結論
弔事の贈り物に「のし」は付けませんので、法事のお供えに掛けるのは 水引だけが印刷された「掛け紙」のほうになり、 売り場では御供でお願いしますと伝えれば弔事用のものが出てきます。
水引は黒白または双銀の結び切りを選び、表書きは 品物なら「御供」、現金なら「御供物料」と書きます。 墨は葬儀のときと違って濃墨を使い、 自分で届けるなら外のし、宅配で送るなら内のしにしておけば形は整います。
弔事に「のし」は付かない
法事に持っていく菓子折りを売り場で包んでもらうとき、のし紙はお付けしますかと声をかけられて、そこで手が止まることがあります。 祝い事のときとまったく同じ言葉が弔事の品にも出てきますので、はいと答えてよいものかどうかがその場では決めきれません。
迷いの元になっているのは、のしという言葉が右上の小さな飾りを指すのか、紙一枚の全体を指すのかという点で、 売り場と買う側のあいだでこの二つが混ざったまま話が進みます。 もとの意味をたどれば、飾りと紙とは別のものとして扱われてきました。
| 見た目・呼び方 | 扱い |
|---|---|
| 右上の飾り | のしあわびを表す祝いのしるしですので、弔事では付けません |
| 水引だけの紙 | これが弔事の掛け紙で、お供えにはこちらを掛けます |
| 売り場での呼び名 | 慶弔をまとめて「のし紙」と呼ぶ店が多くなっています |
| 頼むときの言い方 | 「御供でお願いします」と伝えれば弔事用が出てきます |
弔事で外すのは右上の飾りだけで、紙そのものを掛けないという意味ではありません。掛け紙は誰からのお供えなのかを施主へ伝える札の役目を持っていますので、包装紙だけで渡してしまうと、いただいた側の手元に贈り主が残らなくなります。
弔事用でとひと言添えたつもりでも、蝶結びの水引が刷られた紙が出てくることがあり、慶弔どちらの品も同じ台で包んでいる店ではとくに起こります。 包みを受け取ったその場で、右上に飾りが見えないか、水引が一度結んだら解けない形になっているかだけは目で確かめておいてください。
家に帰ってから気づいた場合でも、掛け紙は品物の外側に掛かっているだけですので、店へ持ち込めば掛け直してもらえます。 法要の朝になって玄関先で気づくより、買った日のうちに袋の口を開けて見ておくほうが、あとの手間がかかりません。
のしと掛け紙の違いを詳しく見る表書きの選び方
掛け紙の中央上に何と書くかは、売り場で先に決めておかないと包んでもらえない一項目で、四十九日と一周忌とで変わるのかどうかがまず気にかかります。 先方の宗派を尋ねられたらどう答えるのかまで考え始めると、菓子折りを一つ買うだけで足が止まってしまいます。
判断が分かれるのは、包むのが品物なのか現金なのかという点と、 先方が仏式なのか、神式やキリスト教式なのかという点の二つです。 法要の回数や宗派まで合わせにいこうとすると、確かめようのないところで手が止まります。
| 贈るもの・場面 | 表書き |
|---|---|
| 品物 | 「御供」と書けば、宗派も法要の回数も選ばずに通ります |
| 現金 | 「御供物料」と書いて、お供えの代わりとして包みます |
| 四十九日以降の法要 | 「御仏前」でも差し支えなく、品物に掛けても通じます |
| 神式(式年祭) | 「御供」のほか、「御神前」と書くこともあります |
| キリスト教式(記念会) | 「御供」のほか、「お花料」と書くこともあります |
五つを覚えておく必要はなく、迷ったところは「御供」で構いません。「御霊前」と「御仏前」には四十九日を境にした使い分けが要りますが、「御供」にはその境目がなく、神式でもキリスト教式でもそのまま通ります。先方の宗派を確かめずに済むという点でも、行き先が一つに決まります。
親族が集まる法要では、お供えの品と現金の両方を持っていく方も珍しくありません。 その場合は品物の掛け紙に「御供」、現金を包む袋に「御供物料」と、別々に書き分けることになり、同じ言葉でそろえる必要はありません。
表書きは掛け紙の幅いっぱいに広げず、水引の上の中央へ収めると据わりがよくなります。 印刷済みの掛け紙を選べば表書きは初めから入っていますので、こちらで書くのは水引の下の名前だけになります。
