結論
取引先へのお歳暮は自社と相手方、両方の規定を確認してから手配するもので、 受け取りそのものを禁じている会社がありますので、 品を選ぶより先に贈ってよい相手かどうかを確かめておく必要があります。
贈ると決めた場合の金額は5千〜1万円が目安になり、 宛名には会社名と部署名、役職、氏名を並べ、 差出人には会社名を入れたうえで担当者の名前まで書き添えます。
双方の規定を確認
年末が近づくと、去年まで送っていた取引先へ今年も同じように手配してよいものかどうかで手が止まります。 先方の担当が替わっていたり、合併で社名そのものが変わっていたりすると、 前の年の伝票をそのまま写して発注するわけにもいきません。
確かめる先は自社と相手方の二つに分かれ、 自社では交際費としての扱いと上長の承認が要るかどうかを、相手方では受け取りが認められているかどうかを見ることになります。 個人の判断で会社の名前を使って贈ることはできませんし、どちらか一方だけを確かめても足りません。
| 相手 | 扱い |
|---|---|
| 官公庁・公務員 | 国家公務員倫理規程などで制限され、贈れません |
| 金融機関 | 受け取りを禁じていることが多くあります |
| 上場企業 | 規定で禁じている会社が少なくありません |
| 一般の取引先 | 前年の実績を調べ、担当者に直接尋ねます |
贈ってよい相手かどうかは、前年どうしたかを社内で確認するのがいちばん確実です。取引先ごとに送り先と品目の記録が残っていることが多く、辞退の申し出があった相手には印が付いていますので、記録が見当たらないときだけ先方の担当者へ電話で尋ねれば足ります。
記録の残っていない相手で迷うのが、こちらから尋ねてよいものかどうかという点ですが、 贈答の可否を聞かれて気を悪くする担当者はまずいません。 年末のあいさつの電話のついでに、社内の規定でお受け取りが難しいことはないかと一言添えれば足ります。
返送されたときに手間がかかるのは送った側だけではなく、先方でも受付の担当者が伝票を確かめ、 上長へ報告したうえで送り返す作業が生じます。 箱がひとつ動くたびに双方で人が動きますので、贈ってから確かめるのではなく、贈る前に確かめる順番になります。
金額の目安
贈ると決めたあとに迷うのが金額のほうで、担当者一人の机に届ける品と、部署の皆さんで分けてもらう品とでは、選ぶ大きさが変わります。 取引の額が大きい相手ほど厚くしたくなりますが、そこで基準を見失うと、翌年から下げられなくなります。
分かれ目は誰の手元に届く品なのかという点にあり、 個人宛の一箱と、給湯室に置いて皆で取ってもらう詰め合わせとでは、適した金額の幅がそもそも違います。 取引の規模がどれだけ大きい相手であっても、それはここでは二番目の材料にとどめておくほうが安全です。
| 相手 | 金額 |
|---|---|
| 担当者個人宛 | 5千円ほどの品をひとつ選びます |
| 部署宛(分けられるもの) | 5千円から1万円の範囲で選びます |
| 会社宛・重要な取引先 | 1万円から2万円までを目安にします |
取引額の大きさに引きずられて、贈る品の金額を上げすぎないようにしてください。高額な品ほど相手方の社内規定に触れやすくなり、受け取れずに返送されれば双方に手間が生じますので、相手が問題なく受け取れる範囲にとどめておくほうが贈る側の目的にもかないます。
部署宛に1万円の品を選ぶときにいちばん効いてくるのは、その部署の何人で分けられる形になっているかという点です。 十人の部署へ大きな鉢植えを送っても分けようがありませんが、個包装の焼き菓子が二十個入っていれば、 休憩室の棚に置いておくだけで行き渡ります。
金額をいったん決めたら、翌年以降も同じ幅で続けられるかどうかを、そこで一度確かめておいてください。 今年だけ特別に厚くすると、来年下げたときに関係が変わったと受け取られますし、 担当者が交代したあとに引き継がれるのは、たいてい金額の数字だけです。
宛名の書き方
のし紙の宛名は、店の窓口で口頭で伝えたとおりに印字され、書き直しのきかない形で戻ってきます。 同じ会社へ贈るのでも、部長個人へ届けたいのか、部署の皆さんへ届けたいのかで書き方が変わりますので、 その場で言いよどむことになります。
分かれ目は個人宛か組織宛かという一点で、届いた品を誰が受け取るのかによって敬称が変わります。 会社名をどこまで正式に書くか、役職を氏名の前後どちらへ置くかも、あわせて決めることになります。
| 宛先 | 書き方 |
|---|---|
| 担当者個人 | 〇〇株式会社 営業部 部長 〇〇 〇〇様と書きます |
| 部署宛 | 〇〇株式会社 営業部御中と書き入れます |
| 会社宛 | 〇〇株式会社御中とだけ書き入れます |
