結論
退職祝いののし紙は紅白5本の蝶結びで、 表書きは定年退職なら「御退職御祝」「御定年御祝」「御祝」「御礼」のいずれかを使いますが、 高島屋は「途中退職の場合、御祝は不適当」と明記していますので、 定年以外では「御礼」「おはなむけ」に替えます。
名前は水引の下の中央に、贈る人の氏名を書きますが、 「御餞別」は目上の相手には使いませんし、 三人を超える連名は「〇〇部一同」としたうえで、 全員の名前を書いた別紙を中に入れておきます。
水引は蝶結び。理由と、例外が一つ
売り場ののし紙は見た目がどれも似ていて、 紅白の紙の上で結び目の形だけが違いますので、 退職祝いにどちらを選ぶのかを店員に聞くのも気が引けて、 そのまま無地の紙で包んでもらうことになりがちです。
結び方が分かれる理由はそのお祝いが何度あってよいものかで、 ほどいて結び直せる蝶結びは繰り返してよい祝い事に使い、 ほどけない結び切りは一度きりの祝い事に使いますので、 退職がどちらにあたるかを決めれば選べます。
| 結び方 | 使う場面 | 退職祝いでの可否 |
|---|---|---|
| 紅白5本の蝶結び | 何度あってもよい祝い事です | 退職祝いの基本の形になります |
| 紅白の結び切り | 一度きりの祝い事です | 結婚退職の場合はこちらを使います |
| 紅白のあわじ結び | 結び切りと同じ扱いです | 関西では、結び切りの代わりに使われます |
| 金銀の結び切り | 結婚など特別な祝い事です | 退職祝いでは使いません |
| 黒白・黄白 | 弔事に使います | 退職祝いでは使いません |
結婚退職だけが例外で、紅白の結び切りを使います。これは退職ではなく結婚のほうを祝う形になるためで、三越伊勢丹も結婚退職には「紅白ま結び、または紅白もろわな結び」を挙げています。「もろわな結び」は蝶結びの別の言い方ですので、結婚退職ではどちらも通ることになりますが、表書きを「寿」にする場合は結び切りのほうが形が整います。
のし紙の右上にある小さな飾りは「のし」と呼ばれるもので、 これは祝い事に付けるものですから退職祝いには付いた紙を選びますが、 弔事の掛け紙には付いていませんので、 売り場で迷ったときはこの飾りの有無で見分けられます。
本数は五本が標準で、 七本のものは婚礼など格式の高い場面に使いますので、 退職祝いでは五本のものを選んでおけば、 どの相手に対しても不足になりません。
売り場で品物に掛けてもらう場合は、 会計のときに用途を「退職のお祝い」と伝えれば店の側で選んでもらえますし、 定年か途中退職かも一緒に伝えておくと、 表書きの候補までその場で出してもらえます。
表書きの選び方(定年・転職・結婚)
表書きの候補は思いのほか多く、 売り場の見本には「御退職御祝」「御礼」「おはなむけ」などが並んでいますし、 どれも間違いではなさそうに見えるだけに、 どれを選べばよいのかがかえって決まりません。
選ぶ軸は本人がその退職を喜んでいるかどうかで、 定年のように区切りとして迎えた退職なら「祝」の字を使えますが、 本人の望まない事情による退職では祝う言葉が浮きますので、 感謝や送り出す言葉に替えます。
| 退職の理由 | 使える表書き | 避ける表書き |
|---|---|---|
| 定年退職 | 御退職御祝/御定年御祝/御祝/御礼 | とくにありません。「御餞別」は目上に使いません |
| 公務員の定年退職 | 御退官御祝/御退職御祝 | 民間向けの表書きでも通ります |
| 転職・独立 | おはなむけ/御贐/御礼 | 「御祝」は本人の受け止め方によります |
| 結婚退職 | 寿/御結婚御祝/御礼 | 退職を前に出した表書きは合いません |
| 出産退職 | 御退職御祝/御祝/おはなむけ | 出産のお祝いは、産後に別に贈ります |
| 自己都合・事情のある退職 | こころばかり/御礼/おはなむけ | 「御祝」は使いません |
