結論
名刺は訪問した側・目下の側から先に差し出すのが原則で、 売り手と買い手であれば売る側が先に出しますし、 どちらの立場とも決めかねる場面では自分から先に出しておけば失礼になりません。
持ち方は両手で、相手から読める向きに回して胸の高さに構えますが、 実際の場面では互いに同時に差し出すことがほとんどです。 左手に開いた名刺入れを受け皿にして相手の名刺を載せる形を覚えておけば、手が足りなくなりません。
どちらから先に出すか
名刺を出す順番でつまずくのは、応接室に通されてまだ席に着く前の、 鞄を置くか置かないかという数秒のあいだで、 相手が並んで立っている前では、どちらが先かを落ち着いて考えている時間がありません。
順番そのものは訪問した側・売る側・目下の側が先という形で決まっているのですが、 判断が分かれるのはそこではありません。 紹介者を介して引き合わされた場や、双方が別の会社の会議室に集まった場のように、 どちらが訪ねた側なのかがはっきりしない場面で迷いが出ます。
| 場面 | 先に出す側 |
|---|---|
| 訪問した/された | 訪問した側から先に差し出します |
| 売る/買う | 売る側から先に差し出すのが原則です |
| 目下/目上 | 年次や役職が下の側から先に出します |
| 紹介された | 紹介された側から先に差し出します |
| 同格 | 気づいたほうから出せばよく、同時でも構いません |
どちらが先か決めかねたときは、自分から先に出してしまうのがいちばん確実です。先に差し出したことで失礼になる場面はまずありませんし、逆に相手に先を越されたときも、「申し遅れました」とひと言添えてすぐに出せば、遅れたことがそのまま失礼になることはありません。
実際に多いのは、こちらが二人で訪ね、相手も課長と担当者の二人で出てきたという場面です。 四人が立ったまま向かい合うと、誰と誰から始めるのかが決まらないまま、 名刺入れだけが手の中で温まっていきます。
こういうときは上役同士が向かい合っている組から始めれば、 あとは残った二人が自然に対になりますので、 こちらの上司が動くのを半歩下がって待ち、終わったところで前に出れば順番は崩れません。 相手が先に差し出してきたとしても、受け取りながら自分の名刺を出せば流れは止まりません。
渡し方の手順
渡す動作そのものはひと呼吸ほどで終わるものですが、 名刺入れを開くところから会釈までを一続きで行おうとすると、 どこで名乗るのか、どの高さで差し出すのかで手が止まりがちです。
とくに引っかかるのが名刺の向きと高さで、 自分から読める向きのまま出してしまう人は少なくありませんし、 相手が役職の高い方だと、どこまで低く構えればよいのかが分からなくなります。
| 順 | 動作 |
|---|---|
| 1 | 名刺入れから一枚を抜き出します |
| 2 | 両手で持ち、文字の上に指をかけません |
| 3 | 相手から読める向きに回して持ち替えます |
| 4 | 自分の胸の高さに構えて差し出します |
| 5 | 「〇〇株式会社の〇〇と申します」と名乗ります |
| 6 | 「よろしくお願いいたします」と添えて会釈します |
相手より少し低い位置で差し出すのが丁寧とされますが、極端に低く構える必要はありません。腰まで下げてしまうと相手も同じだけ下げることになって動きがぎこちなくなりますので、自分の胸の高さを基準にしておきます。相手が役職の高い方であれば、そこから指一本分ほど下げるくらいで十分に伝わります。
机を挟んだまま名刺を差し出してしまう場面は応接室でも会議室でもよく起こりますが、 相手はそのたびに身を乗り出して手を伸ばすことになります。 幅の広いテーブルが据えられた部屋だと、腰を浮かせなければ届きません。
名刺交換は立って、机を挟まずに行うものですので、 席を勧められていても交換が済むまでは座らずにおくほうが落ち着いて進みます。 ソファの前に低い机が据えられた応接室であれば、 その机の端をまわって相手の正面に立つだけで、互いに腕を伸ばさずに済みます。
同時交換のやり方
片方が先に出し、それを受け取ってからもう片方が出すという教科書どおりの運びになることはまれで、 実際の場面では互いに同時に差し出すことがほとんどです。
