結論

職場の飲み会は仕事の延長でありながら、同時に私的な集まりでもあるという二重の性格を持っていますので、 どちらの顔を立てればよいのかが分からなくなり、そのつど判断に迷うことになります。

迷ったときの軸は誰かに無理をさせていないかという一点で、 お酒を勧めるのも参加を求めるのも、相手が断れる形になってさえいれば、細かい作法を思い出せなくても場は収まります。

当日の流れ

入社して初めての歓迎会に呼ばれた日、駅前の居酒屋の暖簾をくぐったところで、 どこに座ればよいのか、いつ飲み物を頼めばよいのかが分からず、上着を抱えたまま入口で立ち尽くすということが起こります。 流れそのものを一度でも通しで見ていれば、この立ち往生は避けられます。

押さえておきたいのはその場その場で自分がどう動くかのほうで、 到着から解散までの順番は店が変わってもほとんど同じですので、どこで何が起きるかを先に頭へ入れておけば、幹事でなければ流れに乗るだけで済みます。

順やること
1幹事は15分前、参加者は5分前を目安に着きます
2席次に沿って座り、上座を空けておきます
3全員に飲み物が行き渡ってから乾杯します
4周りのグラスと取り皿の様子を見ておきます
5締めの挨拶を聞いて、いったん場を収めます
6会計を済ませたところで解散になります

六つの区切りのうち、いちばん長い時間を占めるのは四つ目の歓談です。ところがここには作法らしい作法がひとつもありませんので、周りのグラスが空いたままになっていないか、話の輪に入れていない方がいないかを見ていれば、それで役目は足ります。

到着の時刻は五分前でよく、それより早く着いてしまったときは店の前で待つより、 先に席へ通してもらって上着を掛け、卓の上のおしぼりや取り皿の数を数えておくほうが幹事は助かります。 人数分そろっていない卓は、乾杯のあとで必ず慌てることになります。

乾杯の前にひとつ気をつけたいのが、飲み物の届く早さの違いです。 生ビールは先に運ばれてくる一方で、烏龍茶やノンアルコールの飲み物は後回しになりがちですので、 手元にグラスが無い方を残したまま音頭を取ってしまわないよう、卓をひと回り見てから始めてください。

迷いやすい場面

飲み会で本当に迷うことになるのは、実のところごく限られた場面だけです。 箸の上げ下ろしで悩む方はまずいませんし、料理の取り分け方で夜中まで気に病むということもありません。

迷う場面に共通しているのは断りにくさが絡んでいるという点で、 注がれたお酒、誘われた二次会、続けて入る飲み会の日程といったものは、どれも相手との立場の差がそのまま重なってきます。

場面考え方
席順入口から遠いほうの席が上座になります
お酌必ずしなければならないものではありません
飲めない無理をせずに断って差し支えありません
途中で帰る一言伝えておけば、問題にはなりません
会計会費制であれば、事前に金額が決まっています
翌日のお礼持ってもらったのであれば、その旨を伝えます

ここに並べたどの場面でも、断ってよいというのがそのまま答えになります。飲み会の作法として語られていることの大半は、就業規則にも法にも根拠を持ちませんので、従わなかったからといって責められる筋合いのものではありません。

断ってよいという感覚は、公表されている調査の数字にもはっきり表れています。 共通ポイントサービスのPontaを運営する株式会社ロイヤリティ マーケティングが、2023年12月1日から8日にかけて、 国内の20代から60代の会社員と公務員1,000名へインターネットで行った調査があります。

そこでは仕事関係の飲み会でお酒を飲む必要はないと答えた方が20代で71.5%にのぼり、 最も低い60代でも55.0%と半数を超えていました。 お酌をしたことがある方は67.5%いた一方で、そのうち嫌だと感じたことがあると答えた方が20.1%含まれており、 年代を問わず断れる場であってほしいと考えられていることが読み取れます。

参加するかどうか

案内のメールが回ってきた時点で、行くかどうかから迷い始めることがあります。 その日は子どもの迎えがある、翌朝いちばんで会議が入っている、そもそも体調が戻りきっていないというように、事情のほうは人それぞれです。

押さえておきたいのは職場の飲み会は業務ではないという点で、 就業時間の外に行われ、会費も自分で払う集まりである以上、出るか出ないかを決めるのはあくまで本人ということになります。

状況考え方
都合が悪い無理に合わせず、断って差し支えありません
飲めない参加はできますし、飲む必要もありません
歓送迎会出られるようであれば、出るほうが自然です
毎回断っている気になるようなら、ときどき出れば足ります
参加が評価に影響する本来はあってはならないことになります

飲み会への参加を、業務命令のように扱うことはできません。就業時間外の私的な集まりですので、出欠を理由に評価を動かすのは筋が通りませんし、断ったことで実際に不利益を受けているのであれば、社内の相談窓口へ持ち込んで差し支えありません。

断り方で角が立つことを心配しがちですが、実際に角が立つのは断ったこと自体ではなく、 返事をしないまま日が過ぎて、幹事に人数を数え直させてしまう場合のほうです。 店の予約は人数で押さえていますので、早い返事がいちばん喜ばれます。

飲めない体質であることを毎回説明するのが負担だという方も少なくありませんが、 最初の一杯からウーロン茶を頼んでおけば、そのあとで注がれることも勧められることも自然と減っていきます。 歓送迎会のように主役のいる会だけは、出られるようなら顔を出しておくと、後々の頼みごとがしやすくなります。

