結論
喪中の正月で控えるのは新年を祝うためのものだけですので、 年賀状と門松・しめ縄・鏡餅は出さずにおき、 おせちからは鯛や紅白の品といった祝いの印を外したうえで、普段の食事として並べます。
初詣は忌明けを過ぎていれば神社でも問題ないとされることが多く、 お寺であれば忌中のうちから参拝して差し支えないとされています。 ただし喪中の過ごし方は宗教や宗派、地域や家によって考え方に幅があり、 神社ごとにも扱いが違いますので、迷うところは尋ねておくほうが確実です。
忌中と喪中の違い
身内に不幸があった年の暮れになると、喪中の正月というひとことでまとめられているものが、 実は二つの期間に分かれていることに気づきます。 喪中はがきを書き始める時期と、初詣に行くかどうかを考える時期は、そもそも重なっていません。
ここで判断が分かれるのは、いま自分がどちらの期間にいるのかという一点で、 四十九日の法要を終えているかどうかで扱いが変わります。 夏に葬儀を出した家と、十二月に出した家とでは、 同じ正月を迎えても控える範囲がまるで違ってきます。
| 忌中 | 喪中 | |
|---|---|---|
| 期間 | 四十九日までを指し、神式では五十日になります | 一年ほどのあいだを、区切りとして数えます |
| 意味 | 身を慎んで、静かに過ごす期間にあたります | 故人を偲びながら、日常を戻していく期間です |
| 制限 | 祝い事も参拝も、この期間はいったん止めます | ゆるやかで、日常の行いは続けて構いません |
| 神社 | 鳥居をくぐるのは控えるとされています | 参拝しても差し支えないとされています |
忌中に神社を控えるとされるのは、神道が死を穢れと捉える考え方を持っているからで、その期間は鳥居をくぐらないという形で表れます。仏教にはこの考え方がありませんので、お寺への参拝は忌中であっても差し支えないとされています。
実際に迷うのは、十一月や十二月に葬儀を出した家で、 松の内のあいだはまだ四十九日を過ぎていないという場面です。 この年は年賀状も初詣も忌中の側の扱いで考えることになりますので、 控える範囲がふだんいわれる喪中よりも広くなります。
一方で、その年の春に不幸があった家であれば正月には忌明けを迎えていますから、 神社の鳥居をくぐっても差し支えないとされます。 ただし喪中の過ごし方は宗教や宗派、地域や家によって考え方が違いますので、 迷ったときは菩提寺や神社、親族に尋ねておくのが確実です。
控えるもの・してよいもの
喪中の正月というと、家のなかを何もかも普段どおりにはできないように思えてきて、 おせちの重箱を出すかどうかというところから手が止まります。 ただし実際には、控えるものと続けてよいものがはっきり分かれています。
その分かれ目になるのが、その行いが新年を祝うためのものかどうかという一点で、 この軸を先に持っておけば、一つずつ思い悩まずに済みます。 日々の営みや、感謝を伝えるための行いであれば、喪中であっても続けて構いません。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 年賀状 | 控えて、あらかじめ喪中はがきで知らせておきます |
| 門松・しめ縄・鏡餅 | 年神様を迎える設えですので、いずれも控えます |
| おめでとうの挨拶 | 使わず、本年もよろしくと言い替えて伝えます |
| おせち | 祝いの品を外せば、そのまま食べて構いません |
| お雑煮 | 正月の食事ですので、いつもどおり食べられます |
| 初詣(神社) | 忌明けを過ぎていれば、問題ないとされています |
| 初詣(お寺) | 忌中であっても、参拝して差し支えありません |
| お年玉 | お小遣いとして、無地の袋のまま渡せます |
| お年賀 | 表書きを替えれば、手土産として持参できます |
| 帰省・親族の集まり | 祝う行いではありませんので、そのまま出かけます |
祝うものは控え、日常や感謝にあたるものは続けるという一本の軸で見ていくと、表に載っていない場面でも自分で判断がつきます。年賀状を控えるのは新年を祝う便りだからで、お年玉を渡せるのは子どもへの贈り物という性格のほうが勝るからです。
