結論

お中元で避けるとされているのは、目上の方への現金・商品券のほか、 時計・筆記具、履物・下着、刃物、 ハンカチといったあたりで、 いずれも相手を値踏みしているように読めることが理由に挙げられています。

ただしその多くは語呂合わせや慣習から来たもので、気にしない考え方も広がっていますので、 品物を絞り込むときに効いてくるのは相手が実際に困るかどうかのほうです。 冷蔵庫に入りきらない大箱や、飲まない方へのお酒のように、 受け取った先で持て余されるものを外していくほうが確実に届きます。

避けるとされるものと理由

品物避けるとされる理由
現金・商品券(目上へ) 金額が分かり、施しに見えるとされる慣習です
時計・筆記具・カバン 勤勉に励めという意味があるとされる慣習です
履物・靴下・下着 踏みつける、施すと読まれてきた慣習です
刃物 縁を切ると読める、語呂からくるものです
ハンカチ 手巾が手切れと読める、語呂からくるものです
櫛(くし) 苦と死に読めるという、語呂からくるものです
要冷蔵の大容量 相手の冷蔵庫を占領してしまう実務の問題です
好みが強く出るもの 好みが外れると使われずに残ってしまいます

慣習や語呂を気にしない方が増えている一方で、目の前の相手が気にするかどうかまでは分かりません。ほかにいくらでも選びようのある贈り物ですので、わざわざ引っかかりの残る品を選ぶ理由はありませんし、避けておいて損をすることもありません。

目上の方へ避けるもの

勤め先の上役や仲人を頼んだ方へ贈るときに、いちばん先に浮かぶのは商品券という手ではないでしょうか。 好みを外す心配がなく、金額もこちらで加減できて、かさばりもしませんので、 売り場の棚を回るより先にその案が固まってしまいます。 それでも封筒に入れる段になって、これでよかったのかという気持ちが少し残ります。

引っかかりのもとになっているのは贈った品が相手をどう扱っているように見えるかという点で、 品物そのものの良し悪しとは別のところに理由があります。 同じものでも、こちらから目上へ差し上げるときにだけ意味が反転して見えるものがあり、 昔から避けられてきた品はたいていそこに当たっています。

品物避けるとされる理由
現金目上の方へ現金を渡す形は失礼にあたるとされます
商品券・ギフトカード包んだ金額が、そのまま相手に分かってしまいます
時計・筆記具もっと勤勉にという意味があるとされてきました
カバン通勤に励めという同じ読みが当てられています
履物・靴下・マット相手を踏みつけるという意味に読まれてきました
下着・肌着みすぼらしいものを施すとされる品にあたります

この六つを外しておけば、目上の方への贈り物でつまずくことはまずありません。並べてみると、どれも相手の働きぶりや暮らし向きをこちらが値踏みしている形に読めるという一点で共通していて、贈った側にその気がまったく無くても、受け取る側でそう置き換えられてしまいます。

迷いやすいのがカタログギフトの扱いで、これは商品券ほど角が立たないとされています。 冊子の体裁になっていて金額の欄がどこにも出てきませんので、 いくら包んだかがそのまま伝わることがなく、受け取った側も好きなものを選べます。 同じ「相手に選ばせる」形でも、券と冊子とでは見え方がかなり違います。

とはいえ、選ぶ手間をかけさせること自体を気にする考え方もありますので、 目上の方へは素直に品物を選んでおくほうが無難ではあります。 カタログギフトが失礼だと言われることはありませんから、 好みがまるで分からない相手であれば、こちらを選んでも差し支えありません。

語呂合わせで避けるもの

よく切れる包丁や、名の通った店のハンカチは、それだけを見れば贈り物として申し分ありません。 それでも贈答の売り場でこれらを手に取ると、どこかで聞いた話が頭の隅に浮かんできます。 刃物は縁を切る、ハンカチは手切れになるという、あの言い伝えです。 品物に落ち度があるわけではないだけに、なおさら判断に困ります。

ここで分かれるのは言葉の読み替えをどこまで受け取るかという一点で、 同じ品物について避けるべきという説明と、気にしなくてよいという説明が並んで存在しています。 どちらが正しいかを決められる基準はありませんので、 判断の材料になるのは、贈る相手がその読み替えを知っている世代かどうかのほうです。

品物当てられている読み
刃物(包丁・はさみ)縁を切るという読みが当てられてきました
ハンカチ手巾と書いて手切れと読む語呂からきています
櫛(くし)苦と死の音に重なるとして避けられてきました
白いハンカチ葬儀の場を思い出させるとする説明があります
日本茶香典返しに使われるため、弔事を思う方がいます
4個・9個の詰め合わせ死と苦の音に重なるとして避けられています