宛名の敬称は、「様」と「御中」を併用しない形にそろえてください。個人宛なら様、組織宛なら御中と、どちらか一方だけを使いますので、〇〇株式会社御中 〇〇様という並べ方は誤りになりますし、窓口で伝えるときも個人宛か部署宛かを先に言ってしまえば取り違えが起きません。
会社名は(株)と略さずに株式会社と書き入れるのが基本で、契約書や請求書では略さないのに、 のし紙だけ略してしまう例が少なくありません。 刷り上がった短冊のしを受け取ったら、包んでもらう前に社名と役職の並びをその場で一度読み返してください。
部署宛に贈ると決めたのであれば、品物のほうも人数分に分けられる形にそろえておいてください。 冷蔵の要る詰め合わせや大きな一本ものを部署へ送ると、切り分ける係を先方に押しつけることになりますが、 個包装の菓子であれば、外箱を開けてそのまま配れます。
差出人の書き方
宛名の書き方が決まると、次は自分の側の名前をどう書くかという話に移ります。 会社を代表して贈るのか、部署としてなのか、担当者としてなのかで、 のし紙の下段に入る名前がそれぞれ変わってきます。
判断の軸は誰の名前で出す品なのかという点にあり、 費用をどこから出したかと、先方に誰の顔を思い浮かべてほしいかの二つで決まります。 代表取締役の名前まで並べるかどうかも、その二つと一緒にここで決めておくことになります。
| 立場 | 差出人 |
|---|---|
| 会社として | 〇〇株式会社 代表取締役 〇〇 〇〇と書きます |
| 部署として | 〇〇株式会社 営業部と書き入れます |
| 担当者として | 〇〇株式会社 営業部 〇〇 〇〇と入れます |
会社名だけでは、誰から届いたのかが先方にうまく伝わりません。年末には同じような箱がいくつも届きますので、担当者名まで入っていれば先方は受け取りの記録を残しやすくなりますし、お礼の電話をどこへ返せばよいかもその場で分かります。
のし紙は紅白の蝶結びのものを選び、表書きの位置には御歳暮と書き入れます。 配送で届ける以上は箱に直接掛ける内のしが基本になりますので、 包装紙の外から贈答品と分かる形にしなくても、開ければ表書きが目に入ります。
差出人の欄でいちばん見落としやすいのが、社内で担当が替わった年の書き方です。 前任者の名前のまま送ると、先方は誰に礼を言えばよいのか分からなくなりますので、 引き継いだ年は自分の名前を入れ、送り状にも交代を知らせる一行を添えておいてください。
内のし・外のしの使い分けを見る贈り方
贈る品と宛名が決まっても、いつ、どこへ届けるかという問題がまだ残っています。 年末の取引先は締めの作業と休業の支度が重なっていますので、届く日を間違えると、 箱が受付のカウンターに置き去りになります。
気をつける点は届け先と届く日の二つに絞られ、 先方の勤務先へ、休業に入る前に着くように手配することになります。 どんな品物を選ぶかも、この二つに引きずられておのずと決まってきます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 送り状 | 何がいつ届くかを先に知らせておきます |
| お届け先 | 勤務先へ送り、個人の自宅には送りません |
| 届く日 | 年末年始の休業日を外して指定します |
| 品物 | 常温で日持ちするものを選んでおきます |
| 手渡し | あらかじめ約束を取ってから伺います |
品を手配する前に、先方の年末休業がいつ始まるかを確かめてください。12月28日ごろから休みに入る会社が多く、不在で返送されれば手配のやり直しになりますので、12月中旬までに着くよう指定して担当者が席にいるうちに受け取ってもらいます。
送り状を先に出しておくと、先方は届く日に合わせて受付へ一言伝えておけます。 何も知らせないまま箱だけが届くと、開けてよいものかどうかの確認から始まりますし、 担当者が出張に出ていれば、机の脇に置かれたまま年を越すことになります。
生ものを外すのも同じ理由からで、冷蔵の要る品は受け取った側が置き場所を探すことになりますし、 休業前の給湯室の冷蔵庫はたいてい空いていません。 常温で日持ちする詰め合わせであれば、年明けに出社してから開けたところで中身が傷みません。
断られた場合
手配をすっかり進めている途中で、先方から辞退の連絡が入ってくることがあります。 丁寧な文面で断られると、それでも押してよいものか、来年はどうするのかというところまで一度に迷います。
判断は断りがいつ届いたかで分かれ、 贈る前に申し出があった場合と、送ったあとに箱ごと戻ってきた場合とでは、こちらのすることが変わります。 受付で受け取りを渋られ、その場で判断を求められることもあります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 事前に辞退の連絡があった | 贈らずにおき、翌年以降も控えます |
