結論
取引先へのお中元は、自社と相手先の双方の規定を確認してから手配します。 受け取れない会社に届いてしまうと、返送や辞退の連絡という手間をかけることになりますし、 公務員には法令で贈答が制限されている相手がいます。
金額は5千〜1万円が目安で、会社宛ならその場で分けられる品物を選びます。 送り状を先に出し、平日の営業時間内に届くよう日を指定しておくと、 受け取る側が置き場所に困りません。
双方の規定を確認する
取引先へのお中元でまず手が止まるのは品物選びではなく、 そもそも贈ってよい相手なのかという一点で、 百貨店の法人カウンターで注文票を書き始めてから、 「先方は受け取れる会社だったか」と気づくと、そこで手続きが止まります。
分かれ目になるのは相手の立場と、双方の社内規定の二つで、 公務員は国家公務員倫理法や各自治体の条例によって利害関係者からの贈答を制限されていますし、 民間でもコンプライアンス規程で贈答を禁じている会社が増えていますので、 受け取れない相手に届けてしまうと、返送や辞退の連絡という手間をかけることになります。
| 確認すること | 確認先 |
|---|---|
| 自社が贈答をしているか | 上長または総務に、今年の方針を確かめます |
| 会社名義か個人名義か | 上長に、どちらの名で出すのかを聞きます |
| 昨年までの実績 | 前任者に尋ねるか、総務の記録をあたります |
| 相手先が受け取れるか | 担当者に確認するか、過去の実績から判断します |
| 経費の扱い | 経理に確認します。交際費の扱いになります |
取引先へのお中元は個人の気づかいではなく、会社対会社のやり取りとして扱われますので、自分の判断だけで贈らず、必ず上長の了解を得てから手配してください。名義や金額を独断で決めてしまうと、翌年の担当者が何を基準にすればよいのか分からなくなります。
公務員への贈答が厳しく見られていることは、当の役所の調査にも表れています。 人事院の国家公務員倫理審査会が2025年8月から9月にかけて実施したWeb調査では、 倫理規程の贈与に関する行為規制について、 市民1,000人のうち88.8%が「妥当である」と答え、 一般職の国家公務員2,225人では94.5%にのぼりました。
同じ調査で、「最近、倫理法等違反になりそうな場面に遭遇した」と答えた職員が 5.9%おり、その設問の例示には 「利害関係者に該当する可能性のある者から物を渡されそうになった」が挙げられています。 善意で持参した品が、受け取る側を困らせる場面はいまも起きているということです。
金額の目安
贈ると決まったあとに迷うのが金額で、 個人の付き合いなら「相手にどう見えるか」で決めれば済みますが、 取引先の場合は自分の感覚で上げ下げすると、あとから説明できなくなります。
判断の軸は取引の規模と、宛先が会社か担当者個人かの二つで、 会社宛なら部署で分ける前提の量になりますし、担当者宛なら個人が受け取る形になりますので、 同じ5千円を出すとしても、選ぶべき品物の中身はまるで変わってきます。
| 相手 | 目安 |
|---|---|
| 取引先(会社宛) | 5千〜1万円で、人数で分けられる量にします |
| 取引先(担当者宛) | 5千円ほど。個人が受け取る形になります |
| 特に重要な取引先 | 1万円まで上げ、社内で基準をそろえておきます |
| 小規模な取引先 | 3千〜5千円。相手が恐縮しない範囲にとどめます |
取引先ごとに金額を変えるなら、社内で基準を決めてから動きます。担当者の裁量でばらつかせると、翌年に引き継いだ人が「なぜこの会社だけ1万円なのか」を判断できません。取引額なのか、付き合いの長さなのか、線の引き方を文章にして記録に残してください。
困るのは、前任者が異動してしまって記録が何も残っていない場合です。 経理に回っている過去の伝票をあたれば金額と宛先だけは追えることが多く、 そこから「昨年と同じ」で通せば、少なくとも前年より軽くなったという印象は避けられます。
逆に、今年から金額を下げると決めたのであれば、 相手ごとにばらばらに下げないことが大切です。 一社だけ品が軽くなると、取引の増減を読まれることになりますので、 下げるなら全社そろえて同じ幅にしておきます。
