結論
焼香は右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまみ、 額の高さまで押しいただいてから香炉へ落とし、 そのあと合掌して遺族に一礼してから席へ戻ります。
回数は宗派によって1回から3回まで分かれますが、 分からなければ1回で失礼になりませんし、 参列客の多い式では進行の都合から1回でと案内されることもあります。
基本の手順
葬儀の案内をいただいてから当日までのあいだに、いちばん気がかりになるのは祭壇の前での数十秒で、 席を立ってから戻るまでに何をどの順で行うのかが思い出せません。 前の方の背中越しに手元を見ようとしても、焼香台の陰になって、つまむところまでは見えないことのほうが多いはずです。
ただ、迷いが大きいわりに動作そのものは宗派が違ってもほぼ共通していて、 分かれるのは回数と、つまんだ抹香を額まで持ち上げるかどうかの二点だけです。 この二点をいったん脇に置き、席を立ってから戻るまでの流れのほうを先に押さえておくと、当日になって手が止まる場面が減ります。
| 順 | 動作 |
|---|---|
| 1 | 名前を呼ばれたら席を立ち、祭壇のほうへ進みます |
| 2 | 焼香台の手前で、遺族に向かって一礼します |
| 3 | 祭壇の前まで進み、遺影に向かってもう一度一礼します |
| 4 | 右手の親指・人差し指・中指で抹香をつまみます |
| 5 | 宗派に合わせて、額の高さまで押しいただきます |
| 6 | 香炉の灰の上へ、静かに指を離して落とします |
| 7 | 両手を合わせ、そのまま合掌します |
| 8 | 一歩下がって遺族に一礼し、席へ戻ります |
抹香を扱うのは右手だけで、左手を添えることはありません。指を離す高さが高いと灰と火の粉が舞い上がり、香炉のふちや掛けられた白い布に飛びますので、灰のすぐ上まで手を下ろしてから、そっと指をひらいてください。
焼香は親族の席から先に案内されますので、一般の参列客に番が回ってくるころには、同じ動作をすでに何度も見ていることになります。 祭壇に近い列から順に立っていく様子を眺めているうちに、つまむ手の高さも、合掌してから下がるまでの間合いも、自然と目に入ってきます。
ですので、八つの手順を暗記していなくても、前の方と同じように動けば外れることはありません。 どうしても不安であれば、二つ手前の方が焼香台へ進むところから目で追っておくと、 自分の番が来たときには、身体のほうが先に順番を覚えています。
回数は宗派で違う
宗派によって回数が違うと聞いてしまうと、自分の家の宗派すら正確には言えないことに気づいて、かえって落ち着かなくなります。 案内状には式場と日時しか書かれていないことがほとんどで、 故人の家がどの宗派なのかは、当日になっても分からないまま席に着くことになります。
回数に意味づけがあることまでは知られていても、その中身が説明されることは少なく、多いほうが丁寧なのだろうかという見当違いの心配が残ります。 3回には身・口・意の三業を清める、仏・法・僧の三宝に捧げるといった説明があり、 数を増やせば厚くなるという性質のものではありません。
| 宗派 | 回数 | 押しいただき方 |
|---|---|---|
| 真言宗 | 3回に分けて香炉へ落としていきます | 1回目のときだけ額まで持ち上げます |
| 天台宗 | 1回または3回とされています | 額の高さまで持ち上げます |
| 浄土宗 | 回数の決まりは置かれていません | 額の高さまで持ち上げます |
| 浄土真宗 本願寺派 | 1回だけつまんで落とします | 持ち上げずにそのまま落とします |
| 浄土真宗 大谷派 | 2回に分けて落としていきます | 持ち上げずにそのまま落とします |
| 曹洞宗 | 2回に分けて落としていきます | 1回目のときだけ額まで持ち上げます |
| 臨済宗 | 1回で行うとされています | 額の高さまで持ち上げます |
| 日蓮宗 | 3回とする説明が多く見られます | 額の高さまで持ち上げます |
押しいただくというのは、つまんだ抹香を額の高さまで持ち上げる動作のことです。浄土真宗ではこれを行いませんので、故人の家の宗派が分かっている場合は、ここが最初の分かれ目になります。焼香は故人へ手向けるためのものではなく、自らを清めるためのものだという考え方によります。
