結論
改まった訪問では素足のまま上がるのを避けておくほうが収まりますが、 親しい友人の家へ寄るくらいであれば、そこまで気にする必要はありません。 分かれ目になるのは相手との間柄と、和室に通される見込みがあるかどうかの二つです。
夏場やサンダルで訪ねる日は、靴下をかばんに一足入れておいて玄関で履くのがいちばん確実で、 素足で畳やフローリングの上を歩かれることに抵抗を感じる方は実際にいますし、玄関先であればこちらの都合で先に整えられます。
素足でよい場面
八月の暑い日にサンダルで出かけて、そのまま訪問先の玄関に立ったときに、 靴を脱いだ足がそのまま相手の家の床に触れることに気づいて手が止まることがあります。 友人の部屋であれば何も考えずに上がっていたのに、相手が変わると急に判断がつかなくなります。
分かれ目になるのはその家に和室があるかどうかと、 相手が改まった間柄かどうかの二点で、畳に足を直に乗せる場面が出てくるかどうかによって、受け取られ方が変わります。 同じ夏の訪問でも、義理の両親の家と学生時代の友人の部屋とでは、身支度の整え方がまるで違ってきます。
| 訪問先 | 目安 |
|---|---|
| 義実家 | 靴下かストッキングを履いて上がります |
| 目上の方や恩師の家 | 同じく履いたうえで玄関を上がります |
| 初めて訪ねる家 | 履いておくほうが無難に収まります |
| 和室に通される | 畳に直に足が触れますので履きます |
| 法事・弔問 | 黒の無地を必ず履いて伺ってください |
| 親しい友人宅 | 素足のままで上がって構いません |
| 実家 | とくに気にしなくて差し支えありません |
どちらとも決めかねるときは履いておくほうを選んでおけば間違いがなく、履いていたせいで困る場面はまず起きませんが、素足のほうは気にする方に当たったときに取り返しがつきません。かばんに一足入れておけば玄関で靴を脱ぐ前に整えられますので、行き先ごとに引き出しの前で悩まずに済みます。
判断に迷いやすいのが、友人の家であってもその親御さんが同居している場合で、 通されるのが友人の部屋であっても、廊下や台所を素足で歩くことになりますし、居間に招かれれば座卓の前に座ります。 この場合は友人宅としてではなく、初めて訪ねる家として身支度を整えておくほうが無難です。
逆に実家や、月に何度も行き来している友人の家であれば、夏場に素足で上がっても誰も気に留めません。 そういう家では玄関にスリッパも出ていませんし、そのまま居間に入って冷たい床に座るのがふだんの形になっています。 気にするべき相手かどうかは、これまでの行き来の回数を思い出せば見当がつきます。
なぜ避けるのか
履いたほうがよいと言われても、その理由まで説明されることは少なく、 夏の暑い日に汗をかいた足へわざわざ靴下を通す意味が分からないまま従うことになりますし、 もとになっている考え方が分からなければ、どの訪問先までを守ればよいのかという線も引けません。
挙げられている理由は相手の家の側の事情とこちらの見え方の二つに分かれ、 床や畳が汚れるという話と、改まった場では略式に見えるという話は、まったく別のところから来ています。 どちらを気にしている相手なのかによって、必要になるものも変わります。
| 理由 | 説明 |
|---|---|
| 畳や床に直に触れる | 気にする方がいます。とくに和室で目立ちます |
| 足跡が残る | フローリングでは実際に跡が残ります |
| 改まった場では略式に見える | 和装では足袋を履くためと説明されます |
| 正座したときに目に入る | 足の裏が相手の側から見えてしまいます |
これは絶対の禁止ではなく、気にする方がいるという程度の話です。ただし気にする相手に当たってしまったとき、上がったあとからこちらで直せる手段がありません。玄関で靴を脱いだ時点で決まってしまいますので、初めから履いておくほうが確実に収まります。
見落とされがちなのが、訪問先に来客用のスリッパが出てこないという場面で、 玄関で靴を脱いだあと、そのまま廊下を歩いて居間まで通されることが実際には少なくありません。 アットホーム株式会社が2014年4月に全国の20歳から59歳の男女500名へ行ったインターネット調査では、 来客にスリッパを出すと答えた人は45.8%と半数を割っていました。
同じ調査で、訪ねた先でスリッパが出されないと嫌だと答えた人は12.2%にとどまり、出されても履きたくないことが多いと答えた人は19.2%でした。 回答数が五百名と少なく調査の年も古いうえ、本人の申告による意識調査ではありますが、 スリッパが出てくる前提で身支度を決めるのは危ういということは読み取れます。
