結論
家じゅうを完璧に整える必要はまったくなく、 玄関とトイレ、それから通す部屋の3か所だけを片づけて茶菓を用意しておけば、 迎える側の支度としては十分に足ります。
招くときに欠かせないのが日時とおおよその滞在の長さ、それに食事の有無を伝えることで、 ここが分からないままだと、相手は手土産もその日の食事の予定も決められません。
本記事は招く側の作法をまとめたものですので、 訪ねていく側の作法については、それぞれの記事のほうを見てください。 招く側と訪ねる側では気をつける点がまるで違いますから、 両方の立場になることがあるなら、あわせて目を通しておくと迷いが減ります。
招くときの伝え方
人を家に招くと決めたあと、つい日時だけを伝えて終わりにしてしまいがちですが、 招かれた側はそこから当日までいくつも判断を迫られます。 何を着て行くか、何を持って行くか、その日の食事をどうするかまで、 こちらからの情報だけを頼りに決めることになります。
ですから伝えるべきことは相手が当日までに決めなければならないことで線を引くと分かりやすく、 日時と場所だけでは足りず、滞在の長さと食事の有無までを含めて伝えておく必要があります。 車で来られるかどうかも、聞かれる前に触れておくほうが親切です。
| 伝えること | 理由 |
|---|---|
| 日時 | 候補を二つ以上出すと相手が選べます |
| おおよその滞在時間 | 「14時から17時ごろまで」と幅で伝えます |
| 食事の有無 | 手土産も当日の予定もここで決まります |
| 他に誰が来るか | 心づもりができ、服装も決めやすくなります |
| 駐車場の有無 | 近くの有料駐車場まで伝えておきます |
| 道順・目印 | 初めてなら地図を送っておくと迷いません |
| 手土産は不要ということ | 一言添えるだけで相手の負担が減ります |
食事の有無だけは必ず伝えてください。これが分からないと、相手は手土産に菓子を選ぶべきか惣菜を選ぶべきかも決められませんし、来る前に軽く食べておくかどうかという、その日の予定そのものが立ちません。
「手ぶらでどうぞ」と先に言っておくと親切です
手土産を用意するかどうか、いくらくらいのものにするかは、招かれた側にとってかなりの悩みどころで、当日の朝に店へ寄るところまで含めて、ずっと気にかかっているものです。
ですから「気を遣わないでくださいね」と一言添えておくだけで相手はずいぶん楽になりますし、それでも持ってくる方は結局持ってきますから、こちらが損をすることもありません。
当日までの準備
招くと決めた日から当日までのあいだ、 家じゅうを片づけなければという気持ちに追われる方は多いのですが、 お客様が実際に目にする場所はごく限られています。 寝室も物置も、扉さえ閉めておけば視界には入りません。
整えるべきかどうかの線引きはお客様が一人でそこに立つかどうかで、 玄関、トイレ、通す部屋の3か所がそれにあたります。 逆に言えば、この3か所さえきちんとしていれば、 ほかの部屋がどれだけ散らかっていても支度としては成立します。
| 場所 | 目安 |
|---|---|
| 玄関 | 家族の靴を片づけ、三和土を掃いておきます |
| トイレ | 必ず整え、タオルも新しいものに替えます |
| 通す部屋 | ここだけ片づいていれば十分です |
| 洗面所 | 使う可能性があるので見ておきます |
| 他の部屋 | 扉を閉めておけばそれで構いません |
| スリッパ | 人数分に加えてトイレ用も用意します |
| 室温 | 着く30分前から調整しておきます |
家じゅうを片づける必要はありません。玄関とトイレと通す部屋、この3か所に時間を集中させるほうが結果として整って見えますし、あちこちに手を広げるとどこも中途半端なまま当日を迎えることになります。
トイレはいちばんじっくり見られます
お客様は必ず一人でトイレに入りますから、家のなかで唯一、誰にも見られずにゆっくり眺められる場所がここになり、居間をどれだけ整えていてもこの一室で印象が決まってしまうことがあります。
床と便器、それにタオル掛けの生乾きのにおいまで含めて、ここだけは時間をかけて整えておいてください。ペーパーの残量を確かめておくのも忘れやすいところで、残りが少なければ来客の前に替えておきます。
準備で意外に効くのが室温で、 冬場に暖房を入れるのが到着後になると、 コートを脱いだお客様は最初の15分ほどを寒いまま過ごすことになります。 夏も同じで、締め切った部屋は入った瞬間に空気が重く感じられます。