墨は濃墨
通夜の受付で薄墨の筆ペンを使った記憶が残っていると、法事の掛け紙も同じ薄さで書くものかどうかで迷います。 引き出しに薄墨と濃墨の二本が並んでいると、どちらを持って出るかをその場で決めなければならなくなります。
葬儀と法要とで扱いが変わる理由は、その日が急に決まったものかどうかという一点にあります。 同じ弔事という言葉でくくられていても、知らせを受けて駆けつける場と、案内をもらって支度をする場とでは前提が違います。
| 場面 | 墨 |
|---|---|
| 通夜・葬儀の香典 | 薄墨で書くのが習わしになっています |
| 法要のお供え | 通常の黒、つまり濃墨で書いて差し支えありません |
| 品物の掛け紙 | 店側が印刷しますので、こちらから指定は要りません |
| 現金の表書き | 自分の手で書きますので、濃墨の筆ペンを用意します |
| 水引の下の名前 | 表書きと同じ濃墨でそろえて書き入れます |
薄墨は、急な訃報に墨をする時間もなかったという断りを形にしたものです。法要は日取りを決めて案内が届くものですから、その断りがそもそも当てはまらず、濃墨のほうが場に合います。薄墨で書いたからといって咎められることはありませんが、そろえるなら濃墨です。
品物を買った店で掛け紙まで用意してもらうときは、墨の色を選ぶ場面そのものが出てきません。 印刷された表書きは通常の黒で刷られていますので、こちらから濃墨でと伝える必要はなく、名前を書き添えてもらうときだけ色を見ておけば足ります。
自分の手で書くのは、現金を包む袋の表書きと、掛け紙の下に入れる名前のところです。 手元の筆ペンが葬儀のときに買った薄墨のものだと、法要の席では細く薄く見えてしまいますので、書き始める前に端で試し書きをして色を確かめてください。
水引と地域差
売り場の掛け紙は色ごとに分けて並んでいて、黒と白のほかに、銀一色のものや黄色と白のものが同じ棚に置かれています。 どれも弔事用として売られていますので、値段の違いなのか、使う場面の違いなのかが棚の前では分かりません。
色を決めるときに効いてくるのは、お供えを持っていく先がどの土地なのかという点です。 葬儀と法要とで色を替える土地もあり、自分の住む地域の見慣れた色が、先方でも同じとは限りません。
| 色・結び方 | 使う場面 |
|---|---|
| 結び切り | 二度と繰り返さないという意味で、弔事はこの形にします |
| 黒白 | 全国どこへ贈っても通る、いちばん基本の色になります |
| 双銀 | 包む額が大きいときに選ばれることが多くなっています |
| 黄白 | 関西や北陸には、法要でこちらが主流という地域があります |
| 蝶結び | ほどいて結び直せる形ですので、弔事には使いません |
色は先方の土地に合わせるもので、自分の住んでいる地域に合わせるものではありません。関西の親族へ黒白を掛けて送っても失礼にはあたりませんが、当日並べられたお供えのなかで、そこだけ色が違って見えることにはなります。
送り先の地域が分かっているなら、売り場で県名を伝えておけば、その土地で通る掛け紙を選んでもらえます。 オンラインで注文するときも、掛け紙の色を選ぶ欄に黄白が並んでいる店がありますので、送り先の住所と見比べてから進めてください。
判断がつかないまま黄白を選ぶくらいなら、黒白の結び切りにしておくほうが確実です。 慣習は同じ県のなかでも分かれることがありますので、色で迷った時点で施主か年長の親族へ一言尋ねてしまうほうが、あとで気に病まずに済みます。
名前の書き方
表書きまで決まっても、水引の下に何をどう並べるかでもう一度手が止まります。 夫婦で参列するのに二人の姓名を並べてよいのか、職場の有志で出すお供えに全員の名前を入れるのかは、その場で判断のつくものではありません。
ここで分かれるのは、何人の名前を紙の上へ載せるかという一点です。 載せられる幅には限りがありますので、人数が増えるほど書き方そのものを替えることになります。
| ケース | 書き方 |
|---|---|
| 個人 | 水引の下の中央に、フルネームを書き入れます |
| 夫婦 | 夫のフルネームを書き、その左へ妻の名前だけを添えます |
