結論
正面を向いたまま靴を脱いでそのまま上がり、 上がってから膝をついて向き直り、靴の向きを変えて端に寄せます。
背中を向けて脱いだり、後ろ向きに上がったりしない形になっているのは、 玄関で出迎えてくれた相手にお尻や背中を向けないためで、 作法として決まっているというより、向き合い方の問題だと考えると分かりやすくなります。
脱ぎ方の手順
玄関の引き戸が開いて「どうぞお上がりください」と言われた瞬間から、 どちらを向いて脱げばよかったのかが分からなくなります。 手には手土産の紙袋を提げていますし、 相手は三和土のすぐ先に立って待っていますので、考えている時間もありません。
迷いどころは靴の向きをいつ変えるかの一点で、 脱ぐ前に変えようとすると体ごと後ろを向くことになりますが、 上がってから変えるのであれば相手に正面を向けたまま済みます。
| 順 | 動作 |
|---|---|
| 1 | 正面(部屋の側)を向いたまま靴を脱ぎます |
| 2 | 向きを変えずに、そのまま上がります |
| 3 | 体を斜めにして膝をつき、靴に手を伸ばします |
| 4 | 靴の向きを外向き(ドア側)に変えます |
| 5 | 端(下座側)に寄せてそろえます |
3で完全に背中を向けてしまわないことが、この手順でいちばん効いてくるこつになります。体を斜めに構えて片手を床につき、そのまま靴へ手を伸ばすと、ちょうど正座に近い形になります。真横に構えるつもりでいると、相手からは横顔が見えたままになりますので、失礼な向きにはなりません。
よくあるのが、靴を最初から外向きに脱ごうとして、後ろ向きに上がってしまう形です。 本人としては先に揃えたつもりでも、 相手から見ると背中を向けたまま上がったことになりますので、 正面を向いたまま脱ぎ、上がってから直すほうが収まります。
手土産を提げている場合は、脱ぐ前に一度三和土の脇へ置いてしまいます。 片手がふさがったまま膝をつこうとすると体勢が崩れますし、 袋を持ったまま靴に手を伸ばせば、袋の底が濡れた三和土に触れることもありますので、 置いた袋のほうは、上がって靴を直し終えたところで持ち直せば十分に間に合います。
なぜこの脱ぎ方なのか
靴を脱ぐとき、つい体ごと回して後ろ向きになりがちですが、 そのとき正面にいるのは出迎えてくれた相手になります。 玄関は数秒しか使わない場所であるだけに、 その数秒でどちらを向いていたかが、意外なほど印象に残ります。
玄関は相手と向き合ったまま挨拶を交わす場所で、 迎える側はそこに立って待っていますから、 「どうぞ」と言われた直後に背を向けてしまうと、せっかくの挨拶が宙に浮きます。
| やり方 | 相手から見ると |
|---|---|
| 背中を向けて脱ぐ | お尻を向けたまま脱ぐことになります |
| 後ろ向きに上がる | 背中を向けたまま上がることになります |
| 正面を向いて脱ぐ | 向き合ったまま話を続けられます |
| 上がってから斜めに直す | 横顔が見えます。これが基本の形です |
この作法は、決まりごとというより相手との向き合い方の問題として考えるほうが分かりやすくなります。「お邪魔します」と述べたその声が相手に届く向きで立っていられるかどうか、と置き換えてみると迷いません。親しい相手なら、ここまで厳密でなくても構いませんが、義実家や目上の方のお宅では、玄関の数秒がよく見られています。
とくに義実家では、玄関での立ち居振る舞いが話題になりやすいところです。 台所や居間での様子は会話に紛れて流れていきますが、 玄関だけは全員の目が一点に集まる場面ですので、 靴の向きひとつが後々まで覚えられている、ということが起こります。
そもそも人の家に上がる機会そのものが、いまはそれほど多いものではなくなっています。 株式会社クロス・マーケティングが2025年12月12日から14日にかけて 全国20〜69歳の男女1,100人に行ったインターネット調査では、 年末年始に帰省する予定がある人は21.1%にとどまり、 年に一度あるかどうかという方が大半でした。
素足で訪問してもいいか見る置く位置
靴の向きを変えたあとで、今度はどこへ寄せるかで手が止まります。 玄関の広さも下駄箱の位置も家ごとに違いますし、 家族の靴がすでに並んでいることも多いので、 空いている場所を探しているうちに時間が過ぎてしまいます。
