結論

墓じまいとは、今あるお墓の墓石を撤去して墓地を管理者へ返し、納められていた遺骨を別の場所へ移すことを指す言葉にあたります。 法律に出てくる用語は「墓じまい」ではなく改葬で、 遺骨を動かすには今あるお墓がある市区町村長の許可が必要ですから、 石材店へ連絡する前に、まず役所と墓地管理者の側から段取りが始まります。

順番でいちばん間違えやすいのが最初の一手で、 石材店の見積もりでも役所の書類でもなく、親族への相談から始めます。 遺骨を移した後で「聞いていない」と言われても元へは戻せませんし、 墓地の使用者と申請者が違う場合には委任状や承諾書が要るため、 話が通っていないと書類の段階で必ず止まることになります。

「墓じまい」と「改葬」はどう違うか

遠方の墓を守りきれないと感じて調べ始めると、墓じまいという言葉と改葬という言葉が交互に出てきて、 同じことを指しているのか別の手続きなのかが分からないまま、最初の一歩で立ち止まってしまいます。 役所の窓口では墓じまいという言い方が通じないこともあり、そこでさらに混乱が重なります。

分かれ目は、どちらが法律上の言葉かという一点にあります。 墓地埋葬法(墓地、埋葬等に関する法律)に定めがあるのは改葬のほうで、 墓じまいは石の撤去や墓地の返還まで含めた、暮らしの側の呼び名にあたりますから、 役所に出す書類はすべて改葬という語で書かれています。

言葉何を指すか手続きの有無
改葬埋蔵・収蔵されている遺骨を、他の墓地や納骨堂へ移すことです市区町村長の許可が必要になります
墓じまい改葬に、墓石の撤去と墓地の返還を加えた一連の作業を指します言葉としては法律に出てきません
離檀寺院の檀家をやめて、そのお付き合いを終えることです寺との話し合いで決まる部分です
閉眼供養墓石から魂を抜くために営む、宗教上の儀式にあたります法律ではなく宗派の作法によります
永代供養承継者に代わって墓地の管理者が供養と管理を続ける形です移した先で選ぶ供養の方式です

墓じまいという一語のなかに、法律の手続き・お寺とのお付き合い・宗教上の儀式・石の工事という、性質のまるで違う4つが同居していることが、分かりにくさの原因にあたります。相手も窓口も別々ですから、ひとまとめに「墓じまいをしたい」と伝えても話が進まず、相手ごとに用件を分けて持ち込むほうが早く終わります(最終確認:2026年9月)。

たとえば石材店へ電話をして「墓じまいをお願いします」と伝えると、 見積もりのために墓地の広さと石の量を確かめに行くところから話が始まりますが、 その時点で改葬許可証がなければ遺骨を取り出せませんので、工事の日程だけが宙に浮きます。

ですから最初にすることは、自分がこれから相手にするのは誰と誰なのかを紙に書き出すことです。 親族、菩提寺または霊園の管理事務所、今あるお墓の市区町村、新しい納骨先、石材店という5者が並びますので、 それぞれに何をいつ頼むのかを分けておくと、途中で行き止まりに入りません。

改葬許可申請の流れと必要書類を見る

なぜこれほど増えているのか

墓じまいという言葉を身内から聞かされたとき、それが珍しい決断なのか、 それとも同じことをしている人が周りにも大勢いるのかが分からないと、 話し合いの場でどう構えてよいのかが決まりません。

判断の材料になるのは、市区町村が交付した改葬許可の件数で、 これは意見や意識ではなく実際に手続きが行われた数そのものですから、 増えているかどうかを確かめるうえでいちばん確かな数字にあたります。

年度全国の改葬件数10年前との比較
2024年度176,105件で、過去最多を更新しました2014年度の2.1倍にあたります
2023年度166,886件で、前年から増え続けています同じ年の埋葬・火葬は162万件でした
2014年度83,574件で、いまの半分以下でしたこの10年の伸びが際立ちます
うち無縁墳墓等2024年度は3,006件で、全体の1.7パーセントです大半は承継者本人による申請です
都道府県の上位北海道14,628件、東京12,982件、大阪10,376件と続きます都市部と過疎地の両方で増えています

