結論
「お手洗いをお借りしてもよろしいですか」と断ってから席を立つもので、 黙って立ち上がると、残された相手はどこへ行ったのか分からないままになります。 場所が分からないのであれば、廊下の戸を順に開けて探す前に どちらでしょうかと尋ねてください。
使ったあとは便座と蓋を閉じ、スリッパを次の人が履きやすい向きに揃えてから席へ戻ります。 戸棚や収納は開けませんので、扉の並んだ棚が目に入っても、そこへ手は伸ばさないでください。 入ったときの状態にひととおり戻しておけば、細かい作法を思い出せなくても足ります。
声のかけ方
話の途中でふと催してきたときにどう切り出せばよいのかで一度詰まり、 座卓を挟んで向かい合っているところへ「トイレ」と口にするのがためらわれて、 湯呑みを持ち直しては話を合わせ、そのまま我慢してしまうことがあります。
言い方で迷うのはどこまで改まった言葉にするかという一点で、 義理の親の家と学生時代からの友人の部屋とではちょうどよい言い方が違ってきますが、 断らずに黙って立ち上がるのだけは、どちらの家でも落ち着きません。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 基本 | 「お手洗いをお借りしてもよろしいですか」と断ります |
| 親しい相手 | 「トイレ借りるね」でも十分に通じます |
| 場所が分からない | 「恐れ入ります、どちらでしょうか」と尋ねます |
| 戻ったとき | 席へ戻りながら「失礼しました」と一言添えます |
「トイレ」より「お手洗い」のほうが改まった言い方とされています。初めて伺う家や義理の親の家では後者を選んでおくほうが無難ですが、学生時代からの友人が相手であればどちらでも構いませんので、そこは間柄で決めてください。
場所が分からないまま席を立ってしまうと、廊下の突き当たりまで歩いて、 手前の引き戸を一つずつ開けることになります。 それは相手にしてみれば家のなかを見て回られたのと同じで、 寝室の戸まで開いていたと、あとから気づかれます。
立ち上がる前に「恐れ入ります、どちらでしょうか」と尋ねておけば、 たいていは相手のほうが立って案内してくれます。 手前の襖を勝手に開けて探し回るより、ひと言尋ねてしまうほうがずっと短く済みますし、 こちらも落ち着いて席を立てます。
| タイミング | 目安 |
|---|---|
| 着いてすぐ | 避けます。あいさつを済ませてからにします |
| 食事中 | 避けます。区切りのよいところで席を立ちます |
| 帰る直前 | 済ませておくほうが無難ですので、先に借ります |
| 子ども連れ | 着いたときに場所を確認しておきます |
子ども連れであれば、着いてすぐに場所だけ聞いておいてください。子どもは急に必要になりますし、そのときに家の人を探して回るわけにもいきませんので、「子どもがいますので、場所だけ教えていただけますか」と断っておけば自然に伝わります。
玄関で靴を脱いだ直後に借りるのは、あいさつより先に用を足す形になりますので、 座って一息ついてからにします。 同じように食事の最中も、皿が並んだところで席を立つと相手が箸を止めますので、 区切りのよいところまで待ちます。
逆に帰り支度を始める前に済ませておくほうが落ち着くもので、 靴を履いてから玄関先で思い出して上がり直すのは、 見送りに出てくれた相手を奥からもう一度立たせることになりますし、 こちらも気まずい思いをします。
使うときの注意
戸を閉めてしまえばそこは一人きりの空間で、 誰にも見られていないという気持ちがどうしても働きます。 洗面台の脇に並んだ瓶や、扉の閉じた収納が目に入って、 つい何が置いてあるのかを眺めてしまうこともあります。
ところが使った跡は思っているより残りますので、 収納を開けた形跡も、長すぎる滞在も、水を流した回数も戸の外にはひととおり伝わりますし、 何をしていたかまでは分からなくても、いつもと様子が違ったことだけは残ります。
| 避けたいこと | 理由 |
|---|---|
| 戸棚・収納を開ける | 相手の私物ですので、絶対に開けません |
| 長居する | 席で待っている相手が体調を気にし始めます |
| 音を気にして流し続ける | そのぶん水道代がかかりますので、控えます |
| スマートフォンを見る | 気づかないうちに滞在が長くなります |
| 洗面所を勝手に使う | 一声かけてから使わせてもらいます |
| 窓や換気扇をいじる | 元の状態に戻せなくなりますので、触りません |