持参と履き替え
夏の訪問でいちばん現実的な悩みは、サンダルやパンプスで出かけた日に、靴下をどこで履くのかというところです。 訪問先の門の前で片足立ちになるわけにもいきませんし、玄関に上がってから履いたのでは順番が逆になります。 駅から歩いてきた足に、汗をかいたまま履いてよいものかも気にかかります。
判断が分かれるのはどこで履き替えるかという一点で、 玄関で断ってから履くのか、訪問先へ着く手前で済ませておくのかによって、相手に見せる場面が変わります。 どちらを選ぶにしても、上がり框に足を乗せる前に履き終えているという点だけは共通しています。
| 場面 | 対応 |
|---|---|
| サンダルで行く | 靴下を持参して、玄関で履き替えます |
| パンプスに素足 | フットカバーでも足りるとされています |
| 改まった訪問 | ストッキングを履いたうえで伺います |
| 履き替えを見られたくない | 手前の道や車の中で履いておきます |
| 汗が気になる | 替えをもう一足かばんへ入れておきます |
フットカバーは、履いていても素足に見えるものが多くあります。甲の部分が浅く作られていて、正座をすると縁が隠れてしまいますので、履いているかどうかが相手からは分かりません。改まった訪問であれば、ふつうの靴下かストッキングのほうが確実に伝わります。
玄関で履き替えるときは、失礼しますと一言断ってから、上がり框に腰かけずに立ったまま履いてください。 黙って足元をごそごそやっていると、迎えに出た相手はどう待てばよいのか分からないまま廊下に立って様子をうかがうことになりますが、 一言添えておくだけで、その間にお茶の支度へ戻ってもらえます。
履き替えるところを見られたくないのであれば、訪問先の手前で済ませてしまうほうが早く、 車で行くならシートに座ったまま、電車なら最寄り駅の化粧室で履いておけば、玄関ではそのまま靴を脱ぐだけで済みます。 夏場に汗が気になるようであれば、替えをもう一足入れておいて、駅で履き替えてから向かってください。
色と柄
靴下を履いていくと決めたあとで、こんどは引き出しの前で色を選ぶ段になります。 玄関で靴を脱いだ瞬間に足元だけが目に入りますので、ふだんは気にしていない柄物や差し色が急に気になり始めます。 アニメの絵が入った一足しか洗い上がっていない朝には、なおさら手が止まります。
色や柄が意味を持つのは決まった形が求められる場面だけで、 ふだんの訪問と、弔事や茶席のような場とでは、そもそも見られ方が違います。 どこまで整えるかは、行き先の性質によって決めることになります。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| ふつうの訪問 | 色にも柄にも決まりはありません |
| 改まった訪問 | 紺や黒、ベージュの無地を選びます |
| 法事・弔問 | 黒の無地にして、柄物は避けます |
| 和室・茶席 | 白い靴下を履くのが基本とされています |
| 子ども | 柄物のままで差し支えありません |
ふだんの訪問に色の決まりはありませんので、そこで悩む必要はありません。気をつけるのは弔事と、茶席のような改まった和室の場面の二つだけです。この二つに当たる予定がある月は、黒の無地と白の一足をあらかじめ用意しておくと迷いません。
弔事で気をつけたいのは、黒に見えていても光沢のある生地や織り柄が入っているものがあることで、 玄関で脱いだときに照明が当たると、思いのほか目立ちます。 同じ黒でも、無地の綿のものを一足決めておいて、法事のときはそれだけを履くようにしておくと確かです。
茶席や、改まった席で和室に通される見込みがあるときは、白い靴下を用意しておいてください。 畳に上がる場面では白が基本とされていますし、足袋の代わりという成り立ちからも外れません。 子どもについては柄物のままで差し支えなく、そこまで整えることを求められる場面はまずありません。
穴・伝線の確認
靴を脱ぐ場面では、ふだんは誰にも見えていない靴下がそのまま人目に触れます。 玄関で靴を脱ぎ、揃えて向きを変えて立ち上がったところで、親指の先が白く覗いていることに気づくということが起こります。 その瞬間から、居間に通されても足の位置ばかりが気になります。
困るのは気づく場所が家の外だというところで、 玄関で見つけたところでもう履き替えようがなく、そのまま上がるしか道が残っていません。 防ぐ手立ては出かける前の数十秒しかありませんので、確かめる場所を決めておくことになります。
| 確かめる場所 | 説明 |
|---|---|
| 親指とかかと | 穴が開きやすいので、先に確かめます |
