結論
会社にかかってきた電話は3コール以内に取るのが目安で、 それを過ぎたのであれば名乗る前に「お待たせいたしました」を置いておくと、 待たせたことに気づいていると相手へ伝わります。
気にすべきなのは呼び出し音の回数そのものよりも 待たせた自覚を言葉にしたかどうかのほうで、 6コールで出ても一言添えれば収まりますし、3コールで出ても黙って名乗れば素っ気なく響きます。
コール数の目安
席で書類をめくっているところへ代表電話が鳴り出し、まわりを見回しても誰も受話器へ手を伸ばさないという時間は、 入社して間もないうちほど一日に何度も訪れます。 受話器を持ち上げるまでのわずかな数秒のあいだに、何コールまでなら許されるのかという計算が頭をよぎります。
迷いが生まれるのは、呼び出し音の回数そのものが失礼かどうかを決めていると受け取ってしまうところで、 実際には同じ5コールでも第一声しだいで相手の受け取り方が分かれます。 早く取れば取るほど喜ばれるのかという点も、鳴っている最中には判断がつきません。
| コール数 | 第一声 |
|---|---|
| 1〜3コール | そのまま「お電話ありがとうございます」と名乗ります |
| 4〜5コール | 「お待たせいたしました」を先に添えてから名乗ります |
| 6コール以上 | 「大変お待たせいたしました」と言い換えます |
| 10コール以上 | お詫びの言葉まで添えてから、用件を伺います |
鳴っているあいだにコールを数える必要はありません。受話器を取った時点で、すぐ出られたのか待たせたのかは自分でも分かっていますから、その二つのどちらだったかで第一声を決めれば足ります。待たせた自覚があるなら、一言添えておくだけで相手の気持ちは収まります。
そもそも電話を取る回数そのものが、座っている席によってまるで違うという事情もあります。 ソフツーが2023年8月4日から7日にかけて、オフィスに固定電話のある全国20歳以上の会社員や自営業など562名へオンラインで行った電話業務に関する実態調査では、 所属する部署で1日に1人あたりが取る電話の回数は平均7.4回、最も多い50代では平均12.7回という結果でした。
これは回線の記録を集計した数字ではなく、回答者が自分の実感で答えた回数をならしたものですから、 日に7回や8回という数はあくまで目安として読むにとどまります。 それでも代表電話が一日に何度も鳴る職場であれば、その一本ごとに3コールを数えていては手が止まりますので、 数えるのをやめて第一声だけを整えるほうが結局は早く済みます。
その第一声については、ビジネスの電話で「もしもし」を使わないのが一般的な扱いになっています。 もともとは呼びかけの「申します申します」が縮まったものとされており、 略した言葉を改まった場では用いないという考え方から外されていますので、 受話器を取ったら「お電話ありがとうございます」と続けてください。
なぜ3コールなのか
3コールという線がどこから出てきたのかを聞かされないまま、とにかく3コールと覚えさせられることがあります。 根拠を知らないまま数えていると、4コール目に入った瞬間に焦りが出て、名乗るところまで慌ただしくなります。
この目安を支えているのは、待っている側がどこから長いと感じ始めるかという時間の感覚と、 受ける側が受話器を取るまでに何を整えておく必要があるかという支度の二つです。 早ければ早いほど良いという話にならないのは、この片方だけでは説明がつかないからです。
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| 1コールは約3秒 | 3コール鳴りきるまでで、およそ10秒が過ぎます |
| 10秒を超えると長い | 待っている側の体感では、そこから急に長く感じます |
| 受ける側にも猶予が要る | メモとペンを引き寄せる数秒が、ここに収まります |
| 1コールで取るのも早い | 身構えていなかった相手を、かえって驚かせます |
1コールで受話器を取ると、かけた側が身構えることがあります。呼び出し音が一度で切れてしまうと、人が出たのか留守番電話につながったのかの区別が一瞬つきませんし、話し出す前に息を整える間もありません。2コールから3コールのあいだに取り、こちらもその数秒でメモを構えるというあたりが、双方にとってちょうど良い間合いになります。
早く取りすぎることへの注意は、電話応対の教育にあたっている側からも出ています。 公益財団法人日本ICTテレコムユーザー協会が2024年9月に公開した、新入社員の電話恐怖症をめぐる座談会では、 日本電信電話ユーザ協会の契約講師を務めるマナー講師が、 3コール鳴らすのは会社の恥と教えられることは多いものの早ければよいというものではなく、 相手にも自分にも少し余裕を持つ時間が要るので1コールは鳴らしてから取るほうがよいと述べています。
こちらは統計を取った結果ではなく、教育にあたる講師と企業の担当者が現場で見てきたことを語り合った記録です。 同じ座談会では、3コール目までに出ようと励ましても手が伸びず、4コール目や5コール目でやっと出る新人がいるという話も出ていますので、 数えることがかえって助けにならない人が現に一定数いることも読み取れます。
遅れて出たときの第一声
別の電話を切ったところで隣の島の電話がまだ鳴り続けていて、7コール目あたりでようやく受話器を取るということが起こります。 そこで普段どおりに社名だけを名乗ると、言葉づかいは丁寧なのに、相手の耳には妙に軽く響きます。
