結論
その日のうちに連絡し、弁償を申し出てください。 申し出るかどうかで、相手の受け取り方が変わります。
個人賠償責任の保険が使えることがあります。 火災保険や自転車保険の特約に含まれている場合があります。
まず連絡する
玄関で靴を脱ぎながら子どもが「友達のゲーム機を落として画面が割れた」と口にした瞬間、 頭の中が白くなってまず何をすればよいのかで手が止まります。 相手の家の電話番号は連絡網に載っているのに、受話器に手が伸びないまま夕方が過ぎていきます。
ここで分かれ目になるのはこちらから先に連絡したかどうかという一点で、 割れた画面を目の前で見た相手の子は、その日のうちに家で話しているのがふつうです。 相手の親からすれば、事情を知っているはずのこちらが黙っているように見えます。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 何をどう壊したのかを、子どもから確かめます |
| 2 | その日のうちに、相手の家へ電話をかけます |
| 3 | 詫びたうえで、弁償を申し出ます |
| 4 | 相手の意向を聞き、その場では決めきりません |
| LINEで済ませる | 金銭の話が絡むため、軽く見えてしまいます |
最初の連絡は電話にしてください。弁償という金銭の絡む話を文字だけで伝えると、こちらが重く受け止めていることがそのままには届きませんし、相手も金額の話を文字で切り出しにくくなります。顔が見えない分だけ、声の調子や間の取り方まで伝わる手段を選んでおくほうが、後々まで収まります。
実際に多いのは、子どもが「向こうも大丈夫と言ってくれた」と話すのを聞いて、 そのまま一晩様子を見てしまう形で、翌朝になって相手の親のほうから連絡が来ることになります。 その場で交わした子どもどうしのやり取りと、親どうしで交わす話はまったく別のものです。
電話では先に詫びてから経緯を話すほうが伝わりやすく、 「うちの子がお子さんの物を壊してしまい、申し訳ありません」と言ってから何がどう壊れたのかを説明すれば、 相手も落ち着いて聞けます。 事情のほうを先に並べると、同じ内容でも弁明のように響いてしまいます。
弁償の申し出方
電話がつながって詫びを伝えたあと、弁償の話をどう切り出すかで口ごもります。 値段を尋ねるのが図々しく思えてきて、「本当にすみませんでした」だけで受話器を置きたくなります。
判断が分かれるのはこちらから申し出るか、相手の言葉を待つかという点で、 弁償を求めるのは相手にとっても切り出しにくい話ですし、 こちらが先に口にすれば、相手は受けるか断るかを選ぶだけで済みます。
| 伝え方 | 扱い |
|---|---|
| 「弁償させてください」 | 金額を出す前に、こちらから申し出ます |
| 同じものを用意する | 相手に確かめてから、品を決めます |
| 修理費を負担する | 直せる物であれば、この形が収まります |
| 相手から言われるのを待つ | 相手にとっても切り出しにくい話になります |
| 勝手に同じものを買う | 思い入れのある品だったときに困らせます |
勝手に同じものを買って渡さないでください。祖父母からの贈り物や、大会でもらった記念の品ということがあり、同じ型の新品を並べてもそのまま代わりにはなりません。まず弁償させてほしいと申し出て、相手がどうしたいのかを聞いてから決めるほうが収まります。
よくあるのは、壊れたのが文房具店で買える定規や下敷きだったときに、 こちらの判断で同じ物を買って持って行く形で、 相手の子が使っていたのは名前を彫ってもらった品だったと渡したあとで分かっても、 新しい物を受け取った側はもう断りにくくなっています。
申し出るときは相手が選ぶだけで答えられる言い方にしておくとよく、 「同じ物をお持ちしましょうか、それとも修理に出すほうがよろしいでしょうか」と二つ並べれば、 相手は自分から金額を口にせずに済みます。 どちらもためらわれるようであれば、その場で決めずに一日置いても構いません。
金額の決め方
弁償を受けてもらえることになると、今度はいくら渡せばよいのかで止まります。 相手も値段を言いにくく、こちらも尋ねにくいまま、受話器の向こうで沈黙が続きます。
基準になるのはこれから実際にかかる費用のほうで、 買った当時の値段でも、持ち主が感じている値打ちでもありません。 同じ品の店頭価格か、修理に出したときの見積りであれば、双方が数字として受け入れやすくなります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 同じものが買える | その価格が、そのまま目安になります |
| 修理できる | 見積りを取り、修理費を負担します |
| 同じものがない | 相手の意向を聞いてから決めます |
| 高額なもの | まず保険が使えるかどうかを確かめます |