音が気になるのであれば、壁に付いている音消しの機能を探して使ってください。そうしたものがない家であれば気にしすぎなくて構いませんし、音を隠すためにレバーを何度も引くと、そのぶんだけ水道代が相手の家に残ります。
なかでも取り返しがつかないのが扉の閉じた収納を開けてしまうことで、 薬や下着の替えのように家の人がそこにしまっておきたいものが並んでいますから、 開けたことが相手に伝わらなかったとしても、こちらの気まずさだけが後々まで残ります。
滞在が長くなるのも同じで、席に戻ったときに相手が体調を尋ねてくるような時間まで籠もらなければ、 双方とも余計な気を回さずに済みます。 手を洗うのに洗面所を借りるときも、廊下へ出る前に一声かけておけば、 勝手に使ったことにはなりません。
トイレのスリッパ
引き戸を開けると足元にトイレ用のスリッパが揃えて置かれていて、 室内履きのまま入ってよいのかどうかで一度立ち止まります。 置かれていない家もありますので、そのまま入るべきなのか、 脱いで上がるべきなのかでも迷うことになります。
ここでいちばん多い失敗は入るときではなく出るときのほうで、 トイレ用を履いたまま廊下を歩いて座敷まで戻ってしまいます。 相手はそれを指摘しづらく、こちらも言われて初めて気づきますので、双方とも気まずくなります。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 入るとき | 室内スリッパを脱ぎ、トイレ用に履き替えます |
| 脱いだ室内スリッパ | 入口の外へ揃えて置いておきます |
| 出るとき | トイレ用を脱ぎ、次の人が履きやすい向きに揃えます |
| トイレ用がない家 | そのまま入って構いませんので、探しません |
| 履いたまま出てしまった | 気づいた時点ですぐ戻します |
出る前に足元をもう一度見るだけで、この失敗はほとんど防げます。戸に手をかけたところで自分の足を見る癖をつけておけば履き替え忘れにその場で気づけますし、万一そのまま廊下へ出てしまっても、気づいた時点で戻せば何も残りません。
脱いだ室内スリッパは、入口の外の壁際へ爪先を廊下側へ向けて揃えて置いておくと、 出てきたときに向きを直さずそのまま履けますし、 廊下の真ん中に脱ぎ散らかして、通りかかった家の人にまたがせることもありません。
トイレ用のスリッパが置かれていない家もあり、 その場合はそのまま入って構いませんので、わざわざ探し回る必要はありません。 出るときにトイレ用を次の人が履きやすい向きへ揃えておけば、 あとから入る家族もそのまま足を入れられます。
使った後
用を足したあと、水を流したかどうかが急に心もとなくなって、 戸に手をかけたまま振り返ることがあります。 自動で流れる機種に慣れていると、そうでない家では壁のレバーを探すのに一拍かかりますし、 流れきる音を確かめるまで落ち着きません。
ここで確かめておきたいことがいくつかあり、蓋を閉じたか、周りに飛び散りはないか、 タオルを元どおりに掛けたか、といった細かい点が並びます。 次に入るのは家族で、誰がその前に使ったかは分かっていますので、 気づかれないということがありません。
| やること | 説明 |
|---|---|
| 流したか確認 | 自動でない機種もありますので、目で確かめます |
| 便座と蓋 | 元の状態に戻して、閉じてから出ます |
| 周りを確認 | 飛び散りがあれば、その場で拭き取っておきます |
| 紙が少なくなった | 予備があれば補充してから出ます |
| 手を拭く | タオルは元どおりに掛け直します |
| ドア | 入ったときの状態に戻し、開いていたなら開けます |
「入ったときの状態に戻す」という一つだけ覚えておけば、細かい項目のほうは思い出さずに済みます。蓋もドアもスリッパもタオルも同じ考え方で、すべて元どおりにしておけば、そこを借りたこと自体が誰にも分かりません。
見落としやすいのがドアの開け閉めで、換気のために普段から開け放している家であれば、 入るときに閉めたぶんを出るときに開けて戻しておかないと、 次に通りかかった家族が使用中だと思い込んで、戸の前でそのまま引き返すことになります。
紙が芯だけになっているのに気づいたなら、 手の届くところに予備が置かれていればそこから一つ出して掛けておきます。 次に入った人がそこで困らずに済みますし、 こちらが最後に使ったことは家の人には分かっていますので、黙って出るより気持ちよく済みます。
汚してしまったら
