

喪中の年でも、年始に顔を出しておきたい相手というのは何軒か残ります。 勤め先の上司や、結婚のときに世話になった仲人、隣に長く住んでいる家など、 相手によって改まり方がまるで違いますので、同じ形で通そうとするとどこかで無理が出ます。

形を決めるときに見るのは、相手がどれだけ改まった間柄かと、 喪中なのがこちらなのか先方なのかの二つです。 同じ品物を持っていくにしても、この二つの組み合わせによって、取りやすい形が入れ替わります。

方法内容向いている場合
1. 無地の紙白い無地のかけ紙にするか、のしを付けずに包みます松の内のうちに伺うときに向きます
2. 寒中御見舞松の内が明けてから、表書きを替えて渡しますいちばん無難な形になります
3. 手土産としてのしを付けず、ふだんの手土産と同じ形にします気の置けない間柄であれば足ります

どれにするか決めきれないときは、2の寒中御見舞を選んでおいてください。日を後ろへずらしてしまえば、正月を祝う場面そのものから外れますので、表書きに気を遣う必要がなくなります。ご遺族の側も、松の内を過ぎたころには来客の応対に体力を回せるようになっています。

勤め先の上司の家へ松の内のうちに伺うと決めた場合は、1の白い無地の紙を掛ける形になります。 玄関先で白い紙の掛かった箱を差し出すことになりますので、 表書きが無いことを不審に思われないよう、渡すときに本年もよろしくお願いしますと先に述べておきます。

項目通常喪中
表書き御年賀と書き入れます何も書かないか、寒中御見舞にします
水引紅白の蝶結びを掛けます水引の無い、白い無地の紙にします
包装華やかな色でも差し支えありません落ち着いた色に替えてもらいます
品物とくに外すものはありません鯛や紅白の菓子は外しておきます
挨拶の言葉明けましておめでとうと述べます本年もよろしくお願いしますと述べます

品物まで見ておくのは、祝いの席を思わせる形をしたものが混じりやすい時期だからです。年末の売り場には鯛の焼き物や紅白の落雁が当たり前のように並んでいますし、詰め合わせの中に一つだけ紛れていることもあります。箱を開けて中身を一度確かめてから、包んでもらうようにしてください。

3の手土産として渡す形が取れるのは、互いの家を行き来しているような間柄に限られます。 紙を掛けずに菓子折りだけを渡しても不作法にならない相手であれば、名目の問題そのものが起きませんので、 いつもと同じように持っていって差し支えありません。

四十九日前は

12月の半ばに取引先の方から訃報が届き、そのまま年末に入ってしまうことがあります。 年が明ければ年始の挨拶回りの時期になりますので、いつもの順路に加えてよいものかどうかで、 手帳の予定を書いたり消したりすることになります。

ここで効いてくるのは、亡くなってからどれだけ日が経っているかという一点だけです。 喪中という言葉でひとくくりにされがちですが、四十九日を境にして家の中の慌ただしさはずいぶん変わりますし、 年始がその境目のどちら側に来るかで、伺ってよい日も変わってきます。

時期対応
四十九日前(忌中)訪問そのものを控えて、落ち着いてから伺います
四十九日を過ぎて松の内のうち伺って差し支えなく、白い無地の紙を掛けます
松の内が明けてから立春まで寒中御見舞として渡すのがおさまりのよい形です
一周忌より先通常どおりの形に戻している家庭が多くあります

いちばん確かなのは、伺う日を決めてしまう前に先方の意向を聞いておくことです。今年は静かに過ごしたいという家もあれば、いつもどおりにしてほしいという家もあり、外から眺めているだけでは見分けがつきません。先方の考えを尋ねること自体が失礼にあたる場面は、まずありません。

日をずらすと言っても、松の内がいつ明けるのかという感覚は、相手によってかなり違います。 一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会と一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団が令和5年11月から令和6年3月にかけて行った 「年中行事・儀式・儀礼についての全国意識調査」では、正月をいつまでと認識しているかという問いに対して、 三が日までと答えた人が70.2パーセントを占めていました。