| 双方に非がある | 学校を交えて、事実から整理してもらいます |
| もめている | 自治体の法律相談の窓口を頼れます |
高額な品でもめている場合は、当事者だけで決めないでください。民法では壊した側が損害を賠償するという考え方が置かれていますが、金額や過失の割合の見方は立場によって食い違います。学校や保険会社、自治体の法律相談の窓口を挟むほうが、双方に納得できる形になります。
同じ「壊した」でも、割れたのが友達の水筒なのか、理科室のビーカーのような学校の備品なのかで話は変わり、 学校の物については弁償を求めるかどうかが学校や自治体の規定によって決まっていますので、 連絡帳や電話で担任に尋ねれば、その学校での扱いをその場で教えてもらえます。
友達の物であっても、取り合いになって手から落ちたというように双方に事情があるときは、 こちらだけで金額を決めてしまうと後から食い違いが出ますので、 学校を交えて何が起きたのかを整理してもらうほうが早く収まります。 担任は双方の子から話を聞ける立場にあり、親どうしで確かめ合うより角が立ちません。
保険が使えるか
金額の見当がついたところで、財布の中身を思い浮かべて息をのむことがあり、 自転車でぶつかって相手の眼鏡を壊したような場合は、数万円になることも珍しくありません。 ここで見落とされがちなのが、家で入っている保険から払える場合があるという点です。
該当するのは個人賠償責任の特約で、単独の保険として入るというより、 すでに入っているほかの保険に付いている形がほとんどです。 引き出しにしまったままの証券を一枚ずつ見ないと、付いていること自体に気づけません。
| 確かめる先 | 内容 |
|---|---|
| 火災保険 | 特約として付いていることがあります |
| 自動車保険 | 同じ特約を付けられる商品が多くあります |
| 自転車保険 | 加入を義務づけている自治体もあります |
| 共済 | 子ども向けの保障が含まれることがあります |
| 学校の保険 | 学校内の事故は対象になることがあります |
複数の保険に同じ特約が付いていることがあります。重ねて入っていても支払われるのは実際の損害額までで、二か所から受け取れるわけではありません。加入している保険の内容を証券を見ながら一度書き出しておくと、いざというときに迷わず動けます。
実際の流れとしては、火災保険の証券を引き出しから出してきて、 細かい字が並んだ特約の欄に「個人賠償責任」と印字されているのを見つける、という順になります。 証券が見当たらないときでも、保険会社の窓口に電話すれば契約者の名前から調べてもらえます。
使えると分かったらまず保険会社に流れを聞いておくほうがよく、 どういう書類が要るのかを先に把握しておけば、 いつ頃どういう形で支払われるのかを相手にも伝えられます。 相手を理由も分からないまま待たせるより、見通しを伝えておくほうが不信を招きません。
相手が辞退したら
弁償を申し出ても「子どもどうしのことですから、気にしないでください」と返ってくることがあり、 受話器を置いたあとで、本当にこのまま何もしなくてよいのかと落ち着かなくなりますし、 電話越しの声の調子だけでは、遠慮なのかどうかまでは読み取れません。
迷うのはその言葉が本心なのか、遠慮なのかという点で、 壊れた物の値段が小さいほど相手も受け取りにくくなります。 押し切れば恩を着せる形になりますし、そのまま引けば軽く扱ったように見えます。
| 対応 | 扱い |
|---|---|
| 一度は改めて申し出る | 日を置いて伝えると、本心が確かめられます |
| それでも断られたら受ける | 三度目は勧めず、そこで引いてください |
| 菓子折り程度を渡す | 形として、区切りをつけられます |
| 現金を置いていく | 受け取る側を、かえって困らせます |
| 何もしない | 言葉だけでも、改めて詫びを伝えます |
二度断られたら、そこで受け入れてください。それ以上勧めると、相手は受け取る形に追い込まれ、断ったこと自体を悪く感じることになります。菓子折り程度を渡して区切りにするのが、双方にとって収まりのよい形になります。
改めて申し出るのは日を置いてからのほうが伝わり、 次に顔を合わせたときや、子どもが持ち物を届けに行くついでに一言添えれば、 相手も構えずに答えられますが、 同じ日のうちに何度も電話をかけ直すと、それだけで催促のように受け取られます。
それでも断られたときは言葉のほうを丁寧に残すほうがよく、 千円ほどの焼き菓子の箱に「先日は申し訳ありませんでした」と一言添えて渡せば、 相手も気を遣わずに受け取れます。 封筒に入れた現金を玄関先に置いていくと、相手はその扱いに困ることになります。
壊された側になったら
立場が入れ替わって、子どもが折れた傘やひびの入った腕時計を黙って持ち帰ってくることもあり、 そのときは相手の家に言い出すかどうかで迷います。 子どもどうしはもう遊びに戻っているのに、親だけが気にしているようにも思えてきます。
