結論
直接会えない相手にはメールで構いません。 国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査では雇用型のテレワーカーが24.6パーセント、 週の平均が2.1日ですので、最終出社日に社内で顔を合わせられない同僚は現に一定数います。
送る時期は社内が最終出社日の終業前、 取引先が2〜3週間前で、 取引先へは後任の連絡先を必ず添えてください。 取引先がいちばん知りたいのは誰が辞めるかではなく、明日から誰に連絡すればよいかのほうです。
送る時期
退職が決まってから最終出社日までに挨拶を伝える相手を数えていくと、 同じ部署の同僚だけでなく、他部署でやりとりのあった担当者や社外の取引先まで含まれますので、 対面だけで回りきる人数ではなくなるのがふつうです。 席を訪ねて不在だった人を何度も探し直すうちに、最終出社日の午後が終わってしまいます。
そこで最初に決めておきたいのが送る時期で、 社内と取引先ではメールを送る目的そのものが違いますから、同じ日に同じ文面を流すわけにはいきません。 社内はお礼を伝えるための挨拶ですし、取引先へのメールは後任へ引き継ぐための連絡にあたりますので、 早すぎても遅すぎても相手の仕事に差し支えます。
| 相手 | 送る時期と理由 |
|---|---|
| 社内の同じ部署 | 最終出社日の終業前に送ると、返信の波が退勤時刻に収まります |
| 取引先 | 2〜3週間前に、後任の紹介と合わせて送るのが目安です |
| 他部署の担当者 | 最終出社日でよく、部署あての一斉送信でも差し支えありません |
| 在宅勤務や遠方の同僚 | 最終出社日に送れば、出社していない人にも同じ日に届きます |
| 送る時刻 | 終業の1〜2時間前が、双方にとっていちばん落ち着きます |
社内あてのメールを朝に送るのだけは避けてください。朝のうちに全員へ届いてしまうと、その日は一日じゅう返信と立ち話の応対で終わり、机の片づけも引き継ぎの確認も手につかなくなります。終業の1〜2時間前であれば、読んだ人が席まで来てくれる余裕もありますし、返信も帰り際に落ち着いて読めます。
在宅勤務が入り混じる職場では、最終出社日に社内の全員がそろっているとは限りません。 国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査では、 雇用型のテレワーカーが24.6パーセント、テレワークの日数は週に平均2.1日と出ていますので、 おおよそ4人に1人は、その日に出社していない可能性があることになります。
つまりメールで挨拶を済ませるのは略式だからではなく、その相手にはそれしか届く手段がないためで、 同じ調査で勤務先にテレワーク制度が導入されている就業者が33.1パーセントに上ることを踏まえれば、 在宅の同僚あてに一言も送らないほうがかえって不自然です。 出社している人には直接伝え、そうでない人にはメールを残しておけば、抜け落ちる相手がいなくなります。
取引先へのメールは上司の確認を得てください
会社によっては文面と送付先があらかじめ決められていることがありますし、後任の情報を含む以上、誰にいつ何を書くかは自分だけで決められる話ではありません。
送る前に上司へ下書きを見せておけば、宛先の抜けや後任の記載違いをその場で直せますし、取引先から上司へ問い合わせが入ったときにも話が食い違いません。
件名の付け方
挨拶メールは本文より先に件名が目に入りますので、 開いて読んでもらえるかどうかは件名でほとんど決まります。 一日に何十通も受け取っている相手ほど、件名だけを流し読みして後回しの箱へ入れてしまいます。
分かりにくくなるのは誰からの連絡なのかが件名だけでは判断できない場合で、 社内に同姓の人がいればなおさらですし、 取引先にとっては何社もの担当者を相手にしていますから、 社名の無い「退職のご挨拶」だけでは、誰が辞めるのかが開くまで分かりません。
| 相手 | 件名の付け方 |
|---|---|
| 社内 | 「退職のご挨拶(営業部・〇〇)」と部署と氏名を添えます |
| 取引先 | 「退職のご挨拶と後任のご紹介(〇〇株式会社・〇〇)」とします |
| 社内で同姓の人がいる | 下の名前まで入れておくと、取り違えが起きません |
| 「退職のご挨拶」だけ | 短すぎて、誰からの連絡か開くまで分かりません |
| 凝った件名にする | 用件が伝わらなくなるので、そのままの言葉で構いません |
件名には部署と氏名を必ず入れてください。社内に同じ名字の人がいることは珍しくありませんし、受け取った側が「どちらの〇〇さんだろう」と考える一手間をかけずに済みます。取引先あてであれば、そこに社名も足しておくと、後から検索して探し出すときにも見つけやすくなります。