参列客の多い式では、進行の都合から、係の方が「お心を込めて1回で」と案内することがあります。 この案内があったときは宗派ごとの回数よりもそちらが優先されますので、迷わず1回だけつまんで合掌してください。 後ろに何十人と列が続いている場では、そのほうが場の流れにも合います。
案内がなく、故人の家の宗派も分からないという場面のほうが、実際には多くなります。 そのときは1回で済ませて差し支えなく、それで失礼になることはありません。 回数を数えることに気を取られて手元が慌ただしくなるより、香炉の前で静かに手を合わせている時間のほうが、後ろの席からはよく見えています。
自分の宗派と違う場合
自分の家が曹洞宗で、故人の家は浄土真宗だったというように、宗派が食い違うことは珍しくありません。 数珠を手にして席に座ったところで、どちらの回数で行えばよいのかが分からなくなり、 前の方の手元だけが頼りになってしまいます。
ここで判断が分かれるのは、焼香をその場の作法に合わせるものと見るか、自分の信仰にもとづく行いと見るかという点です。 どちらの立場にもそれなりの理屈がありますので、どちらを選んでも間違いにはならないとされています。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 故人の宗派に合わせる | その場の作法に従いますので、周囲と揃います |
| 自分の宗派に合わせる | 自分の信仰に従う形で、これも失礼になりません |
| 宗派が分からないとき | 1回だけつまんで落としておけば足ります |
| 神式のとき | 焼香ではなく玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います |
| キリスト教式のとき | 抹香の代わりに、白い花を献花台へ置きます |
神式やキリスト教式では、そもそも抹香を使いません。玉串を捧げる向きも、花を献花台へ置く向きも係の方がその場で案内しますので、案内の言葉を聞いてから前へ進めば、作法を知らないまま参列しても困ることにはなりません。
実際の会場では、故人の宗派に合わせて行う方のほうが多くなります。 前の列が2回で揃っているのに自分だけ3回つまむと、動作そのものは正しくても、 列の流れから浮いて見えることのほうが気になってしまうためです。
一方で、日ごろから決まった回数で手を合わせている方であれば、その形を通していただいて構いません。 焼香の回数は故人への思いの深さを表すものではありませんので、 どちらを選んだとしても、遺族の側がそれを数えて受け取り方を変えるということは起こりません。
立礼・座礼・回し焼香
会場に入って席に着くまで、その式がどの形で焼香を行うのかは分かりません。 斎場のホールなのか自宅の和室なのか、椅子が並んでいるのか座布団なのかによって、 自分が立ち上がるべきかどうかまで変わってきます。
見分けの手がかりになるのは、焼香台が祭壇の前に据えられているかどうかという一点です。 据えられていれば順に進んで立ったまま行いますし、置かれていなければ香炉のほうが席まで回ってくることになります。
| 形式 | 場面 | 進み方 |
|---|---|---|
| 立礼焼香 | 斎場やホールで行われます | 立ったまま進み、焼香台の前で行います |
| 座礼焼香 | 和室や自宅で行われます | 立ち上がらず、膝で進んで行います |
| 回し焼香 | 狭い会場や自宅で行われます | 席に座ったまま、回ってきた香炉で行います |
回し焼香では、香炉を両手で受け取り、膝の前に置いてから焼香します。済んだら次の方へ両手で渡し、受け取るときと渡すときに軽く会釈を添えておけば、それだけで形が整います。立って歩く場面がないぶん、動作としてはこちらのほうが短く済みます。
小さな会場で行われる式は、いまでは珍しいものではなくなっています。 一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団の冠婚葬祭総合研究所が2025年11月に、全国の40代から70代以上の男女2,000人へインターネットで行った第9回葬祭等に関する意識調査では、 家族の葬儀の会葬者数を20人未満と考えている人が64.3パーセントを占めていました。
これは実際に行われた式を数えたものではなく、これから営むとしたらどう考えるかを尋ねた意識調査ですが、 20人に満たない見込みで会場を選べば、椅子を並べたホールではなく和室や自宅が選ばれることも出てきます。 座礼や回し焼香に出会う場面はそれだけ増えますので、立礼だけを覚えて出かけると、香炉が回ってきたところで手が止まります。
