結論

勧められた席に腰を下ろすのが基本で、 上座と下座の理屈を先に立てて自分から席を選ぶと、かえって相手の段取りを崩すことになります。

お客様は入口から遠い側に案内されるのがふつうで、 和室に床の間があればその前がもっとも上位になります。 座布団は勧められてから乗るもので、改まった席のあいさつは座布団を外して畳の上で行います。

基本の考え方

部屋に通されたあと、ローテーブルの前で鞄を提げたまま立ち尽くしてしまうのは 訪問先でいちばん起きやすい場面で、勧められる前に腰を下ろしてよいものかどうかで手が止まります。 台所からお茶を用意する気配が聞こえてくると、こちらだけが立っているのも落ち着かず、なおさら決めかねます。

考え方としては席を選ぶのは招いた側という一点で決まり、 こちらが良かれと思って入口寄りに控えても、その席に家族の定位置が重なっていれば相手の段取りのほうが崩れます。 上座と下座のどちらに当たるかより、示された席がその家の答えだと受け取るほうが早く収まります。

場面対応
案内された迷わずその席に腰を下ろすのがいちばん収まります
何も言われない入口に近い側で立って待ち、勧められてから移ります
「どうぞこちらへ」理屈を持ち出さず、素直に従うほうが早く済みます
上座を勧められた一度だけ辞退し、重ねて勧められたら座ります
相手が座るまで立ったまま待っていると、より丁寧に見えます

辞退は一度で足りますので、「恐れ入ります」と言ってそのまま腰を下ろしてください。二度三度と断ると、相手はそのたびに勧め直すことになり、茶を出す手も止まります。理屈の上での上座がどこであっても、相手が示した席がその家の上座になります。

困るのは「適当に座っていてください」とだけ言われて相手が台所へ引っ込んでしまうときで、 通された和室には座布団が二枚、座卓をはさんで向かい合わせに置かれているだけということがあります。 向かい合わせの座布団のどちらが上座なのかも、部屋を眺めただけでは見当がつきません。

この場合は入口に近いほうの座布団の脇に膝を折って待てば足り、 戻ってきた相手が「そちらではなくこちらへ」と言えばそのとき移ればよく、何も言われなければそのままで構いません。 低いほうの席をあらかじめ選んでおけば、あとから上座を勧められても移るだけで済み、座り直しを詫びる手間が生まれません。

上座・下座の見分け方

上座と下座は言葉としては知っていても、通された部屋を見回して 床の間も見当たらず、入口も引き戸ひとつという間取りだと、 どちらが上でどちらが下なのか判断がつかなくなります。 集合住宅の居間なら、廊下側と台所側の二方向に入口があることも珍しくありません。

見分けの軸は落ち着いて座っていられる席かどうかという一点で、 人が絶えず出入りする扉のそばや、エアコンの吹き出し口の真下は、間取りがどれだけ立派でも落ち着ける席にはなりません。 目印はいくつも挙げられますが、どれを先に見るかという順序はおおよそ決まっています。

目印上座になる側
入口入口からいちばん遠い席が上座になります
床の間床の間を背にした席が、和室ではもっとも上位です
景色・庭庭の見える掃き出し窓の側を上座と考えます
長椅子と一人掛け二人掛け以上の長椅子のほうが上座になります
エアコンの風風の当たらない側を上座として差し支えありません

複数の目印が食い違ったときは、まず床の間があるかどうかを先に見てください。掛け軸と花を背にした席は和室でもっとも上位に当たり、入口からの遠さより優先されます。床の間のない部屋であれば、入口からいちばん遠い席と考えておけば外しません。

実際に迷いやすいのはテレビが壁の一面を占めている居間で、 入口から遠い席に座るとちょうど画面に背を向ける形になり、逆に手前の席のほうが庭も画面もよく見えるという配置があります。 理屈の上での上座と、実際に居心地のよい席とが、そこでは入れ替わってしまっています。

こうした部屋では家族の座る位置が長年で決まっていることがほとんどで、 座椅子の向きやクッションのへこみ具合を見れば、どこが誰の席なのかはたいてい見当がつきます。 空いている側に腰を下ろし、相手が別の席を指したらそちらへ移れば、それで済みます。