実際にいちばん迷うのが、親族の集まりに顔を出してよいかどうかという点で、 故人の家に大勢が集まること自体をためらう人もいます。 ただし集まって食事をすることは祝う行いにはあたりませんので、 帰省も親族の顔合わせも、その年だけ取りやめる必要はありません。
席に着いてから困るのは、新年の挨拶がこちらへ回ってきたときで、 その場でおめでとうと言うべきかどうかを一瞬考えることになります。 喪中の側からは、本年もよろしくお願いしますと返しておけば足りますし、 その一言だけで場の流れを止めずに済みます。
初詣
初詣だけは控えるべきか行ってよいかで家のなかでも意見が割れやすく、 今年はやめようという人と、毎年の習慣として出かけたい人が同じ食卓に並びます。 神社と寺で扱いが違うということが、話をさらに分かりにくくしています。
判断の分かれ目になるのは、四十九日を過ぎているかどうかと、 参る先が神社か寺かという二つの組み合わせだけです。 この二つさえ決まれば行けるかどうかはその場で決まりますし、 玄関を出る直前になって迷う余地もなくなります。
| 場所 | 忌中(四十九日まで) | 忌明け後 |
|---|---|---|
| 神社 | 鳥居をくぐるのは控えるとされています | 参拝して差し支えないとされています |
| お寺 | 忌中でも参拝して構わないとされています | 時期を選ばず、いつでもお参りできます |
| お守り・お札の返納 | 家族の誰かに頼んで、返してきてもらいます | 自分で持参して、社務所へ返しておけます |
| お寺で受けたもの | 忌中でも、自分の手で返納できるとされます | 同じように、いつでも返しに行けます |
同じ忌中でも神社によって扱いが違い、参拝して構わないとしているところもありますので、迷うならその社務所へ尋ねておくのが確実です。一度電話で確かめておけば、家のなかで意見が割れたまま元日を迎えることもなくなりますし、当日鳥居の前で立ち止まらずに済みます。
実際に困るのは、去年受けたお守りやお札を返しに行きたいのに、 自分は忌中にあたるという場面です。 神社のものであれば家族の誰かに頼んで持って行ってもらう方法がありますし、 その日のうちに返さなければならないというものでもありません。
お寺で受けたお守りやお札であれば、忌中であっても自分の手で返納できるとされていますので、 そちらは年内のうちに済ませておけます。 忌明けを待ってから神社へ出向いても遅くはありませんから、 その年だけ時期がずれることを気に病む必要はありません。
おせち・お雑煮
大晦日の台所で手が止まるのが、例年どおりに重箱を出してよいのかという点で、 注文したおせちが届いてしまってから迷い始める家もあります。 食べること自体を控えるものだと思い込んで、正月の食卓が寂しくなってしまうこともあります。
実際に控えるのは料理そのものではなく、そのなかに混じっている祝いの印のほうで、 外すものだけ決めておけば普段どおりに食べられます。 どこまで外すかは家によって幅がありますので、 すべてを守らなければならないという性質のものでもありません。
| 品 | 扱いと理由 |
|---|---|
| 鯛・伊勢海老 | めでたい席の食材とされていますので、外します |
| 紅白なます・紅白かまぼこ | 紅白は祝いの色にあたりますので、控えます |
| 祝い箸 | 正月を祝うための道具ですので、普段の箸にします |
| 重箱に詰める | めでたさを重ねる意味があるとされ、皿に盛ります |
| 屠蘇 | 正月を祝うお酒ですので、その年は用意しません |
| お雑煮 | 正月の食事という性格が強く、そのまま食べられます |
並べたものをすべて外さなければならないというわけではなく、普段の食事として家族で静かに過ごせば十分だという考え方も広く見られます。鯛の尾頭付きだけをやめて、あとは例年どおりに作るという家もありますし、どこで線を引くかに決まった正解があるわけでもありません。
実際に扱いに困るのが、暮れのうちに注文しておいた重箱入りのおせちが、 葬儀のあとになって届いてしまう場合です。 届いたものを捨てる必要はありませんので、重箱から大皿へ移して並べ直せば、 祝いの形だけを外したうえで、普段の食事として囲めます。
お雑煮は祝いの意味よりも正月の食事という性格のほうが強いとされていますので、 喪中であっても例年どおりに作って構いません。 祝い箸だけを普段の箸に替えておけば、食卓に並ぶものはほとんど同じでも、 その年を迎える気持ちの向きは変わってきます。