そこで詰まるのが手の数で、 両手で差し出しながら相手の名刺も両手で受けようとすると手が足りませんし、 名刺入れをどちらの手に持っているかによって、その後の動きがまるごと変わってきます。
| 順 | 動作 |
|---|---|
| 1 | 右手で自分の名刺を差し出します |
| 2 | 左手には名刺入れを開いて構えます |
| 3 | 相手の名刺を名刺入れの上で受けます |
| 4 | 受けたら右手も添えて両手で持ちます |
| 5 | 「頂戴いたします」とひと言添えます |
名刺入れを受け皿にする、と覚えておけば同時交換はそれだけで形になります。相手の名刺を指でつまんで受け取ると文字の上に指がかかってしまいますが、開いた名刺入れの革の面に載せてもらう形にすれば指はどこにも触れません。受けたあとで右手を添えれば、そのまま両手で持った格好になります。
困るのは相手のほうが先に名刺を出し終えていて、 こちらだけがまだ名刺入れを開いているという場面で、 右手はふさがったまま、左手の名刺入れの上には相手の名刺が載った状態になります。
そのときは受け取った名刺を名刺入れの上に載せたまま、 下から自分の名刺を抜いて差し出せば、持ち替える動きを挟まずに済みます。 名刺入れの中に自分の分を数枚入れておき、 抜きやすい向きに揃えておくだけで、この持ち替えはずいぶん楽になります。
受け取り方
受け取る側の動作は差し出す側ほど意識されないものですが、 名刺をどう扱ったかは相手からよく見えていますし、 打ち合わせが終わるまで机の上に残るぶん、その扱いは印象に長く残ります。
迷いやすいのは受け取ったあとで、 その場でしまってよいのか、机に置いておくのか、 読めない字が入った名前をどう扱うのかといったところで手が止まります。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| 受け取るとき | 両手で受け、「頂戴いたします」と添えます |
| 持ち方 | 文字の上に指を置かないように持ちます |
| 名前の確かめ方 | その場で目を通し、社名と名前を確かめます |
| 読めない字があるとき | その場で読み方を尋ねて構いません |
| 打ち合わせが始まったら | しまわずに机の上へ置いておきます |
| 何枚も受け取ったとき | 相手の座っている順に並べて置きます |
受け取った名刺をすぐにしまってしまうと、話が始まる前に相手を片づけたように見えます。打ち合わせのあいだは机の上、自分の左手前あたりに置いておけば、名前を目で確かめながら話せますし、席を立つときにまとめてしまえば、置き忘れることもありません。
その場で読み方を尋ねるのをためらう人は多いのですが、 後の席で読み違えたまま呼び続けるほうがよほど気まずく、 しかも途中で言い直すきっかけがつかめないまま打ち合わせが終わってしまいます。
「失礼ですが、何とお読みするのでしょうか」と受け取ったその場で聞いてしまえば、 相手も読み方を尋ねられることには慣れていますから、たいていは名刺を指しながら教えてくれます。 聞いた読み方は次に会うときのために名刺の隅へ書き留めておくと助かりますが、 書くのは相手の前を離れてからにします。
受け取った名刺の置き方を見る避けたい扱い方
名刺そのものの出来より扱い方のほうが印象を決めますし、 しかも避けたい形の多くは、悪気なく、 急いでいるときや荷物が多いときにそのまま出てしまいます。
背景にあるのは名刺を相手の分身として扱うという考え方で、 名刺を折る、汚す、乱暴に置くといった動作が、 そのまま相手そのものへの態度として受け取られます。
| 避けたいこと | 理由 |
|---|---|
| 財布・ポケットから出す | 必ず名刺入れから出すようにします |
| 折れた・汚れた名刺 | 使わずに、鞄の中で潰れていないか確かめます |
| 片手で渡す | 両手で持って差し出すのが基本です |
| 受け取った名刺にその場で書き込む | 相手の前では書かず、席を離れてからにします |
| 名刺を忘れる・切らす | 出かける前に枚数を数えておきます |
| 座ったまま交換する | いったん立ち上がってから交換します |
| 名刺を指で挟んで渡す | 文字が隠れるので、縁のほうを持って渡します |
