結論
退職のときに受け取った餞別や記念品にお返しは基本的に不要で、 これは餞別が「はなむけ」であり、返礼を前提としない贈り物だからです。 受け取った最終日にその場できちんと述べるお礼と、落ち着いてからの短い一報とがあれば、伝えるべきことはそれで足ります。
むしろ品を選んで送り返すと、贈った側は「そんなつもりではなかった」と受け取ることになりますし、 職場を離れたあとまでやり取りが続く形をこちらから作ってしまいます。 わざわざ紙袋を用意して送り返すよりも、言葉であらためて伝えるほうが、贈った側の気持ちにはまっすぐ届きます。
お返しが不要な理由
最終日に部署から記念品を受け取って家に持ち帰り、包み紙を開けたところで、 これはお返しをしなくてよいものなのだろうかと手が止まります。 結婚祝いや出産祝いのときには半返しの内祝いを用意した覚えがあるだけに、餞別も同じように考えてよいのかが分かりません。
判断を分けているのは、いただいた品の値段の大きさではなく その贈り物が何のために渡されたかという点で、 返礼を前提とする祝いと、送り出すための餞別とでは、そもそもの成り立ちが違います。 同じ「いただきもの」というひとことでくくってしまうと、その後の扱い方まで揃えなければならない気がしてきます。
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| 「はなむけ」だから | 旅立つ人へ贈るもので、返礼を前提としません |
| 職場を離れる | これから先、やり取りを続ける関係ではなくなります |
| 連名であることが多い | 個別に返そうとすると、手間ばかりが大きくなります |
| 相手も期待していない | 送り出す気持ちで贈っており、返礼を待っていません |
こちらからお返しの品を送ってしまうと、送り出したはずの相手にかえって気を遣わせることになります。贈った側は「そんなつもりではなかった」と受け取り、こちらに余計な出費をさせたことのほうを気にしますので、あらためて言葉で伝えるのがもっとも自然な形になります。
内祝いは「お返し」の慣習が定着している贈り物で、 いただいた額の半分を目安に品を選び、のしを掛けて送るところまで形が決まっています。 餞別のほうには半返しにあたる金額の目安も、いつまでに送るという時期の決まりも置かれていません。
贈る側も「これで最後」という気持ちで紙袋を差し出していますので、 そこから返礼のやり取りを始めてしまうと、いったん閉じたはずの区切りをこちらから開け直すことになります。 受け取ったこちらが恐縮して品を送り返せば、贈った側はそのまた先の返しかたまで気を遣うことになります。
お返し・内祝いのマナーを見るお礼の伝え方
送別会の席や最終日のフロアで、同じ部署の人が見ている前に包みを差し出される場面が、退職の日にはやってきます。 ありがとうございますとだけ言って鞄にしまうべきなのか、その場で開けてしまってよいのかが分からず、 手のなかで包みを持ったまま迷うことになります。
贈った側が気にしているのは、礼を言われたかどうかよりも 選んだものが合っていたかという一点で、 決まり文句の謝辞だけを述べても、そこがどうしても伝わりません。 受け取ったその場の顔つきや、思わず口から出た一言のほうを、品を選んだ人は後々までよく覚えています。
| タイミング | やること |
|---|---|
| その場で | 両手で受け取り、その場でお礼を述べます |
| 開けてよいか確認 | 「開けてもよろしいですか」と一言尋ねます |
| 中身を見たら | どこがうれしいのかを具体的に述べます |
| 連名の場合 | 全員に聞こえる声で、まとめてお礼を述べます |
| 代表者から受け取った | 「皆様にもお伝えください」と言い添えます |
| 後日 | 使っている様子を伝えると、いっそう喜ばれます |
渡されたその場で包みを開けてしまって、どこがうれしかったのかまで言葉にしてください。贈った側は品を選ぶところから当日まで、喜んでもらえるかどうかを気にし続けていますので、「これ、ちょうど欲しかったんです」の一言があるだけで、その心配が消えます。
連名でいただいた品を代表の方から手渡されたときに、目の前の一人にだけ礼を言って席へ戻ってしまうと、 少し離れたところで見ている人には何も届きません。 会が進んで料理が運ばれ始めてしまえば、席を立って全体へあらためて言い直す機会も、そうそう回ってきません。
顔を上げて全体に聞こえる声でお礼を述べておき、 「皆様にもお伝えください」と代表の方へ添えておけば、その場に来られなかった人の分まで伝わります。 後日あらためて使っている様子を短く知らせておけば、その場にいた人にも、いなかった人にももう一度伝わります。
高額だった場合
包みを開けたら思っていたよりずっと値の張るものが入っていたり、封筒に現金がそのまま包まれていたりすると、 さすがにこのままでは済まないのではないかと落ち着かなくなります。 いただいた額が大きいほど、何も返さないままでいること自体が、日を追って気にかかるようになってきます。
