結論
退職祝いや餞別のお返しは本来は必要ありません。 退職祝いそのものが「これまでお世話になったお礼」として贈られるものですので、 そこへさらに返すとお礼へのお礼という形になり、 職場によっては、辞める人に気を遣わせたと受け取られます。
返す形にするのは個人から高額をいただいた場合と、退職後も付き合いが続く相手で、 相場はいただいた額の3分の1から半額、 表書きは「御礼」、 時期は受け取ってから1か月以内を目安にします。
返すか返さないかの分かれ目
最終出社日に封筒や品物を受け取ったあと、 家に帰ってから中身を確かめて額の大きさに驚き、 これは何か返さなければいけないのではないかと、 退職した翌週から気になり始めることがあります。
判断の軸は誰から、どういう性格の贈り物として受け取ったかで、 職場の有志からまとめて贈られたものは送別の品にあたるため返しませんが、 個人から改まった形で贈られたものは 通常の贈答に近くなりますので、扱いが変わります。
| 受け取った形 | お返し | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 職場の有志・部署一同から | 要りません | 最終日に菓子折りを配り、挨拶で礼を述べます |
| 上司個人から(一般的な額) | 要りません | お礼状か、電話で礼を伝えます |
| 上司個人から高額をいただいた | 返す形が無難です | 3分の1〜半額の品を、1か月以内に贈ります |
| 取引先から | 会社の慣例に従います | 上長に相談してから決めます |
| 親戚・友人から | 返す形が無難です | 内祝いとして、半額程度を目安にします |
| 退職後も付き合いが続く相手 | 返しておくほうが収まります | 菓子や日用品など、軽い品で構いません |
「お返しのお返し」になってしまうのが、返さないとされる理由です。退職祝いはこれまでの働きに対するお礼として贈られていますので、そこへ品を返すと、お礼へお礼を重ねる形になります。職場の有志からのものはとくにこの性格が強く、返礼を受け取った側が「気を遣わせてしまった」と感じることもありますので、菓子折りと挨拶で締めるほうが自然です。
辞める側が最終日に配る菓子折りは、 お返しというより挨拶のための品にあたりますので、 餞別を受け取る前に用意しておくものですし、 これを渡していれば、改めて返す必要はありません。
判断に迷う場合は、 その職場で前に辞めた人がどうしていたかを、 まだ連絡の取れる同僚に一度聞いておけば、 慣例から外れることがありません。
返す場合の相場
返すと決めたあとに困るのが金額で、 半返しという言葉は聞いたことがあっても、 送別の品に同じ考え方を当てはめてよいのかが分からず、 額を決めきれないまま日が過ぎていきます。
目安はいただいた額の3分の1から半額で、 これは内祝い全般に共通する考え方ですが、 退職祝いの場合は返すこと自体が本来の形ではありませんので、 半額より軽い側に寄せておくほうが収まります。
| いただいた額 | 返す額の目安 | 選ばれる品 |
|---|---|---|
| 3千〜5千円 | 返さなくて構いません | お礼状か、電話での礼で足ります |
| 1万円 | 3千〜5千円 | 菓子折り・コーヒー・タオルなど |
| 2万円 | 7千〜1万円 | カタログギフト・銘菓の詰め合わせ |
| 3万円以上 | 1万円〜 | カタログギフト・産地の品 |
| 有志でまとめていただいた | 返しません | 菓子折りを人数分、職場へ届けます |
半額きっちりにこだわる必要はありません。退職祝いのお返しは、額を合わせることより、返した気持ちが伝わることのほうが大切な場面ですし、いただいた額をこちらが正確に把握していない場合もあります。3分の1を目安にしておけば、多すぎて相手に気を遣わせることも、少なすぎて形にならないこともありません。
有志でまとめていただいた場合に一人ずつ返そうとすると、 誰がいくら出したかが分からないまま計算することになりますし、 職場に返礼の品が何個も届くことにもなりますので、 人数分の菓子折りを一つ届ける形にまとめます。
高額をいただいた相手が上司で、 退職後も何かと相談する間柄であれば、 品を返すより、落ち着いてから食事に誘うほうが 関係の続き方に合っていることもあります。
いくら包まれていたかを正確に把握していない場合もありますが、 封筒の中身を数えて額に合わせることにこだわる必要はありませんので、 三千円から五千円のあいだで日持ちのする品を選んでおけば、 どの額に対しても大きく外れることはありません。
表書きと、のし紙の選び方
返す品が決まったあとに残るのがのし紙で、 内祝いと書くのか御礼と書くのかで手が止まりますし、 退職の場面に合う表書きは 売り場の見本にも並んでいないことが多くあります。
使うのは「御礼」で、 内祝いという言葉は本来こちらの慶事を分けるという意味ですので、 退職の場面では性格が合いませんし、 「御礼」であればどの相手にも意味が通ります。