判断の軸になるのは誰かの動線をふさいでいないかということで、 玄関は家の人も出入りする通り道ですから、 揃え方の細部よりも、真ん中を空けておくことのほうが効いてきます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 向き | つま先を外(ドア側)へ向けます |
| 位置 | 玄関の端に寄せ、真ん中を空けておきます |
| 左右 | 下座側(下駄箱のない側)に置くのが基本です |
| 揃え方 | 左右をぴったり揃えて並べます |
| 複数人 | 一列に並べます。散らしません |
この表のなかで実際に効いてくるのは、下から二つめの揃え方ではなく、位置のほうです。後から来る人も家の方も、玄関の真ん中を通って出入りすることになるためです。端にきちんと寄せてありさえすれば、つま先の向きが少しずれていても、それが問題として意識されることはまずありません。
下駄箱については、「靴をしまいましょうか」と言われない限り開けません。 よかれと思って入れたとしても、それは相手の収納を勝手に開けたことになりますし、 家によっては入れる順番や定位置が決まっていることもあります。 玄関の端に左右を揃えて置いておきさえすれば、それで十分に整って見えます。
子ども連れで訪ねる場合は、子どもの靴も親のほうで揃えておきます。 小さな靴は脱いだ勢いのまま三和土の中央へ転がっていきやすく、 そのままにしておくと家の方が跨いで通ることになりますので、 自分の靴を直すついでに、まとめて端へ寄せてしまってください。
靴の種類別
その日どの靴を履いていくかで、玄関にとどまる時間はまるで変わります。 スニーカーなら数秒で済むところが、 編み上げの紐をほどく靴では一分近くかかりますし、 そのあいだ相手はずっと三和土の先に立って待っていることになります。
分かれ目は相手を立たせたままにする時間の長さで、 脱ぐのに手間取る靴ほど、その場が気まずくなりますから、 訪問の予定があると分かっている日は、靴のほうを先に選んでおくほうが楽になります。
| 種類 | 注意 |
|---|---|
| ロングブーツ | 脱ぐのに時間がかかります。訪問時は避けるほうが無難です |
| 編み上げ靴 | 同じく手間取ります。紐は先に緩めておきます |
| サンダル・素足 | 靴下を持参して、上がる前に履きます |
| 雨の日の靴 | 外で泥を落としてから玄関に入ります |
| においが気になる靴 | 脱いだ後も玄関に残ることを考えて選びます |
| 子どもの靴 | 親が向きを直して端に寄せます |
ブーツは玄関で手間取るうえに、脱いだ後も大きく場所を取ります。倒れて三和土をふさぐこともありますし、帰り際にもう一度履くところで待たせることにもなりますから、訪問の予定があるなら、脱ぎ履きしやすい靴を選んでおくほうが、当日はずっと楽です。
雨の日は、玄関の戸を開ける前に、外で靴底の泥を落としておくようにします。 付いたままの砂や落ち葉は上がったあとの三和土に残りますし、 濡れた靴をそのまま端に寄せると、跡が残ることがありますので、 建物の外でひととおり落としてから戸を開けてください。
素足で訪ねる季節には、かばんに靴下を一足入れておくと困りません。 サンダルのまま上がるのは、相手が畳の部屋に通そうとしている場合ほど気になります。 玄関で履いてしまえば数秒で済みますので、 夏場は替えの靴下を持ち歩くほうが確実です。
帰るとき
帰り際は、話がひと区切りついたところで一気に動きたくなります。 上着を羽織り、荷物をまとめ、そのまま靴に足を入れて外へ出る、 という流れになりがちですが、 玄関で最後にもう一度向き合う場面が残っていることを忘れがちです。
押さえておきたいのは履くのはあいさつが終わってからということで、 来たときに外向きへ直してあるのですから、 靴のほうは足を入れるだけで済み、慌てて背を向ける必要はありません。
| 場面 | すること |
|---|---|
| 玄関に下りる前 | その日のお礼を、まず座ったまま述べます |
| スリッパ | 脱いだら揃えて、端に寄せておきます |