着く30分前には空調を入れて、玄関のドアを開けたときにちょうどよくなっているのが理想です。 においも同じように早めに抜いておくほうがよく、 直前に消臭剤を使うより、少し前に窓を開けて空気を入れ替えておくほうが自然に収まります。
迎えるとき
当日いちばん慌ただしいのが到着前の30分で、 支度が終わらないままインターホンが鳴ると、 最初の数分が落ち着かないまま過ぎていきます。 迎える側の余裕は、そのまま相手の居心地に伝わります。
ですから約束の時刻の5分前には支度を終えて、あとは座って待っているくらいがちょうどよく、 早めに着いたお客様を玄関先で待たせずに済みます。 鳴ってからすぐ出られる状態にしておくことが、 当日の準備としてはいちばん効きます。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 時刻の5分前 | 支度を終えて、座って待ちます |
| インターホンが鳴った | 待たせずにすぐ玄関へ出ます |
| 迎えの言葉 | 「お待ちしておりました」と伝えます |
| コート | 預かりましょうかと申し出ます |
| 手土産 | 両手で受け取り、その場で礼を言います |
| 席 | 上座にあたる席へ案内します |
| トイレ | 場所を先に伝えておきます |
手土産は必ず両手で受け取ってください。片手で受け取ると軽く扱ったように見えますし、相手はその品を選ぶのに時間をかけていますから、受け取る動作と礼の一言だけはその場でしっかり返しておきたいところです。
トイレの場所は、最初に伝えてください
「お手洗いはそちらですので、どうぞご遠慮なく」と案内の時点で先に言っておくと、お客様はあとから席を立って聞きに来る手間が省けますし、切り出すきっかけを探さずに済みます。
とくに子ども連れのお客様にはこれが助かるもので、子どもが我慢していることに親が気づいてから慌てて尋ねる、という場面がなくなりますから、その日の滞在そのものが落ち着いたものになります。
茶菓の出し方
席に案内したあと、迎える側がまず迷うのが茶菓のことで、 何を出すか、いつ出すかを考えているうちに間が空いてしまいます。 出す順番や置き方には一応の決まりがありますが、 実際に気になるのは中身のほうです。
結論から言えば凝ったものを用意する必要はまったくありません。 手作りにこだわると当日の台所が忙しくなり、 その分だけお客様を一人にする時間が増えますから、 市販の菓子を皿に移すだけで十分に足ります。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| タイミング | 席に座って落ち着いてから出します |
| 順番 | 上座の方から、年長の方から出します |
| 置き方 | 茶碗は右、菓子は左が基本とされます |
| 飲み物 | 季節に合わせ、夏は冷たいものにします |
| おかわり | 減っていたら声をかけて勧めます |
| 子どもがいる | こぼしても困らないものを選びます |
| アレルギー | 招くときに確かめておきます |
凝ったものでなくて構いませんし、市販の菓子で十分です。それより気をつけたいのは飲み物のほうで、空になった茶碗が長いあいだそのままになっているほうが、菓子の中身よりもよほど気になります。
おかわりを勧めるときは、茶碗が半分を切ったあたりが声をかけどきで、 すっかり空になってから聞くと、待たせていたことがそのまま相手に伝わってしまいます。 話に区切りがついたところで席を立てば、会話の流れを止めずに台所へ行けます。
長く話し込む日であれば、途中で飲み物の種類を変えるのも一つの手で、 温かいお茶から冷たいものへ切り替えるだけでも場の空気が変わります。 二杯目からは相手に選んでもらうと、遠慮せずに済むようになります。
いただいた手土産を出すかどうか見る見送り
お客様が「そろそろ」と切り出したとき、 どこまで引き止めるかで迷うのがこの場面で、 あっさり送り出すのも冷たく見えますし、重ねて止めるのも相手を困らせます。 次の予定が入っていることも珍しくありません。
目安になるのは引き止めは一度だけという線で、 一度は「まだよろしいのに」と伝え、 それでも帰ると言われたらそこからは止めずに支度を手伝うほうが、 相手にとっても気持ちよく終わります。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 「そろそろ」と言われた | 一度だけ「まだよろしいのに」と伝えます |