日本茶については、贈答の場で考え方がはっきり分かれています。香典返しの定番であるために弔事を思い出すという説明がある一方で、おいしいお茶を贈って何が悪いのかという受け取り方もあり、どちらの側の話も同じくらい耳にします。迷いを残したくないのであれば、コーヒーや紅茶にしておくほうが確実です。

これらの読み替えは、贈る相手の年代や住んでいる土地によって通じ方がまるで違います。 同じ包丁を受け取っても、切れ味のよさを喜ぶ方もいれば、 箱を開けた瞬間に縁を切るという言葉が浮かぶ方もいて、 その差はこちらから見ただけでは分かりません。

相手の反応が読めないのであれば、そこは無理に踏み込まないほうが気楽です。 贈り物の選択肢はいくらでもありますので、引っかかりの残る品をあえて選ばなくても困りませんし、 毎年続けていく相手であればなおのこと、余計な話の種を作らずに済ませるほうが後が楽になります。 どうしても贈りたい品があるときだけ、相手を見て決めてください。

相手が困るもの

7月の半ば、贈答品が続けて届いた家の台所を思い浮かべてみてください。 冷蔵庫の扉を開けると、要冷蔵のハムの大箱が棚を一段占領していて、 その隣には別の方から届いたゼリーの詰め合わせが横向きに押し込まれています。 買ってきた食材を置く場所がなくなり、扉を閉めながらため息が出ます。

語呂合わせよりも先に見ておきたいのは受け取った側の手間がどれだけ増えるかという点です。 箱を置く場所、食べきるまでの日数、いらなかったときの処分まで含めると、 贈り物は届いた瞬間に相手の暮らしの中へ入り込んでいきますので、 その負担は語呂の読み替えよりもはるかに現実的にのしかかります。

品物どう困るか
要冷蔵・要冷凍の大箱冷蔵庫が空いておらず、置き場所に困らせます
賞味期限の短いもの留守にしていると、食べきる前に期限が来ます
大容量の詰め合わせ二人暮らしや単身の家では食べきれません
瓶や缶の入った重い箱高齢の方には、玄関から運ぶだけで負担です
かさばるもの棚に入らず、置き場所を探させることになります
好みが強く出るもの好みが外れると、使われないまま残ってしまいます
飲まない方へのお酒飲めない相手には、処分の手間だけが残ります

丁寧にしようという気持ちが強いほど、選ぶ品はひとりでに大きく重くなっていきます。値段を上げれば内容量が増え、内容量が増えれば箱も重くなりますので、こちらの気持ちがそのまま相手の置き場所と処分の手間へ姿を変えてしまいます。小ぶりな品でも、伝わるものはきちんと伝わります。

受け取る側が何に困るのかは、贈答の場を広く見た調査からもうかがえます。 三井住友カードが2018年1月30日から2月10日にかけて、 お祝いや記念日に贈り物をしたことがある全国18歳から99歳の男女3,175名へインターネットで尋ねた調査では、 もらって困るものとして「洋服・靴」が19.4パーセントで最も多く挙がっていました。

これはお中元にしぼった調査ではなく贈り物全般について尋ねた意識調査ですが、 続く「花」15.3パーセント、「コスメ・美容グッズ」13.9パーセント、「お酒」13.4パーセントまで並べてみると、 困るものの上位が語呂合わせではなく、好みとサイズと飲めるかどうかに集まっていることが読み取れます。 避ける品を絞り込むときは、こちら側の見方を先に置いてよいということでもあります。

中身で注意するもの

品目そのものは何の問題もない詰め合わせでも、相手の事情ひとつで手をつけられなくなることがあります。 医者から塩分を止められている方の家へ届いたハムの詰め合わせや、 小さな子どもがいる家へ届いた洋酒入りの菓子箱が、そのまま棚の奥へ移されていきます。 贈ったこちらには、その後どうなったかがまったく見えません。

ここで効いてくるのは相手の暮らしをどこまで知っているかという点で、 知っている相手ほど選べる幅が広がり、知らない相手ほど狭くなります。 食事の制限も信仰も、こちらから改まって尋ねにくいことばかりですので、 分からないままでも外さない品を選ぶ道を用意しておく必要があります。

相手の状況避けておくもの
食事の制限がある塩分や糖分の多い加工食品は外しておきます
アレルギーが分からないナッツ・小麦・乳製品が主体のものは避けます
宗教上の制限がある肉類や酒類は選ばずに、別のものにします
小さな子どもがいるアルコールの入った菓子は外しておきます
喪中にあたる家四十九日以内は贈らず、時期を後ろへずらします