品物の選び方
会社宛に贈る品は個人宛とは条件がまったく違っていて、 届け先は自宅の玄関ではなく事務所の受付になりますし、 受け取った方はその箱を給湯室か会議室の隅に置くことになります。
前提になるのはその場で分けられるかの一点で、 会社宛の品は特定の誰かのものにはならず、 部署の人数ぶんに配られることになりますので、 箱を開けたときに数がそろっているかどうかで扱いやすさが決まります。
| 品物 | 理由 |
|---|---|
| 向く|個包装の菓子 | 箱を開けて、その場で人数ぶんに分けられます |
| 向く|コーヒー・紅茶 | 常温で日持ちし、給湯室に置いておけます |
| 向く|洗剤・タオル | 好みに左右されず、誰が受け取っても使えます |
| 避ける|要冷蔵・要冷凍 | 事務所に保管する場所がありません |
| 避ける|生鮮品 | 休日を挟むと傷んでしまい、処分の手間をかけます |
| 避ける|お酒 | 職場で分けにくく、飲めない方もいます |
| 避ける|切り分けが必要なもの | 受け取った側に、包丁と皿の手間をかけます |
会社宛の品は「その場で配れるか」だけを基準にして選んでください。個包装で常温、そして在籍人数より少し多めの個数があれば、配る役に回った方が数を数え直さずに済みます。金曜の夕方に届いた生ものが月曜まで受付に置かれる、という事態も防げます。
実際に扱いに困るのは、大きな桐箱に入った高級品のたぐいで、 見栄えはしますが事務所の給湯室には置き場所がなく、 分けるにも切り分けが要るため、結局そのまま応接室の棚に上がることになります。 箱の立派さよりも、開けたときに何個入っているかのほうが、受け取った側には喜ばれます。
季節がら冷たいものを選びたくなりますが、 アイスやゼリーの詰め合わせは受け取った時点で冷凍庫を探させることになります。 事務所の冷蔵庫は社員の弁当で埋まっていることが多いので、 常温で棚に積めるものにしておくと、届いた側の手が止まりません。
宛名と差出人
掛け紙と送り状の宛名を書く段になって、いちばん手が止まるのが敬称です。 部署名と個人名の両方を書くとき、どちらに何を付けるのかで迷い、 注文票の前でペンが止まったまま時間だけが過ぎます。
分かれ目は受け取るのが個人か、組織かの一点で、 個人が受け取るなら「様」、部署や会社が受け取るなら「御中」を使いますので、 宛先を先に決めてしまえば敬称は自動的に決まります。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 宛名(担当者宛) | 会社名、部署名、役職と氏名に「様」の順で書きます |
| 宛名(部署宛) | 会社名のあとに「〇〇部 御中」と続けます |
| 宛名(会社宛) | 「〇〇株式会社 御中」とだけ書きます |
| 差出人(会社として) | 会社名に代表者名、または部署名を添えます |
| 差出人(個人として) | 会社名と所属を書き、フルネームで署名します |
| 表書き | 掛け紙の上段に「御中元」と書きます |
| 内のし・外のし | 配送で届けるので、内のしにします |
「様」と「御中」を併用した「〇〇部御中 △△様」という書き方は誤りとされています。担当者に届けたいなら部署名は宛名の一部として書き、末尾は「様」で止めます。掛け紙は配送中に汚れないよう、包装紙の内側にかける内のしにしておきます。
迷いやすいのは、担当者の役職が昨年から変わっている場合で、 手元の記録に「課長」とあっても、いまは部長になっていることがありますので、 先方の署名や名刺で現在の役職を確かめてから書くと、直前の差し替えを避けられます。
差出人を会社名義にするか個人名義にするかは、上長の判断に従います。 個人名で出しておきながら掛け紙は会社名、という組み合わせにすると、 受け取った側が誰にお礼を返せばよいのか分からなくなりますので、 名義はどちらかにそろえてください。
のしと名前の書き方を詳しく見る送り状
個人どうしのやり取りでは送り状が省かれることも増えましたが、 取引先に対しては省きません。 何の連絡もないまま箱だけが受付に届くと、 受け取った方は差出人と用件を封を開けてから知ることになります。