数珠の扱い
数珠は左手に持つものだと聞いてはいても、いざ会場に着くと、移動しているあいだにどこへかけておけばよいのかが分かりません。 手首に通したままでよいのか、指にかけて持つのか、鞄にしまっておくべきなのかで手が止まります。
もう一つ迷うのが、そもそも持っていない場合の扱いです。 忘れてきた、あるいは自分の数珠をまだ持っていないという状態で会場に入ると、 それだけで場違いなのではないかという気持ちになります。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 移動しているあいだ | 左手にかけたまま、祭壇へ進みます |
| 合掌するとき | 両手にかけるか、左手にかけたまま合わせます |
| 抹香をつまむとき | 右手が空きますので、左手にかけておきます |
| 持っていないとき | 手を合わせるだけで差し支えありません |
| 人から借りること | 個人の持ち物とされますので、貸し借りはしません |
数珠がなくても焼香はできますし、手を合わせるだけで十分です。ただし隣の席の方から借りるのは、数珠が個人の持ち物として扱われるために行いません。忘れてきたことに気づいたときは、そのまま何も持たずに前へ進んでください。
会場の椅子に座っているあいだ、数珠を膝の上に置いたままにしていると、立ち上がるときに座面から滑り落ち、床で房が広がってしまうことがあります。 席を立つ前に左手へかけ直しておけば、祭壇へ進むあいだも手元が定まりますし、そのまま合掌へ移ることもできます。
持っていない方が焼香をしてはいけないということもありません。 数珠は手を合わせるための助けであって、焼香そのものの道具ではありませんので、 右手で抹香をつまみ、そのまま両手を合わせれば、動作としては何一つ欠けていないことになります。
よくある迷いどころ
前の方の所作を見て覚えたつもりでいても、自分の番になると細かいところで手が止まります。 左手はどうしておけばよいのか、落とすときに音が出てしまったがそのまま進んでよいのかといった、 表には書かれていないところばかりが気になってきます。
こうした迷いのほとんどは、やり直しのきかない場面で起きるという点で共通しています。 抹香を落としたあとで数え違いに気づいても、香炉から拾い戻すわけにはいきませんので、 そこからどう収めるかだけを先に決めておけば足ります。
| 迷うこと | 答え |
|---|---|
| 左手を使ってよいか | 抹香は右手だけで扱い、左手は添えません |
| 香炉に落とすとき音が出た | そのまま合掌へ進んで差し支えありません |
| 回数を間違えた | やり直さず、そのまま合掌して席へ戻ります |
| 線香を使う式のとき | 1本を立てますが、本数は宗派によって変わります |
| 遺族に声をかけるか | 一礼だけで足りますので、言葉は要りません |
焼香でいちばん目に残るのは、回数ではなく落ち着いているかどうかです。数え違いに気づいて手を戻したり、香炉の前で立ち止まったりするほうが、1回多かったことよりもよほど目立ちます。間違えたと思っても、そのまま手を合わせて下がれば、たいてい誰も気づきません。
遺族の前を通るときに、お悔やみの言葉を口に出すべきかどうかで迷う方もいます。 焼香の列は途切れずに進んでいますので、この場では一礼だけにとどめておき、 伝えたいことがあれば式が終わってからにするほうが、相手の手を止めずに済みます。
線香を使う式に出たときも、考え方は同じです。 1本を香炉に立てるのが基本の形で、本数や寝かせるかどうかは宗派によって変わりますが、 前の方がどうしていたかをそのまま真似ておけば、その場で外れることはありません。
焼香の順番はどう決まるかを見る焼香のやり方に、どの式でも通じる一つの正解があるわけではありません。 回数は宗派によって1回から3回まで分かれますし、額まで押しいただくかどうかも浄土真宗とそれ以外とで違いますので、 その場の案内と前の方の所作に合わせておけば、それで十分に足ります。
どの会場でも変わらないのは、右手だけで抹香を扱うことと、慌てずに手を合わせることの二つだけです。 この二つさえ守っていれば、数え違いをしても、香炉に落とす音が出てしまっても、 遺族の記憶に残るのは静かに拝んでいた姿のほうになります。
よくある質問
焼香は何回すればよいですか?