この数字は遺骨1体につき1件と数えるのが原則ですので、お墓1基を閉じると数件になる場合がありますから、17万件がそのまま17万家という意味ではありません。それでも無縁墳墓としての処理が3,006件しかないという点は重く、放置された墓の後始末ではなく、承継している人が自分の意思で選んだ結果が大半を占めていることを示しています(厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」第6表。最終確認:2026年9月)。

鎌倉新書が改葬・墓じまいを検討または実施した733人に尋ねた「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」では、検討した理由の1位が「お墓が遠方にある」52.0パーセント、2位が「お墓の継承者がいない」44.1パーセントでした。気持ちの問題より、距離と人手という動かしにくい事情が上位を占めています。 両親が眠る墓が新幹線で3時間の土地にあり、自分は70代で、子どもは他県で家庭を持っているという形は、 いまの日本ではむしろありふれた並びにあたります。

ですから親族の集まりで墓じまいを切り出すときは、 自分たちだけの特殊な事情として話さないほうが通りやすくなります。 2024年度だけで17万件を超える改葬が現に行われているという厚生労働省の数字は、 感情の対立になりかけた場面を落ち着かせる材料としても使えます。

親族への切り出し方と、反対されたときの対応を見る

何から手をつけるか

墓じまいを扱う案内を読むと、石材店に見積もりを取ると書いてあるものと、 まず役所で書類をもらうと書いてあるものがあり、どちらから動けばよいのかが決まりません。 調べる時間ばかりが増えて、結局その年は何もしないまま終わったという方も少なくありません。

順番を決める軸は費用でも手間でもなく、後から取り返しがつくかどうかです。 見積もりは何度でも取り直せますし、書類も出し直せますが、 取り出して合祀してしまった遺骨だけは元へ戻せませんので、 戻せないものに近い作業ほど後ろへ置きます。

順番することなぜその位置か
1番目親族に話し、了解を取っておきます後から覆されると書類が止まります
2番目菩提寺または管理事務所へ相談します埋蔵証明を書くのはこの相手です
3番目遺骨をどこへ移すかを決めて契約します受入証明を求める自治体が多くあります
4番目市区町村へ改葬許可を申請します窓口は今あるお墓がある自治体です
5番目石材店へ見積もりを頼み、工事日を決めます許可が出てから日程を固めます
6番目閉眼供養を営み、遺骨を取り出しますここから先は戻せません

石材店への連絡が5番目に来るのは、工事の日を決めるには改葬許可証と閉眼供養の日程がそろっている必要があるためです。先に工事日だけを押さえてしまうと、書類が間に合わずに順延することになり、その分の費用を求められる場合もあります。見積もりだけを早めに取るのは差し支えありませんが、日程の確定は許可が出た後に回してください(最終確認:2026年9月)。

実際に順番を崩して困るのは、親族への相談を後回しにした場合です。 きょうだいのうち一人だけが動いていて、遺骨を取り出す前日になって別のきょうだいから連絡が入り、 石材店の工事も僧侶の予定も一度に組み直すことになった、という形で表に出てきます。

そうならないためには、誰が墓地の使用者として登録されているかを先に確かめておくことです。 使用者と申請者が違う場合には委任状や承諾書が必要になる自治体がありますので、 名義が親のままだと分かった時点で、話をする相手が一人増えることになります。

先に確かめておく3つ

墓地の使用者として登録されている名義は誰かを、管理事務所または菩提寺に確かめます。名義が亡くなった方のままになっている例は珍しくありません。

その墓に何体の遺骨が納められているかを確かめます。改葬許可申請書は遺骨1体につき1枚が原則ですので、体数が分からないと申請できません。

年間の管理料が滞っていないかを確かめます。未納分がある場合、返還の手続きの前に精算を求められることがあります。

全体の流れを9つに分ける

墓じまいの案内は「5ステップ」「7つの手順」と数が食い違っており、 どこまでを一区切りと見るかが書き手によって違うため、 読み比べるほど全体像がぼやけていくという事情があります。

ここでは相手が変わるところで区切るという一つの基準で並べます。 親族、寺、納骨先、役所、石材店と相手が移るたびに用件も書類も変わりますので、 その切れ目で数えるほうが、次に誰へ連絡すればよいかを見失いません。

