結論
上司から勧められたお酒は断って構いませんし、 立場の差があるぶん断りにくく感じられるのも無理のないところです。 ただし飲めるかどうかは生まれつきの体質やその日の体調で決まっていて、気持ちや努力で変えられるものではありません。
同時にここは勧める側が気をつけるべき場面でもあり、 上の立場から下の立場へ向けて注いで回りますと、 相手には断れない形になりますので、注文を取る段階で全員に希望を聞いておくほうが確実です。
断ってよい
乾杯が済んでしばらくした頃、上司が瓶を持って席まで回ってきますと、 注ぎ口の向いたこちらのグラスの前で、いったん相手の手が止まります。 断ってよいのかどうかを考えているうちに、注ぎ口はもうグラスの縁のところまで下りてきています。
迷いの元にあるのは、飲めるかどうかが気持ちの問題なのか、 それとも体の側ではじめから決まっているのかという点です。 お酒を分解する働きは生まれつき決まっていますので、場数を踏んだところで強くなるものではありません。
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| 体質 | そもそも分解できない体質の方がいます |
| 服薬中 | 飲んでいる薬との組み合わせに影響します |
| 妊娠中・授乳中 | 本人も周りも控える必要があります |
| 運転する | 帰りに運転するのであれば法令に触れます |
| その日の体調 | 理由を説明する義務まではありません |
断るときに理由を明かす義務はありませんし、持病や妊娠は本人以外が立ち入るところではありません。体質でと一言だけ添えれば断りとしては足りていますので、そこからさらに踏み込んで理由を尋ねるほうが、かえって問題になります。
注がれてしまってから断るより、瓶が近づいてきた時点でグラスの上へ手のひらを軽くかざすほうが、 注ぐ側にも断る側にも気まずさが残らずに済みます。 烏龍茶の入ったグラスを先に持って乾杯の形を作っておけば、注ごうとした側もそこで自然に手を止めます。
一杯目からソフトドリンクを頼んでおくのも同じで、最初に注文を取るときに烏龍茶と伝えておけば、 そのあと瓶を向けられる場面そのものが減ります。 飲めない体質であることは、席に着く前の段階で幹事へ伝えておいてもかまいませんし、そのほうが席の並びまで考えてもらえます。
言い方
断ると決めたところで次に詰まってしまうのが、何と言って断ればよいのかという言葉選びのほうです。 角が立たないようにと考えるほど言い回しは長くなり、 肝心の飲まないという一点が伝わらないまま、目の前で瓶が傾いていきます。
分かれ目は丁寧さの度合いではなく、飲まないという一点が相手に届いているかどうかで、 そこを濁しますと勧める側はどうしてよいのか分かりません。 あまり強くないものでという言い方は、少しなら飲めるという意味に受け取られて、そのまま注がれます。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 体質で飲めない | 「体質で飲めないもので、失礼します」と伝えます |
| 服薬中 | 「薬を飲んでおりまして」と短く添えます |
| 運転 | 「車で参りましたので」と伝えれば足ります |
| 今日は控えたい | 「今日は控えております」と言い切ります |
| 気持ちを添える | 「お気持ちだけありがたく」と結びます |
末尾に「お気持ちだけありがたく」を添えておきますと、断っているのはお酒であって相手ではないことが伝わります。勧めてくれたこと自体はきちんと受け取ったという形になりますので、言い切ったところで場の空気が固くなることはありません。
言い切ったあとに理由をあれこれ足す必要はなく、体質でと一言添えてグラスを持ち上げ、 軽く会釈をすればそこで話の区切りがつきます。 長く説明するほど、聞いている側はどこかに例外がないだろうかと言葉の隙間を探し始めてしまいます。
車で来ている日であれば、車で参りましたのでとだけ伝えれば、それ以上勧められることはまずありません。 運転する予定があるかどうかは相手の側にも分かりやすい線引きですので、 そこを先に出しておきますと、それ以上の押し問答にならずに話が早く済みます。
重ねて勧められたら
一度断ったはずなのに、しばらくすると同じ上司が別の瓶を持って戻ってくることがあります。 今日は特別だからとか、この一本だけは飲んでみてほしいといった言葉が添えられますと、 一度目より二度目のほうがかえって断りにくくなってしまいます。