便器の周りを汚してしまったり、流したあとに水位が下がらなかったりすると、 戸の内側で一気に血の気が引きます。 このまま何も言わずに席へ戻ってしまいたくなりますが、 そこで黙るかどうかの数分が、事の大きさをそのまま決めることになります。
判断が分かれるのは自分で始末がつくかどうかという一点になります。 紙で拭き取れる程度のことと詰まらせて水が引かない状態とではまるで違い、 前者は黙って戻って構いませんが、後者のほうは時間との勝負になります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 少し汚した | 自分で拭き取りますので、報告までは要りません |
| 詰まらせた | すぐ伝えます。放っておくと溢れます |
| 壊した・水が止まらない | その場ですぐ伝えますので、黙って戻りません |
| 子どもが汚した | 親が拭き、必要であれば家の人にも伝えます |
| 後日 | 大きな迷惑をかけたなら改めてお詫びします |
詰まりだけは時間との勝負になりますので、恥ずかしくてもその場で伝えてください。黙って席に戻ったあとで別の人が使えば、そこで溢れて床まで濡らすことになりますし、そうなってから名乗り出るほうがはるかに気まずくなります。
紙で拭き取れる程度であれば、備えつけの掃除用品を使って自分で始末してしまえばそれで済みますし、 戸棚の奥を探してまで道具を出す必要はありませんので、 手の届くところに掃除用のシートが置かれていれば、それで十分に間に合います。
拭き取れないとき、あるいは詰まらせてしまったのであれば、 「申し訳ありません、詰まらせてしまいました」と早いうちに伝えてください。 言い出すのは気が重いものですが、早く言うほど被害は小さく収まりますし、 大きな迷惑をかけたのであれば、後日あらためてお詫びを伝えておきます。
室内での座り方を見るトイレを借りるときの作法に一つだけの正解があるわけではなく、 その家の造りと相手との間柄を見て決めればそれで足ります。 義理の親の家では「お手洗いをお借りしてもよろしいですか」と改まって断り、 学生時代からの友人であれば「借りるね」の一言で構いません。
どの家でも変わらないのは、黙って席を立たないことと、 入ったときの状態に戻して出ることの二つだけです。 この二つを押さえていれば、蓋やスリッパの細かいところを思い出せなくても、 そこを借りたことが誰の気にも残りません。
よくある質問
トイレを借りるとき何と言いますか?
「お手洗いをお借りしてもよろしいですか」と断ってから席を立ちます。親しい相手であれば「トイレ借りるね」でも十分に通じますが、黙って立ち上がると、残された相手はどこへ行ったのか分からないままになります。
場所が分からないときは?
「恐れ入ります、どちらでしょうか」と尋ねれば、たいていは相手のほうが立って案内してくれます。分からないまま歩き回ると廊下の引き戸を一つずつ開けることになり、それは相手にしてみれば家のなかを見て回られたのと同じです。
トイレのなかで気をつけることは?
戸棚や収納は相手の私物ですので、扉が目に入っても絶対に開けないでください。長居やスマートフォンも滞在を延ばすだけですし、音が気になるのであれば備えつけの音消しの機能を使い、なければ気にしすぎなくて構いません。
トイレのスリッパはどうしますか?
入口で室内スリッパを脱ぎ、トイレ用に履き替えて入ります。もっとも多いのが履いたまま廊下へ出てしまうことで、相手は指摘しづらく双方とも気まずくなりますので、戸に手をかけたところで足元をもう一度見てください。
使った後は何をしますか?
流したかどうかを目で確かめ、便座と蓋を閉じ、周りに飛び散りがあれば拭き取っておきます。タオルは元どおりに掛け直し、ドアも入ったときの状態に戻してください。「入ったときの状態に戻す」という一つだけ覚えておけば足ります。
詰まらせてしまったら?
恥ずかしくてもその場で伝えてください。「申し訳ありません、詰まらせてしまいました」と早く言うほど被害は小さく収まりますし、黙って席に戻ったあとで別の人が使えば、そこで溢れて床まで濡らすことになります。
まとめ
- 断ってから席を立ちます
- 場所は尋ねて、探し回りません
- 戸棚や収納は開けません
- 入口でスリッパを履き替えます
- 履いたまま廊下へ出ません
- 便座と蓋を閉じてから出ます
- 入ったときの状態に戻します
- 詰まらせたらすぐ伝えます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。