分かれ目になるのはその品の値段と、相手の親が知っているかどうかで、 買い直しがきく物なのか、修理に出すしかない物なのかで、伝える必要のある範囲が変わります。 相手の親が何も知らされていないままであれば、こちらから伝えること自体が失礼にあたることはありません。
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| 高価なもの | 事実として伝えてよい範囲に入ります |
| 安価なもの | あえて求めないという選び方もあります |
| 相手から連絡がない | そもそも知らされていない場合があります |
| 伝え方 | 責める言葉を挟まず、事実だけを伝えます |
| 学校内の出来事 | 担任に相談してから動くこともできます |
相手から連絡がないのは、知らないだけということがあります。叱られるのを怖がって、子どもが家では何も話していない場合が珍しくありません。責める言葉を先に置かず、何がどう壊れたのかという事実だけを伝えてください。
伝えるときは弁償を求める形にしないほうが話が進みやすく、 「うちの子の傘が壊れたのですが、ご存じでしたか」と尋ねる形にすれば、 相手はそこから自分で申し出ることができますが、 先にこちらから金額を出してしまうと、相手は身構えたまま話を聞くことになります。
学校の中で起きたことであれば担任に一度相談してから動くという道もあり、 双方の子から話を聞いてもらったうえで連絡すれば、事実の食い違いが起きにくくなります。 安価な物であれば求めないという選び方もありますし、そこは各家庭の判断で構いません。
子どもが友達に迷惑をかけたときの伝え方を見る弁償の形に決まった正解があるわけではなく、 壊れた物の値段と、相手がどうしたいと考えているかを聞いたうえで、 互いに引きずらずに済む形を選べばそれで足ります。 同じ物を買って渡すことで収まる場合もあれば、修理費を持つほうが自然な場合もあり、 どちらが正しいということでもありません。
どの場面でも変わらないのは、こちらから先に連絡することと、 金額を決める前に相手の意向を聞くことの二つだけで、 この二つさえ守っていれば、細かい作法を思い出せなくてもこじれません。 子どもどうしがその後も同じように遊び続けられるかどうかは、親どうしのこの数日の運び方で決まります。
よくある質問
子どもが友達の物を壊しました。まず何をしますか?
何をどう壊したかを確かめ、その日のうちに電話してください。金銭が絡むため文字だけだと意図が伝わらず、相手も金額の話を切り出しにくくなります。
弁償は申し出るべきですか?
こちらから申し出てください。弁償を求めるのは相手も切り出しにくい話です。こちらから言えば、相手は受けるか断るかを選べます。
同じものを買って返してもいいですか?
勝手に買わないでください。贈り物や記念の品ということがあります。まず申し出て、どうしたいかを聞いてから決めてください。
弁償に保険は使えますか?
個人賠償責任の特約が使えることがあります。火災保険、自動車保険、自転車保険などに付いている場合があるので、加入内容を確かめてください。
相手が弁償を断りました。
一度は改めて申し出て、二度断られたら受け入れてください。それ以上勧めると、相手が受け取る形に追い込まれます。菓子折り程度を渡して区切りにするのが収まりのよい形です。
壊された側になったとき、弁償を求めてもいいですか?
高価なものなら伝えてよい範囲です。相手から連絡がないのは、子どもが親に話していないだけということがあります。責める前に、事実だけを伝えてください。
まとめ
- その日のうちに電話をかけます
- 弁償はこちらから申し出ます
- 勝手に同じものを買いません
- 個人賠償責任の特約を確かめます
- 二度断られたらそこで受け入れます
参考情報
- e-Gov法令検索「民法」(第709条 不法行為/第714条 監督義務者の責任)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「学校教育法」(第16条 保護者)
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
損害賠償の考え方として民法の条文を挙げていますが、実際に責任を負うかどうかは個別の事情によって判断されます。金額や過失の割合について争いがある場合は、学校や保険会社、法律相談の窓口にご相談ください。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。学校・保護者の付き合いは学校の方針と地域差がとくに大きい分野で、同じ市内でも慣習が違います。学校からの案内や、先に在籍している保護者の話を優先してください。