結論
年賀状で気をつけたい言葉のうち、実際に書いてしまいやすいのは「去年」で、 「去る」の字が別れを連想させるために避けられていますので、 書き出しは「昨年」か「旧年」に置き換えてください。
言葉づかいのほかで間違えやすいのは賀詞の重複と「A Happy New Year」の二つで、 印刷済みのはがきへ手書きの賀詞を足したときと、洋風の図柄を選んだときにそれぞれ起こります。 どちらも意味が通じなくなるわけではありませんので、気づいた時点で直しておけば足ります。
忌み言葉
年賀状に一言を書き添えようとして、「去年は大変お世話になりました」と書きかけたところで手が止まるのは、 この書き出しが忌み言葉にあたると聞いた覚えがあるためです。 印刷済みのはがきへ万年筆で一行足すだけの作業なのに、その一行のために言い換えを探すことになります。
避けたほうがよいとされる言葉は、意味そのものが悪いというより字の響きから連想されるものが集められていますので、 一覧を見ないうちはどれが該当するのか見当がつきません。 分かれ目は語の善し悪しではなく、その字が別れや終わりを思わせるかどうかという一点にあります。
| 避ける言葉 | 理由 | 言い換え |
|---|---|---|
| 去年 | 「去る」の字が別れを連想させます | 「昨年」か「旧年」に置き換えます |
| 終わる・切れる | 縁が切れる場面を思い起こさせます | 「結ぶ」「締めくくる」と書き換えます |
| 失う・滅びる | 失うという響きが年始にそぐいません | 言い換えずに文ごと省くほうが早いです |
| 衰える・枯れる | 勢いが尽きる印象を与えてしまいます | 別の話題へ差し替えるほうが収まります |
| 病・苦・死 | 新年の挨拶には重すぎる語になります | 近況の報告なら別の便りへ回します |
| 倒れる・崩れる | 物事が立ち行かない様子を思わせます | 順調さが伝わる言い方に改めます |
この一覧のうち、年始の挨拶文へ実際に紛れ込んでくるのはほとんど「去年」だけです。ほかの語はそもそも新年の便りに書く機会がありませんので、覚えようとしなくても自然と外れていきますが、「去年」は日常語ですから、投函する前に一度だけ読み返してください。
実際に指摘を受けるのは、目上の方へ送った一枚に「去年はお世話になりました」と書いてしまった場合で、 年賀状のやり取りを長く続けてきた年配の方ほど、この言い換えを当たり前のものとして身につけています。 こちらに他意がなくても、受け取った側が一度立ち止まることになります。
とはいえ忌み言葉を避けるのは言葉の響きから生まれた習わしであって、 守らなかったからといって礼を欠く行為になるわけではありませんので、 投函したあとで気づいたとしても出し直すには及びません。 それでも「去年」だけは広く知られていますから、下書きの段階で「昨年」に直しておくほうが気楽です。
賀詞の重複
「謹賀新年」と大きく刷られた年賀はがきを買ってきて、余白へ手書きで一言添えようとしたときに、 あけましておめでとうございますと書き始めてよいものかどうかで迷います。 印刷された四文字と手書きの挨拶が並ぶ形を、そのまま出してよいのかがはっきりしません。
賀詞と呼ばれる新年の挨拶は、それ自体に年が明けたことを祝う意味が込められていますので、 二つ並べると同じ挨拶を続けて二度述べた形になります。 判断の軸は言葉の丁寧さではなく、祝う意味を持つ語がその一枚に何度出てくるかという数え方にあります。
| 誤り | 理由 |
|---|---|
| 謹賀新年 あけましておめでとうございます | 賀詞が二つ並びますので、どちらか一方に絞ります |
| 新年あけましておめでとうございます | 「明ける」のほうに新年の意味が含まれています |
| 迎春 謹んで新年のお慶びを申し上げます | これも賀詞が二つ重なった形になっています |
| 一月元旦 | 「元旦」がすでに一月一日を指しています |
| 元旦の朝 | 「旦」の字が朝そのものを意味しています |
ここに挙げた形のうち、実際にもっとも多く出回っているのは「新年あけましておめでとうございます」です。重複ではありますが気にする方は多くありませんので、取引先や恩師へ宛てた改まった一枚でなければ、そのまま使っても問題は起きにくいでしょう。
重複がいちばん起きやすいのは、印刷を頼んだはがきが届いてから余白へ一言を足す場面で、 「謹賀新年」と刷られているところへ「あけましておめでとう」と書き足しますと、一枚のなかに賀詞が二つ並びます。 宛名を書きながら流れで手が動いてしまうため、あとから見返して気づくことになります。
防ぐには、宛名を書き始める前に印刷面へ目を通して、どの賀詞がすでに入っているのかを確かめておくだけで足ります。 賀詞が刷り込まれているのであれば、添える一言は近況や「本年もよろしくお願いいたします」にしておけば重なりませんし、 余白の使い方としても収まりがよくなります。
英語の表記
洋風の図柄を選ぶと、干支の絵の下に「A Happy New Year」と横文字が入ったものが並んでいて、 この表記が誤りだと聞いた覚えがあるだけに、注文の画面で手が止まります。 印刷まで済ませてしまったあとで思い出すことも珍しくありません。
英語の挨拶として単独で置くのか、それとも文章のなかへ組み込んで使うのかで冠詞を付けるかどうかが分かれますので、 同じ語句でも置かれる場所によって正誤が入れ替わります。 はがきの表面へ短く一行だけ置く使い方であれば、判断はその一点で決まります。
| 表記 | 判定 |
|---|---|
| A Happy New Year | 年賀状の挨拶としては向いていません |
| Happy New Year | 単独の挨拶にはこちらが適しています |