件名を工夫しようとして「長らくお世話になりました」のように情緒のある言葉を選ぶと、 何の連絡なのかが件名から消えてしまいます。 挨拶メールは読み物ではなく業務の連絡ですので、そのままの言葉で書いておくほうが親切です。
あとから探されることも考えておくと、件名の役割がはっきりします。 取引先は数か月後に「あのとき誰から連絡が来たか」を過去のメールから探しますので、 社名と氏名と「退職」の3語が件名に入っていれば、それだけで見つかります。 本文にどれだけ丁寧に書いてあっても、件名に手がかりが無ければ探し当ててもらえません。
社内への例文
社内あての挨拶メールは、全体へ一斉に送るのか、お世話になった人へ個別に送るのかで形が変わります。 全体あては人数が多いぶん短く整えることになりますし、 個別に送るほうは相手ごとに一緒に進めた仕事の名前を入れられますので、同じ文面を使い回す必要はありません。
全体あてでいちばん気をつけるのは文面よりも宛先の指定のほうで、 TOやCCに全員を並べて送ってしまうと、 社内とはいえ全員のアドレスが互いに見えますし、返信がそのまま全員に届いて受信箱があふれます。 BCCに入れておけば、この二つはどちらも起きません。
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 全体宛(BCC) | 皆様 お疲れさまです。営業部の〇〇です。 私事で恐縮ですが、本日をもちまして退職することとなりました。 在職中は多くの方にご指導、ご協力をいただき、誠にありがとうございました。 ここで学ばせていただいたことを、今後に活かしてまいります。 本来であれば直接ご挨拶すべきところ、メールでのご挨拶となりますことをお詫び申し上げます。 末筆ながら、皆様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。 |
| お世話になった方へ個別に | 〇〇さん お疲れさまです。〇〇です。 本日をもちまして退職いたします。 〇〇の案件では大変お世話になり、ありがとうございました。 〇〇さんのご活躍をお祈りしております。 |
| 在宅勤務の同僚へ | 〇〇さん お疲れさまです。〇〇です。 本日が最終出社日となりました。直接ご挨拶できず失礼いたします。 オンラインでご一緒した〇〇の件では、たびたび助けていただきました。 引き継ぎは〇〇さんにお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。 |
全体あてはBCCで送ってください。TOやCCに全員を入れると、アドレスが互いに見えるうえ、誰かが全員へ返信したとたんに、その返信がまた全員へ届くという連鎖が起きます。BCCなら受け取った人からは他の宛先が見えませんので、返信も自分あてにだけ返ってきます。
個別に送る相手をどこまで広げるかで迷ったら、 名前を挙げて具体的に書ける人だけと決めてしまうと数がまとまります。 一緒に担当した案件の名前や、助けてもらった場面が一つでも書ける相手なら個別に送る値打ちがありますし、 それが書けない相手には全体あてのメールで十分に伝わります。
在宅勤務の同僚にだけは、直接会えなかったことに一言触れておくと収まりがよくなります。 同じ文面を全員に流すと、出社していた人には自然に読めても、 画面越しにしか会っていない相手には素っ気なく映りますので、 引き継ぎ先の名前を添えておけば、そのまま次の担当者へ話をつなげます。
取引先への例文
取引先へのメールは挨拶の形をとってはいますが、 中身は担当者が替わるという業務連絡ですので、 読んだ相手が明日から誰に連絡すればよいかを一読で分かるように書いておく必要があります。 感謝の言葉だけで結ぶと、いちばん知りたいところが抜け落ちます。
迷いやすいのは退職の理由をどこまで書くかですが、 取引先に伝えるのは「一身上の都合」までで足ります。 転職先や事情を書き添えても相手の役には立ちませんし、 会社によっては社外へ伝えてよい範囲が決められていますので、下書きの段階で上司に確かめておくほうが確実です。
| 要素 | 例文 |
|---|---|
| 全文 | 〇〇株式会社 〇〇部 〇〇様 いつもお世話になっております。 〇〇株式会社の〇〇でございます。 私事で恐縮ですが、一身上の都合により、〇月〇日をもちまして退職することとなりました。 在任中は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。 後任は同部署の〇〇が務めさせていただきます。 改めて〇〇よりご挨拶させていただきますが、引き続き変わらぬお付き合いを賜りますようお願い申し上げます。 【後任連絡先】 〇〇株式会社 営業部 〇〇 〇〇 TEL: メール: 末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。 |