高島屋は「途中退職の場合、御祝は不適当」と明記していますので、定年以外の退職では「御礼」か「おはなむけ」を選んでおくほうが安全です。三越伊勢丹はリストラによる退職について「こころばかり」「御礼」を挙げており、いずれも祝いの字を含まない形になっています。退職の理由がはっきり分からないときは、「御礼」にしておけばどの場面でも意味が通ります。
会社や団体としてまとめて贈る場合は「謹呈」という表書きもあり、 高島屋がこれを挙げていますが、 日常の職場で使う機会は多くありませんので、 部署の有志であれば「御退職御祝」か「御礼」で足ります。
「記念品」「退職之記念」という表書きもあり、 これは祝う言葉を含まないぶん、どの退職理由でも使えますし、 名入れの品や置物を贈るときには、 品物の性格ともよく合います。
「御餞別」を目上に使わない理由
退職や転勤の場面でよく見かける「御餞別」という表書きは、 封筒にも印刷されていて手に取りやすいのですが、 上司へ使ってよいのかどうかが分からず、 書いてから不安になることがあります。
この言葉が引っかかるのは目上から目下へ渡すという含みが残っているためで、 三越伊勢丹も高島屋も「御餞別は、通常、目上の方には用いません」と注記していますので、 上司や恩師に対しては別の表書きを選びます。
| 贈る相手 | 使ってよい表書き | 避けたい表書き |
|---|---|---|
| 上司・恩師・目上 | 御礼/おはなむけ/御退職御祝 | 御餞別(目上には用いません) |
| 同僚・同期 | 御餞別/おはなむけ/御礼 | とくにありません |
| 部下・後輩 | 御餞別/御祝/おはなむけ | とくにありません |
| 取引先の担当者 | 御礼/御退職御祝 | 御餞別は避けるほうが無難です |
| 父・母などの身内 | 御退職御祝/御祝 | 身内には御餞別を使いません |
「おはなむけ」は、どの相手にも使える表書きです。もとは旅立つ人の馬の鼻を行き先へ向けた「馬の鼻向け」に由来する言葉で、送り出す意味だけを持ちますので、上下の関係を含みません。ひらがなで書くと柔らかい印象になりますし、漢字の「御贐」は読みにくいので、迷ったらひらがなを選んでおけば読み手にも伝わります。
部署の有志でまとめて贈る場合は、 上司が相手であっても「御餞別」と書かれた袋を使ってしまう例が多いのですが、 名前を書く前に表書きを確かめておけば、 袋を買い直す手間だけで済みます。
すでに印刷された袋を使うほかない場合は、 短冊が差し替えられる形のものを選べば、 別の短冊に書き直して差し込むことができますので、 袋そのものを買い直さなくても整えられます。
「御礼」はもっとも使い道が広く、 定年でも中途退職でも、相手が目上でも目下でも意味が通りますので、 複数の相手へ同じ時期に贈る場面や、 職場全体で表書きをそろえたい場面では、これに寄せておけば取り違えが起きません。
印刷済みの封筒を、確かめずに買わないこと
文具店の「御餞別」と刷られた封筒は種類が多く、退職の場面で目に入りやすいのですが、これを上司へ使うと目上の相手に使わないとされる表書きが、そのまま表に出てしまうことになります。
袋を選ぶときは、表書きが無地のものを買って自分で書くか、短冊を差し替えられるものを選んでください。無地の袋であれば、あとから相手が変わっても書き分けられます。
名前の書き方と、連名・一同
表書きが決まっても、 その下に誰の名前を書くのかで手が止まりますし、 部署の何人かで出したときに全員の名前を並べるべきか、 まとめてしまってよいのかが分かりません。
考え方は三人までは全員の氏名、四人以上は一同という区切りで、 これはのし袋の幅に収まる人数を目安にしたものですので、 名前が小さくなって読めなくなるようなら、 まとめる側へ寄せると読みやすくなります。
| 贈る人数 | 書き方 | 添えること |
|---|---|---|
| 1人 | 水引の下中央に、氏名をフルネームで書きます | 職場では、姓だけでも通ります |
| 2〜3人 | 右から順に、目上の人を先に並べます | 同格なら五十音順にすると角が立ちません |
| 4人以上 | 「〇〇部一同」「有志一同」とします | 全員の氏名を書いた別紙を中に入れます |