ここで見るのは金額そのものよりも誰から渡されたかという点で、 部署の一同として集められたものと、上司が自分で選んで用意したものとでは、こちらの受け止め方も変わります。 のし袋や短冊の表書きに並んでいる名前を見れば、一同として集めたものなのか、その方ひとりからのものなのかはすぐに分かります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 連名で高額 | お返しは不要で、言葉のお礼だけで足ります |
| 個人から高額 | どうしても気になるなら、軽いお礼を返します |
| 上司から個人的に | 言葉と手紙を添えれば、それで十分に足ります |
| 現金の餞別 | お返しは不要ですが、お礼状のほうは送ります |
| どうしても返したい | 半額以下の消えものを選んでおきます |
どうしても返すのであれば、使えばなくなる「消えもの」のほうを選んでください。菓子やコーヒー、入浴剤のように使えばなくなるものなら後に残りませんが、形に残る品だと相手がさらに気を遣うことになりますので、いただいた額の半分以下にとどめます。
現金の餞別を受け取ると、お金だからこそ返さないといけないと考えてしまいがちですが、 餞別はもともと返礼を前提としない贈り物ですので、封筒の中身の多い少ないで扱いを変える必要はありません。 どこからが高額なのかという線を自分で引き始めると、いただくたびに迷いが生まれ、いつまでも落ち着きません。
品物によるお返しのほうは要りませんが、お礼状だけは別で、こちらは必ず送っておいてください。 受け取ったこと、感謝の言葉、その後どうしているかの三つを短く書けば足りますので、 便箋一枚に収まる長さで十分に伝わります。
後日の連絡
退職して数日が過ぎると、これまで毎日顔を合わせていた人たちと会う機会がすっかりなくなり、 いただいた品を使い始めたところで、これを知らせるべきかどうかで迷います。 もう社内の人間ではないのだからという遠慮が、連絡しようと画面を開くたびに先に立ってきます。
改まった連絡は書き出しの一行から気が重い一方で、何も言わないままでいると そこで縁が切れたように見えますので、どのくらいの重さで送るかが分かれ目になります。 便箋にきちんと書いて送るのか、短い一文を送るだけにするのかで、受け取る側の身構え方までが変わります。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 数日後 | お礼の連絡を入れておくと、丁寧に伝わります |
| 使い始めたら | 写真を一枚添えると、いっそう喜ばれます |
| 落ち着いたら | 近況をひとこと書き添えて伝えておきます |
| 手段 | 個人の連絡先を交換していれば、そちらへ送ります |
| 連絡先がない | 最終日にお礼を述べていれば、それで足ります |
あとから届く「使っています」というひとことが、贈った側にはいちばん喜ばれます。選んだものが本当に役に立っているかどうかを、渡した人は渡したあとまで気にしていますので、あらためて品を返されるよりも、この一言のほうがずっとまっすぐ届きます。
万年筆でも鞄でも、実際に手に取って使っているところが写った写真が一枚あるだけで、 選んだ人には役に立っている様子がそのまま見えますので、文面を長く整えるより早く伝わります。 気の利いた言葉を探しているうちに連絡そのものが遅れてしまうくらいなら、写真を一枚送っておくほうが確かです。
個人の連絡先を交換していないのであれば、わざわざ調べてまで送る必要はなく、 最終日にきちんとお礼を述べているのであればそれで足ります。 落ち着いたころに近況を短く伝えられる相手であれば、そのときにまとめて書き添えるという形でも構いません。
送別会でのお礼
送別会の席では主役の椅子に座ることになり、料理が運ばれてくるあいだも、 どこで立ってお礼を述べればよいのか、会費は出すべきなのかが気にかかります。 乾杯の前に幹事から名前を呼ばれるのか、それとも締めの挨拶の前になるのかも、始まってみるまで分かりません。
見落としやすいのは、目の前に並んだ料理や渡された贈り物ではなく 会そのものが誰かの手で用意されているという点で、 日程の調整から店の予約までを引き受けた人が必ずいます。 そしてその人は、たいてい主役の席からはいちばん見えにくい、入口に近い端のほうに座っています。
| 場面 | どうするか |
|---|---|
| 会へのお礼 | 開いてもらったことに、まずお礼を述べます |
| 会費 | 出さなくてよいことが多く、勧められたら甘えます |
| 贈り物をもらったら | その場で開けて、感想をひとこと添えます |
| 挨拶の長さ | 1〜2分にとどめて切り上げます |
| 翌日 | 幹事にあらためてお礼を伝えておきます |
会そのものを組み立ててくれた幹事へのお礼だけは、忘れないでください。日程の調整、店の予約、贈り物の手配、会費の集金と、目に見えないところをすべて誰かが動かしていますので、会の場で全体に述べたうえで、幹事には個別に一言添えてください。