洋室の場合

洋室に通されると座布団のような迷いはなくなる代わりに、 三人掛けの長椅子と一人掛けの椅子が向かい合っている部屋で、どちらに腰を下ろすかという別の迷いが生まれます。 勧められた席が長椅子だったとき、真ん中に座るのか端に寄るのかも決めかねます。

洋室で問われるのはどの席かよりもどう腰かけるかという姿勢のほうで、 応接用の長椅子は深く沈み込むように作られていますから、背中を預けた途端に自分の家にいるような格好になります。 柔らかく広い座面ほど、姿勢が崩れていることに自分では気づきにくくなります。

姿勢目安
座り方座面の前半分に浅く腰かけると姿勢が保てます
背中背もたれからこぶし一つ分ほど離しておきます
足組まずに揃え、膝を軽く閉じておきます
手膝の上で軽く重ねておくと落ち着いて見えます
長椅子に座る位置遠慮せず、真ん中のあたりに落ち着いて構いません
親しい相手なら最初だけ整えれば、あとはくつろいで構いません

最初のあいさつと茶菓が出るまでのあいだだけ姿勢を整えておけば、それで十分に足ります。話が長くなってからも背筋を伸ばしたままでいると、相手のほうが気を遣って座り直すことになります。膝を揃えて肘をテーブルにつかずにいれば、そのあと多少くつろいだ格好になっても不作法には見えません。

実際によく起きるのは長椅子を勧められて端に小さく座ってしまう形で、 遠慮のつもりでも、残った座面が空いたままだと相手はそこへ荷物を置くこともできず、かえって扱いに困ります。 一人掛けの椅子がもう一つ空いたままになっていれば、長椅子の端に寄った姿はなおさら中途半端な位置に見えます。

勧められた席には遠慮なく座り、長椅子なら真ん中のあたりに落ち着いてしまうほうが 相手も自分の座る位置を決めやすくなりますし、テーブルに出された茶托にも無理なく手が届きます。 肘をテーブルにつかず、足を組まずに揃えていれば、家庭の応接間でそれ以上の作法を問われることはまずありません。

座布団の使い方

和室に通されてすでに座布団が敷かれているのを見ると、 そのまま乗ってよいものか、脇の畳に控えるべきかで手が止まります。 改まった席では座布団を外してあいさつをすると聞いたことがあると、なおさら決めかねます。

判断が分かれるのはその家の改まり具合のほうで、 法事や結納のような場と、休日に友人の家へ寄っただけの訪問とでは、同じ座布団でも求められる形がまるで違います。 前者では畳の上であいさつをしてから移りますが、後者で同じことをすると相手のほうが身構えます。

場面作法
用意されているすぐには乗らず、まず脇の畳に控えます
あいさつをする改まった席では座布団を外し、畳の上で行います
「どうぞお当てください」勧められてから、はじめて座布団に移ります
乗り方膝からにじり寄り、立ったままでは踏みません
向き縫い目のない辺を前に向けます(諸説あります)
位置を動かす敷かれた場所を勝手にずらさないでください

いちばん外せないのは、座布団の上を立ったまま踏まずに乗るという一点です。膝をついて、にじるように前へ進んで乗れば、それだけで形としては十分に整います。向きの決まりには諸説があり、ふつうの家庭訪問でそこまで問われることはまずありません。

実際に起きやすいのは座布団の位置が斜めにずれていて座り直したくなる場面で、 両手をついて体を浮かせながら直そうとすると、かえって畳と擦れる音が部屋に響きます。 座卓との間隔が広すぎて、出された湯呑みに手が届かないということも起こります。

大きくずれているのでなければそのまま座っていて構わず、 どうしても直したいときは「失礼します」と一言添えて、膝をついたまま静かに動かせば角が立ちません。 座布団は迎える側がこちらのために敷いたものですから、動かすこと自体が失礼にあたるわけではありません。

荷物の置き場所

腰を下ろしたあと、手に提げていた鞄をどこへ置けばよいのかで迷い、 膝の上に抱えたまま話し始めてしまうことがあります。 コートを腕に掛けたまま上がっていれば、置き場所を決めるものが二つに増えます。

