結論
退職や異動の餞別は紅白の蝶結びに「御餞別」と書くのが基本で、 職場を移るという出来事は次の勤め先でもまた起こりますので、 紐を引けば結び直せる蝶結びのほうを選ぶことになります。
ただし目上の方には「御礼」を使うほうが収まりがよく、 「餞別」という言葉には目下へ贈る響きがあるとされるためです。 これには諸説あって絶対的な決まりではありませんので、 迷うようであれば相手を選ばない「御礼」にしておけば、どの場面でも問題になりません。
のしは必要か
送別会の前日に商品券や品物を買いそろえたところで、 これにのし紙をかけてもらうべきなのかどうかというところで手が止まり、 売り場の包装カウンターの前で列を外れることになります。 職場の中で手渡すものですので、改まった贈答と同じだけ体裁を整えてしまうと、 渡すほうも受け取るほうも、その場で身構えることになります。
分かれ目は相手との親しさよりも、包むものが現金かどうかという一点にあり、 折り目のついたお札をそのまま手渡す形だけは避けたいところです。 品物のほうは、部署としてまとめて贈るのか、 同じ島の同僚へ個人的に手渡すのかによって、必要になる体裁がずいぶん変わってきます。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 現金を包む | 必ず祝儀袋に入れて包んでください |
| 改まった品物 | のし紙をかけて表書きを入れます |
| 部署から連名で贈る | のしをかけておくほうが丁寧に見えます |
| 親しい同僚へ | メッセージカードを添えれば足ります |
| 少額の菓子 | のしをかけなくても失礼にはなりません |
| 寄せ書きだけ | のしは要らず、そのまま手渡します |
現金だけは体裁の問題ではなく、裸のお札をそのまま渡す形が受け取る側を困らせますので、少額であればぽち袋でも構いません。品物のほうは改まった場面でなければのしなしでも問題になりませんので、店の包装紙のまま手渡しても差し支えありません。
部署でお金を出し合って包む場合は、祝儀袋の表に部署の名前が入りますので、 誰から誰へ贈られたものかが、袋を見ただけで分かります。 送別会の席で幹事が代表して手渡す形になりますから、 袋の体裁が整っているかどうかは、その場にいる全員の目に触れることになります。
同じ島で机を並べた同僚に個人的に贈るのであれば、 店の紙袋にメッセージカードを一枚添えるだけで、伝えたいことは十分に伝わります。 少額の菓子にわざわざのし紙をかけてもらうと、かえって受け取る側が改まってしまって、 その場で袋を開けるきっかけを失います。
水引の選び方
文具店の棚には祝儀袋が何段も並んでいて、 赤と白の紐が蝶の形に結ばれたものと、固く結び切られたものが同じ棚に置かれています。 どちらも同じ紅白ですので、退職する方に贈る袋としてどちらを取ればよいのかは、 棚の前に立っただけでは見分けがつきません。
選び分けているのは紐の色ではなく結び方のほうで、 贈る相手の身の上に起きた出来事が繰り返してよいものかどうかという一点で決まります。 退職も異動も転勤も、勤めを続けるかぎり次の職場でまた起こりうる出来事ですので、 解いて結び直せる形の水引を選ぶことになります。
| 結び方 | 使う場面 |
|---|---|
| 紅白の蝶結び | 退職・異動・転勤・定年に使う基本の形です |
| 結び切り | 餞別では使いませんので棚から外します |
| 本数 | 5本のものが一般的で、これで足ります |
| のし(右上の飾り) | 付いているものを選んで構いません |
| 結婚退職 | 名目によって扱いが変わりますので下に記します |
蝶結びを選ぶのは、紐を引けば解けて何度でも結び直せる形だからで、何度あってもよい事柄に使う結びとされています。退職も異動も転勤も次の職場でまた起こりうる出来事ですから、一度きりであることを願う結び切りとは、そもそも向きが逆になります。
結婚を機に退職する方へ贈るときだけは扱いが二つに分かれ、 結婚を祝う名目で贈るのであれば、 紅白の結び切り(10本)に「寿」や「御結婚御祝」を使います。 これまで一緒に働いた礼という名目で餞別を贈るのであれば、 ほかの退職や異動と同じく、蝶結びに「御餞別」のままで構いません。
袋を買いに行く前にどちらの名目で贈るのかを先に決めておけば、 文具店の棚の前で二種類の結び方を見比べて迷わずに済みます。 部署としてまとめて贈るのであれば、結婚祝いにするのか餞別にするのかを、 集金の声をかける段階で決めておくほうが、後になって揉めません。
蝶結びと結び切りの違いを見る場面別の表書き