段階すること相手
1墓じまいをするかどうかを家族で決めます同居する家族です
2親族に事情を伝え、了解を取りますきょうだい・おじおば・いとこです
3菩提寺または管理事務所へ相談します住職または霊園の担当者です
4新しい納骨先を選び、契約して受入証明をもらいます移す先の霊園や納骨堂です
5埋蔵証明を書いてもらいます今あるお墓の管理者です
6改葬許可を申請し、許可証を受け取ります今あるお墓がある市区町村です
7石材店に撤去を依頼し、工事日を決めます墓地が指定する石材店の場合もあります
8閉眼供養を営み、遺骨を取り出します僧侶と石材店が同じ日に入ります
9新しい納骨先へ納め、墓地を返還します移した先の管理者と、元の管理者です

5番目の埋蔵証明と6番目の改葬許可申請は、多くの自治体で1枚の用紙にまとまっています。改葬許可申請書の所定欄に墓地の管理者が証明を書き込む形が通常ですので、先に役所で用紙をもらい、それを持って墓地へ行くという順で動くと二度手間になりません。用紙は窓口のほか、自治体のサイトから印刷できる場合もあります(横浜市の案内による。最終確認:2026年9月)。

この9段階のうち、自分が動く量がいちばん多いのは2番目と4番目です。 親族への連絡は一度で済まないことが多く、 納骨先を選ぶ作業は資料を取り寄せて現地を見るところまで含めると、それだけで数か月かかります。

逆に6番目の役所の手続きは、書類さえそろえば1回の窓口訪問で終わることがほとんどです。 横浜市のように郵送で受け付けている自治体もありますので、 遠方の墓であっても、そのために何度も足を運ぶ必要はありません。

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どれくらい期間がかかるか

年内に終わらせたいと考えて動き始めても、 どの作業に何週間かかるのかが分からないと、いつまでに何を頼めばよいかの逆算ができません。 納骨先の見学が思ったより先の日程しか取れず、そこで全体が2か月ずれることもあります。

期間を左右するのは役所の処理ではなく、相手の予定が入っている工程です。 親族の集まり、霊園の見学、僧侶の空き、石材店の工事枠という4つは自分では動かせませんので、 ここに余裕を持たせるかどうかで全体の長さが変わります。

工程目安の期間長引く原因
親族への相談1か月から3か月ほどかかります集まる機会が年に数回しかありません
納骨先を決める2か月から半年ほどかかります見学の予約が先まで埋まります
菩提寺への相談1回の訪問で済む場合が多い工程です住職の在寺日が限られる寺もあります
改葬許可の申請即日から2週間ほどで交付されます郵送だと往復の日数が加わります
石材店の工事見積もりから1か月ほどが目安です春秋のお彼岸前後は枠が埋まります
全体半年から1年ほどを見ておく形です冬季は工事ができない地域もあります

この表で最も伸びやすいのは納骨先を決める工程で、鎌倉新書の調査でも「遺骨の引っ越し先選び」が大変だったことの1位に挙がっています。選択肢が多いうえ、一度決めたら移し直しがきかないため、迷う時間そのものが長くなります。逆に役所の手続きは書類がそろえば短く終わりますので、そこを心配して先延ばしにする必要はありません(最終確認:2026年9月)。

季節の要因も無視できません。 お彼岸やお盆の前後は石材店も寺も立て込みますし、 北国では地面が凍る時期に基礎の撤去ができず、雪解けを待つことになる墓地もあります。

ですから逆算するときは、納骨したい日から数えて1年前に親族へ話を始めるくらいの見当で組むと無理がありません。 一周忌や三回忌に合わせて納骨したいという希望があるなら、 その法要の日付を決めるより前に、この相談を済ませておくことになります。

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費用はどのくらいかかるか

墓じまいの費用を調べると、30万円という数字と200万円という数字が同じページに並んでいることがあり、 自分の場合はどちらに近いのかが分からないまま、家族に金額を伝えられずにいる方が多くいらっしゃいます。

幅が出るのは、費用が一つのものではなく、性質の違う支払いの合計だからです。 石の撤去は面積で決まり、納骨先は選んだ形で決まり、お布施は寺との関係で決まりますので、 同じ「墓じまい」でも中身の組み合わせがまるで違います。

