結論
受付では会社名・自分の名前・約束の時刻・約束の相手という四つを、 ひと息で伝えてしまうのがいちばん早く片付きます。 「〇〇株式会社の〇〇と申します。14時に〇〇部の〇〇様とお約束をいただいております」という形を そのまま口に出せば、それで足ります。
三つ目の時刻と四つ目の相手が抜けていると、受付の側は社内の誰へ繋げばよいのかが分かりませんので、 そこで一度尋ね返すことになります。 部署名まで添えておけば、同じ姓の方が何人いらしても迷わせずに済みます。
基本の型
受付のカウンターの前に立ち、相手が顔を上げてこちらを見た瞬間に、何から名乗ればよいのかが飛んでしまうことがあります。 頭の中では分かっているつもりでも、社名だけを言ったところで続きが出てこなくなり、そこから先が長くなります。
ここで詰まる原因は言葉づかいの難しさではなく、伝える中身のほうが決まっていないことにあり、逆に言えば入れるべき要素さえ並べておけば、その場で考える必要がなくなります。 受付の側が知りたいのは、社内の誰をどの部署から呼び出せばよいのかという一点だけで、それ以外の説明はこの場では要りません。
| 要素 | 言い方 |
|---|---|
| 1. 会社名 | 「〇〇株式会社の」と、社名から切り出します |
| 2. 自分の名前 | 「〇〇と申します」と続けて名乗ります |
| 3. 約束の時刻 | 「14時に」と、約束の時刻を挟みます |
| 4. 約束の相手 | 「〇〇部の〇〇様とお約束をいただいております」と結びます |
四つは順番どおりに並べておくと、受付の側が聞きながらそのまま書き取れる形になります。社名と名前を先に置くのは記帳や入館証の支度がそこから始まるためで、時刻と相手の名前を後ろに置くのは、誰へ繋ぐかを決める材料になるためです。順を入れ替えると、聞き直しが増えます。
名乗る前に済ませておきたいのが身支度のほうで、コートを脱いで腕にかけ、名刺入れを取り出しやすい位置へ移し、スマートフォンは鞄の中へしまっておいてください。 受付の目の前で鞄の口を開けて名刺を探し始めると、それだけで相手を待たせることになります。
四つの要素は、ひと息で言い切れるくらいの短さにまとめておくと、本番でも詰まりません。 約束の日時が決まった時点で口に出す文をそのまま用意しておけば、当日どれだけ緊張していても、考えるより先に言葉のほうが出てきます。
有人受付の場合
受付に人が座っている会社であれば、やり取りそのものは短く済み、名乗ってから案内されるまでに一分もかかりません。 ところが慣れないうちは、その一分のあいだに何をどの順で出せばよいのかというところで、手が止まってしまいます。
詰まりやすいのは名刺を出す時機と、記帳を求められたときの二か所で、どちらも先方から求められてから動けば足ります。 先回りして名刺を差し出してしまうと、記帳や入館証の支度を進めている受付の側の手順を、かえって一度止めてしまうことになります。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 軽く会釈をしてから、社名と名前を名乗ります |
| 2 | 用意しておいた四つの要素をそのまま伝えます |
| 3 | 名刺を求められたら、その場で差し出します |
| 4 | 記帳を求められたら、用紙のほうに記入します |
| 5 | 入館証を受け取り、見える位置に着けます |
| 6 | そのまま案内に従って移動していきます |
渡された入館証は、鞄にしまい込まずに必ず見える位置へ着けておいてください。すれ違う社員の方が来客だとその場で分かりますので、廊下やエレベーターの前で怪訝な顔をされずに済みます。首から下げる形のものは、上着の内側へ入り込んでいないかだけ確かめておきます。
記帳の用紙には、社名と氏名のほかに、訪問先の部署名や入館の時刻まで書き込む欄が並んでいることがあります。 相手の部署名を正しく書ける状態にしておけばそこで手が止まりませんので、前の日に確認しておいた内容が、この場面でもそのまま効いてきます。
会釈は言葉を出す前に一度だけで足りますので、そこで深く長い礼を重ねたり、名乗るたびに頭を下げ直したりする必要はありません。 受付の方はその日のうちに何人もの来客を迎えることになりますので、礼の深さよりも、名乗って用件が伝わるまでの流れが淀まないことのほうが、結果として気持ちよく通じます。
内線電話の場合
受付に人がおらず、カウンターの上に内線電話と部署の一覧だけが置かれている会社も増えており、そこで初めて無人だと気づくこともあります。 相手が目の前にいないぶん、受話器を取る前に何を言うのかを整えておかないと、繋がってから慌てることになります。