| 靴を履く | 外向きに直してあるので、そのまま足を入れます |
| 履いたあと | 体ごと向き直り、改めてお礼を述べます |
| ドア | 音を立てないよう、静かに閉めます |
スリッパは向きまで気にする必要はなく、揃えて端に寄せてあれば十分です。そこで手を止めて向きを整えていると、かえって見送る側を待たせることになりますし、逆に、脱ぎ散らかしたまま出ていくと、閉まった戸の内側に残るのはその一枚の絵になってしまいます。
靴を履いたあとにもう一度向き直るのは、来たときと同じ理由です。 背中を向けたまま「失礼します」と述べて出ていくと、 相手は返す言葉をこちらの背中に向けることになりますので、 戸に手をかける前に、一度だけ体ごと相手のほうへ戻してください。
戸を閉めるときは、音を立てないように最後まで手を添えたままにしておきます。 勢いよく閉まる音は思いのほか室内に響きますし、 その音が、その日いちばん最後に残る印象になりますので、 建て付けが重い戸ほど、途中で手を離さずに閉め切ってください。
帰るタイミングを見る靴の脱ぎ方に唯一の正解があるわけではなく、 相手が義実家や目上の方なのか、気心の知れた友人なのかを見て、 その日の玄関でいちばん自然に見える形を選べばそれで足ります。 親しい相手であれば手順どおりに膝をつく必要はありませんし、 改まったお宅であれば、上がってから向き直って直すところまで通しておくと収まります。
どのお宅でも変わらないのは、相手に背を向けたまま上がらないことの一点だけで、 これさえ守っていれば、揃える位置や向きを思い出せなくても失礼にはなりません。 玄関にいるのはほんの数秒ですが、その数秒はよく覚えられています。
よくある質問
靴はどう脱ぐのが正しいですか?
正面を向いたまま靴を脱ぎ、そのまま上がります。上がってから体を斜めにして膝をつき、靴の向きを外向きに変えて端に寄せます。背中を向けて脱いだり、後ろ向きに上がったりしません。
なぜ正面を向いたまま脱ぐのですか?
相手にお尻や背中を向けないためです。背中を向けて脱ぐとお尻を向けることになり、後ろ向きに上がると背中を向けたままになります。上がってから斜めに構えて直せば、横顔が見える形になります。
靴はどこに置きますか?
つま先を外(ドア側)に向け、玄関の端に寄せます。真ん中を空けることがもっとも大切です。後から来る人や家の方が出入りします。端に寄せれば、細かい向きが多少ずれていても問題になりません。
下駄箱に入れてもよいですか?
「靴をしまいましょうか」と言われない限り入れません。相手の収納を開けることになりますし、入れる順番が決まっている家もあります。玄関の端に揃えて置けば十分です。
ブーツで訪問してもよいですか?
避けるほうが無難です。脱ぐのに時間がかかって相手を待たせるうえ、脱いだ後も大きく場所を取ります。訪問予定があるなら、脱ぎ履きしやすい靴を選ぶほうが楽です。
帰るときはどうしますか?
すでに外向きに揃えてあるのでそのまま履けます。履くのはあいさつが終わってからです。スリッパは脱いで揃え、端に寄せます。履いてから向き直り、改めてお礼を述べ、ドアは静かに閉めます。
まとめ
- 正面を向いたまま靴を脱ぎます
- 向きは変えずそのまま上がります
- 上がってから斜めに構えて直します
- つま先は外(ドア側)へ向けます
- 端に寄せて、真ん中を空けておきます
- 言われない限り下駄箱は開けません
- ブーツは避けておくほうが楽になります
- スリッパも揃えて端に寄せます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - 株式会社クロス・マーケティング「帰省土産に関する調査(2025年)」(2025年12月12日〜14日実施・インターネットリサーチ・全国20〜69歳男女1,100サンプル)
https://www.cross-m.co.jp/report/trend-eye/20251217kiseimiyage
クロス・マーケティングの調査は年末年始の帰省予定を尋ねたインターネット調査で、訪問先での靴の扱いを測ったものではありません。手土産の金額や渡し方に公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。