支払う先何に対する費用か金額が動く理由
石材店墓石の撤去と、更地に戻す工事の代金です面積と、重機が入れるかで変わります
新しい納骨先永代供養料や、納骨堂の使用料にあたります合祀か個別かで大きく開きます
菩提寺閉眼供養のお布施と、離檀に伴うお礼です寺との関係の長さによって変わります
市区町村改葬許可証の交付手数料にあたります無料の自治体と有料の自治体があります
運搬・その他遺骨の運搬費や、書類を取り寄せる実費です距離と遺骨の体数によって変わります

この5つのうち、事前に金額が確定するのは石材店と新しい納骨先の2つだけです。菩提寺へのお布施には定価がなく、自治体の手数料は横浜市のように無料のところもあります。ですから見積もりを比べるときは、どこまでを含んだ金額なのかを必ず確かめてください。撤去だけの見積もりと、運搬や供養まで含んだ見積もりを並べても比較になりません(最終確認:2026年9月)。

同じ鎌倉新書の調査で実際にかかった費用を聞いた結果では、「31万円から70万円」が31.3パーセントで最も多く、30万円以下の16.8パーセントと合わせると約48パーセントが70万円以下で終えています。いっぽう151万円以上も14.0パーセントあり、墓地の広さと納骨先の種類で幅が出ます。 墓地1区画が2平方メートルほどで、重機が入る通路があり、 移した先を合祀の永代供養墓にした場合が、この最も多い層におおむね収まります。

逆に151万円以上になるのは、石段の上にあって手作業で下ろすしかない墓地や、 移した先で新しく墓石を建てた場合です。 自分がどちらに近いかは、墓地へ重機が入れるかどうかを石材店に見てもらえば、早い段階で見当がつきます。

見積もりを取るときに伝えること

墓地の面積と、区画までの通路の幅を伝えます。軽トラックが横づけできるか、階段を何段上るかで作業量が変わります。

納められている遺骨の体数と、カロートの構造を伝えます。地下式で深い場合は、掘り出す手間が加わります。

更地に戻すのか、外柵まで残すのかを確かめます。墓地の規則で戻し方が決まっている場合があり、それによって金額が変わります。

遺骨をどこへ移すか

墓じまいを決めた後で最も時間がかかるのがこの選択で、 永代供養墓、樹木葬、納骨堂、手元供養と選択肢が並ぶものの、 それぞれの違いが説明を読んでも頭に入ってこないという声をよく聞きます。

見分ける軸を一つに絞るなら、後から取り出せるかどうかです。 合祀は他の方の遺骨と一緒にしますので取り出せませんし、 個別に安置する形なら年数の区切りまでは取り出せますから、この違いだけは先に押さえておきます。

移す先どんな形か選ばれている割合
永代供養(合祀・合葬)他の方の遺骨と一緒に納め、寺や霊園が供養を続けます43.2パーセントで最も多い形です
樹木葬樹木や草花を墓標として、その下に納める形です24.1パーセントが選んでいます
別の墓石があるお墓新しい土地に墓石を建て、そこへ移す形です14.3パーセントまで下がっています
納骨堂屋内の区画に安置し、期限の後に合祀する形が多い方式です13.3パーセントが選んでいます
手元供養・散骨自宅に置く、または海などへ撒く形にあたります上記以外の少数にとどまります

合祀・合葬が43.2パーセントで最多という結果は、前回2024年調査の30.9パーセントから12ポイント以上伸びたものです。その分だけ墓石を建て直す形は22.3パーセントから14.3パーセントへ減っており、承継者を必要としない形を選ぶ人が約8割に達しています。ただし合祀した遺骨は後から取り出せませんので、迷いが残っているうちは個別安置の期間がある形を選ぶという考え方もあります(鎌倉新書の第4回調査。最終確認:2026年9月)。

実際の場面でつまずくのは、きょうだいのあいだで意見が割れたときです。 一人は費用の安い合祀を勧め、もう一人は「いつでも会いに行ける形にしたい」と言い、 そのまま数か月動かなくなるという形は珍しくありません。

そういうときは、個別に安置する期間を置いてから合祀に移る形を探すと折り合いがつくことがあります。 13回忌までは個別、その後は合祀という区切りを設けている施設が多くありますので、 どちらの希望も部分的に満たせる形になります。