宗派によって1〜3回と異なります。真言宗3回、浄土真宗本願寺派1回、大谷派2回、曹洞宗2回、臨済宗1回、日蓮宗3回、天台宗1回または3回で、浄土宗は決まりがありません。分からなければ1回で失礼になりません。
「押しいただく」とは何ですか?
つまんだ抹香を額の高さまで持ち上げる動作のことです。浄土真宗ではこれを行いません。焼香は故人のためではなく自らを清めるもの、という考え方によります。
自分の宗派と故人の宗派が違う場合はどうしますか?
どちらの作法に合わせても間違いではないとされています。その場の作法に従えば周囲と揃いますし、自分の宗派に従っても失礼ではありません。神式は玉串奉奠、キリスト教式は献花で、いずれも係の方が案内します。
回し焼香とは何ですか?
香炉が席に回ってくる形式です。狭い会場や自宅で行われます。香炉を両手で受け取り、膝の前に置いて焼香し、次の方へ両手で渡します。受け取るとき・渡すときに軽く会釈を添えます。
数珠は必ず持っていく必要がありますか?
持っていなくても差し支えありません。焼香はできますし、手を合わせるだけで十分です。持っている場合は左手に持ちます。ただし数珠の貸し借りはしません。個人の持ち物とされるためです。
焼香の回数を間違えてしまいました。やり直すべきですか?
やり直さず、そのまま合掌して席に戻ります。回数や細かい所作より、静かに落ち着いて行うことのほうが大切です。参列客の多い式では、進行の都合で1回に統一されることもあります。
まとめ
- 焼香は右手の3本指で抹香をつまみます
- 額の高さまで押しいただいてから香炉へ落とします
- 落としたあとは合掌し、遺族に一礼して戻ります
- 回数は宗派によって1回から3回まで分かれます
- 浄土真宗では押しいただきません
- 分からないときは1回で失礼になりません
- 手順は前の方に合わせておけば外れません
- 数珠は左手に持ち、なくても差し支えありません
参考情報
- 安心葬儀「宗派ごとの焼香の回数を詳しく解説」
https://ansinsougi.jp/p-98 - 小さなお葬式「家族葬での焼香の順番は?決まりややり方・マナーを徹底解説」
https://www.osohshiki.jp/column/article/1064/ - 小さなお葬式「通夜と葬儀・告別式は何が違う?流れや日程の決め方を解説!」
https://www.osohshiki.jp/column/article/859/ - 一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団 冠婚葬祭総合研究所「第9回 葬祭等に関する意識調査」(2025年11月・有効回答2,000人)
https://www.ceremony-ri.jp/cms/wp-content/uploads/9th_sousai_ishikichosa.pdf
本文で引用した冠婚葬祭総合研究所の調査は、2025年11月に全国の40代から70代以上の男女2,000人がインターネットで答えたもので、実際に行われた葬儀を数えたものではなく、これから営むとしたらどう考えるかを尋ねた意識調査です。宗派別の回数と「押しいただく」かどうかは、参照した情報源の記述に基づいています。浄土宗のように回数の決まりがない宗派もあり、同じ宗派でも寺院によって指導が異なることがあります。
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。地域・宗派・葬儀社によって進行が異なる場合があります。係の方から案内があった場合は、そちらに従ってください。