送り状の役割は予告で、 品物より先に届くことで「何がいつ届くか」を知らせるところに意味がありますので、 同じ日に着いても後から着いても、その役目は果たせません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出す時期 | 品物より先に届くよう、逆算して出します |
| 形式 | はがきか封書にします。メールで代える会社もあります |
| 書くこと | 時候の挨拶、日ごろのお礼、品を送った旨、結びの4つです |
| 書かないこと | 品物の値段や、選んだ品の自慢は書きません |
| 差出人 | 掛け紙と同じ名義にそろえて書きます |
送り状と掛け紙の名義は必ずそろえてください。送り状が個人名で掛け紙が会社名だと、受け取った側は社内のどの記録に残せばよいのか、お礼状を誰宛に出せばよいのかで迷うことになります。値段に触れないでおくのは、相手に返礼の額を考えさせないためです。
間に合わないと分かった時点で無理にはがきを出すより、 電話かメールで先に一報を入れるほうが役に立ちます。 「本日〇〇を発送しましたので、〇日の午前中にお届けする予定です」と伝えておけば、 受付の方が伝票の小さな文字を追って差出人を探す手間もなくなります。
文面そのものは長くする必要がどこにもなく、 時候の挨拶から結びまで四つの要素が入っていれば形になりますので、 はがき一枚に収まる分量で止めておくと、 読む側も封を開けて数秒で内容を把握できます。
送り状の書き方と例文を見る配送の手配
最後に残るのが配送の指定で、 個人宅なら夜でも土日でも受け取ってもらえますが、 会社は誰もいない日と時間帯がはっきりしていますので、 指定を空欄のまま注文すると、届いた日に受け取り手がいないことが起こります。
押さえておくのは相手の営業日と、翌年に引き継ぐための記録の二つで、 前者は今年の失敗を防ぐため、後者は来年の担当者が同じ判断をできるようにするためのものです。
| 確認 | 内容 |
|---|---|
| 到着日 | 平日の営業時間内を指定し、土日祝は避けます |
| 相手の休業日 | 夏季休業に当たっていないかを確かめます |
| 受け取り場所 | 本社か支店かを確かめ、担当者の所属先へ送ります |
| 時間指定 | 午前中を選ぶ場合も、始業直後は外しておきます |
| 記録を残す | 贈答先・金額・品物を台帳に書き残します |
贈答の記録は、面倒でも必ず台帳に残しておいてください。担当が替わったときに「誰にいくらの品を贈っていたか」が分からないと、翌年の判断ができません。いただいた分も同じ台帳に並べて書いておけば、片方だけが毎年続いている状態にも気づけます。
見落としやすいのが相手先の夏季休業で、 お盆の前後は事務所そのものが閉まっていることも多く、 その期間に指定すると営業所で数日預かられたままになりますので、 先方の休業日程が分からないときは、担当者に一言尋ねておくのが確実です。
なお、企業どうしの贈答そのものを見直す動きは年々広がってきていて、 株式会社ウェブギフトが2024年5月24日から30日にかけてビジネスパーソン300名に尋ねた インターネット調査では、今年お中元を贈ると答えたのは45%で、 企業間のやり取りを「廃止すべき」寄りに答えた人が7割以上を占めていますので、 今年は贈らないという判断も、いまでは十分に一般的な選択のうちに入ります。
取引先へのお中元に唯一の正解があるわけではなく、 相手が受け取れる立場かどうかと、自社が今年も贈る方針かどうかの二つを確かめて、 翌年の担当者が同じ判断をできる形にしておけばそれで足ります。 受け取れない相手であれば贈らないほうが親切ですし、 贈ると決めたなら5千〜1万円で、その場で分けられる品にしておけば形になります。
どの取引先でも変わらないのは、自分の判断だけで動かず、上長の了解を得てから手配することの 一点だけで、これさえ守っていれば、宛名の敬称や到着日の指定を思い出せなくても 大きな失礼にはなりません。手配が済んだ日に台帳へ一行だけ書き足しておけば、来年の自分がいちばん助かります。
よくある質問
取引先にお中元を贈ってもよいですか?