袋を選び終えても、短冊に何と書くのかというところでまた手が止まり、 筆ペンの蓋を開けたまま机の前で考え込むことになります。 送り出す相手が定年を迎える部長なのか、隣の席の同期なのかで、 同じ「御餞別」の三文字でも受け取られ方がまるで変わってきます。
判断を分けているのは相手との上下と、 その退職や異動を祝える出来事として扱ってよいかどうかという、二つの点になります。 祝いの言葉を選べる場面と、礼だけを述べておくほうがよい場面とがあり、 ここを取り違えると、書いた文字がそのまま短冊に残ります。
| 場面 | 表書き |
|---|---|
| 一般的な退職・異動 | 「御餞別」「おはなむけ」のいずれかを書きます |
| 目上の方へ | 「御礼」「感謝」「御挨拶」から選びます |
| 定年退職 | 「御礼」か「祝定年御退職」を使います |
| 栄転・昇進を伴う異動 | 「御栄転御祝」「祝御栄転」と書けます |
| 転勤 | 「御餞別」でも「御礼」でも構いません |
| 結婚退職(祝う名目) | 「寿」または「御結婚御祝」と書きます |
| 産休・育休 | 「御祝」とし、のしなしでも差し支えありません |
「御餞別」を目上の方に使わないのは、餞別という言葉に目下へ渡す響きがあるとされるためですが、これには諸説あって絶対的な決まりではありません。少しでも気になるようであれば「御礼」にしておけば、贈る相手が上司であっても同期であっても、表書きで角が立つことはありません。
定年を迎える部長へ部署からまとめて贈るのであれば「御礼」が収まりよく、 長く世話になった礼という意味が、余計な説明なしにそのまま伝わります。 昇進を伴う異動であれば「御栄転御祝」と書けますが、 これは辞令の中身がはっきり分かっている場合にかぎった書き方になります。
迷ったときに「御礼」で足りるのは、 これまでありがとうございましたという気持ちが、どの相手にも当てはまるからです。 上司にも同期にも、定年にも転勤にも同じ言葉で通りますので、 短冊の前で長く悩むくらいなら、こちらを選んでおいて差し支えありません。
表書きの一覧を見る名前の書き方
短冊の上段を書き終えると、今度は水引の下に誰の名前を入れるのかで迷い、 集金に応じてくれた同僚の顔が次々に浮かんできます。 できることなら全員の名前を並べたいところですが、 短冊の幅は限られていて、実際に書き込める人数はそう多くありません。
書き方を決めているのは出し合った人数で、 少人数であれば一人ずつ名前を並べられますが、人数が増えるほど短冊には並べきれなくなります。 名前を並べる場合は誰を先に書くかという順序も生じますので、 人数の多い部署では、その気遣いのほうが書く側の負担になります。
| 形 | 書き方 |
|---|---|
| 個人 | 水引の下にフルネームを書き入れます |
| 部署でまとめる | 「営業部一同」のように部署名でまとめます |
| 3名までの連名 | 右から目上の順に並べて書きます |
| 4名以上 | 代表者名に「他一同」を添えて書きます |
| 会社として | 社名を右に、代表者名を左に書きます |
| 有志で | 「〇〇部有志一同」としておけば足ります |
4名以上を並べないのは、短冊の文字が細かくなって読みにくくなるうえに、誰を右に置くかという順序で書く側が気を遣うことになるためです。全員の名前は別紙に書いて袋の中に入れておけば、受け取った方が誰から集まったものかを、後からゆっくり確かめられます。
部署の全員から集めたのであれば「営業部一同」で足りますが、 声をかけた範囲がその一部にとどまるのであれば「〇〇部有志一同」としておきます。 部署の名前をそのまま使うと出していない人まで含んだ形になりますので、 どこまで声をかけたかで書き分けることになります。
3名までの連名にするときは、短冊のいちばん右に目上の方の名前を置き、 そこから順に左へ、役職の下がる順に並べていきます。 別紙は袋の中に折って入れておけばよく、短冊のほうは代表者名だけにしておくと、 字が大きいまま読みやすく収まります。
名前の書き方を詳しく見る気をつけたい場面
同じ退職でも、本人が体調を崩して辞めることになった場合や、 会社の都合で年度の途中に職場を離れることになった場合があります。 送別会の幹事を任されて袋を用意する段になって、 いつもと同じ表書きを書いてよいものかどうかが引っかかってきます。
ここで判断を分けているのは相手の役職や勤続の長さではなく、 その出来事を本人が前向きに受け止めているかどうかという点です。 祝いの言葉は祝える状況にある相手にだけ届くもので、 そうでない場面では、短冊に書いた「祝」の一文字が相手の負担になります。
| 場面 | 注意 |
|---|---|