| 書く場所 | 書く内容 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 表書き(上段) | 御礼 | 「内祝」は、退職の場面では性格が合いません |
| 名前(下段) | 自分の姓、または姓名 | 職場宛てなら、旧姓を併記する場合があります |
| 水引 | 紅白5本の蝶結び | 結婚退職の場合は、結び切りにします |
| のしの飾り | 付いたものを使います | 弔事の掛け紙には付いていません |
| 掛け方 | 配送なら内のし、手渡しなら外のし | 職場へ送る場合は内のしが無難です |
職場へ品を送る場合は、内のしにしておくほうが収まります。表書きが包装紙の外に出ていると、受け取った部署の全員に用向きが見えてしまいますし、その場に居合わせた人が事情を知らない場合もあります。内のしであれば、渡された本人が開けたときに分かる形になりますので、余計な説明が要りません。
名前は姓だけでも通りますが、 同じ姓の人が職場にいる場合は姓名を書いておくほうが確実ですし、 結婚を機に退職した場合は、 旧姓を括弧で添えておくと受け取る側に伝わります。
内のしと外のしの使い分けは退職祝いに限った話ではありませんので、 内のし・外のしの違いの記事のほうに、 場面ごとの選び方をまとめています。
いつまでに渡すか
退職してしばらくは手続きや引っ越しで慌ただしく、 返さなければと思いながら日が過ぎていくことが多く、 気づけば一か月以上が経っていて、 いまさら送るのも変かと迷い始めます。
目安は受け取ってから1か月以内で、 これは内祝い全般に共通する期間ですが、 退職の場合は職場を離れる時期と重なりますので、 落ち着いてからで構いません。
| 時期 | 扱い | 添えること |
|---|---|---|
| 2週間以内 | もっとも収まりのよい時期です | お礼状を一枚添えます |
| 1か月以内 | 一般的な範囲です | 同じくお礼状を添えます |
| 1〜2か月 | 遅れていますが、送って構いません | 一言お詫びを添えます |
| それ以上 | 返す形にこだわらなくて構いません | 手紙か、近況を伝える連絡にします |
| お礼だけ先に伝える | 当日か翌日が理想です | 電話かメールで、まず礼を述べます |
品を返すより先に、お礼の言葉を伝えるほうが順番として自然です。受け取った当日か翌日に電話かメールで礼を述べておけば、品が届くまでのあいだに間が空きません。お礼を伝えないまま品だけが届くと、事務的な処理のように見えてしまいますので、言葉が先、品が後という順にしてください。
退職後すぐに引っ越す予定があるなら、 新しい住所が決まってから送るほうが行き違いになりませんし、 その場合は先に電話で礼を述べたうえで、 落ち着いてから送る旨を伝えておけば失礼になりません。
遅れてしまった場合でも、 送らないままにするより送るほうが収まりますので、 「ご挨拶が遅くなりました」と一言添えれば、 それで形は整います。
職場宛てに送る場合は、 相手が出勤している曜日と、荷物を受け取れる時間帯を考えておくほうが確実ですし、 部署あてに届けると誰かが預かる形になりますので、 本人の名前を宛名に入れておけば、そのまま手元へ渡ります。
何を選ぶか
返す品を選ぶ段になると、 相手の好みが分からないうえに、 職場の人へ何を送れば負担にならないかも見当がつかず、 売り場をひと回りしても決まりません。
選ぶ軸は使い切れて、置き場所が要らないことで、 返礼の品は受け取る側に断る理由がありませんから、 形の残るものより消えるもののほうが負担になりませんし、 職場宛てであればなおさらです。
| 贈る相手 | 向いている品 | 避けたい品 |
|---|---|---|
| 職場(部署宛て) | 個包装の菓子折り・コーヒー | 切り分けの要る菓子、日持ちしないもの |
| 上司個人 | カタログギフト・銘菓・お酒 | 実用品は、好みが分かれます |
| 親戚 | カタログギフト・タオル・洗剤 | 現金を返す形は取りません |
| 友人 | 菓子・飲み物・小さな日用品 | 高価すぎる品は、気を遣わせます |
| 取引先 | 会社の慣例に従います | 個人名で高額な品は送りません |
職場へ送るなら、個包装で日持ちのする菓子がもっとも扱いやすくなります。人数分に分けられて、その日に休んでいた人の分も残せますし、切り分けの要る菓子は誰かが手を動かすことになりますので、受け取る側の手間が増えます。人数が分からない場合は、少し多めの個数のものを選んでおけば足ります。
カタログギフトは相手に選んでもらえる利点がありますが、 申し込みの期限がありますので、 添える手紙にその旨を一言書いておくと、 使わないまま期限が過ぎることを防げます。
現金や商品券を返す形は、 いただいたものをそのまま返しているように見えることがありますので、 品物かカタログギフトのほうが、 受け取る側にとって角が立ちません。
相手の家族構成が分かっているなら、 一人で食べ切れる量か、家で分けられる量かを考えて選ぶほうが親切ですし、 一人暮らしの相手に大箱の詰め合わせを送ると、 食べ切るまでのあいだ台所の場所をふさぐことになります。
お礼状の書き方と文例