| I wish you a happy new year | 文中で使う形なので「a」が入ります |
| 印刷済みのデザイン | 「A」が残っていても意味は通じます |
「A」が余計に見えるのは、英語では挨拶をそれだけで置くときに冠詞を添えない習わしがあるためです。「I wish you a happy new year(よい年でありますように)」のように文の一部として使うときには「a」が要りますので、同じ語句でも置き場所によって扱いが変わります。
日本では長いあいだ「A Happy New Year」の表記が使われてきましたので、 市販の年賀はがきや印刷サービスの見本にも、この形がそのまま残っている図柄がいくつもあります。 間違いとされる表記ではありますが、受け取った側に意味が通じないわけではありません。
すでに刷り上がったはがきに「A」が入っていたとしても、それだけのために刷り直すほどのことではありませんので、 そのまま出してかまいません。 これから図柄を選ぶ段階であれば、「Happy New Year」と入ったものを選んでおくと、指摘を受ける余地がなくなります。
句読点
本年もよろしくお願いいたしますと書き終えて、最後に「。」を打つかどうかで筆が止まります。 年賀状には句読点を使わないと聞いた覚えがある一方で、打たずに置いた一行がどこか収まらなく見えるためです。
打つかどうかは、縁起をどこまで重く見るかと、読み手にとっての読みやすさをどちらまで優先するかで分かれますので、 一律の正解を先に決めることができません。 宛先が誰なのかによって、同じ一枚でも自然に見える形が変わってきます。
| 項目 | 扱い |
|---|---|
| 句読点の通例 | 年賀状では「、」「。」を打たないとされています |
| 縁起の考え方 | 区切りや終止符を避ける意味だと言われます |
| 毛筆の名残 | 毛筆の文書に句読点を使わなかった名残という説もあります |
| 代わりの区切り | 改行や一字分の空白で文の切れ目を示します |
| 規則かどうか | 絶対の規則ではなく、使う方も増えています |
| 読みにくいとき | 読みづらくなるようでしたら使ってかまいません |
| 改まった相手 | 年配の方へ送る一枚では使わないほうが無難です |
句読点を打つかどうかで受け取り方が変わるのは、宛先がごく限られた相手のときだけです。友人へ送る一枚なら読みやすさを優先してかまいませんし、恩師や取引先へ宛てた一枚であれば、改行と空白で区切っておくほうが体裁として落ち着きます。
実際に困るのは、近況を三行も四行も書き添えたいときで、句読点をまったく打たないまま続けますと、 どこで文が切れているのかが読み取りにくくなります。 子どもの進学や引っ越しの報告のように、地名や学校名が並ぶ内容ではとくに詰まって見えます。
その場合は行を変えて一文ずつ置くか、文の切れ目へ一字分の空白を入れておけば、句読点がなくても読む側は迷いません。 それでも読みづらいようでしたら打ってしまってかまいませんし、 親しい相手へ送る一枚であれば、そこを気にされることもまずありません。
その他の注意
忌み言葉や賀詞のほかにも年賀状には避けておきたい扱いがいくつかあり、 書く内容だけでなく手に持つ筆記具そのものが関わってきます。 机の引き出しから出した筆ペンを、確かめずにそのまま使ってよいのかという話です。
分かれ目は、その扱いが弔事の作法と重なっていないかという点と、 新年の挨拶として受け取れる内容かどうかという点の二つで、 どちらもこちらの都合ではなく相手の側から見てどう映るかで決まります。
| 避けること | 理由 |
|---|---|
| 喪中の相手への年賀状 | 年賀状ではなく寒中見舞いへ切り替えます |
| こちらの不幸を書く | 新年の挨拶に載せる内容ではありません |
| 病気・入院の報告 | 同じく別の機会に改めてお伝えします |
| 愚痴・不満 | 新年の挨拶にはそぐわない話題になります |
| 自宅宛に役職 | 役職を添えるのは会社宛の書き方です |
| 薄い色の筆記具 | 薄墨は弔事に使うものなので避けます |
この六つのなかで、うっかりやってしまいやすいのは墨の濃さです。薄墨は弔事のために使い分けられている色ですので、年賀状は濃い黒か慶事らしい色で書いてください。手元の筆ペンに薄墨用のものが混ざっていないか、書き始める前に試し書きで確かめておくと確実です。
意外に多いのが、会社で世話になっている方の自宅へ送る一枚に部長や課長といった役職まで書き添えてしまう例で、 役職を入れるのは会社宛に出すときの書き方ですから、自宅の住所と並ぶと不釣り合いに見えます。 宛名の印刷ソフトに登録した肩書が、そのまま出てくることもあります。
相手が喪中だと分かっている場合には、年賀状ではなく松の内が明けてからの寒中見舞いへ切り替えれば、 こちらの気持ちは同じように伝わります。 こちらの側に不幸があったときも、その報告を年賀状へ書き込むのではなく別の便りに分けておくほうが、 受け取る側も返事の書き方に困りません。
年賀状の基本に戻る年賀状の言葉づかいに、ここを外したら失礼にあたるという厳密な線が引かれているわけではなく、 多くは言葉の響きから生まれた習わしですので、一つ残らず覚えてから机に向かう必要はありません。 忌み言葉の一覧も賀詞の重ね方も、投函する前に一度読み返す時間さえ取れば、たいていはその場で気づけます。
どの相手へ出すときも変わらないのは、「去年」を「昨年」に直すことと賀詞を二つ重ねないことの二つだけで、 この二点さえ守れていれば細かい決まりを思い出せなくても不作法にはなりません。 薄墨の筆ペンだけは弔事のものですから、書き始める前に手元を確かめておいてください。
よくある質問
年賀状で避けるべき言葉は?