まず双方の規定を確認してください。公務員は国家公務員倫理法や各自治体の条例で利害関係者からの贈答を制限されていますし、民間でもコンプライアンス規程で禁じている会社があります。自分の判断だけで贈らず、上長の了解を得てから手配します。
金額はいくらですか?
会社宛なら5千〜1万円、担当者宛なら5千円ほどが目安です。特に重要な取引先は1万円まで、小規模な取引先は3千〜5千円にとどめます。取引先ごとに変えるなら、社内で基準を決めて記録に残してください。
会社宛にはどんな品物が向きますか?
個包装で常温、在籍人数より少し多めの個数のものが向きます。菓子折り、コーヒーや紅茶、洗剤やタオルなどです。要冷蔵・要冷凍のもの、生鮮品、お酒、切り分けが必要なものは、事務所で扱いに困ります。
宛名はどう書きますか?
担当者宛なら会社名、部署名、役職と氏名に「様」の順です。部署宛は「〇〇部 御中」、会社宛は「〇〇株式会社 御中」とします。「〇〇部御中 △△様」のように「様」と「御中」を併用するのは誤りとされています。
送り状は必要ですか?
取引先へは出します。品物より先に届くことで「何がいつ届くか」を知らせる役割があるためです。時候の挨拶、日ごろのお礼、品を送った旨、結びの4つで足ります。掛け紙と名義をそろえてください。
到着日はいつに指定しますか?
平日の営業時間内です。土日祝は受け取り手がいません。相手先の夏季休業に当たっていないかも確かめてください。時間指定をするなら、始業直後の時間帯は外しておきます。
まとめ
- 自社と相手先、双方の規定を確認します
- 公務員や、贈答を禁じている会社には贈りません
- 上長の了解を得てから手配します
- 金額は5千〜1万円にそろえます
- 会社宛は個包装・常温・人数より多めを選びます
- 「様」と「御中」は併用しません
- 送り状を先に出し、掛け紙と名義をそろえます
参考情報
- 郵便局のネットショップ「お中元の熨斗(のし)のマナー|水引の種類と結び方、正しい表書き」
https://www.shop.post.japanpost.jp/column/ochugen/ochugen_noshi.html - 高島屋「進物の基礎知識」
https://www.takashimaya.co.jp/giftnavi/shinmotu_01.html - 三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」
https://www.mistore.jp/gift/manner/knowledge/noshi_mizuhiki/article/noshi_manner.html - 人事院 国家公務員倫理審査会「令和7年度 公務員倫理に関するアンケート」(2025年8月〜9月実施・Web調査・市民1,000人/一般職の国家公務員2,225人)
https://www.jinji.go.jp/rinri/monitor/anketor7_00002.html - 株式会社ウェブギフト「企業におけるお中元の扱い方・考え方に関するアンケート調査」(2024年5月24日〜30日実施・インターネット調査・ビジネスパーソン300名)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000051606.html
人事院の調査は、市民側が調査会社の登録モニターへのWeb調査で無作為抽出の世論調査ではなく、職員側も自己申告です。ウェブギフトの調査は法人向けギフトを販売する事業者の自社調査で、有効回答300名と小規模です。金額の目安(3千〜5千円)、掛け紙(紅白の蝶結び・のし付き・「御中元」)は、参照した情報源で共通しています。身内へお中元を贈るかどうかは家ごとの慣習によるため、本記事では「贈るべき」とはせず、確かめ方と決め方を示しています。
本記事で紹介している金額や作法は一般的な目安です。地域やご家庭、業界の慣習によって異なる場合があります。お勤め先や取引先の規定で贈答が制限されていることがあります。事前にご確認ください。