ここで押し切られてしまいますと、帰りの電車で気分が悪くなり、翌朝の仕事にまで影響が残ります。 場の空気を保つことと自分の体を守ることを並べたときに、 どちらを取るのかという点で迷う必要は、はじめからどこにもありません。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| もう一度勧められた | 一度目と同じ言葉をそのまま繰り返します |
| 「一口だけ」と言われた | 体質は量の問題ではありませんので断ります |
| グラスに注がれた | 口をつけずに置いておいてかまいません |
| 周りが加勢する | 手洗いに立って間を置く方法もあります |
| 執拗に続く | 幹事や他の上長に伝えて間へ入ってもらいます |
注がれてしまっても飲まなければならない決まりはどこにもなく、グラスを手に持って乾杯の形を作るだけで席は成立します。無理に飲み干しますと帰り道にも翌日の仕事にも響いてきますので、口をつけないまま卓の上に置いておいてください。
立場を使った飲酒の勧めは、ハラスメントにあたる可能性があります
上司から部下への勧めは、本人にその意図がなくてもそれだけで断れない構造を伴い、受け取る側には圧力として働きます。席次の上で逃げ場のない位置に座らされていることもありますので、その場で断るのは思っている以上に難しくなります。
繰り返し受けているようでしたら、一人で抱え込まずに上司・人事・社外の相談窓口へ相談してください。急性アルコール中毒は生命に関わりますので、様子のおかしい方がいればその場で救急を呼ぶ判断が要る場面もあります。
同じ言葉を二度繰り返すことは相手に対して失礼にはあたりませんので、 一度目に使ったのと同じ言い方で、そのまま通してしまってください。 言い方を変えて別の理由を持ち出しますと、そのたびに新しい返し方をされて話が続き、かえって長引きます。
周りの席まで一緒になって勧めてくるようであれば、手洗いに立って数分だけ席を離れてください。 戻ってくる頃には話題がすっかり移っていることが多く、 卓の上に置かれていたグラスもいつのまにか下げられています。
勧める側の責任
年数を重ねますと、今度は自分のほうが瓶を持って席を回る側に立つ日がやってきます。 若い人と打ち解けたいという気持ちから注いで回っているのであって、 無理に飲ませてやろうという意図など、こちらにはどこにもありません。
それでも断る側の負担は釣り合っておらず、同じ「まあ一杯」という言葉でも、 上の立場から言われると受け取る側の重みがまるで違います。 こちらに悪気がないことと、相手が断りにくいこととは、まったく別のところで起きています。
| やること | 説明 |
|---|---|
| 先に希望を聞く | 注文を取るときに卓の全員へ尋ねます |
| 理由を聞かない | 私的な事情がありますので踏み込みません |
| 一度断られたら引く | そこで手を止め、重ねては勧めません |
| ソフトドリンクを揃える | 選択肢があると頼みやすくなります |
| 一気飲みを促す | どのような場面でも絶対に行いません |
注文の段階で卓の全員へ希望を聞いておくのがいちばん効くやり方で、飲まない方が自分のほうから切り出さずに済みます。そもそも断るという場面そのものが生まれませんので、あとで互いに気を遣い合うことも、瓶を持って席を回る手間もなくなります。
烏龍茶やノンアルコールの飲み物をはじめから何本か頼んでおきますと、 飲まない方も遠慮せずに卓の上へ手を伸ばせるようになります。 瓶とグラスしか並んでいない状態を作らないことが、言葉で気を遣うよりも先に効いてきます。
一度断られたところで素直に手を止めれば、その場はそれで収まりますし、 こちらが引いたことは相手にもきちんと伝わります。 もう一度だけと重ねますと、相手は同じ席で二度断ることになり、こちらが思っている以上の負担をその方に背負わせます。
断った後の関係
断った晩の帰り道になって、明日から気まずくなるのではないかと考え始めてしまう方は少なくありません。 翌朝には同じ部屋で顔を合わせることになりますし、 自分だけが場を白けさせてしまったような感じも、しばらく胸のあたりに残ります。
実のところ、断ったことが原因で翌日に何かが起きることはほとんどなく、 勧めた側はその場の勢いで口にしているだけです。 誰が飲んで誰が飲まなかったのかを、翌朝にはもう覚えていないことのほうがむしろ多いためです。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 翌日の様子が変わらない | 相手はとくに気にしていません |
| 翌日に触れられた | 笑って流してしまってかまいません |
| 態度が変わった | 飲酒とは別のところに原因があります |
| 評価に影響した | 相談窓口へ持ち込んで差し支えありません |
| 自分から詫びる | こちらから詫びる必要はありません |