| 後任がまだ決まっていない | 後任は決まり次第、改めてご連絡いたします。 それまでのご用件は、下記の部署あてにお願い申し上げます。 【当面の窓口】 〇〇株式会社 営業部 TEL: メール: |
後任の連絡先を必ず本文に書いてください。取引先がこのメールでいちばん知りたいのはそこですし、電話番号とメールアドレスまで書いてあれば、相手はその場でアドレス帳を書き替えられます。まだ後任が決まっていなければ、当面の窓口になる部署の連絡先だけでも先に伝えておくほうが、相手を宙ぶらりんにしません。
取引先には一斉送信を避けてください
取引先へは個別に送るのが基本で、相手ごとに一緒に進めた仕事の名前を一文でも加えておくと、同じ挨拶でも受け取られ方がまるで変わります。
数が多くてやむを得ず一斉に送るのであれば必ずBCCにしてください。取引先どうしのアドレスが見える状態で届けば、それは顧客名簿を外部へ渡したのと変わらない事故になります。
送る時期を2〜3週間前としているのは、 取引先の側にも社内の手続きがあるためで、 担当者が替われば発注や請求の窓口を登録し直す会社もありますし、 次の打ち合わせに後任を同席させる日程を組み直すこともあります。
最終出社日の当日に知らせると、そうした支度をする時間が相手に残りません。 引き継ぎの訪問を予定しているなら、 メールを先に送っておいてから後任を連れて伺うという順にすると、 当日に初対面の人を突然紹介される気まずさもなくなります。
私的な連絡先の扱い
退職の挨拶をきっかけに、これからも連絡を取りたい相手へ個人の連絡先を伝えたくなりますが、 誰に渡すかによって意味合いがまったく変わります。 社内の親しい同僚に伝えるのと、取引先の担当者に渡すのとでは、会社から見たときの受け取られ方が別物です。
判断の軸はその連絡先が会社の仕事とつながっているかどうかで、 仕事と切り離せる相手であれば私的なやりとりとして通りますし、 仕事を通じて知り合った取引先の担当者であれば、 顧客との関係を個人ごと持ち出す形に見えますので、会社の方針を確かめるのが先になります。
| 相手 | 扱いの目安 |
|---|---|
| 社内の親しい人 | 個別のメールや口頭で伝えるぶんには差し支えありません |
| 全体あてのメールに書く | 不特定多数に残るため、書かないほうが無難です |
| 取引先へ伝える | 会社の方針を確認してから決めてください |
| 転職先の社名を書く | 営業と受け取られかねないので、書きません |
| SNSのアカウント | 業務のメールに載せる場所ではありません |
取引先に私的な連絡先を渡すのは、会社によっては問題になります。顧客との関係を個人的に引き継ぐ形に見えるためで、競業避止の取り決めがある会社ではなおさら慎重に扱われます。伝えたい相手がいるなら、上司に一度確かめてから決めるほうが、後になって面倒を起こしません。
会社のメールアドレスは退職後に使えなくなります
会社のアドレスは最終出社日か退職日に停止されるのが通常ですので、挨拶メールに「ご返信をお待ちしております」と書いても、その返信は誰にも読まれないまま消えることがあります。
連絡を続けたい相手がいるのであれば、停止される前に個別で連絡の方法を決めておいてください。停止されたあとでは、こちらから連絡を取る手段そのものが残りません。
退職の伝え方そのものが変わってきていることも、覚えておいて損はありません。 マイナビが2024年に公表した退職代行サービスの調査では、 直近1年に転職した人のうち16.6パーセントが退職代行を使っており、20代では18.6パーセントに上っています。
裏を返せば、自分の言葉で挨拶を残していく人のほうがなお多数です。 最後に届く一通は、その職場での仕事ぶりと同じくらい長く覚えられますから、 送る時期と宛先の指定さえ間違えなければ、文面そのものは飾らないままで構いません。 短くても、名前を挙げて礼を書いてある一通のほうが、相手の手元には残ります。
最終出社日の流れを見る退職の挨拶に決まった正解があるわけではなく、会社の慣行と相手との距離を見て、 直接伝えられる人には口頭で、そうでない人にはメールでと分けておけばそれで足ります。 同じ部署で毎日顔を合わせていた同僚に長文を送る必要はありませんし、 在宅勤務で画面越しにしか会っていない相手には、短くてもメールが残るほうが確かです。
どの相手にも共通しているのは、送る時期を外さないことと、 相手が次に何をすればよいかを書いておくことの二つだけで、 この二つさえ押さえておけば、言い回しを思い出せなくても失礼にはなりません。 取引先にとっては後任の連絡先が、同僚にとっては引き継ぎ先の名前が、それにあたります。
よくある質問
退職の挨拶はメールでもよいですか?