| 夫婦で | 夫の氏名を書き、左に妻の名を添えます | 姓は一度だけ書きます |
| 会社として | 社名を右上に、下に代表者名を書きます | 役職は氏名の右上に小さく書きます |
四人以上でまとめるときの別紙は、必ず入れておいてください。「一同」とだけ書かれた袋を受け取った側は、誰から贈られたものかが分からないままになりますし、後日にお礼を伝えたくても宛先が決まりません。半紙や便箋に、右から目上の順で全員の氏名を並べて書き、中袋と一緒に入れておけば足ります。
墨の色は濃い黒で書きますが、 これは祝い事に共通する決まりで、 薄墨のほうは弔事の側の作法にあたりますので、 家にある筆ペンを使う前に、軸の表示を確かめておきます。
ボールペンや細いサインペンで書いた名前は、 のし紙の余白に対して線が細く見えてしまいますので、 筆ペンが手元になければ、 太めのフェルトペンを使うほうが形が整います。
内のしか、外のしか
店で品物を包んでもらうときに、 のし紙を包装紙の内側にするか外側にするかを聞かれますが、 違いが分からないまま「どちらでも」と答えてしまい、 あとで気になることがあります。
分ける軸は手渡しか、配送かで、 手渡しなら表書きが見えたほうが用向きが伝わりますし、 配送では包装紙が傷んでも中の紙が守られますので、 渡し方が決まれば自然に決まります。
| 掛け方 | 選ぶ場面 | 見え方 |
|---|---|---|
| 外のし | 手渡しする場合です | 包装紙の上に紙が来るので、表書きが見えます |
| 内のし | 配送する場合です | 包装紙の下に隠れ、控えめな形になります |
| 外のし(送別会で渡す) | 大勢の前で渡す場合 | 何の贈り物かが、その場の全員に伝わります |
| 内のし(自宅へ送る) | 退職後に送る場合 | 配送中に紙が傷むことを避けられます |
退職祝いは手渡しすることが多いので、外のしを選ぶ場面のほうが多くなります。送別会の席や最終出社日に渡す場合、表書きが見えているほうが受け取る側もその場で用向きを理解できますし、渡す側も言葉を尽くさずに済みます。自宅へ送る場合だけは内のしにしておけば、配送中に紙が破れる心配がありません。
内のしと外のしの違いは退職祝いに限った話ではありませんので、 ほかの贈り物での使い分けは 内のし・外のしの違いの記事のほうで、 場面ごとにまとめています。
紙袋に入れて渡す場合、 紙袋のまま手渡すのではなく、 袋から出して両手で渡すほうが形が整いますし、 袋は「お使いください」と添えて一緒に渡せば差し支えありません。
送別会の席で渡すなら、 料理が並ぶ前か、締めの挨拶の前に渡すほうが手元が空いていますので、 皿とグラスの置かれたテーブルの上に品を置くことにならず、 受け取る側も両手で受けられます。
現金を包む場合の袋と中袋
品物ではなく現金を包むことにした場合、 のし紙ではなくのし袋を選ぶことになりますが、 袋の格を額に合わせるという話もあって、 売り場でどれを取ればよいのか決まりません。
判断の軸は包む額で、 水引が印刷された薄手の袋は少額に、 実物の水引が結ばれた厚手の袋は高額に合わせますので、 先に額を決めてから袋を選ぶ順にすると迷いません。
| 包む額 | 選ぶ袋 | 中袋の扱い |
|---|---|---|
| 3千〜5千円 | 水引が印刷された薄手の袋 | 中袋が無ければ、袋の裏に金額と住所を書きます |
| 1万円 | 実物の水引が付いた袋 | 中袋の表に金額、裏に住所と氏名を書きます |
| 2万〜3万円 | 厚手で、水引の華やかな袋 | 同じく中袋に書き入れます |
| 5万円以上 | 格の高い袋を選びます | 中袋が付いている袋を選びます |
袋の格が中身より大きく上回ると、開けたときに間が抜けて見えます。三千円を厚手の袋に入れると袋のほうが立派になってしまいますので、額に見合った袋を選んでください。逆に一万円以上を印刷の袋に入れると簡素に映りますので、水引の付いた袋に替えるほうが形が整います。
お札は新しいものを用意しますが、 これは前もって準備したという意味を持たせるためで、 退職の日程は事前に分かっていることがほとんどですから、 銀行で両替しておけば間に合います。