| 連名(3名まで) | 右から目上の順に並べ、左へ下がっていきます |
| 4名以上 | 「〇〇一同」とまとめ、全員の氏名は別紙に書いて添えます |
| 会社 | 中央に代表者の名前を書き、その右へ会社名を入れます |
施主は、誰から何を受け取ったかを一つずつ控えて返礼の準備に使います。名字だけ、あるいは下の名前だけで届いたお供えは、同じ名字の親族が何人もいる法要では誰のものか分からなくなりますので、省略せずに書いてください。
職場や趣味の集まりから連名で出すときは、別紙に全員の氏名を書いて品物へ入れておきます。 紙の大きさに決まりはなく、掛け紙の下に差し込むか、箱を開けてすぐ目に入るところへ置いておけば、施主が控えを取るときに困りません。
名前は表書きよりやや小さめの字にすると、水引を挟んで上下の釣り合いが取れます。 掛け紙を店で印刷してもらう場合は、注文の控えに書いた氏名がそのまま刷られますので、送り状の宛名と食い違っていないかを申し込みの時点で見ておいてください。
内のしと外のし
掛け紙をどこへ掛けるかを尋ねられて、内のしと外のしのどちらですかと聞かれると、多くの方がここで黙ってしまいます。 言葉だけでは包装紙との前後関係が思い浮かびませんし、選び間違えたときに何が起きるのかも見当がつきません。
違いは包装紙の内側に掛けるか、外側に掛けるかだけで、決まりごとというより荷物の扱いの問題です。 分かれ目になるのは、手渡しするのか、宅配で送るのかという運び方のほうにあります。
| 場面 | 選ぶもの |
|---|---|
| 持参して手渡す | 外のしにして、包装紙の外側へ掛け紙を掛けます |
| 宅配で送る | 内のしにして、掛け紙の上から包装してもらいます |
| 誰からか一目で分かるように | 外のしなら、渡した瞬間に表書きと名前が見えます |
| 配送で傷めたくない | 内のしなら、掛け紙が擦れたり濡れたりしません |
どちらかが正式でもう一方が略式、という関係ではありません。受付でお供えを並べる側からすると、手渡しの品は表書きが見えているほうが仕分けやすく、送られてきた箱は包装を解いてから確かめるので、掛け紙が内側にあっても困らないというだけの違いです。
法要の当日に持参する場合は、風呂敷や紙袋から出して両手で渡すことになりますので、外のしにしておくと表書きがそのまま相手の目に入ります。 袋のまま渡すことはありませんから、包装紙の外に掛け紙が出ていても、道中で傷む心配はほとんどありません。
遠方で参列できず品物だけを送るときは、宅配の伝票や梱包材が直接あたりますので、内のしにしておくほうが安心です。 箱を開けたときに初めて表書きが見える形になりますが、送り状を先に出しておけば、誰からのお供えなのかは届く前に伝わります。
法要そのものを営む家がどのくらいあるのかは、業界団体の調べからもうかがえます。 冠婚葬祭文化振興財団の冠婚葬祭総合研究所が2022年10月25日から27日にかけて、全国の40歳から89歳の男女2,500名へインターネットで行った第6回葬祭等に関する意識調査では、 家族の年忌法要をやってあげたいと答えた人が71.7パーセントにのぼりました。
これは実際に営まれた法要の件数を数えたものではなく、意向を尋ねた意識調査ですが、 「そう思う」と強く答えた人の割合は年齢が上がるほど高く、70代以上では34.3パーセントと、40代の24.6パーセントを上回っています。 掛け紙の作法をひととおり知っておくと、これから何度か訪れる場面でそのつど迷わずに済みます。
内のし・外のしの違いを詳しく見る掛け紙にまつわる決まりは数が多く見えますが、迷いやすいところはどれも別の一点に置き換えられます。 表書きは品物か現金か、墨は日程が決まっていたかどうか、水引は先方の土地はどこか、掛ける位置は手渡しか宅配かという具合に、 その場で答えられる問いへ言い直せば、選択肢はいつも二つか三つに絞られます。
どの場面でも変わらないのは、水引の下に自分の名前をきちんと書き入れておくことだけです。 施主は受け取ったお供えを一つずつ控えて返礼の支度をしますので、名前さえはっきりしていれば、 色や位置の細かい違いで先方を困らせることはありません。
よくある質問
お供えに「のし」は付けますか?