分かれ目になるのは、待っていた時間をこちらが数えていたかどうかが声に出るかという一点で、 かけた側は呼び出し音を聞きながら確かにその時間を数えています。 何コール目から言葉を変えるのかという線引きよりも、変えるかどうかのほうがここでは効いてきます。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 少し待たせた | 「お待たせいたしました。〇〇株式会社でございます」と続けます |
| かなり待たせた | 「大変お待たせいたしました」と言い換えて名乗ります |
| 相手が苛立っている | 名乗る前に「申し訳ございません」を先に置きます |
| かけ直してもらった | 「先ほどは失礼いたしました」から入って名乗ります |
待たせた理由を並べることだけはしないでください。他の電話に出ていたという事情はこちら側の都合であって、待っていた相手にとっては聞かされたところで待った時間が戻るわけではありませんし、その説明のあいだも用件は止まったままになります。お詫びを一言だけ述べてすぐ用件へ入るほうが、相手の時間を無駄にしません。
かけ直してもらった場面では、待たせた側だという自覚がさらに要ります。 一度目には誰も出られず、相手は用件を抱えたまま受話器を置き、時間を置いてもう一度番号を押し直したという流れですから、 こちらの都合で二度手間を負わせたことになります。
そういうときは受話器を取ってすぐ、先ほどは失礼いたしましたと述べてから名乗ると、 二度目だと分かって話してくれていることに気づいていると相手へ伝わります。 一度目の用件を覚えていなくてもかまいませんので、取れなかったことにこちらから触れておけば、 相手は最初から説明し直す気まずさを抱えずに済みます。
すぐ出られないとき
来客に湯呑みを出しているところや、別の相手と電話で日程を詰めている最中に、代表電話が鳴り始めることがあります。 両手はふさがっているのに音だけは鳴り続けますので、取るべきか放っておくべきかで気持ちが揺れます。
ここで判断を分けるのは、いま抱えている用が数秒だけ置けるものかどうかと、 まわりに手の空いている人がいるかどうかの二つです。 取ってしまってから困る場面と、取らずに済ませてよい場面とは、この二つの見極めで分かれます。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 他の電話に出ている | 周りの人が取れますので、そのまま話を続けます |
| 手が離せない | 出てから「少々お待ちいただけますか」と断ります |
| 保留にする | 30秒を超えたら、いったん受話器へ戻ります |
| 長くかかりそう | 調べて折り返すことを、こちらから申し出ます |
| 誰も出られない | 留守番電話と転送の設定を、先に確かめておきます |
保留は30秒までにとどめてください。それを超えそうなら一度受話器へ戻り、もう少し時間がかかりそうなので折り返しでもよいかと尋ねれば、相手は待つか切るかを自分で決められます。無言のまま待たせ続けると、あとどれだけ待てばよいのかが分からないまま、相手は受話器を持ち続けることになります。
保留音が流れているのだから相手にも状況は伝わっているだろうと考えてしまいがちですが、 向こうに聞こえているのは音楽だけで、担当者を探しているのか資料をめくっているのかは何も分かりません。 1分を超えて放置されると、多くの人はそこで受話器を置いてしまいます。
切った相手はもう一度番号を押し直すことになりますので、こちらが席を離れていたぶんの手間を、 そっくり相手が肩代わりする形になります。 調べものに時間がかかると分かった時点で折り返しを申し出ておけば、相手は電話を切って別の仕事へ戻れますし、 こちらも人を待たせている焦りから解放されます。
出なくてよい場面
新人のうちは、鳴った電話はすべて自分が取るものだと思い込んで、 来客に湯呑みを出しかけた手を止めてしまうことがあります。 取らなかった一本を後から責められるのではないかという不安が、そのまま体を動かしてしまいます。
けれども取るか取らないかを決めているのは席次でも社歴でもなく、 いま目の前にある用と、電話を取れる人が他にいるかどうかの二つです。 その二つを見比べれば、取らないほうが職場として収まる場面がはっきりしてきます。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 来客に応対している | 目の前のお客様が先で、電話はその後になります |
| 他の人が手を伸ばしている | 二人で受話器を取り合わずに済みます |
| 会議に出ている | 電話番が別にいるなら、そちらへ任せます |
| 担当外の用件が続いている | 担当者が席にいるなら、その人が取るほうが早く済みます |
| 休憩に入っている | 代わりの人がいる時間帯なので、無理には戻りません |
来客に応対している最中だけは、電話よりも目の前の相手が先になります。受付で名刺を受け取っている途中に受話器へ手を伸ばせば、来た方はその場に立ったまま待たされますし、電話の相手にも上の空の応対として聞こえます。取れる人が他にいるかどうかを一度見回して、いないのであれば留守番電話に任せるという判断で差し支えありません。