直接会えない相手にはメールで構いません。国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査では雇用型のテレワーカーが24.6パーセント、週の平均が2.1日ですので、最終出社日に出社していない同僚は現に一定数います。社内は最終出社日の終業前、取引先は2〜3週間前が目安です。
社内メールは何時に送りますか?
終業の1〜2時間前です。朝に送ると、その日一日が返信や立ち話の応対で終わり、机の片づけも引き継ぎの確認も手につかなくなります。
件名はどうしますか?
「退職のご挨拶(営業部・〇〇)」のように部署と氏名を入れてください。同姓の方がいることもありますし、取引先には社名も足しておくと、後から過去のメールを探すときにも見つけてもらえます。
全体宛はどう送りますか?
BCCで送ってください。TOやCCに全員を入れると、アドレスが互いに見えるうえ、誰かの全員返信がまた全員へ届くという連鎖が起きます。
取引先へのメールに何を書きますか?
後任の連絡先を必ず書いてください。取引先がいちばん知りたいのはそこで、電話番号とメールアドレスまであれば、その場でアドレス帳を書き替えられます。後任が未定なら当面の窓口になる部署だけでも伝えてください。文面と送付先は、送る前に上司へ確認しておくほうが確実です。
私的な連絡先を書いてもよいですか?
社内の親しい人へ個別に伝えるのは差し支えありませんが、全体あてのメールには書きません。取引先へ伝えるのは、顧客との関係を個人ごと持ち出す形に見えるため、会社の方針を確認してから決めてください。
まとめ
- 社内は最終出社日の終業前に送ります
- 朝に送ると一日が応対で終わります
- 取引先へは2〜3週間前に送ります
- 件名に部署と氏名を入れます
- 全体あては必ずBCCにします
- 取引先には後任の連絡先を書きます
- 取引先へは個別に送ります
- 会社のアドレスは退職後に停止されます
参考情報
- e-Gov法令検索「民法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 - e-Gov法令検索「労働基準法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 - e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076 - 厚生労働省「職場における子育て支援」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/index.html - 国土交通省「令和6年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-」(2025年3月)
https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/content/001879091.pdf - マイナビキャリアリサーチLab「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20241003_86953/
退職・休業の作法に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。ただし退職の申し出時期、産前産後休業、育児休業は法律で定められており、作法の問題ではありません。該当箇所では根拠となる法令を示しています。手続きは会社の就業規則が優先します。出典は2026年8月15日に確認しました。テレワークの実施率は国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査(2024年10月実施・約4万人の回答)により、雇用型テレワーカー24.6パーセント、週平均2.1日、テレワーク制度が導入されている雇用型就業者33.1パーセントを引用しています。退職代行の利用率はマイナビの2024年の調査で、直近1年に転職した人のうち16.6パーセント、20代で18.6パーセントという数字です。いずれも民間および官庁の調査であり、対象と設問の立て方によって数字は動きます(最終確認:2026年8月)。
本記事で紹介している作法は一般的な目安です。会社・業界によって慣行は大きく異なります。退職・休業の手続きは就業規則で定められており、そちらが優先します。また産前産後休業・育児休業は法律で保障された制度であり、取得にあたって作法上の遠慮は必要ありません。