| 体調不良による退職 | 「御祝」は使わず「御礼」にしておきます |
| 会社都合の退職 | 祝う表書きは避けて礼だけを述べます |
| 望まない異動 | 「御栄転」の表書きは使いません |
| 理由が分からない | 「御礼」にしておけば角が立ちません |
| 介護・家庭の事情 | 「御礼」として事情には触れません |
「御栄転御祝」を昇進を伴う異動にだけ使うのは、本人が望まない異動や降格を伴う異動でこの表書きを見せると、皮肉として受け取られるためです。辞令の中身まで分からないのであれば「御礼」にしておくもので、栄転であってもそうでなくても、表書きの意味はそのまま通ります。
体調を崩して辞める方や、介護や家庭の事情で職場を離れる方に「祝」の字を渡すと、 こちらにそのつもりがなくても、受け取る側の負担になります。 送別会の席で袋を開いたときに、その一文字だけが先に目に入ることもありますので、 表書きは事情を確かめてから決めることになります。
退職の理由をこちらから尋ねるのが難しい場面もありますが、 そのときこそ「御礼」にしておけば、どの事情であっても失礼になりません。 事情にいっさい触れないまま礼だけを述べる形にしておけば、 渡す側も送別会の席で、かける言葉を探して口ごもらずに済みます。
のし・水引のマナー全体を見る餞別ののしに一つだけの正解があるわけではなく、包むものが現金か品物か、 贈る相手が目上か同僚かを見て決めればそれで足ります。 部署でまとめて包むのであれば祝儀袋の体裁を整えておき、 隣の席の同期へ個人的に渡すのであれば、カードを一枚添えるだけで十分に伝わります。
どの場面でも変わらないのは、水引は解いて結び直せる蝶結びを選ぶことと、 書く言葉に迷ったら「御礼」にしておくことの二つだけです。 この二つを押さえていれば、表書きの一覧を細かく思い出せなくても、 渡された側が短冊の文字で戸惑うことはありません。
よくある質問
餞別にのしは必要ですか?
現金を包むなら必ず祝儀袋に入れるもので、裸のお札をそのまま渡す形が受け取る側を困らせます。改まった品物にはのし紙をかけますが、親しい同僚へのものや少額の菓子には要らず、メッセージカードを一枚添えれば十分に伝わります。
水引はどれを選びますか?
紅白の蝶結びで、紐を引けば解けて何度でも結び直せる形ですから、何度あってもよい事柄に使う結びとされています。退職も異動も転勤も次の職場でまた起こりうる出来事ですので、一度きりを願う結び切りは使いません。
表書きは何と書きますか?
一般的には「御餞別」や「おはなむけ」ですが、目上の方には「御礼」「感謝」を使うほうが収まります。餞別という言葉に目下へ渡す響きがあるとされるためで、これには諸説あって絶対的な決まりではありませんので、迷ったら誰にでも使える「御礼」にしてください。
結婚退職の場合は?
どちらの名目で贈るかによって扱いが分かれ、結婚を祝う意味であれば紅白の結び切り(10本)に「寿」や「御結婚御祝」を使います。これまで働いた礼として餞別を贈るのであれば、ほかの退職と同じく蝶結びに「御餞別」のままで構いません。
連名の名前はどう書きますか?
3名までなら、いちばん右に目上の方の名前を置いて順に左へ並べていきます。4名以上になると文字が細かくなって読みにくく、順序でも気を遣いますので「営業部一同」のようにまとめ、全員の名前は別紙に書いて袋の中に入れてください。
「御栄転御祝」はいつ使いますか?
昇進を伴う異動だと辞令の中身まで分かっている場合に限られ、本人が望まない異動や降格を伴う異動では皮肉として受け取られます。体調不良や会社都合の退職でも祝う表書きは避け、事情に触れないまま「御礼」として礼だけを述べてください。
まとめ
- 水引は紅白の蝶結びを選びます
- 表書きは「御餞別」が基本になります
- 目上の方には「御礼」を使います
- 迷ったら「御礼」にしておけば足ります
- 結婚退職はどちらの名目かを先に決めます
- 現金は必ず袋に入れて渡します
- 4名以上の連名は「一同」にまとめます
- 「御栄転」は昇進のときだけに使います
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
餞別やお返しの金額に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。職場ごとの慣行が優先します。前例を確認するのがもっとも確実です。出典は2026年8月15日に確認しました。
本記事で紹介している金額や品物は一般的な目安です。職場ごとの慣行が大きく異なります。前任者がどうしたか、部署の慣例があるかを確認するのがもっとも確実です。また贈ること自体が必須ではありません。