相手の事情がどうしても分からないときは、口に入るものから離れてしまえば確実です。洗剤やタオル、カタログギフトであれば、食事の制限も信仰も関わってきませんので、遠回しに事情を尋ねて相手に気を遣わせるところから始めずに済みます。

毎年贈っている相手であっても、暮らしの中身は年ごとに変わっていきます。 去年まで喜んで受け取っていた方が、この一年で通院を始めていたり、 子どもが独立して二人暮らしになっていたりすることは珍しくありません。 同じ品を続けている場合ほど、その変化に気づかないまま送り続けることになります。

配偶者や共通の知人から近ごろの様子が聞ける相手であれば、手配の前に一度尋ねておいてください。 直に本人へ食べられないものを聞き出そうとすると、こちらが気を回していることが伝わって、 相手が遠慮のほうへ回ってしまいますので、間に立てる人がいるならそちらのほうが早く済みます。 聞ける相手がいないときは、はじめから食べ物以外に寄せておけば迷いが残りません。

気にしすぎなくてよいこと

避けるとされるものを一つずつ数えていくと、選べるものが何も残らないような気分になってきます。 商品券も駄目、刃物も駄目、お茶も駄目、大箱も駄目と外していったあとで、 去年と同じ品でよいのか、通販で頼んでよいのか、相手より安いもので構わないのかと、 今度は手配のしかたのほうが気になり始めます。

ここで押さえておきたいのは作法として言われていることと、実際に問題になることは別だという点です。 昔からの言い伝えのなかには、いまの暮らしではもう意味を持たなくなったものも混ざっていますので、 すべてを同じ重さで受け止める必要はありません。

よくある心配実際のところ
毎年同じ品物でよいか定着したほうが分かりやすく、問題になりません
生ものにのしを付けた気にしない考え方も広く、店の形に従えば足ります
相手より安い品でよいか金額を釣り合わせる必要はまったくありません
通信販売で買ってよいか差し支えなく、いまはこちらのほうが主流です
手渡ししないと失礼か配送で構わず、それで軽く見られることはありません

形式のうえで正しいかどうかより、その品が相手の暮らしに収まるかどうかで選んでください。お中元は一度きりで終わらず来年も再来年も続いていくものですので、贈る側が無理なく手配を続けられることも、実際には欠かせない条件になります。

同じ品を毎年贈っていると芸がないように思えてきますが、受け取る側から見れば話が逆になります。 7月になるとあの家からあの品が届くという形が定まっていれば、 箱を開ける前から中身が分かりますし、置き場所も食べ方も見当がついています。 毎年違うものが届くほうが、実は受け取る側の段取りを崩すことになります。

手配のしかたについても、いまは店から直接送るのがごく普通の形になっています。 重い箱を抱えて相手の家まで運ぶより、送り状に一筆添えて届けてもらうほうが、 受け取る側も在宅の都合を選べますので、双方にとって負担がありません。 持参しなかったことで軽く見られはしないかという心配は、ここでは要りません。

代わりに選ぶなら

避けたいものを一通り外し終えると、こんどは何を贈るかで行き詰まります。 商品券が使えず、日本茶も外れ、要冷蔵の詰め合わせも消えたところで、 売り場の棚を眺めても、めぼしいものが残っていないように見えてきます。 決められないまま何日か過ぎて、届ける時期のほうが近づいてきます。

抜け出す手がかりになるのはその品に持たせたかった役割は何だったのかという問いです。 好きなものを選んでほしかったのか、日持ちのするものを届けたかったのか、 役割さえはっきりすれば、それを満たす別の品はたいてい同じ売り場に並んでいます。

避けたいもの代わりに選ぶもの
商品券(目上の方へ)カタログギフトか、素直に品物を選んで贈ります
日本茶コーヒーや紅茶にすれば、弔事の連想が離れます
要冷蔵の大箱常温で日持ちする焼き菓子へ置き換えます
好みの分からない酒類ジュースや炭酸飲料にしておけば外れません
好みが強く出る食品洗剤やタオルなら、好みに左右されません
何も思いつかないカタログギフトを選んでおけば、まず外れません

最後まで決まらなければ、カタログギフトを選んでしまって差し支えありません。選ぶのが相手ですので、食事の制限も好みもこちらで当てにいく必要がなくなりますし、価格帯も細かく用意されていますから、相手との間柄に合わせた金額に落ち着かせることもできます。