付けません。のしは祝いのしるしのため、弔事では使いません。正しくは水引だけが印刷された「掛け紙」を掛けます。売り場では「御供でお願いします」と伝えれば正しいものが用意されます。
表書きは何と書きますか?
品物なら「御供」、現金なら「御供物料」です。「御供」は宗派も時期も選ばず使えるため、迷ったらこれにしておけば確実です。四十九日以降の法要では「御仏前」も使えます。
薄墨で書きますか?
濃墨(通常の黒)です。薄墨は「急な訃報で墨をする時間もなかった」という意味なので、日程が決まっている法要には当てはまりません。品物の掛け紙は店側で印刷することが多く、指定する必要はありません。
水引は何色を選びますか?
黒白または双銀の結び切りです。ただし関西・北陸などでは黄白を使い、法要では黄白が主流という地域もあります。送り先の地域が分かる場合は、店で「〇〇県のお宅へ」と伝えれば合う掛け紙を用意してもらえます。
名前はどう書きますか?
水引の下の中央にフルネームを書きます。夫婦は夫のフルネームに左に妻の名前だけを添えます。3名までは右から目上の順に並べ、4名以上の連名は「〇〇一同」とし、全員の氏名を別紙に書いて添えます。
内のしと外のしはどう使い分けますか?
持参するときは外のし、郵送するときは内のしです。持参なら渡すときに表書きが見えるほうがよく、郵送なら配送で掛け紙が汚れないほうがよいという実務的な理由によります。
まとめ
- 弔事に「のし」は付けず、掛け紙を掛けます
- 品物は「御供」、現金は「御供物料」と書きます
- 墨は濃墨を使い、葬儀の薄墨とは分けます
- 水引は黒白か双銀の結び切りを選びます
- 関西や北陸には、法要で黄白を使う地域があります
- 名前はフルネームで書き、省略しません
- 持参は外のし、宅配は内のしにします
参考情報
- 小さなお葬式「お供えの基本的なマナーを解説│失礼にならない選び方や渡し方とは」
https://www.osohshiki.jp/column/article/2054/ - 家族葬のファミーユ「お供え(おそなえ)には何が最適?相場やかけ紙のマナーを紹介」
https://www.famille-kazokusou.com/magazine/after/105 - はせがわ「四十九日のお供えは何がいい?相場と掛け紙の選び方からお返しの準備まで解説」
https://www.hasegawa.jp/blogs/kuyou/shijukunichi-osonae - 冠婚葬祭総合研究所(一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団)「第6回 葬祭等に関する意識調査」(2022年10月実施・2,500名)
https://www.gojokaih.co.jp/wp-content/uploads/3b6cf83760090deb6a957ea803129d34.pdf
本文で引用した冠婚葬祭総合研究所「第6回 葬祭等に関する意識調査」は、2022年10月に全国の40歳から89歳の男女2,500名へインターネットで尋ねたもので、実際に営まれた法要の件数ではなく、回答者の意向の集計です。「消えもの」を選ぶこと、肉・魚を避ける理由、掛け紙の水引と表書きは、参照した情報源で共通しています。水引の色は地域によって扱いが異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・宗派・ご家庭の慣習によって異なる場合があります。ご判断に迷う場合は、ご親族や施主にご確認ください。