| 重ねて言われた | そこからは引き止めません |
| コートを預かっていた | 玄関へ出る前に渡しておきます |
| 玄関で | 靴を履き終わるまで立って待ちます |
| 見送る場所 | 玄関の外まで出ると丁寧に見えます |
| ドアを閉める | 姿が見えなくなってから閉めます |
| 車で来た | 見えなくなるまで見送っておきます |
相手が背を向けた直後にドアを閉めないでください。お客様は玄関を出てから一度は振り返るもので、そのときにもう閉まっていると、追い出されたような後味が残ってしまいますし、楽しかった時間の記憶までその一場面に上書きされることがあります。
見送る場所は間柄によって変えて構わず、 親しい相手なら玄関の内側で手を振るだけでも十分ですが、 改まった相手であれば外まで出て、 角を曲がるところまで見ているほうが収まります。 集合住宅であれば、エレベーターの扉が閉まるまで立っていれば足ります。
車で来られた場合は、車が動き出してから見えなくなるまでのあいだが見送りの時間で、 途中で家に入ってしまうと、運転席から見えていることがあります。 短いようでいて、この最後の数十秒が印象に残りますから、 急がずに立っていてください。
お客様が帰るタイミングの目安を見るもてなし方に決まった正解があるわけではなく、 その日の相手との間柄と、家の造りに合わせて無理のない形を選べばそれで足ります。 台所に立ちっぱなしで手の込んだものを出す日があってもいいですし、 市販の菓子と冷たい麦茶だけで長く話し込む日があってもかまいません。
どの相手でも変わらないのは、玄関とトイレと通す部屋だけは整えておくことと、 帰ると言われたら一度以上は引き止めないことの二つだけで、 この二つさえ守っていれば細かい作法を思い出せなくても失礼にはなりません。 迎える側が落ち着いているほうが、お客様もくつろいで過ごせます。
よくある質問
お客様を招くとき、どこまで掃除すればよいですか?
玄関、トイレ、通す部屋の3か所で十分です。家じゅうを片づける必要はありません。他の部屋は扉を閉めておけば見えません。とくにトイレはお客様が一人でじっくり見る唯一の場所なので、時間をかけてください。
招くときに何を伝えますか?
日時(候補を2つ以上)、おおよその滞在時間、食事の有無、駐車場の有無です。とくに食事の有無は必ず伝えてください。これが分からないと、相手は手土産もその日の食事の予定も決められません。
「手ぶらで」と言ってもよいですか?
言うほうが親切です。手土産を用意するかは招かれた側にとって悩みどころで、「気を遣わないでくださいね」と一言添えれば相手が楽になります。それでも持ってくる方は持ってきます。
迎えるときに気をつけることは?
時間の5分前には支度を終え、インターホンが鳴ったらすぐ出ます。コートを預かるか申し出て、手土産は両手で受け取ります。またトイレの場所を最初に伝えておくと、お客様は聞きに来る手間が省けます。
お茶とお菓子はどう出しますか?
座って落ち着いてから、上座の方・年長者から出します。茶碗は右、菓子は左が基本とされます。凝ったものでなくて構いません。市販の菓子で十分で、それより飲み物が空のまま放置されないほうが大切です。
おかわりはいつ勧めますか?
茶碗が半分を切ったあたりが声をかけどきです。すっかり空になってから聞くと、待たせていたことがそのまま伝わります。話に区切りがついたところで席を立ってください。
見送りはどうしますか?
「そろそろ」と言われたら一度は引き止めますが、重ねて言うと相手が帰りづらくなります。玄関の外まで見送り、姿が見えなくなってからドアを閉めてください。背を向けた直後に閉めると、そっけなく感じられます。
まとめ
- 整えるのは玄関・トイレ・通す部屋の3か所にします
- トイレはいちばんじっくり見られます
- 招くときは食事の有無を必ず伝えます
- 「気を遣わないでください」と一言添えます
- 席へ案内したらトイレの場所を先に伝えます
- 茶菓は上座の方から出します
- 引き止めは一度だけにとどめます
- ドアは姿が見えなくなってから閉めます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。