正月飾り
玄関にしめ飾りを出すかどうかは、外から見える場所だけに、近所の目まで気になってきます。 喪中はがきを出した相手が門の前を通ることもありますので、 飾ってよいものかどうかで、松飾りを手にしたまま立ち止まることになります。
正月飾りが控えられるのは、それが家を華やかに見せるための装飾ではなく、 年神様を迎えるための設えだからです。 ただの飾りであれば控えめなものに替えれば済みそうにも見えますが、 迎えるための設えである以上、小さくすれば通るという性質のものではありません。
| 飾り | 扱い |
|---|---|
| 門松 | 年神様を迎えるための設えですので、控えます |
| しめ縄・しめ飾り | 玄関にも室内にも、その年は出さずにおきます |
| 鏡餅 | 供えずにおき、飾らないまま松の内を過ごします |
| 正月の生け花 | 派手なものを避ければ、飾って構いません |
| 忌明け後の扱い | 飾ってよいとする考えもありますが、控える家が多く見られます |
門松もしめ縄も鏡餅も、年神様を迎えるための設えという一点で共通していますので、三つまとめて控えると覚えておけば迷いません。忌明けを過ぎていれば飾ってよいとする考え方もありますが、実際にはその年いっぱい控える家のほうが多く見られます。
玄関に何も出さないと決めると、かえって近所から不作法に見えるのではないかと気になりますが、 喪中はがきを受け取っている相手であれば事情はすでに伝わっています。 門松のない玄関は、その年だけ静かに過ごしているということを、 言葉にしなくても外へ伝える形になります。
どうしても玄関先が寂しく感じられるなら、 正月飾りではなく季節の生け花を置いておけば差し支えありません。 色の強い枝ものを避けて白や淡い色の花で整えておけば、 新年を祝う形にはならないまま、玄関の印象だけが和らぎます。
お年玉
喪中の家に子どもがいると、正月の朝にポチ袋を出してよいものかどうかで、 渡す大人のほうが先に迷います。 祝い事を控えている年に、子どもだけが例年どおりというのは落ち着かないという気持ちも働きます。
ただしお年玉は、新年を祝うためのものというより子どもへの贈り物という性格が強く、 渡すこと自体は差し支えありません。 判断が分かれるのは渡すか渡さないかではなく、 袋の柄と表書きをどこまで整えるかというところです。
| 整えるところ | どうするか |
|---|---|
| 表書き | お年玉とは書かず、お小遣いとして手渡します |
| ポチ袋 | 無地か、落ち着いた柄のものを選んでおきます |
| 避ける柄 | 紅白や松竹梅の刷られた袋は、その年は使いません |
| 金額 | 例年と同じ額のままにして、下げずに入れておきます |
| 渡すときの言葉 | おめでとうとは言わず、今年もよろしくねと添えます |
表書きと袋の柄だけを替えておけば、渡す行いそのものを控える必要はありません。子どもの楽しみまで奪う理由はありませんし、額を下げると受け取った側が理由を考え始めますので、中身は例年どおりにしておくほうが穏やかに収まります。
実際に用意が要るのは十二月のうちで、 店先に並ぶポチ袋はほとんどが紅白や松竹梅の柄ですから、無地のものは意外に見つかりません。 文具店の小さな白い封筒や、和紙の袋でも差し支えありませんので、 早めに一枚買っておくと、当日になって探し回らずに済みます。
渡す場面でつい口をついて出るのが、あけましておめでとうという言葉です。 今年もよろしくね、と言い替えて手渡せば子どもの側は言葉の違いを気にしませんし、 同じ居間にいる親族にも、こちらの立場がそのまま伝わります。
喪中のお年玉を詳しく見る喪中の正月にこうしなければならないという一つの形があるわけではなく、 宗教や宗派、地域や家によって考え方には幅があります。 新年を祝う行いにあたるかどうかという軸だけ持っておけば、 表に載っていない場面に出会っても、その家なりの答えを出していけます。
どの家でも変わらないのは、控えるものと続けるものを家族のあいだで先に揃えておくことと、 迷ったまま元日を迎えないことの二つだけです。 判断のつかないところは菩提寺や神社、親族に一度尋ねておけば、 正月の朝に玄関先で立ち止まらずに済みます。
よくある質問
忌中と喪中はどう違いますか?