「去年」がもっとも間違えやすい忌み言葉で、「去る」の字が別れを連想させるため「昨年」「旧年」に言い換えます。ほかに「終わる」「切れる」「失う」「衰える」なども避けられますが、これらは年始の挨拶文にそもそも出てこない語です。
忌み言葉を使うと失礼ですか?
言葉の響きから生まれた習わしですので、使ったからといって礼を欠く行為になるわけではありません。ただし「去年」だけは広く知られているため避けておくほうが無難で、年賀状のやり取りを長く続けてきた年配の方には気づかれることがあります。
「謹賀新年 あけましておめでとうございます」は誤りですか?
賀詞が二つ並ぶ重複になりますので、どちらか一方に絞ってください。とくに「謹賀新年」と印刷された年賀状へ手書きで「あけましておめでとう」と足すと重なりますから、宛名を書き始める前に印刷されている賀詞を確かめておくと防げます。
「新年あけましておめでとう」は間違いですか?
「明ける」のほうに新年の意味が含まれるため重複にあたりますが、広く使われている形で気にする方は多くありません。取引先や恩師へ宛てた改まった一枚でなければ、そのまま使っても問題は起きにくいでしょう。
「A Happy New Year」はなぜ誤りなのですか?
「A」が付くのは「I wish you a happy new year」のように文章の一部として使う場合で、挨拶として単独で置くときには冠詞を添えません。すでに刷り上がったはがきであれば、そのまま出してもかまいません。
句読点は使ってはいけませんか?
使わないのが通例とされ、区切りや終止符を避けるという縁起の考え方や、毛筆の文書に句読点を使わなかった名残という説があります。ただし絶対の規則ではありませんので、近況を長く書き添えて読みづらくなるようでしたら使ってかまいません。
年賀状に薄墨を使ってもよいですか?
薄墨は弔事のために使い分けられている色ですので、年賀状には向きません。濃い黒か慶事らしい色で書いてください。手元の筆ペンに薄墨用のものが混ざっていることがありますから、書き始める前に試し書きで確かめておくと確実です。
自宅へ送る年賀状に役職を書いてもよいですか?
役職を添えるのは会社宛に出すときの書き方ですので、自宅の住所と並ぶと不釣り合いに見えます。宛名の印刷ソフトに登録した肩書がそのまま出てくることがありますから、自宅宛の分だけ肩書を外して確認してください。
まとめ
- 「去年」は避けて「昨年」か「旧年」に置き換えます
- 「終わる」「切れる」「失う」も年賀状では避けます
- 忌み言葉は慣習であって規則ではありません
- 賀詞は一枚のなかに二つ重ねません
- 「一月元旦」は重複した書き方になります
- 「A Happy New Year」の「A」は付けません
- 句読点は打たないのが通例とされています
- 薄墨は弔事のものですので年賀状には使いません
参考情報
- 日本郵便「年賀状(年賀はがき)」
https://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/nenga/ - 郵便局のネットショップ「贈り物のマナー」
https://www.shop.post.japanpost.jp/shop/pages/gift_contents_107.aspx
年賀状の受付開始日・元日配達の投函期限は年によって変わります。その年の日本郵便の案内をご確認ください。本記事の日付は例年の目安です。喪中の範囲や賀詞の使い分けには考え方に幅があるため、断定を避けて記載しています。
本記事で紹介している時期や作法は一般的な目安です。年賀状の受付開始日や元日配達の締切は年ごとに変わります。その年の日本郵便の案内をご確認ください。喪中の範囲や過ごし方は、地域・ご家庭・宗派によって考え方が異なります。