これは11,478サンプルから回答を得た意識調査で、実際にいつまで松飾りを出していたかを記録したものではありませんが、 松の内までと答えた人は13.1パーセントにとどまる一方、70歳代では27.4パーセント、80歳以上では32.5パーセントまで上がっていました。 年配の相手ほど松の内という区切りが生きていることになりますので、 寒中御見舞に回すなら、電話で日を決めてから伺うほうが行き違いになりません。

立場別の対応

11月の終わりごろに喪中はがきが届くと、その相手のところだけ、年始の予定が宙に浮いた形になります。 年賀状を出さないでおくところまでは誰でもすぐ決められる一方で、 毎年持っていっていた菓子折りをどうするかは、はがきのどこにも書かれていません。

対応を決めるときに見るのは、喪中なのがどちらの側なのかという点です。 同じ玄関先でのやり取りでも、伺うこちらが喪中なのか、迎える先方が喪中なのかで、 気を配る先はまるで別のところに移ります。

立場対応
自分が喪中伺えますが、御年賀という表書きは使わずにおきます
相手が喪中四十九日を過ぎていれば、白い無地の紙を掛けて伺えます
双方が喪中寒中御見舞にそろえてしまうと、その年は迷わずに済みます
喪中はがきが届いた控えるのは年賀状だけで、訪問まで妨げられはしません

喪中はがきは、年賀欠礼という一点だけを知らせる便りです。訪問も贈り物もすべて辞退しますという意味は、あの文面のどこにも含まれていません。そこを取り違えて足が遠のいてしまう方が毎年いますし、遠のいた側にその自覚が無いことも少なくありません。

はがきを受け取ったあと、年賀状も出さず、電話もかけず、そのまま松が明けてしまう年があります。 こちらとしては気を遣って静かにしていたつもりでも、 先方から見ると、その年だけ連絡が一つも来なかったという事実だけが残ります。

年賀状を控えたぶんだけ、別の形で一度届けておくと収まりがよくなります。 松が明けたころに寒中見舞いのはがきを出すか、電話で都合を尋ねて品物を届けに伺えば、 年賀の挨拶を控えたことと、付き合いを続けていることが同時に伝わります。

訪問そのものは

実際に伺うと決めたあとで気になってくるのは、玄関先でどう振る舞うかという点です。 上がってお茶を出されたときにどこまで座っていてよいのか、仏壇に手を合わせると申し出るべきなのか、 故人の話を自分から持ち出してよいのかで、迷いどころは意外に多く残ります。

判断の軸になるのは、故人の話をどちらから始めるかという一点だけです。 こちらから踏み込むのか、先方が口を開くのを待つのかで、 同じ内容の会話でも、相手に残る疲れ方がまるで違ってきます。

場面振る舞い
伺う前先に連絡を入れて、都合のよい日を伺っておきます
玄関での挨拶本年もよろしくお願いしますと述べます
滞在の長さ長居はせず、短い時間で切り上げて失礼します
故人の話相手が話し始めたときにだけ、耳を傾けます
断られたときそれ以上は求めず、日を改めることにします

年始に誰ひとり訪ねてこないことのほうが応えるという家も、実際には少なくありません。喪中だから遠慮しておこうと周りの全員が同じ判断をすると、その家だけ人の出入りが無い正月になってしまいます。伺うかどうかは自分の側だけで決めずに、電話で一度意向を尋ねてから判断してください。

滞在を短くするのは、そっけないからではなく、迎える側の手間を増やさないためです。 来客があれば茶を出し、菓子を用意し、座敷を整えることになりますので、 葬儀からまだ日の浅い家では、一組の来客が半日分の疲れとして残ります。

玄関先で品物を渡し、体調を尋ねて引き上げるくらいでちょうどよく、 上がるように勧められたときだけ、短く腰を下ろせば足ります。 仏壇に手を合わせるかどうかも、先方から声を掛けられてから決めるほうが、互いに気を揉まずに済みます。