忌中は四十九日まで(神式は五十日)の身を慎む期間、喪中はおよそ1年の故人を偲ぶ期間です。制限は忌中のほうが強く、神社への参拝は忌中は控えるとされますが、喪中なら問題ないとされます。
喪中に初詣に行ってもよいですか?
神社は忌明け後なら問題ないとされます。忌中は、神道が死を「穢れ」と捉える考え方から控えるとされます。お寺にはこの考え方がないため、忌中でも問題ないとされます。ただし神社によって扱いが異なるため、気になる場合は参拝先に問い合わせるのが確実です。
おせちは食べてもよいですか?
食べて構いません。ただし鯛や伊勢海老、紅白なます、祝い箸、屠蘇など祝いの要素を外す配慮があります。すべてを守る必要はなく、普段の食事として家族で静かに過ごせば十分という考え方が広く見られます。お雑煮は問題ありません。
正月飾りはどうしますか?
門松・しめ縄・鏡餅は控えます。いずれも年神様を迎えるための飾りだからです。忌明け後なら飾ってよいとする考え方もありますが、控える家庭が多く見られます。
お年玉は渡してよいですか?
渡して構いません。子どもの楽しみを奪う必要はありません。表書きを「お小遣い」にし、ポチ袋を無地や落ち着いた柄にします。金額は変えません。
喪中の過ごし方に決まりはありますか?
「必ずこうする」という決まりはありません。宗教・宗派・地域・家によって考え方が異なります。判断に迷う場合は、ご親族や菩提寺、神社にご確認ください。
まとめ
- 喪中は祝う要素だけを控えます
- 忌中は四十九日まで、喪中は一年ほどを指します
- 年賀状と門松・しめ縄・鏡餅は控えます
- 神社は忌明け後なら参拝できるとされています
- お寺は忌中でも参拝できるとされています
- おせちは祝いの品を外せば食べられます
- お年玉はお小遣いとして渡せます
- 考え方に幅がありますので親族や寺社に確かめます
参考情報
- 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html
お年賀の時期(元日〜松の内)、紅白の蝶結びを使う点は、参照した情報源で共通しています。松の内の日付や喪中の扱いには地域差・家庭差があるため、本記事では幅をもたせて記載しています。なお忌中・喪中の期間や過ごし方については、宗教・宗派・地域によって考え方が大きく異なります。本記事は広く見られる目安をまとめたもので、唯一の正解を示すものではありません。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・ご家庭・宗派によって異なります。とくに喪中の過ごし方は考え方に幅があります。ご親族やお寺・神社にご確認ください。
忌中・喪中の期間や過ごし方は、宗教・宗派・地域によって考え方が異なります。本記事は広く見られる目安をまとめたものです。判断に迷う場合は、菩提寺や神社、ご親族にご確認ください。