品を送るだけでは味気ないと分かっていても、 手紙となると書き出しから詰まってしまいますし、 改まった形式にすべきかどうかも判断がつかず、 結局は何も添えずに送ってしまうことがあります。
退職のお礼状は便箋一枚か、カード一枚で足りますので、 形式を整えることより、 在職中の具体的な場面を一つ入れるほうが伝わりますし、 それだけで定型文には見えなくなります。
| 書く順番 | 書くこと | 長さの目安 |
|---|---|---|
| 書き出し | 贈り物への礼を、はじめに述べます | 1〜2行で足ります |
| 在職中のこと | 助けてもらった場面を一つ挙げます | 2〜3行にまとめます |
| 近況 | 退職後の様子を、短く伝えます | 1〜2行で構いません |
| 結び | 相手の健康や活躍を願う言葉 | 1行で締めます |
| 日付と署名 | 書いた日と、自分の氏名 | 結婚退職なら旧姓を添えます |
「拝啓」で始める形式にする必要はありません。職場の同僚や上司への礼状であれば、「このたびは結構なお品をありがとうございました」と直接始めて構いませんし、そのほうが読む側にも自然に届きます。形式を整えたい相手には頭語と結語を入れますが、その場合の型は別の記事にまとめています。
文例としては、 「このたびは温かいお心遣いをいただき、ありがとうございました。 入社した年に書類の書き方を一から教えていただいたことを、 いまでもよく思い出します。」という形で、 具体的な場面を一つ挟むだけで十分に伝わります。
形式を整えた手紙にしたい場合は、 お礼状の書き方と文例のほうに、 頭語と結語を含む型と季節の挨拶をまとめてありますので、 そちらの形に当てはめれば書き上がります。
退職祝いのお返しに一つの正解があるわけではなく、 職場の有志からのものは返さないのが本来の形である一方、 個人から高額をいただいたときや、退職後も顔を合わせる相手には 返しておくほうが落ち着く、という程度の使い分けになります。
どの場合でも変わらないのは、 品を返すより先に、言葉で礼を伝えておくという順番です。 受け取った当日か翌日に電話かメールで一言伝えておけば、 そのあとに品を送るかどうかは、落ち着いてから決めても遅くありません。
よくある質問
退職祝いのお返しは必要ですか。
本来は必要ありません。退職祝いそのものが「これまでお世話になったお礼」として贈られるものなので、そこへ返すと「お礼へのお礼」になります。職場の有志からのものはとくにこの性格が強く、最終日に配る菓子折りと挨拶で締めるのが自然です。
上司個人から高額をいただきました。どうすればよいですか。
いただいた額の3分の1から半額を目安に、1か月以内にお返しをするのが無難です。表書きは「御礼」、水引は紅白5本の蝶結びにします。品を送る前に、まず電話かメールで礼を伝えておいてください。
お返しの表書きは「内祝」でよいですか。
「御礼」を使ってください。内祝いは本来こちらの慶事を分けるという意味なので、退職の場面では性格が合いません。「御礼」であれば、どの相手に対しても意味が通ります。
いつまでに返せばよいですか。
受け取ってから1か月以内が目安です。ただし退職直後は手続きや引っ越しで慌ただしいので、落ち着いてからで構いません。品より先に、当日か翌日に電話かメールで礼を述べておけば、間が空いても失礼になりません。
部署の有志からいただいた場合、一人ずつ返しますか。
一人ずつは返しません。誰がいくら出したか分からないうえ、職場に返礼の品がいくつも届くことになります。人数分の個包装の菓子折りを一つ届ける形にまとめてください。
まとめ
- お返しは本来不要です。「お礼へのお礼」になるためです。
- 返すのは個人から高額と、付き合いが続く相手です。
- 相場は3分の1〜半額。半額にこだわりません。
- 表書きは「御礼」。「内祝」は性格が合いません。
- 時期は1か月以内。品より先に言葉で礼を伝えます。
- 職場へは個包装で日持ちする菓子を、内のしで送ります。
- お礼状は便箋一枚。具体的な場面を一つ入れます。
参考情報
- 高島屋「謝礼 ご贈答マナー」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/uchiiwai_06.html - 三越伊勢丹「昇進・転勤・退職のお祝い」
https://www.mistore.jp/gift/manner/oiwai/index12.html - 高島屋「進物の基礎知識 表書きの書き方」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_04.html
お返しの要否と相場は、上記各社の案内と、贈答を扱う各社の解説に共通する形をまとめたものです。退職祝いそのものが「これまでのお礼」にあたるため、お返しを不要とする考え方が根強く残っています。職場の慣習によって扱いが変わる部分です。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・職場・ご家庭の慣習によって考え方が異なる場合があります。同じ職場で前に贈った例があるときは、そちらに合わせるほうが角が立ちません。