困るのは繋がらなかったときのほうで、一覧に相手の部署が見当たらない、呼び出しても誰も出ない、といった状態のまま受付に立ち尽くすことになります。 ここをどう抜けられるかは、その場での機転よりも、訪問の約束をした時点でほとんど決まっています。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 内線番号を確かめ、分からなければ代表番号へかけます |
| 2 | 相手が出たら、四つの要素をそのまま伝えます |
| 3 | 「受付におります」と、こちらの場所を伝えます |
| 4 | 受話器を置き、その場で立って待ちます |
| 5 | 来られたら、立ったまま挨拶をします |
内線番号は、訪問の約束をした時点で先方から聞いておくといちばん確実です。日程を決めるやり取りの終わりに「当日はどちらへご連絡すればよろしいでしょうか」と一言添えておけば、当日カウンターの前で一覧を目で追う時間そのものが要らなくなります。
呼び出しても誰も出ないときは、まず先方の携帯へかけ、それでも繋がらなければ代表番号へかけ直すという順で動くことになりますので、携帯番号のほうも前もって控えておいてください。 番号が手元にあるかどうかというだけのことで、無人の受付に立ち往生したまま過ごす時間が変わってきます。
担当者が席を外していると分かったときは「いつ頃お戻りでしょうか」と尋ねておけば、待つのか出直すのかをその場で決められます。 内線に別の方が出た場合も伝える中身は変わりませんので、同じ四つの要素をそのまま繰り返せば取り次いでいただけますし、聞き取りにくいときは「恐れ入ります、もう一度お願いできますか」と返しておくほうが、聞き違えたまま進むより早く片付きます。
アポイントがないとき
近くまで来たので顔だけ出しておこうと、約束をしないまま取引先のビルに入ってしまうことがあります。 受付の前まで来てから、はたして取り次いでいただけるものかどうかというところで、足が止まります。
ここでの前提になるのは、会えないほうが普通だという一点で、相手は執務の途中にいてその時間には別の予定が入っているのが通常ですので、取り次いでいただけたとすればそれは運がよかっただけということになります。 はじめからそのつもりで声をかけているかどうかによって、断られたあとの引き際までが変わってきます。
| 場面 | 言い方 |
|---|---|
| 基本 | 「お約束はいただいていないのですが、〇〇様がご在席でしたらお取次ぎ願えますでしょうか」と尋ねます |
| 近くに来たついで | 「近くまで参りましたので、ご挨拶だけと思い伺いました」と添えます |
| 断られたら | 「承知いたしました。改めてご連絡いたします」と引きます |
| 資料を預ける | 「こちらをお渡しいただけますでしょうか」と託します |
断られたら、そこで粘らずにそのまま引き上げてください。受付の方には取り次ぐかどうかを決める立場がないことも多く、食い下がられても困らせるだけになります。名刺と資料さえ預けておけば、伺ったことも用件も、あとから担当者へきちんと伝わります。
言い方でひとつだけ効いてくるのが「ご在席でしたら」という条件の付け方で、これが入っていると、相手が席にいないというだけで受付の方が断れるようになります。 条件を付けずに取り次ぎだけを頼んでしまうと、断る理由のほうをこちらに向けて探させることになります。
近くまで来たついでであれば「近くまで参りましたので、ご挨拶だけと思い伺いました」と先に添えておくと、こちらに急ぎの用件が積み上がっているわけではないことが伝わります。 会えなかったときも「承知いたしました。改めてご連絡いたします」と引いておけば、次に約束を取り付けるときに気まずさが残りません。
待っている間
取り次ぎが済んで担当者が下りてくるまでの数分は、受付のロビーで何をするでもなく過ごすことになります。 ソファが並んでいると腰を下ろしたくなりますし、手持ち無沙汰になってくると、つい上着のポケットから携帯電話へ手が伸びます。
ここで判断が分かれるのは、この数分を自分ひとりの時間として過ごすのか、すでに訪問の一部が始まっている時間として過ごすのかという一点になります。 受付の周りは社内でもとくに人のよく通る場所になっていますので、そこには取り次ぎを頼んだ担当者以外の目もあると考えておいてください。
| 場面 | 振る舞い |
|---|---|
| 基本の姿勢 | 立って待ち、椅子を勧められてから腰を下ろします |
| スマートフォン | 鞄にしまったまま、その場では取り出しません |
| 社内の方とすれ違う | 目が合ったところで、軽く会釈をします |