名刺入れは、使った日の帰りに補充する癖をつけておくと切らしません。「切らしております」というひと言は、その場では受け流してもらえたとしても、準備が足りなかったこととして残ります。渡せなかった相手の手元には、こちらの社名も連絡先も何ひとつ残らないことになります。
案外よく見られているのが名刺入れそのものの状態で、 角がすり切れた革や、名刺以外のものが詰め込まれてふくらんだ入れ物は、 蓋を開いたその瞬間に相手の目に入ります。
中に入れておくのは名刺だけにしておき、 ポイントカードや折りたたんだ領収書を一緒にしまわないでおくだけで、 開いたときの見え方はずいぶん変わります。 訪問の前に一度開いて折れた名刺が混じっていないかを確かめておけば、その場で慌てることもありません。
名刺を忘れたときの対応を見る順番も渡し方も、その場の人数と部屋の造りによって形が変わりますので、 どれか一つの正しい手順を覚えて当てはめれば済むというものではありません。 迷ったら自分から先に出す、両手で持つ、相手から読める向きに回す、 というところだけを押さえておけば、たいていの場面はそれで通ります。
どの場面でも変わらないのは、名刺を相手そのものとして扱うという一点だけで、 文字に指をかけないことも、すぐにしまわないことも、 折れた一枚を使わないことも、すべてそこから出てきます。 手順を思い出せなくなったときは、この一点に立ち返れば大きく外すことはありません。
よくある質問
名刺はどちらから先に出しますか?
訪問した側、売る側、目下の側から先に差し出します。迷ったら自分から出してください。先に出して失礼になることはありません。相手が先に出したら「申し遅れました」と添えてすぐ出します。
名刺はどう渡しますか?
名刺入れから出し、両手で持ち、相手から読める向きに回して胸の高さで差し出します。「〇〇株式会社の〇〇と申します」と名乗り、会釈します。立って、テーブルを挟まずに行ってください。
同時に交換するときはどうしますか?
右手で自分の名刺を差し出し、左手に持った名刺入れの上で相手の名刺を受けます。受けたら右手も添えて両手にし、「頂戴いたします」と言います。「名刺入れを受け皿にする」と覚えてください。
受け取った名刺はすぐしまいますか?
すぐしまいません。打ち合わせ中はテーブルに置きます。また文字の上に指を置かず、その場で名前を確認してください。
名前が読めないときは?
その場で「失礼ですが、何とお読みしますか」と聞いてください。後で間違って呼ぶほうがはるかに失礼になります。その場で聞けば、相手も慣れているので気にしません。
やってはいけないことは何ですか?
財布やポケットから出す、折れた名刺を使う、片手で渡す、受け取った名刺に相手の前で書き込む、座ったまま交換することです。また名刺入れは常に補充しておいてください。「切らしております」は準備不足と受け取られます。
まとめ
- 訪問した側・目下の側から先に差し出します
- 迷ったときは自分から先に出します
- 両手で持ち、胸の高さに構えて差し出します
- 相手から読める向きに回してから渡します
- 同時交換では名刺入れを受け皿にします
- 読めない名前はその場で尋ねます
- 受け取った名刺はすぐにしまいません
- 名刺入れは使った日の帰りに補充しておきます
参考情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 厚生労働省「モデル就業規則」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html - 厚生労働省「労働時間・休日」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
ビジネスマナーそのものに公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。勤怠に関わる部分(遅刻・欠勤・早退・休暇)は会社の就業規則が優先します。出典は労働基準法および厚生労働省の資料で、2026年8月15日に確認しました。
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。会社・業界によって慣行は大きく異なります。とくに勤怠の手続きは就業規則で定められており、そちらが優先します。入社後は自社のルールを確認してください。