置き場所の基準は相手の家のものを汚さないという一点にあり、 鞄の底は駅の床や店の椅子に触れてきていますから、座布団や布張りの椅子に載せる形だけは避けたいところです。 畳や板の間であれば、鞄をそのまま置いても跡が残ることはないので、足元へ寄せておけば差し支えありません。

もの置き場所
鞄足元の床か畳に置き、椅子や座布団には載せません
コート裏を内側にして畳み、膝の脇に置いておきます
大きな荷物玄関に置かせてもらうほうが場所を取りません
手土産渡すまでは紙袋ごと膝の脇に立てておきます
スマートフォンテーブルには出さず、鞄にしまっておきます

茶托や菓子皿が並ぶテーブルの上には、私物を置かないままにしておいてください。鍵や財布や眼鏡入れが並んでいると、盆を運んできた相手は湯呑みを置く場所をその場で探すことになります。上がる前にまとめて鞄へしまっておけば、それだけで相手の手が迷わずに済みます。

困るのは床に直接置きたくない鞄を持っているときで、 底に金具のない布の手提げや、雨に濡れたままの鞄は、畳の上に置くのがためらわれます。 かといって膝に抱えたままでいると、茶を出されたときに受ける両手がふさがります。

そういうときは持参した紙袋を畳んで下に敷けばそれで足り、 濡れているのなら「こちらに置かせてください」と断って、上がる前に玄関へ置いてしまうほうが確実です。 相手に台拭きや新聞紙を出させる前にこちらで手を打っておけば、腰を下ろしてからの話も途切れずに続きます。

訪問先でスマホを見てもいいか見る

どこに座るかに決まった正解があるわけではなく、 その家の間取りと相手の勧め方を見て、いちばん角の立たない席を選べばそれで足ります。 床の間があって理屈どおりに決まる和室もあれば、テレビと座椅子の位置で席が決まっている居間もあり、 どちらが正しいということでもありません。

どの家でも変わらないのは、自分から席を選ばないことと、 勧められたら一度の辞退で座ることの二つだけで、 この二つさえ守っていれば、座布団の向きや上座の目印を思い出せなくても不作法にはなりません。 迎える側にとっても、湯呑みを運んできたときに席が決まっているほうが、盆を置く場所に迷わずに済みます。

よくある質問

訪問先ではどこに座りますか?

勧められた席に座ります。自分から選びません。何も言われなければ入口に近い側で待ち、勧められてから移ります。案内される前に座ると、相手の段取りが崩れます。

上座はどこですか?

入口から遠い側が基本です。床の間のある和室なら床の間を背にした席がもっとも上位、洋室なら長椅子が上座になります。目印が食い違ったときは、まず床の間があるかどうかを見てください。

上座を勧められたら辞退すべきですか?

一度辞退し、重ねて勧められたら座ります。辞退は一度で足りますので、「恐れ入ります」と言って腰を下ろしてください。二度三度と断ると、相手はそのたびに勧め直すことになります。

ソファではどう座りますか?

座面の前半分に浅く腰かけ、背もたれからこぶし一つ分ほど離します。足は組まずに揃えます。ただし姿勢を最後まで保ち続ける必要はなく、最初のあいさつのときだけ整えれば足ります。

長椅子は端に座るべきですか?

遠慮せず真ん中のあたりに落ち着いて構いません。端に小さく座ると残った座面が空いたままになり、相手はそこへ荷物を置くこともできず、かえって扱いに困ります。

座布団はすぐ座ってよいですか?

改まった和室では、座布団の脇であいさつをしてから勧められて座ります。乗るときは膝からにじり寄り、立ったままでは踏みません。ふつうの家庭訪問では「どうぞ」と言われたら座って構いません。

荷物はどこに置きますか?

かばんは足元の床や畳に置き、椅子や座布団には載せません。大きな荷物は玄関に置かせてもらいます。茶托や菓子皿が並ぶテーブルの上に、私物は置かないでください。

まとめ

  • 勧められた席に腰を下ろします
  • 席は自分から選びません
  • 入口から遠い側を上座と考えます
  • 辞退は一度で足ります
  • ソファには浅めに腰かけます
  • 座布団は立ったままでは踏みません
  • かばんは足元の床に置きます
  • テーブルに私物を置きません

参考情報

  1. 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
    https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html
  2. 高島屋「進物の基礎知識」
    https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html
  3. 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
    https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx

手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。

本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。