| 返送されてきた | 受け取ったうえで、お詫びの連絡を入れます |
| 受け取りを渋られた | 無理に置いてこず、そのまま持ち帰ります |
断られたからといって、そこを気に病む必要はありません。担当者個人の判断ではなく会社の規定であることがほとんどで、受け取れないと伝えるほうも気を遣っていますので、翌年からは贈らない相手として社内の記録に残しておけば足ります。
贈答そのものを辞退する会社が増えていることは、市場を追った数字のうえにも表れています。 矢野経済研究所が2023年10月から2024年4月にかけて、ギフトの卸・メーカー・小売への面談取材と電話での聞き取り、 郵送アンケート、文献調査を重ねてまとめた法人ギフト市場の推計では、 虚礼廃止の広がりによって企業間の進物需要が件数を減らしていると整理されています。 回答者の数は公表されておらず、贈る側の気持ちを尋ねた意識調査でもありませんので、そのまま自社の判断に当てはめられる数字ではありません。
贈れない相手にも感謝を伝える手立ては残っていますので、そこで途切れると考えなくて構いません。 年賀状に一行書き添えるだけでも年末のあいさつになりますし、休業前に一度伺って直接お礼を述べれば、 箱を送るより記憶に残ることもあります。
取引先へのお歳暮に、どの会社でも通じる一つの正解があるわけではなく、 自社の規定と先方の規定、そしてこれまでの付き合いの積み重ねによって答えが変わります。 前年の記録をたどり、担当者に一言だけ確かめてから決めるのが、遠回りに見えていちばん早い道になります。
どの相手でも変わらないのは、贈る前に確かめることと、断られてもそれを引きずらないことの二つだけです。 この二つさえ守っていれば、宛名の並べ方や金額の端数を思い出せなくても、 取引先との関係がそれで損なわれることはありません。
よくある質問
取引先にお歳暮を贈る前に何を確認しますか?
自社と相手方の両方です。自社では交際費の扱いと上長の承認、相手方では受け取りが可能かを確認します。受け取りを禁止している会社があり、返送されると双方が気まずくなります。前年どうしたかを社内で確認するのが確実です。
官公庁や公務員には贈れますか?
贈れません。国家公務員倫理規程などで、利害関係のある相手からの贈答が制限されています。金融機関や上場企業も、受け取りを禁止していることが多くあります。
金額はいくらが目安ですか?
担当者個人宛なら5千円、部署宛なら5千〜1万円、会社宛や重要な取引先なら1万〜2万円です。取引額に応じて上げすぎないでください。高額な贈答は相手方の規定に触れる可能性が高くなります。
宛名はどう書きますか?
個人宛なら「〇〇株式会社 営業部 部長 〇〇 〇〇様」、組織宛なら「〇〇株式会社 営業部御中」です。「様」と「御中」は併用しません。会社名は「(株)」と略さず「株式会社」と書きます。
差出人はどう書きますか?
会社として贈るなら会社名と代表者名、担当者として贈るなら会社名・部署名・氏名を書きます。会社名だけでは誰からか分からないため、担当者名を入れておくと相手が記録しやすくなります。
断られたらどうしますか?
無理に渡さず、以後は贈りません。返送されてきた場合は受け取り、お詫びの連絡を入れます。断られたことを気にする必要はありません。担当者の判断ではなく会社の規定である場合がほとんどです。
まとめ
- 自社と相手方の両方の規定を確かめます
- 官公庁や公務員には贈りません
- 金額は5千円から1万円にとどめます
- 宛名には会社名と部署名と役職と氏名を書きます
- 「様」と「御中」は併用しません
- 差出人には担当者の名前まで入れます
- 年末の休業日を外して手配します
- 断られたら翌年以降は贈りません
参考情報
- 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - 矢野経済研究所「法人ギフト市場に関する調査を実施(2024年)」
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3543
本文で引いた矢野経済研究所の推計は、2023年10月から2024年4月にかけてギフト卸・メーカー・小売への取材と文献調査を重ねてまとめたもので、回答者数は公表されておらず、贈る側の気持ちを尋ねた意識調査でもありません。宛名で「様」と「御中」を併用しない点、金額の目安は、参照した情報源で共通しています。会社の規定や公務員への贈答制限については、必ずご自身でご確認ください。
本記事で紹介している金額や時期は一般的な目安です。地域やご家庭、業界の慣習によって異なる場合があります。お勤め先や取引先の規定で贈答が制限されていることがあります。事前にご確認ください。