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どこで止まりやすいか

準備を進めていたのに途中でやめてしまったという話は多く、 その理由が費用なのか手続きなのか人間関係なのかが分からないと、 自分がこれから何に備えればよいのかの見当が立ちません。

止まる場所は近年はっきり移ってきており、 周囲の反対という外からの力より、自分の中の迷いのほうが上に来るようになりました。 止め方が変わったということは、備え方も変わるということです。

調査の項目数値前回調査との違い
やめた理由・1位解体費用が高すぎたが22.2パーセントで最多です前回の26.3パーセントから減りました
やめた理由・うしろめたさ先祖にうしろめたい気持ちになったが11.1パーセントです心情面が表に出てきた形です
やめた理由・周囲の反対家族・親戚から理解を得られなかったは7.8パーセントです前回は上位に入っていた理由です
大変だったこと1位遺骨の引っ越し先選びが38.8パーセントでした前回の43.4パーセントより減りました
大変だったこと2位役所の手続きが32.3パーセントを占めます書類の負担は依然として重い工程です

反対されてやめた人が7.8パーセントまで下がり、うしろめたさでやめた人が11.1パーセントで上回ったという逆転が、この調査で最も重い結果にあたります。墓じまいが社会に受け入れられて外からの圧力が減った分、止める力が自分の内側へ移ったということですから、親族を説得する準備だけをしていても足りません(鎌倉新書の第4回調査。やめた理由で原典が順位を示しているのは1位の22.2パーセントだけです。設問ごとに母数が異なります。最終確認:2026年9月)。

うしろめたさは、手を合わせる場所がなくなるという感覚から来ることが多いようです。 墓石を撤去した後、命日にどこへ行けばよいのか決めていないと、 その日が来るたびに落ち着かない気持ちが残ります。

ですから移し先を選ぶときは、費用や管理の手間だけでなく、 そこへお参りに行く自分の姿が思い描けるかどうかを一つの目安にしてください。 年に一度、電車を乗り継いで行ける距離かという問いは、金額の比較より後まで効いてきます。

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墓じまいの進め方に、どの家にも当てはまる一つの形があるわけではありません。 遺骨が何体あるか、菩提寺とのお付き合いがどれだけ長いか、 きょうだいが何人いて誰が墓地の名義人になっているかによって、 話をする相手も、かかる期間も、費用の桁さえ変わってきます。 半年で終わる家もあれば、二度目の法事を挟んで二年かける家もあります。

どの家でも変わらないのは、戻せない作業を最後に置くという一点だけです。 見積もりも書類も取り直しがききますが、 取り出して合祀した遺骨だけは元の場所へ返せません。 親族に話し、寺に相談し、移す先を決めてから石を動かす。 この順序さえ崩さなければ、途中で何度立ち止まっても、やり直しはききます。

よくある質問

墓じまいと改葬は同じ意味ですか?

重なりますが同じではありません。改葬は墓地埋葬法にある言葉で、遺骨を他の墓地や納骨堂へ移すことを指します。墓じまいはそこへ墓石の撤去と墓地の返還を加えた通称にあたりますので、役所へ出す書類はすべて改葬という語で書かれています。

何から始めればよいですか?

親族への相談から始めてください。石材店の見積もりや役所の書類は後から取り直せますが、遺骨を取り出して合祀した後で反対されても元へは戻せません。墓地の使用者と申請者が違う場合は委任状や承諾書が要る自治体もありますので、名義の確認も先に済ませます。

どれくらいの期間がかかりますか?

半年から1年ほどを見ておくと無理がありません。役所の手続きは書類がそろえば短く終わりますが、親族の集まりを待つ時間と、納骨先を見学して決める時間が長くかかります。納骨したい日から1年前に相談を始める見当で組んでください。

費用はいくらくらいですか?

鎌倉新書の調査では31万円から70万円が31.3パーセントで最も多く、30万円以下と合わせて約48パーセントが70万円以下で終えています。ただし151万円以上も14.0パーセントあり、墓地の広さと重機が入るかどうか、移した先の形で大きく変わります。

改葬の許可はどこへ申請しますか?