断ったことを翌日になって詫びる必要はなく、詫びてしまいますと本当は飲むべきだったと自分から認める形になります。次に同じ席が来たときにまた勧められることにもなりますので、普段どおりに挨拶をして仕事を進めていれば、それで足ります。
翌朝に昨日は失礼しましたと切り出しますと、勧めた側は何のことだったのかを思い出すところから始めます。 かえって話が長くなってしまいますので、 いつもと変わらない調子で挨拶をしてそのまま席に着くほうが、結局は収まりがよくなります。
断った翌日から明らかに態度が変わり、それが仕事の割り振りや評価にまで及んでいるようであれば、 お酒を断ったこととは切り離した別の問題として扱ってください。 人事や社外の相談窓口へ持ち込める話ですし、一人で抱え込んだまま次の席を迎える必要はありません。
お酒の断り方の基本を見る断り方に決まった正解があるわけではなく、体質でも、薬でも、車で来ていることでも、 自分にとって本当のことを一つだけ挙げて言い切れば、それで十分に足ります。 理由を細かく並べる必要はありませんし、そこから先を相手が尋ねてくるようであれば、尋ねる側のほうに無理があります。
どの席でも変わらないのは、飲めないのなら濁さずに伝えることと、 注がれたとしても口をつけないでおいてよいことの二つだけです。 この二つが守れていれば、その場で多少の気まずさが残ったとしても、帰り道も翌日の仕事もいつもどおりに過ごせます。
よくある質問
上司から勧められたお酒は断ってもいいですか?
断って構いません。飲めるかどうかは生まれつきの体質で決まっていて、気持ちや努力で変えられるものではありませんので、場数を踏んでも強くはなりません。
断る理由を説明すべきですか?
義務はありません。持病や妊娠は本人以外が立ち入るところではありませんので、体質でと一言添えれば足りますし、そこから踏み込んで尋ねるほうがかえって問題になります。
「あまり強くない」と言うのはどうですか?
少しなら飲めるという意味に受け取られて、そのまま注がれます。飲めないのであれば言い切るほうが早く済みますし、「お気持ちだけありがたく」を添えれば角も立ちません。
重ねて勧められたらどうしますか?
一度目と同じ言葉をそのまま繰り返してください。言い方を変えて別の理由を持ち出しますと、そのたびに新しい返し方をされて話が続いてしまいます。
「一口だけ」と言われた場合はどうしますか?
その場合も断ってください。体質は量の問題ではありませんし、注がれてしまったとしても、グラスを手に持って乾杯の形を作れば席は成立しますので、口をつけずに置いて構いません。
周りまで一緒に勧めてくるときはどうしますか?
手洗いに立って数分だけ席を離れてください。戻る頃には話題が移っていることが多く、それでも執拗に続くようでしたら、幹事や他の上長に伝えて間へ入ってもらいます。
自分が勧める側のときは何に気をつけますか?
注文の段階で卓の全員に希望を聞いてください。飲まない方が自分から切り出さずに済み、断る場面そのものが生まれませんし、一度断られたらそこで手を止めます。
断った翌日、詫びたほうがいいですか?
必要ありません。詫びますと本当は飲むべきだったと自分から認める形になり、次の席でまた勧められることになりますので、普段どおりに挨拶をして仕事を進めてください。
まとめ
- 上司から勧められても断ってかまいません
- 飲めるかどうかは体質で決まっていて変わりません
- 理由を明かす義務はなく体質でと言えば足ります
- 濁さずに言い切るほうが結局は早く済みます
- 「お気持ちだけありがたく」と添えて結びます
- 注がれても口をつけずに置いておけます
- 勧める側は注文のときに全員へ希望を聞きます
- 翌日にこちらから詫びる必要はありません
参考情報
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html - 農林水産省「食文化のポータルサイト」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/index.html - 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
飲酒量については厚生労働省の指針を参照しています。食事の作法そのものに公的な基準はなく、広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。(最終確認:2026年8月)
飲酒は体質・体調・服薬状況によって影響が大きく異なります。飲めない方に飲酒を勧めることは、相手の健康を損なうおそれがあります。断る側・勧める側のどちらの立場でも、無理をしない・させないことを最優先にしてください。