喪中の挨拶回りを詳しく見る

喪中のお年賀に、どの相手にも当てはまる一つの形があるわけではありません。 亡くなってからの日数も、先方がどれだけ改まった付き合いを望んでいるかも家ごとに違いますので、 白い紙を掛けて松の内に伺う年があっても、日をずらして寒中御見舞にする年があっても、 どちらも不作法にはあたりません。

形を選ぶ前に、電話を一本かけて都合を尋ねておくことだけは、どの相手にも同じように効きます。 伺ってよい日と、そっとしておいてほしい日は先方にしか分かりませんので、 そこを確かめたうえで表書きを決めれば、あとの細かい作法を思い出せなくても困ることはありません。

よくある質問

喪中にお年賀を渡してもよいですか?

品物を渡すこと自体は問題ありませんが、「御年賀」という表書きは使いません。「賀」が祝いを意味する字だからです。無地の紙にするか、松の内明けに「寒中御見舞」として渡してください。

どの方法がもっとも無難ですか?

松の内明けに「寒中御見舞」とする方法です。日を後ろへずらしてしまえば正月を祝う場面そのものから外れますし、ご遺族の側も松の内を過ぎたころには来客の応対に体力を回せるようになっています。

のし以外に変えることはありますか?

包装を落ち着いた色にし、鯛や紅白の菓子など祝い事を思わせる品物は外します。年末の売り場にはそうした品が当たり前のように並んでいますので、詰め合わせの中身も確かめてください。挨拶も「明けましておめでとう」ではなく「本年もよろしくお願いします」にします。店で「先方が喪中なので」と伝えれば対応してもらえます。

四十九日前でも訪問してよいですか?

控えるほうが親切です。忌中はご遺族が慌ただしい時期ですので、年始の挨拶に伺うこと自体を控え、落ち着いてから改めて伺ってください。

喪中はがきが届いたら訪問も控えるべきですか?

喪中はがきは「年賀欠礼」の知らせであり、訪問や贈り物を辞退するという意味ではありません。控えるのは年賀状だけです。混同して足が遠のく方が毎年いますが、先方から見ると、その年だけ連絡が一つも来なかったという事実だけが残ります。

訪問は控えたほうがよいですか?

控える必要はありません。年始に誰も訪ねてこないほうが応えるという家も実際にあります。喪中だから遠慮しておこうと周りの全員が同じ判断をすると、その家だけ人の出入りが無い正月になります。電話で一度意向を尋ねてから決めてください。

まとめ

  • 品物を渡すこと自体に差し支えはありません
  • 「御年賀」という表書きは使いません
  • かけ紙は水引の無い、白い無地のものにします
  • 松の内明けの「寒中御見舞」がいちばん無難な形になります
  • 四十九日前は訪問そのものを控えます
  • 喪中はがきは年賀欠礼の知らせにとどまります
  • 挨拶は「本年もよろしく」と述べます
  • 伺う前に電話で意向を尋ねておきます

参考情報

  1. 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
    https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
  2. 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
    https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html
  3. 高島屋「進物の基礎知識」
    https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html
  4. 全日本冠婚葬祭互助協会・冠婚葬祭文化振興財団「令和5年度 年中行事・儀式・儀礼についての全国意識調査(1万人アンケート)」(回答11,478サンプル)
    https://www.zengokyo.or.jp/assets/img/other-activity/report/10000people_survey_r5.pdf

本文で引用した全日本冠婚葬祭互助協会・冠婚葬祭文化振興財団「令和5年度 年中行事・儀式・儀礼についての全国意識調査」は、令和5年11月から令和6年3月にインターネットで11,478サンプルから回答を得たもので、実際の行動を記録したものではなく、回答者が正月をいつまでと認識しているかを尋ねた意識調査の集計です。お年賀の時期(元日から松の内)、紅白の蝶結びを使う点は、参照した情報源で共通しています。松の内の日付や喪中の扱いには地域差・家庭差があるため、本記事では幅をもたせて記載しています。(最終確認:2026年8月)

本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・ご家庭・宗派によって異なります。とくに喪中の過ごし方は考え方に幅があります。ご親族やお寺・神社にご確認ください。