移す先ではなく、今あるお墓がある市区町村です。改葬許可申請書に今の墓地管理者の埋蔵証明を添えて提出し、多くの自治体では新しい納骨先の受入証明も求められます。ただし必要書類は自治体ごとに違い、横浜市の案内には受入証明が挙がっていません。手数料も横浜市は無料です。

遺骨はどこへ移す人が多いですか?

永代供養の合祀・合葬墓が43.2パーセントで最も多く、樹木葬24.1パーセント、納骨堂13.3パーセントと続きます。承継者を必要としない形が約8割を占めますが、合祀した遺骨は後から取り出せませんので、迷いが残る場合は個別安置の期間がある形を選ぶ考え方もあります。

お寺と石材店のどちらに先に連絡しますか?

菩提寺が先です。埋蔵証明を書くのは墓地の管理者であるお寺ですし、閉眼供養の日程が決まらないと石材店の工事日も固まりません。石材店には見積もりだけを先に頼み、日程の確定は改葬許可が出てからにしてください。

墓じまいをする家は増えているのですか?

増えています。厚生労働省の衛生行政報告例では2024年度の改葬が176,105件で、2014年度の83,574件から10年で2.1倍になりました。うち無縁墳墓等としての処理は3,006件にとどまり、大半は承継者本人が申請したものです。

まとめ

  • 法律上の手続きの名は改葬にあたります
  • 許可を出すのは今あるお墓がある市区町村になります
  • 最初にすることは親族への相談にあたります
  • 菩提寺への相談は石材店より先に済ませます
  • 期間は半年から1年を見ておきます
  • 費用は31万円から70万円が最も多くなります
  • 移す先は合祀の永代供養墓が最多にあたります
  • 合祀した遺骨は取り出せませんので最後に決めます

参考情報

  1. 厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」年度報 第4章 生活衛生 第6表「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数,都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」(2025年10月21日公開/全国の改葬176,105件)
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=dataset&query=%E6%94%B9%E8%91%AC&stat_infid=000040359174
  2. 株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査(2026年)」(2026年3月17日公表/調査期間2026年1月16日〜23日/インターネット調査/有効回答733件)
    https://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/12200/
  3. 横浜市「改葬(遺骨の移動)の手続き」(2024年1月25日最終更新/必要書類・申請先・手数料)
    https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/todokede/koseki-juminhyo/todokede-touroku/koseki/kaisou.html
  4. いいお墓(鎌倉新書)「墓じまいとは?手続きの流れや費用、トラブル対策を解説」
    https://guide.e-ohaka.com/tomb-condition/hakajimai_about/

墓じまいという語が法律上の用語ではないこと、法律にあるのは改葬であること、改葬には今あるお墓のある市区町村長の許可が要ることは、参照した情報源で一致しています。いっぽう費用の内訳と相場は、墓地の広さ・立地・石材店・納骨先によって大きく動きますので、一つの相場を示すことができません。本記事では鎌倉新書の調査が示す実施費用の分布を引くにとどめました。改葬件数176,105件は厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」第6表の全国値で、2014年度の83,574件と比べて2.1倍にあたります。また改葬件数は市区町村が交付した改葬許可の件数を集計したもので、原則として遺骨1体につき1件と数えます。お墓1基を閉じると数件になる場合がありますので、墓じまいをした家の数とは一致しません(最終確認:2026年9月)。なお鎌倉新書の第4回調査で答えたのは、お墓のポータルサイトを経由して資料請求または霊園見学をした人のうち、改葬・墓じまいを検討または実施した733人にあたります。すでに動き出している人に偏った母数ですので、日本全体でこの割合という数字ではありません(最終確認:2026年9月)。

本記事で紹介している墓じまいの流れ・費用の分布・期間の目安は、いずれも一般的な目安にあたります。墓じまいと改葬の進め方は宗派・地域・墓地の規則・家の事情によって大きく異なり、全国で共通する決まりがあるわけではありません。とくに改葬許可申請の様式と手数料は市区町村ごとに違い、閉眼供養の呼び名と作法は宗派ごとに違います。手続きは今あるお墓のある市区町村の窓口へ、供養の作法は菩提寺へ、それぞれ直接お確かめください。本記事は法律相談ではありませんので、寺院や親族との争いに発展している場合は、弁護士や行政書士など専門家にご相談ください。