| 電話がかかってきた | 声を落とすか、その場では出ないでおきます |
| コート | 畳んだまま腕にかけて持っています |
| 案内されたら | 「失礼します」と述べて、後に続きます |
受付の周りは社員の方が絶えず通り抜ける場所ですので、担当者が下りてくるまでのあいだも見られているものと考えておいてください。ソファに深く沈み込んでいた、ずっと携帯電話を操作していた、といった様子はあとから担当者の耳に入ることがあります。数分のことですので、立って待つほうが結局は楽に済みます。
椅子を勧められたときには遠慮せずに腰を下ろして構いませんが、そのときも背もたれには深く預けず、鞄は足元の床へ置いておきます。 担当者が姿を見せたらすぐに立ち上がって挨拶できる姿勢のままでいれば、迎えに来た側も声をかけやすくなります。
コートは畳んで腕にかけたままにしておき、ロビーのソファの背に掛けたり、隣の席へ置いたりはしません。 案内されて歩き出すときに掛けたものを取り忘れることがありますし、腕にかけてさえいれば、そのまま「失礼します」と述べて後に続けます。
取引先訪問の流れ全体を見る受付での伝え方に決まった正解があるわけではなく、人が座っている受付と、 内線電話だけが置かれた無人の受付とでは、そこでの動き方が変わります。 約束のある訪問であれば名乗るだけで通していただけますし、 約束がない訪問であれば、会えないことのほうを前提にして声をかけることになります。
どの受付でも変わらないのは、会社名と自分の名前、約束の時刻、約束の相手という四つを 一度で伝えるという一点だけです。この四つさえそろっていれば、 受付の方は社内の誰へ繋げばよいのかがすぐに分かりますし、 取り次ぎを待つあいだも、立ったまま静かにしていれば、それで十分に整っています。
よくある質問
受付では何と言えばよいですか?
会社名・自分の名前・約束の時刻・約束の相手の4つを伝えます。「〇〇株式会社の〇〇と申します。14時に〇〇部の〇〇様とお約束をいただいております」で足ります。
なぜ時刻と相手の部署まで言うのですか?
受付が取り次ぎやすくなるためです。会社名と名前だけでは誰に繋げばよいか分かりません。部署名まで言えると、より確実になります。
入館証はどうしますか?
必ず見える位置に着けてください。社内の方が「来客だ」と分かります。鞄にしまうと不審に思われることがあります。
内線電話で担当者が出ないときは?
先方の携帯へかけ、それでも繋がらなければ代表番号へかけます。事前に「当日はどちらへご連絡すればよろしいでしょうか」と確認し、携帯番号を控えておくと立ち往生を防げます。
アポイントなしで訪問してもよいですか?
会えないことが前提です。「お約束はいただいていないのですが、〇〇様がご在席でしたらお取次ぎ願えますでしょうか」と条件をつけて尋ね、断られたらそのまま引き上げてください。粘ると受付の方を困らせます。名刺と資料を預ければ用件は伝わります。
待っている間に気をつけることは?
立って待ち、スマートフォンを見ないでください。受付は社員が頻繁に通る場所で、担当者以外の方も来客の様子を見ています。そうした様子が後で担当者に伝わることがあります。
まとめ
- 会社名・名前・時刻・相手の四つを伝えます
- 部署名まで添えると、確実に伝わります
- 受付の前に身支度を済ませておきます
- 入館証は見える位置に着けます
- 先方の携帯番号を控えておきます
- 約束がないときは会えない前提で伺います
- 断られたら、そのまま引き上げます
- 待つあいだはスマートフォンを見ません
参考情報
- e-Gov法令検索「労働基準法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - 厚生労働省「モデル就業規則」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html - 厚生労働省「労働時間・休日」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/index.html
ビジネスマナーそのものに公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。勤怠に関わる部分(遅刻・欠勤・早退・休暇)は会社の就業規則が優先します。出典は労働基準法および厚生労働省の資料で、2026年8月15日に確認しました。
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。会社・業界によって慣行は大きく異なります。とくに勤怠の手続きは就業規則で定められており、そちらが優先します。入社後は自社のルールを確認してください。