お札の向きや入れ方は退職祝いに限った話ではありませんので、 現金の包み方・お札の向きの記事のほうに、 中袋の書き方とあわせてまとめてあります。
のし紙の選び方に難しいところはなく、 紅白5本の蝶結びを選び、表書きを退職の理由に合わせて決め、 名前を三人までなら並べ、四人以上なら一同にまとめる、 という三つの手順で組み立てられます。
どの場面でも変わらないのは、 表書きの言葉を決める前に、その退職が本人にとってどういう区切りなのかを確かめる、という点です。 定年なら「御退職御祝」で構いませんし、そうでなければ「御礼」にしておけば、 受け取る側に余計なことを考えさせずに済みます。
よくある質問
退職祝いの水引は、蝶結びと結び切りのどちらですか。
紅白5本の蝶結びです。何度あってもよい祝い事に使う結び方で、退職祝いの基本の形になります。ただし結婚退職の場合だけは、結婚のほうを祝う形になるため紅白の結び切りを使います。
表書きは「御祝」でよいですか。
定年退職なら差し支えありませんが、途中退職では避けます。高島屋は「途中退職の場合、御祝は不適当」と明記しています。定年以外の退職では「御礼」か「おはなむけ」を選んでおけば、どの理由でも意味が通ります。
上司に「御餞別」と書いてもよいですか。
使いません。三越伊勢丹・高島屋とも「御餞別は、通常、目上の方には用いません」と注記しています。上司や恩師には「御礼」「おはなむけ」「御退職御祝」を選んでください。「おはなむけ」は上下の関係を含まないので、どの相手にも使えます。
5人でまとめて贈ります。名前はどう書きますか。
「〇〇部一同」「有志一同」とし、全員の氏名を書いた別紙を中に入れます。3人までなら右から目上の順に氏名を並べます。別紙を入れないと、受け取った側が誰から贈られたものか分からないままになります。
内のしと外のしは、どちらを選びますか。
手渡しなら外のし、配送なら内のしです。退職祝いは送別会や最終出社日に手渡すことが多いので、表書きが見える外のしを選ぶ場面のほうが多くなります。退職後に自宅へ送る場合だけ内のしにしてください。
まとめ
- のし紙は紅白5本の蝶結び。結婚退職だけ結び切りです。
- 定年は御退職御祝/御定年御祝/御祝/御礼が使えます。
- 途中退職で「御祝」は不適当。「御礼」に替えます。
- 「御餞別」は目上に使いません。「おはなむけ」なら誰にでも使えます。
- 名前は3人まで並べ、4人以上は一同+別紙を入れます。
- 手渡しは外のし、配送は内のしです。
- 現金は額に見合った袋を選び、新しいお札を包みます。
参考情報
- 高島屋「ビジネスのお祝い ご贈答マナー」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/oiwai_05.html - 三越伊勢丹「昇進・転勤・退職のお祝い」
https://www.mistore.jp/gift/manner/oiwai/index12.html - 高島屋「進物の基礎知識 表書きの書き方」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_04.html - 阪急百貨店「退職祝いのマナーとは?渡すタイミングや熨斗についても詳しく解説!」
https://web.hh-online.jp/hankyu-food/blog/lifestyle/detail/000800.html
表書きと水引は、上記各社の案内に共通する形をまとめたものです。「途中退職の場合、御祝は不適当」は高島屋が明記しており、三越伊勢丹も退職理由ごとに表書きを分けています。地域によって呼び方や結び方の慣習が残っている場合があります。(最終確認:2026年8月)
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域・職場・ご家庭の慣習によって考え方が異なる場合があります。同じ職場で前に贈った例があるときは、そちらに合わせるほうが角が立ちません。