主役の席から見えるのは並んだ料理と花束だけですが、その裏では何人分もの都合を突き合わせて日を決め、 人数が変わるたびに店へ伝え直した人がいます。 贈り物を選びに出かけ、のしを掛けて包み直したのも、たいていはその同じ人だと考えて構いません。
会が終わっての帰り際に、あるいは翌日の連絡で、 もっとも手間をかけている幹事へ個別に一言伝えておけば、全体への挨拶では言い切れなかった分まで届きます。 そこは長い言葉でなくて構わず、名前を呼んでひとこと礼を述べておくだけで、十分に伝わります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 会費を求められた | 職場の慣行によりますので、従って構いません |
| 会費が不要と言われた | 辞退せずに、そのまま素直に受けておきます |
| 断りたい | 事情があるのなら、断ってしまって構いません |
| 参加できない | 幹事が動き出す前に、早めに伝えておきます |
主役だからといって、送別会に必ず出なければならない義務があるわけではありません。体調や家庭の事情があるのなら断って構いませんが、店を押さえて人数を伝えたあとでは幹事のほうが動けなくなりますので、早めに伝えてください。
会費については職場ごとに慣行が違い、主役は出さないところもあれば、その日も全員で割るところもありますので、 求められたのであればそれに従って構いません。 そこで自分だけ違う扱いを求めると、幹事は集めた分の計算を最初からやり直すことになります。
不要だと言われたときに何度も辞退すると、幹事のほうが押し切る形になってしまいますので、 そこは素直に受けておきます。 受けた分については、その場の挨拶とお礼の言葉で返していくものと考えておけば、それで収まりがつきます。
贈る側の金額の目安を見るお返しをするかどうかに一つだけの正解があるわけではなく、 いただいたものが一同からの品なのか、個人の名前で手渡されたものなのかを見て決めればそれで足ります。 連名であれば言葉のお礼だけで十分ですし、どうしても気になるのであれば、半分以下の消えものを選べば収まります。
どの場面でも変わらないのは、その場できちんとお礼を述べることと、 後日「使っています」と一言伝えることの二つだけです。 この二つさえあれば、品物を選んで送り返さなくても、贈ってくれた人たちに気持ちは十分に伝わります。
よくある質問
退職時にもらった贈り物にお返しは必要ですか?
基本的に不要で、餞別は「はなむけ」として旅立つ人へ贈るものですので、そもそも返礼を前提としていません。職場を離れたあとは、やり取りを続けていく関係でもなくなります。
結婚祝いや出産祝いとは違うのですか?
違います。内祝いは「お返し」の慣習が定着していて半返しの目安まで決まっていますが、餞別のほうにはその型がありません。贈る側も「これで最後」という気持ちで渡していますので、返礼のやり取りを始める場面ではありません。
どうお礼を伝えますか?
両手で受け取り、その場で「開けてもよろしいですか」と確認してから開け、どこがうれしいのかを具体的に述べてください。贈った側は喜んでもらえたかどうかを気にしていますので、「ちょうど欲しかったんです」の一言があれば十分です。
高額なものをもらった場合は?
連名であれば言葉のお礼だけで足ります。個人から高額でどうしても気になるのなら、いただいた額の半分以下で菓子やコーヒーといった消えものを選んでください。形に残る品だと、相手がさらに気を遣うことになります。
現金の餞別にもお返しは不要ですか?
不要です。餞別はもともと返礼を前提としない贈り物ですので、封筒の中身の多い少ないで扱いを変える必要はありません。ただしお礼状のほうは送るもので、受け取ったこと、感謝、その後の様子を短く書けば足ります。
送別会では何をお礼すればよいですか?
会を開いてもらったことへのお礼をまず全体に述べ、そのうえで幹事には個別に一言伝えてください。日程の調整、店の予約、贈り物の手配、会費の集金と、もっとも手間をかけているのがその人です。
まとめ
- お返しは基本的に不要です
- 餞別は「はなむけ」で、返礼を前提としません
- 内祝いとは考え方が違います
- その場で開けて、具体的に感想を述べます
- 現金の餞別でもお返しは不要です
- ただしお礼状は送ります
- 返すなら半額以下の消えものにします
- 幹事には個別にお礼を伝えます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
餞別やお返しの金額に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。職場ごとの慣行が優先します。前例を確認するのがもっとも確実です。出典は2026年8月15日に確認しました。
本記事で紹介している金額や品物は一般的な目安です。職場ごとの慣行が大きく異なります。前任者がどうしたか、部署の慣例があるかを確認するのがもっとも確実です。また贈ること自体が必須ではありません。