置き換えを考えるときに効くのは、常温で置けるかどうかという一点です。 冷蔵庫の空きは家によって違いますし、届いた日に相手が家にいるとも限りませんが、 常温で日持ちのするものであれば、玄関の三和土に置かれたまま一日過ぎても中身が傷みません。 焼き菓子やせんべい、乾麺のあたりが選ばれ続けているのは、この一点によります。

洗剤やタオルは贈り物として味気なく見えるところがありますが、使われずに残るということがありません。 食べ物と違って賞味期限がなく、置き場所も小さくて済みますので、 相手の好みも食事の制限もまったく分からない相手にはむしろ向いています。 毎年これを続けている家もありますので、贈り物として軽く見られる心配は要りません。

避けるべき品にただ一つの決まった一覧があるわけではなく、 同じ品物でも、贈る相手と受け取る家の暮らし方によって、引っかかるかどうかは変わってきます。 語呂合わせを気にしない方には刃物もハンカチも普通の贈り物ですし、 冷蔵庫に余裕のある家であれば、要冷蔵の大箱もそのまま喜ばれます。

どの相手でも変わらないのは、受け取ったあとに残る手間の大きさだけは想像しておくという一点です。 置き場所と、食べきるまでの日数と、いらなかったときの処分の三つを頭に置いて選んでいけば、 作法として言われていることを一つずつ思い出せなくても、相手を困らせる品にはまず行き当たりません。 決めきれないときは、常温で日持ちのするものへ寄せておけば足ります。

よくある質問

お中元で避けたほうがよいものは何ですか?

目上の方への現金・商品券、時計・筆記具・カバン、履物・靴下・下着、刃物、ハンカチ、櫛などです。多くは語呂合わせや慣習によるもので、「相手を評価する」「施す」と読める点が共通しています。

なぜ時計や筆記具がだめなのですか?

「もっと勤勉に励め」という意味があるとされるためです。目上の方に贈ると、相手を評価する形に見えます。カバンも「通勤に励め」と読まれることがあります。

商品券は失礼ですか?

目上の方には避けます。金額がそのまま分かるためです。カタログギフトなら金額が直接見えないため、商品券より角が立たないとされます。ただし目上には品物のほうが無難です。

日本茶は避けるべきですか?

考え方が分かれます。香典返しに使われることが多く弔事を連想する方がいる一方、「おいしいお茶を贈って何が悪いのか」という考え方もあります。迷うならコーヒーや紅茶が確実です。

語呂合わせは本当に気にすべきですか?

絶対の禁止ではありません。刃物やハンカチも贈り物として売られています。ただし相手が気にする世代・地域かどうかは分かりません。ほかに選択肢があるなら、あえて選ばないほうが無難です。

実際にいちばん困るのはどんな品物ですか?

要冷蔵・要冷凍の大箱です。お中元は同じ時期にほかからも届くため、冷蔵庫に入りきりません。賞味期限が短いもの、大容量、重い箱も負担になります。常温で日持ちする小さめのものが確実です。

まとめ

  • 目上の方へは現金・商品券・時計・筆記具を避けます
  • 履物や下着も、施す形に読まれるため外します
  • 刃物・ハンカチ・櫛は語呂から避けられています
  • 日本茶は弔事を思い出す方がいますので控えます
  • 語呂合わせは絶対の禁止というわけではありません
  • より困るのは要冷蔵の大箱や重い品のほうになります
  • 制限が分からないなら食べ物以外を選びます
  • 決めきれないときはカタログギフトにします

参考情報

  1. 郵便局のネットショップ「お中元の熨斗(のし)のマナー|水引の種類と結び方、正しい表書き」
    https://www.shop.post.japanpost.jp/column/ochugen/ochugen_noshi.html
  2. 高島屋「進物の基礎知識」
    https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html
  3. 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
    https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html
  4. 三井住友カード「贈り物に関するアンケート」(2018年1月〜2月実施・全国18〜99歳の男女3,175名)
    https://www.smbc-card.com/giftcard/column/giftconsciousness_survey.jsp

本文で引用した三井住友カードの「贈り物に関するアンケート」は、2018年1月から2月にかけて3,175名から回答を得たインターネット調査で、お中元にしぼったものではなく贈り物全般について尋ねた意識調査であり、実際に使われずに残った品を数えたものではありません。「消えもの」を選ぶこと、生ものにのしを付けないこと、目上の方へ現金・商品券を贈らないとされることは、参照した情報源で共通しています。刃物やハンカチなどを避ける理由は語呂合わせによるもので、気にしない考え方も広がっているため、その旨を本文に記載しています。

本記事で紹介している内容は一般的な目安です。地域やご家庭、業界の慣習によって異なる場合があります。相手の家族構成・食事の制限・保管場所を考えて選んでください。