新人が電話を全部取るという決まりは、作法として定められているわけではありません。 社名や取引先の名前を早く覚えられるという理由からそうさせている職場が多いというだけで、 これは慣行であって、守らなければ失礼にあたるという類いのものではありません。
先に挙げたソフツーの実態調査では、電話に対して苦手意識を感じるかという問いに、 とても感じるとやや感じるを合わせて57.8パーセントが当てはまると答えており、 20代から30代に絞ると72.7パーセントまで上がっています。 こちらは行動を集計した数字ではなく、本人がどう感じているかを尋ねた意識調査です。
手が離せないときにまで無理に取ろうとすると、来客への応対も電話も中途半端になりますし、 取り次ぎを間違えて後から詫びる手間まで増えていきます。 取れる人が取るというのが本来の形ですので、自分が取れないときは受話器を見送ってかまいませんし、 後から誰が受けたのかを確かめて用件を引き継いでおけば、それで足ります。
電話に出た後の受け答えを見る何コール以内なら正しいという線が一本引かれているわけではなく、代表電話が絶えず鳴っている部署と、 日に数回しか鳴らない部署とでは、同じ5コールの重みがまるで違ってきます。 3コール以内という目安は覚えやすいというだけの数字ですので、そこを1コール外したことを気に病む必要はありません。
どの職場でも変わらないのは、待たせたと分かっているならその一言を先に置くという一点だけです。 お待たせいたしましたと述べてから社名を名乗るだけで、こちらが時間に気づいていることは相手へ伝わりますので、 細かい回数を思い出せなくても失礼にはなりません。
よくある質問
会社の電話は何コール以内に出ますか?
3コール以内が目安です。1コールは約3秒で、3コールで約10秒。それを超えると待つ側の体感として長く感じられます。ただしコール数を数える必要はなく、「すぐ出られた」「待たせた」の2つで判断すれば足ります。
1コールで出るのはよくないのですか?
相手が身構えることがあります。呼び出し音が一度で切れると、人が出たのか留守番電話につながったのかが一瞬わかりません。2〜3コールで出て、こちらもその数秒でメモを構える。この程度がちょうど良い間合いです。
「もしもし」は使ってよいですか?
ビジネス電話では使わないのが一般的です。もともと「申します申します」の略とされ、略語だから改まった場では避けるという考え方によります。「お電話ありがとうございます」から始めてください。
遅れて出たら何と言いますか?
「お待たせいたしました。〇〇株式会社でございます」と添えます。かなり待たせたなら「大変お待たせいたしました」です。「他の電話に出ておりまして」といった言い訳は不要で、お詫びを一言述べてすぐ用件に入るほうが相手の時間を無駄にしません。
保留はどのくらいまでよいですか?
30秒までです。それを超えるなら一度戻り、「もう少しお時間がかかりそうです。折り返しでもよろしいでしょうか」と伝えてください。保留音は流れていても相手には状況が分からず、1分以上放置されると多くの人は切ります。
新人は電話を全部取るべきですか?
そのような作法上の決まりはありません。電話を取ることで社名や取引先を覚えられるという考え方はありますが、それは慣行です。手が離せないときまで無理に取る必要はなく、取れる人が取るのが本来の形です。
まとめ
- 3コール以内に受話器を取ります
- 1コールは約3秒で、3コールでおよそ10秒が過ぎます
- 1コールで取ると、かえって相手を驚かせます
- 4コールを過ぎたら「お待たせいたしました」を添えます
- 待たせた理由を並べず、すぐ用件に入ります
- ビジネスの電話では「もしもし」を使いません
- 保留は30秒までにとどめます
- 新人が全部取るという決まりはありません
参考情報
- 個人情報保護委員会
https://www.ppc.go.jp/ - 個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ - 総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/ - ソフツー「電話業務に関する実態調査」(2023年8月実施・全国20歳以上562名)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000028096.html - 日本ICTテレコムユーザー協会 座談会「新入社員の『電話恐怖症』を克服するために」
https://www.jtua.or.jp/education/topic/discussion/202410_01/
本文で引用したソフツー「電話業務に関する実態調査」は、2023年8月にオフィスへ固定電話のある全国20歳以上の男女562名へオンラインで行ったもので、回線の記録ではなく本人の感じ方と自己申告の回数を尋ねた意識調査です。電話・メールの作法に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。会社ごとに定められた手順がある場合は、そちらが優先します。メールの誤送信など個人情報の取り扱いに関わる部分は、個人情報保護委員会の資料を参照し、2026年8月15日に確認しました。
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。会社・業界によって慣行は大きく異なります。社内に定められた手順や文例がある場合は、そちらに従ってください。