| ストッキングの伝線 | 予備を一足かばんに入れておきます |
| 左右の色 | 履く前に、色が違っていないか見ます |
| 毛玉とゴムの伸び | 座った姿勢では、思いのほか目に入ります |
| 子どもの靴下 | 出かける前に、親のほうで確かめます |
穴やほつれは履いているときにはまず気づきませんし、足の裏側や親指の先は自分では見えない位置にありますので、洗濯物をたたんでいるときにも見落としたまま引き出しへ戻すことになります。訪問の予定がある日は、履く前に一度裏返して光にかざす習慣にしておくと確実です。
それでも玄関で気づいてしまったときは、そのまま何も言わずに上がってください。 足を引いて隠そうとすると動きのほうが目につきますし、片足だけ折りたたんで座れば、かえってそこへ視線が向きます。 正座をして座ってしまえば足の裏は畳のほうを向きますので、立ち上がるまでは誰の目にも触れません。
相手に指摘されたときも、気づきませんでしたと短く応じて、そのまま話を先へ進めてください。 長く恐縮していると、指摘した側のほうが言わなければよかったという顔になり、その気まずさが残りの時間まで続いてしまいますので、 その場で軽く笑って受け流してしまうほうが、相手も安心して次の話へ移れます。
靴の脱ぎ方・揃え方を見る素足で上がってよいかどうかに一つだけの正解があるわけではなく、 月に何度も行き来している友人の部屋と、初めて通される義理の実家の和室とでは、同じ夏の訪問でも整え方が変わります。 相手との行き来の回数と、畳に足を乗せる場面があるかどうかを重ねて考えれば、その日の身支度は決まります。
どの訪問先でも変わらないのは、かばんに一足入れておけば迷いが消えるという一点だけです。 玄関で靴を脱ぐ前に履いてしまえば、相手がどちらを気にする方であっても行き違いは起きませんし、 色や柄の決まりを思い出せなくても、無地の一足があれば困る場面はまずありません。
よくある質問
素足で訪問するのは失礼ですか?
義実家、目上の方、初めて訪ねる家、和室、法事では靴下を履きます。親しい友人宅や実家なら素足でも構いません。迷ったら履いてください。履いていて困ることはありません。
なぜ素足を避けるのですか?
畳や床に直接触れることを気にする方がいるためです。フローリングでは足跡も残ります。ただし絶対的な禁止ではなく、気にする方がいるという程度の話です。
サンダルで行くときはどうしますか?
靴下を持参し、玄関で履き替えてください。「失礼します」と断って、上がる前に履きます。上がってから履くと、素足で床に触れたことになります。
フットカバーでもよいですか?
ふつうの訪問なら十分とされます。ただし見えにくいものが多く素足に見えることがあるため、改まった訪問ではふつうの靴下かストッキングのほうが確実です。
靴下の色に決まりはありますか?
ふだんの訪問に決まりはありません。改まった訪問なら無地の紺・黒・ベージュなど、法事や弔問なら黒で柄物は避けます。茶席のような改まった和室では白が基本とされます。
靴下に穴が開いていたら?
玄関で気づいてもそのまま上がるしかありません。触れずにおくのが自然です。指摘されたら「気づきませんでした」と短く応じてください。長く恐縮すると相手が言いにくくなります。
まとめ
- 改まった訪問では靴下を履いて上がります
- 義実家・目上・和室・法事では必ず履きます
- 親しい友人宅なら素足でも構いません
- 迷ったときは履くほうを選びます
- サンダルの日は持参して玄関で履き替えます
- 上がり框に足を乗せる前に履き終えます
- 弔事では黒の無地にします
- 出かける前に穴と伝線を確かめます
参考情報
- 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx - アットホーム株式会社 at home VOX「来客用スリッパはいらない!? 変わりゆく文化とその役割」
https://www.athome.co.jp/vox/life/7654/
本文で引用したアットホームの調査は、全国20〜59歳の男女500名に2014年4月に行われたインターネット調査で、回答数が少なく調査年も古いうえ、実際の行動ではなく本人の申告による意識調査です。訪問先での作法そのものに公的な基準はありません。本記事は広く共通して挙げられる目安をまとめたものです。地域・ご家庭・間柄によって実際には大きく異なります。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。手土産に決まりはなく、地域・ご家庭・間柄によって異なります。とくに親しい相手との間では、形式より相手の負担にならないことを優先してください。