帰る時機

飲み会は始まりの時刻こそ決まっているものの、終わりの時刻のほうは決まっていないことがほとんどで、 締めの挨拶が済んだあとにそのまま二次会へ流れることもありますので、いつ席を立てばよいのかで迷います。

切り出しにくさの正体は場の勢いを止めてしまうように見えるところにありますが、 黙って荷物をまとめて消えるほうが、あとで探されたり心配されたりして、かえって周りの手を止めることになります。

場面やり方
先に帰る幹事と、近くの席の方に一言伝えます
予定がある乾杯の前に伝えておくほうが楽になります
終電時刻を伝えれば、自然に切り上げられます
二次会誘われても、断って差し支えありません
黙って帰る心配をかけますので、避けてください

いちばん楽なのは、席に着いた直後の乾杯より前に伝えてしまうやり方です。今日は何時で失礼しますと先に言っておけば、途中で切り出す気まずさが要りませんし、幹事の側も締めの挨拶や会計の段取りを組みやすくなります。

席を立つときに気をつけたいのは、卓をひと回りして挨拶をして歩かないことです。 一人ずつに声をかけていくと場の話が何度も途切れますので、幹事と、両隣の席に座っている方へ短く伝えるだけで足ります。

二次会に誘われて断りにくいときは、次の予定を作らずに終電の時刻をそのまま伝えるほうが収まります。 駅まで歩く時間まで含めて言えば、無理に引き止められることはまずありませんし、 翌朝に会議を控えている日であれば、その旨をそのまま口にしても角は立ちません。

飲み会の記事

ここまでは当日の流れに沿って全体を見てきましたが、 実際に困るのはたいてい一点だけで、席順が分からないのか、お酌をどうするかなのか、会計の割り方なのかは人によって違います。

この場面ごとの迷いについては、それぞれ別の記事に分けて書いてあります。 席順、乾杯、お酌、断り方、途中で帰るとき、会計、翌日のお礼というように、困っている一点から直接読み始められるようにしてあります。

たとえば居酒屋の座敷に通されて、どこが上座なのか判断がつかないという場面であれば席順の記事に、 上役からお酒を勧められて断りきれないという場面であれば断り方の記事に、それぞれ具体的な手順が書いてあります。

忘年会や歓送迎会のように年に一度の会については、その会だけの事情もありますので、別に記事を立てています。 下に並べた一覧の中から、いま困っているものを選んでお読みください。

職場の飲み会に決まった正解の型があるわけではなく、顔ぶれと店の造りによって、 ちょうどよい振る舞いはそのつど変わってきます。 上役の多い席であれば席次を気にすることになりますし、同期だけで集まる日であれば、そこまで構える必要はありません。

どの席でも変わらないのは、誰にも無理をさせないという一点だけです。 飲めない方に勧めないこと、帰りたい方を引き止めないこと、この二つさえ守っていれば、 席次やお酌の作法を思い出せなくても失礼にはなりませんし、同じ卓に着いている方も落ち着いて最後まで過ごせます。

よくある質問

職場の飲み会には必ず参加しないといけませんか?

就業時間外の私的な集まりなので、参加は任意です。都合が悪ければ断って構いません。断ったことで不利益を受けているなら、社内の相談窓口に相談できます。

飲めなくても参加していいですか?

参加できます。飲む必要はありません。ソフトドリンクで乾杯しても問題になりません。

飲み会で迷いやすいのはどんな場面ですか?

席順、お酌、お酒を断ること、途中で帰ること、会計です。いずれも「断ってよい」が答えになります。飲み会の作法として語られることの多くは、実際には強制力を持ちません。

歓談中は何をしていればいいですか?

周りのグラスが空いていないか、話に入れていない人がいないかを見ていれば足ります。作法らしい作法はこの時間にありません。

先に帰りたいときはどうしますか?

幹事と近くの人に一言伝えてください。黙って帰ると心配されます。予定があるなら、乾杯前に「今日は〇時で失礼します」と言っておくと、途中で切り出す必要がなくなります。

二次会は断ってもいいですか?

断って構いません。翌日の仕事も家庭の予定もあります。

まとめ

  • 軸は誰にも無理をさせないという一点にあります
  • 参加も飲酒も任意で、断って差し支えありません
  • 到着は幹事が15分前、参加者は5分前を目安にします
  • 乾杯は全員に飲み物が行き渡ってから始めます
  • お酌は必ずしなければならないものではありません
  • 帰る時刻は乾杯の前に伝えておきます
  • 黙って帰りません

参考情報

  1. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38541.html
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-003.html
  3. 農林水産省「食文化のポータルサイト」
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/index.html
  4. 農林水産省「『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されています」
    https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
  5. ロイヤリティ マーケティング「Pontaリサーチ」仕事関係の飲み会に関する調査(2023年12月・有効回答1,000名)
    https://biz.loyalty.co.jp/report/104/

本文で引用したPontaリサーチの調査は、2023年12月にインターネットで行われた有効回答1,000名の意識調査であり、実際の飲み会の開催状況を集計したものではありません。飲酒量については厚生労働省の指針を参照しています。食事の作法そのものに公的な基準はなく、広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。(最終確認:2026年8月)

飲酒は体質・体調・服薬状況によって影響が大きく異なります。飲めない方に飲酒を勧めることは、相手の健康を損なうおそれがあります。断る側・勧める側のどちらの立場でも、無理をしない・させないことを最優先にしてください。